前作はこちら「浄化編」
液化したガスで満たされた水槽のなかに巨漢のモンゴロイドが沈んでいる。その男はテロリストの爆弾を身に受けたせいで激しく損傷しており、通常なら性器がある部位より下の体は治療のため敢えて切断されていた。上半身にも大小の裂傷が見て取れる。
瞳に湛えた涙をこすりながらその様子を心配そうに見守る人物がいる。体つきはまだ子供といっても差支えのない華奢な肢体に、黒い衣装を着せられた妖しく美しい人形のような佇まいだ。
「仁科さん、いつ治るのかな…」
再生槽に取り付けられているモニターにチカチカと文字が浮かび上がっている。それは男がみている夢の断片なのかもしれない。
「今日もお見舞いに来たのナイン、毎日感心だこと。あら泣いてるの?」
長い黒髪を一本に編みこんだ白衣姿の女性が入ってきて、心配そうに満身創痍の男を見つめていた人物に声をかけた。
「グズっ。泣いてなんか、ないですよ女王様。別に全然心配もしてないですし。まあその、仁科さんまだ身体半分くらいしかなくって、この先どうなるんだろうとは思ってますけど…一応ボクのペットですから」
この国の支配者であり卓越した科学者でもある女王は自分が生み出した目の前の合成人間が示す情操に驚いた。精子はもちろん卵子すら使わず人工的に合成した胚から創られた人形が、失いたくないと思う程に大切な他者を認識して頬を濡らしていたからだ。生まれながらに性別がない合成人間たちは生殖に対する感性が特殊で、去勢を遊びのように楽しむ嗜虐性があるなど製作者の女王でもその育成は手探りだ。
「ごめなさいねナイン、貴方がその大事なペットと一緒にミュンヘンの市民去勢会場で起きたテロの被害を最小限にしてくれたのにね。そのクローンの治療にはまだ少し時間を頂戴」
「大丈夫です、女王様が治してくださるのを待ちます。ずっとこうしてもいられないですね、クローン工場でフォーのお手伝いをすることになってるのでボクもう行きます」
続けて言葉をかける暇もなく合成人間がパタパタと駆け出していったので、女王はやれやれと肩を上下させてから作業に取り掛かった。
ナインはクローン生産施設に向かう途中で去勢工場にも顔を出す。昨夜搬入されたプロスポーツ選手たちを去勢して、彼らの睾丸を持ってきてほしいとお使いを頼まれていたからだ。去勢工場ではラグビーチームの選手たちが自分たちの境遇を理解できずに混乱状態だ。彼らの所属するリーグ最下位のクラブチームは、スポンサーからの出資を打ち切られた為に選手のあずかり知らないところで所属会社が勝手に売り払われていた。
四本足の上に箱がのったような奇妙な物体に既に裸で腰を取り込まれた選手たちは、本来なら試合の遠征先に向かうはずだった。しかし、飛行機が降り立ったのはこの得体のしれない去勢工場がある都市国家だった。彼らはここが何処なのか、自分の身にこれから何が起こるかもわかっていない。チームが所属する会社のCEOは、無情な人身売買の契約書に提示された目もくらむような金額に、迷うことなくサインをしてしまった。
「おい見ろ、あそこに子供がいるぞ。 おーい、そこの君!こっちへきてくれないかー」呼び止められた合成人間は何事だろうと思いながら近づいていく。
「どうしたのオジサン、ボクに何か用?」
「怖がらないでくれよ、厳ついやつらばっかりでゴメンな。君はラグビーって知ってるかい? 俺たちその試合に行く途中なんだ。なのに、ここがどこかもさっぱりわからんし、すごく困ってるんだ」
「うんうん、オジサンたちは困ってる」
「そうそう、そうなんだよ。なあ君、だれか大人のひとを呼んできてほしいんだ」
「この近くいるのは女王様ぐらいだけど、まさかオジサンたちに会ってはくれないと思うよ。それにボクはオジサンたちの睾丸を持ってきてほしいって頼まれてるからさ、悪いけどあんまり相手をしてあげる時間ないんだ」
「へっ? 俺らのタマをどうするって…」
ナインが補助脳から信号を発信すると、オートマチック去勢ユニットである人工生命たちは、選手たちを乗せたまま縦一列に合体を始めた。ナインと話した男を先頭に、クラブチーム23人がひとつになって奇妙なスクラムを組まされる。
>>精巣摘出ヲ実行
>>連結パック出力
「痛っ。この変な奴、なかでキンタマ触ってやがる」
「イテテ、何だこりゃ俺もだ。あーっ!」
「ひゃっ、キンタマの袋がちょっと裂けたんじゃねえか!?」
去勢ロボットたちは並列起動して筐体内にぶら下がる男たちの陰嚢縫線を数センチだけ切開した。ユニットを構成する組織が根元から下へと玉の入った袋を絞っていくと、選手たちは激痛を伴って股の間で何かがポンと飛び出していく感触を味わうことになる。
「がはあっ! ななな、なんだあ!?」
「ぐあっ!たた、タマが、俺のタマがっ」
「ヒイっやめろ、やめろっ、痛っ、痛っ、イぃだだだだ!」
あれよという間に精索も絞り切られて採取された選手たちの睾丸は、連結したオートマチック去勢ユニットの内部で、長い一枚につながった透明なシートの上に一組ずつ並べられる。すると23組46個の睾丸は調剤薬局で一包化された薬のように、一包ごとにミシン目の入ったひと続きのパッケージになって、いちばん前のユニットから続々と出力されてくる。
「出てきた、出てきた。ほらみて、これがオジサンたちの金玉だよ。ひとつづりだけど、ちゃんと一人分ずつ分けて包装してみたんだ。上手くできてるでしょ?」
「そそそ、それ…ゴクっ…俺たちのキンタマ…なの…かよ」
「うん、そうだよ。これでボクの用事は済んだからもう行くね、バイバーイ」
翌朝のニュースではラグビーのクラブチームが遠征に向かう途中、飛行機ごと行方不明になって未だ消息がわからないと報道されることになる。子供のような姿の人物が自分たちの大切な金玉を抱えて忙しそうにどこかへ走り去ってしまう。選手たちが手を伸ばして待ってくれと大声で叫び訴える声が、去勢工場に虚しくこだました。
お使いを済ませたナインが両手にたくさんの玉を抱えてひょっこりクローン工場にやってきた。取り扱い注意の札がついた男性器が保存溶液に浸されて幾つも陳列されている。それらの本来の持ち主は既に処分されているのに、残された生殖器はコンディションを保つために電気信号を送られて毎日朝勃ちすら起こす。なぜ大切に管理されているかといえば、クローンのコピー元になるマスターだからだ。そこから採取した細胞を使い、核を抜いた未受精卵に移植して複製作業が行われているのだ。クローンに使われている遺伝情報は、この国にあるオートマチック去勢工場で捕虜の職業軍人やスポーツ選手など身体能力の高い男から睾丸を抜き取とって研究されている。
工場の端が見えないほどに空間を埋め尽くしている人工羊水のカプセルには、細胞分裂が始まったばかりの胚から成人まで、兵士になるために生み出される男たちがへその緒に繋がったまま浮かんでいる。中にはわざと容姿を老化させた司令官仕様の個体まである。
彼らの口と鼻、性器や肛門など穴という穴にはチューブが繋がっており、筋肉を鍛えるための低周波装置が全身の皮膚に貼られている。頭部に埋め込まれたコントロールチップに接続されたプローブを通して、クローンたちは夢の中で仮想の生活を過ごしている。そこで圧縮された教育を受け、架空の記憶すら焼き付けられるのだ。現実世界の軍宿舎で目を覚ますまで、彼らの人生は全てこの人工子宮のなかの出来事だ。
「おーいフォー、手伝いに来たよ。えっとこれなんだっけ、そうそう頼まれてたラグビー選手の金玉ね。この冷蔵庫に入れておけばいいのかな」勝手知ったるという感じでナインは取れたてホヤホヤの睾丸を工場の冷蔵設備に保管した。
「…あ、ありがとナイン助かるヨ…じゃあ早速で悪いけどコレお願いネ…」
銀色の前髪で片目が隠れ、うつむいたままボソッと区切って話す人物は作業データをナインの補助脳に直接転送する。この者もまた女王謹製の合成人間であり、もれなくその相貌は人形のごとく秀麗だ。
「えーっとナニナニ、非破壊タイプの去勢をすればいいんだね、フムフム」
クローンたちは兵士に高い適正があるといっても、生物としてはごく単純にヒトのオスであり生殖能力もある。筋骨逞しい体格を維持するために、餌さえ与えれば勝手にテストステロンを作り続ける睾丸は低コストなオスの標準装備品だ。作戦行動と演習、そして基地内の訓練以外は眠っている彼らは箱入りで一生童貞のため原則精巣の除去は行わない。しかし、基地外で市民と触れ合う業務を任せるオーダーがはいった場合は、念のため精子をつくれなくする処理を施していた。
「…住民の去勢制度を実施してる国へ…会場の警備兵として出荷する子たちなんだヨ…」
「よく知ってるよ欧州連邦でしょ。ボクこの前そこでひどい目にあったからね」
羊水が排液され人工子宮の揺り籠を外されてしまった300人の男たちが、生まれたままの姿でステンレスの寝台に横たわる。顔つきはランダムになるよう設計されているが、首から下のボディは全で同じだ。ずらっと並んだ全く同じ形のペニスが300本、同じ大きさの睾丸が600個。
「…この装置を陰嚢にセットして吸引用のカテーテルに付け替えたら、あとは自動だからサ…」
「えっ、300個もこれをタマタマに着けて回れっていうのフォー? カテの抜去と付け替えも!? めんどくさっ。オートマチック工場の看板に偽り在りじゃないか」
「…そこはひとつ今回は家内制手工業ってことでネ…装置の効果は実証されてるけど工場システムはまだ開発中なんだ…ねぇ手伝ってよナイン」
ナインは仕方なしに睾丸がすっぽり収まるサイズの非破壊型去勢デバイスを一人ずつ男たちに被せていった。300人の戦士は生まれてすぐオスとしての存在理由を否定される運命だ。ナインは華奢だが成人男性の何倍もの筋肉密度を誇る腕をまくり、排尿用カテーテルを抜きまくっては半ばやけくそに吸引用に差し替え尿道にねじ込んでいく。
「ふぅ、ひいっ、産業革命はまだか、疲れたぁ」
>>“おーい、このオニイチャンたちの照射準備できたよ”
>>“…わかった、じゃあ…はじめるね”
合成人間の二人は補助脳の通信機能を介して作業経過の報告をしあう。フォーはまずクローンの脳に刺さっているプローブを通じて彼らに淫夢をみせる。すると彼らは仮想現実のなかで架空のパートナーから猥らな誘いを受けるのだ。
―入営前の最後の休日、買い物に付き合った後に青年は彼女の住むアパートメントを訪れる。階段を上り部屋のドアを開ける前から二人は甘く長いキスを交わした。こらえきれずなだれ込んだベッドルームで、シャワーも浴びずに服を脱ぎ捨て熱く交わる。ピルを飲んでいるから大丈夫と彼女はスキンなしで挿入させてくれる。温かく柔らかい膣に熱く硬いペニスが包まれる。
「今日はえらく積極的なんだな、俺の天使さんは…」
「だって暫くは会えないでしょ、私の愛しいKuchelbär」
仮想世界の情交が盛りあがっても、現実世界では装着された非破壊型去勢デバイスの超音波と放射線によって、睾丸の精原細胞が殺されているところだ。丁度良い縊り具合が分かるまでに何人もの捕虜が実験で犠牲になったが、クローンたちの精巣は最適化された周波数とシーベルトで、形は保ったままゆっくりと茹でられて、子孫繁栄の道具としては使い物にならなくされている。
まぼろしの中で騎乗位になった彼女はペニスを貪るようにしめつけて、捻じりまわすように腰を動かす。青年は快感にのけぞって漏らさないように耐えるので精一杯だ。こらえるのも限界になったとき、うつつではカテーテルを挿入された300本のペニスが直前まで装っていた平静が嘘のように、急激に膨らみ反りかえって射精しはじめる。それは夢精が起こす独特の挙動だった。クローンたちが夢のなかで子宮の奥へ植え付けるように彼女を下から突き上げると、現実でも彼らは腰をヘコヘコと情けなく浮かせるのだった。
「もっと奥の突き当りを責めてっ、もっと」
「イッタばっかりだから無理だよ、ハアっ、ハアっ」
「ダーメ、今日はたっぷり搾り取ってあげるんだからね」
「こんな調子じゃ俺らのベイビーが出来ちまうぜ」
架空世界の彼女に搾り取られると、実在世界の男から吸引した精液はすぐに精子の数や運動量を解析される。1回目の測定からほとんどのクローンたちが既に瀕死の精子しか射精できず、妊娠させることは難しい状態だ。このあと数日間にわたり非破壊型去勢デバイスの超音波と放射線によって男たちの精巣は種を生み出すことを完全にやめるまで静かに嬲られ続ける。無作為に選ばれた数人のクローンだけは陰嚢を切開され直接精巣から細胞のサンプルを採取されるが、きちんと治療が施される。無作為サンプルの無精子が顕微鏡により最終確認されると出荷準備が整う。
クローンたちが毎晩夢で見るストーリーは、年月とともに進展して結婚や子供の誕生まで経験できる高性能な仮想現実だ。いつか子供をつくって幸せな家庭を築くんだと将来を描く300人の若いクローンたちは、その600個の睾丸から精子をつくる細胞を死滅させられたことも知らずに眠ったまま梱包された。
完成したクローンの識別表記には【倉科型ゲルマンタイプE2××:陸士用】との記載に【種ナシ】と追記された。
所変わって仁科の再生槽の前では、女王が出涸らしのティーバッグをお湯に浸したかろうじて色のついた液体を啜りながら頭を抱えていた。研究者の顔であるとき彼女は度が過ぎるぐらいに質素な暮らしを望む。仁科の脳に接続されたインジケーターは彼の記憶が混濁する値を示し続けている。
「何度記憶の強制リフレッシュをかけても架空の子供の記憶にナインが勝手に上書きされていく。忘れないわけだ、ナインの存在はもう家族としてこの男の安定に繋がっているのだもの。私の設計ミスでバイオハザード寸前の壊れクローン、ほんとに治してよいものか」
【仁科型モンゴロイドタイプA001:海佐仕様:complete castration:hold for disposal】
海軍用として販売されたクローン兵士の初期ロット。顧客の極東連合に合わせてアジア人種で製造。詰め込み過ぎた遺伝設計に不良があり性格や素行に破綻の兆候在り。勤務する護衛艦ごと鹵獲して回収。精液サンプルを採取のうえ完全去勢。その後処分される予定であったが特例で飼育中。電子カルテにはそう記載されている。
「自爆テロの爆風を受けて腸が飛び出しても生きてるなんてあり得ない。化物になってしまう危険な兆候だわ。でも今更処分するなんて言ったらナインは悲しむだろうし…貴重な合成人間の精神まで壊れるのも困るな」
女王は苦慮の末に、バイオハザードを抑制する薬とその効果を持続させるための仕組みを開発することにした。薬剤を定期的に全身に送り届けるための女性器のような開口部を男の股に設けるのだ。仁科のペニスを切り取って造られていた躾用の鞭には、バイオハザードの抑制剤を注入できる機能とペニスパンツに形状変化する機構を追加する。
「こんなところかな。さて、新しい下半身をつくってあげましょう」
分裂をはじめた細胞が水槽のなかでゆっくりと形作られていく。一月もすれば股間に割れ目のある下半身が出来上がるだろう。
―俺は誰かに身体を揺すられているのを感じた。やめてくれ、なんだか知らないがすげえ疲れてる。まだ寝かせろと俺はそいつの手を払う。どうせナインだろう、妙に久しぶりな気はするが毎朝あの子は首輪を着けにきて俺を散歩に付き合わせやがる。あの子?まあガキみたいなもんだ。偉そうにしてるが俺が守ってやらなきゃいけねえ。ああもうだめだって、今日はパスさせてくれよ。全然あきらめねえな、包まっている毛布まではがしてくる。
「ふがっ。うぅぅーもぉぉ、っだあ! 起きりゃあいいんだろうチクショウ」
観念して上半身を起こすと、目の前にはショートカットの赤髪をさっちょこ立てた子供が頬をふくらませて怒っている。エプロン姿で左手にはお玉を、右手には俺のチンポで造った忌々しい鞭を持って。可愛らしい顔立ちや体つきはナインとそっくりだ。
「あれ、髪の毛そんな派手な色にしてグレたのかよナイン、似合ってな…」
「ない」と言い切る前に俺はペニスウィップで吹き飛ばされて空中に浮いてから地面に叩きつけられる。ドスーン。自分のチンポでしばかれることはここの暮らしじゃ珍しくもないが、目覚ましにしては酷い扱いだ。
「ボクはナインじゃない、サードだ。一緒にするな犬、さっさと顔でもあらって餌を食え。あと相手の髪を褒めないとかオスとして失格だぞオマエ」
どうやらこいつはナインと同じ合成人間だ。遠目では何度か見かけたこともある。匂いにつられて食卓を見れば、味噌汁と炊き立ての白飯が湯気をあげ、大根おろしの添えられた出汁巻き卵に醤油の小皿、小分けパックの海苔とふりかけまで置いてある。椅子に座って机で食べられるとかありがてえな。
「ほらワンコ、オマエのいた極東の餌をちゃんと調べて作ったんだぞ。ありがたく食え」
俺は飛び上がって茶碗にガツガツとかぶりつき、フーフー味噌汁を冷ましながら真っ赤な顔ですする。白だしの風味が出汁巻きから溢れ出てほっぺたが落ちそうだ。
「うううう、うめぇえええ!沁みるっ」
「そうだろう、そうだろう。女王様によればオスの扱いは胃袋をつかむのが何より大事らしいからな。ありがたくもっと食え、おかわりもあるぞ」
サードと名乗るちょっとぶっきらぼうな合成人間によるとナインはドイツに出張中らしい。そういえば俺はいつの間にミュンヘンから帰ってきたのだろうか、いつものように記憶は霞が掛かったように曖昧だ。
「ふー、食った食った。流石にもう起き抜けに2合はキツイ。歳だな」
サードは食器の後片付けをてきぱきこなしエプロンを脱ぐと、おもむろに手錠を取り出して腹をさする俺の両腕にはめている。
「ほえ?、いやいや、ん? どこからどう見てもこりゃあ手錠じゃないか」
サードは呟く俺を無視してペニスウィップをぐにゃぐにゃと変形させるとペニパンになったそれを自分に装着しはじめた。
「いやいや、だから爽やかな朝になんでペニパンなんだよ。俺をからかってんのかコラ。なんでお前らはすぐそういう展開になるんだ」
「からかってなどいないぞ間抜けな顔をしたそこの大型犬。餌の後は薬の時間だろう。ボクは大真面目だぞ、女王様にちゃんと世話をするよう言われてるんだからな」
サードは俺の両腕をバンザイさせ頭の後ろに回すと、椅子を蹴ってそのまま床に押し倒した。バッターン。背中がついた勢いで後頭部を軽く打ち付けられ眩暈がする。薬の時間とペニパンが共存する概念がどこの世界にあるんだよっ!
真顔の合成人間は華奢な見た目とは大違いの怪力で抵抗する俺を押さえてつけてパンツを脱がしてくる。だいぶ慣れたとはいえチンポが付いてない股間を見られるのは男としてかなり恥ずかしい。サードは俺の腰下に慣れた手つきでクッションまで入れてきやがる。どこで習うんだこんなこと。
「薬を注入してやるからさっさと力を抜けセント・バーナード」
「抜けるかアホ!さっきからイヌ、イヌ言いやがって。意地でもケツの穴締めてやる。俺は男だ、カマを掘られるのだけはぜっったいにダメだっ!」
ナインにちょん切られた俺のチンポで造られた鞭にも相当プライドを削られてきたが、今度はそれがペニパンになって俺の中にズッポリ挿入されようとしている。その屈辱はきっと俺の矜持を跡形なく崩してしまうだろう。男としての危機が迫ったからなのか、俺のなかで何か種が発芽するようなイメージが沸き、熱い血潮が股間に渦巻いた。
綺麗な顔をした小娘のようなサードは、俺の両足をピンと閉じた状態で天井に向けて軽々と持ち上げる。四十八手の「深山」なんて何で知ってるんだよ!必死で抵抗したがついに俺は情けなくも自分のペニスで深々と奥まで犯されてしまう。いったいペニパンチンポがどこに刺さってるのかわからねえが、突かれるごとに経験したこともない衝撃が脳天までブチ上がって頭が真っ白になる。
「なんじゃこりゃあああああ!?」
―ボクが抑制薬の注入をはじめようとすると、さっきまで呑気に餌を食べていたでっかいクローンは目の色を変えて暴れはじめる。下腹部の皮膚が異様に波打ち変形しはじめた。これが女王様の言っていたバイオハザードの兆候かもしれない。
急いで薬を股間の専用スリットに差し込んで身体の奥まで注入しないとダメだ。クローンはお尻の穴がどうした、こうしたと訳の分からないことを叫んでいるようだが時間がない。焦りながらも眼球内に搭載さてるカメラで撮影もしつつ、なんとか押さえつけ両足を閉じさせて持ち上げた。妙に強い、明らかにクローンのスペックを超えた筋力だ。ペニスは切り取られて平らなはずの股間にサイの角みたいな突起が盛りあがってくる。ダメだ、薬が効いてないのか!? 次の瞬間、衝撃がはしったようにのけ反ったクローンが叫んだ。
「ナンジャコリャアアアアア!?」
仁科の股間に現れた角のような突起は元の平らな皮膚に戻っていった。
>>ピピッ、回線確立
>>“NC3、カメラの映像はみていたわ。大丈夫?”
>>“なんとか変身はおさまりました女王様。抑制剤が効いたようです”
>>“もしかしたら、ナインの不在が影響したのかもしれないわね”
>>“もうこんな危ないクローンは処分したほうが良いですよ。それにナインにだけペットを飼わせたりして依怙贔屓です”
>>“それは貴方の言う通りなのだけれど…なんとなく生かしておいたほうがいいって感じるのよ、そういうカンは大事にしたいの”
「ちぇっ、ナインばっかりズルいや」
納得のいかない赤髪の合成人間は、仁科を金属繊維の特殊な帯できつく縛り上げてから、ずるずると引きずって女王様のもとへと運ぶのだった。
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投稿:2022.11.10更新:2022.11.10
オートマチック去勢工場 覚醒編
著者 心丹様 / アクセス 1485 / ♥ 6