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202x年1月
　リサとショウは数日前に成人式を迎えた埼玉県在住の一般的なカップルだ。デートで渋谷へ遊びにきたふたりは、スクランブル交差点で「カップルいっしょに、高収入♫ バイト、バイトで高収入♫」と小気味よいBGMを響かせながら走ってくる広告トラックを目撃した。

　そのトラックには、「治験バイト！男性300万円、女性100万円〜、男女一緒に応募で500万円〜！」と書かれていた。

　リサはショウに、そろそろ２人暮らしを始めたいし、応募してみない？と冗談半分で聞いてみた。ショウは現場仕事を転々としてきたが、最近は仕事が減り生活が困る時期もあるため治験に少々乗り気だ。２人で働いても１年間の稼ぎが手取り300万円程のふたりにとって、わずか70日で手に入る治験バイト代は魅力に映ったようだ。２人は近くのカフェに入り、宣伝トラックに記載されていた「帝国治験データバンク」のホームページにアクセスしてみた。

　帝国治験データバンクのホームページには、新薬の開発治験から、怪しい育毛剤のモニターまで様々な種類の治験が掲載されていた。報酬は安価なもので３日間の拘束で報酬５万円や、高額なものでも1ヶ月で５０万円程度という内容が掲載されていた。詳細な内容は各研究機関のホームページにも掲載されており、今回見つけた「治験バイト募集、報酬男性300万円、女性100万円、男女一緒に応募で500万円！」は、かなりの高額報酬のようだ。

　リサは詳細ページのリンクをクリックした。
期間: 最大で70日間
場所: 都内のホテル (四つ星以上のいずれか)
条件: 交通費、滞在日、食費も全て帝国治験データバンクの負担
応募条件: 男女20名ずつの募集で、男女ペアでの応募者が優先。
対象年齢: 男女ともに20才以上35才未満。
内容: 治験薬は、陰茎と睾丸の増強剤。
と記載されている。

　男性向け新薬の治験に、女性の被験者が必要な理由は謎であるが、ショウはリサに促されて、応募フォームに２人の情報を入力した。１週間後に帝国治験データバンクからメールが届いた。「この度は当社の治験に応募頂きありがとうございます。おふたりは治験の被験者候補に選ばれました。治験は男性に対して行われ、女性はアシスタント業務を行なって頂きます。謝礼の詳細は、男女で申し込みなので、男性350万円、女性150万円、合計500万円です。治験中は自由に外出できません。また、治験が原因となり男性の性機能を失った場合や後遺障害が発生した場合は、別途損害賠償を支払います。(陰茎100-300万円。睾丸1つの場合は100万円、両睾丸の場合は300万円…等)。」とあった。リサは承諾のメールを返信した。

202x年2月、治験開始日を迎えた。
　ショウは多少の怯えを抱きつつ、治験会場である都内のホテルへリサと共に出向いた。ロビーで名前を告げると、1405室へ案内された。部屋には、治験の要項が記載されたリーフレットと、承諾書が用意されている。リーフレットの1枚目には、検査のために15:00迄に荷物を置いて、第12会議室へ来るよう書かれていた。

　ふたりは「少し、怖いね〜、でも500万円貰って２人暮らしを始めよう」「その為なら、２ヶ月頑張れるな！」と仲良く会話をして会議室へ向かった。第12会議室へ到着すると、鍵付きのアンクルバンドを左足首に装着され、男性は第10会議室、女性は第11会議室へ向かうように促された。15時になり、それぞれの会議室で治験の説明が開始された。

会議室10、男性
　本日はお集まりいただき〜というお決まりの挨拶から始まり、説明が始まった。ちょうど２０名の男性は、２０半ば〜３０前後が多いようだ。治験内容の説明が始まった。
　当社が現在開発中の陰茎増強剤であり、この新薬は長茎術の代替として期待されるものであると説明された。今回の治験では、これを服用して効果を調べるらしい。また、並行して精力剤との飲み合わせ試験も行うという。

会議室11、女性
　女性は主にアシスタント業務で募集しており、その詳細が説明された。
　女性の皆様には、男性との性行為による程度の違いを、脳波で測定させて頂きます。男女ペアで応募の方は今夜、ペアの男性とまず測定させて頂きます。なお、測定以外の時間は、男性と隔離させて頂きます。また、女性のみで応募された方は、お相手の男性はこちらで指定させて頂きますと説明された。そして、性行為を正確に測定するために、コンドームを使用しない旨の説明が行われた。その為、主催者の関連会社が製造している経口避妊薬を服用しなくてはならない。
　なお、避妊薬については事前に説明されていた模様で、女性のみで応募した被験者も驚いていない。なぜか女性の被験者は４０名程度おり、美人が多い気がするが、それはなぜであろうか。

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