サッカークラブの流行は包茎手術 2
春の暖かい日差しが、病院の待合室に差し込んでいた。桜の花びらが舞う窓の外とは対照的に、室内はどこか緊張感が漂っている。転校したばかりのハルトは、父親のケンタの隣で、借りてきた絵本をめくっていた。ケンタは、ハルトの頭を優しく撫でながら、もうすぐ呼ばれるであろう自分たちの名前をじっと待っている。
ケンタの妻であるアヤカは、ハルトが所属するサッカーチームで包茎手術が流行していることを知り、以前から気になっていたハルトの包皮の状態を思い出した。アヤカは、「ハルトには早いうちに済ませておけば、将来悩むこともないだろうし、衛生的にも良いから」と、ケンタにハルトの包茎手術を強く勧めていた。ハルトの年齢ではまだ必要ないと考える親も多いが、アヤカとケンタは、この決断がハルトのためになると信じていた。そのため、ハルトの包茎手術を予約していたのだ。
待合室でハルトが絵本をめくる姿を見ながら、アヤカはふと、隣に座る夫のケンタのことが頭をよぎった。ケンタも以前から包皮のことを気にしていたはずだ。そして、もはやこれ以上子供は望まない、と話していた**精管切除(パイプカット)のことも。「せっかくハルトが手術するなら、あなたも一緒に済ませちゃえばいいじゃない!」アヤカは待合室でケンタに小声で切り出した。「ハルトも手術することだし、あなたも前から気にしてたでしょ?それに、どうせならパイプカットもまとめてやってもらえば?」
ケンタは、妻の突然の提案に少々戸惑った。「え、俺も?今さら…」ケンタは包茎手術に抵抗があったため、断る口実として「先生の都合もあるから、急に言ったら迷惑になるだろ」とアヤカに言った。内心では、医師が急な依頼を断ってくれることを期待していたのだ。
しかし、アヤカの強い勧めに折れ、ケンタはハルトの手術と同時に自身の手術を渋々決意した。アヤカがハルトに「パパも手術することになったよ」と伝えると、ハルトはとても喜び、心強く感じた。「うん!パパも怖くないよ!」と、小さな声でケンタにそう言ったのだ。
ハルトは、母親のアヤカの強い勧めにより包茎手術を受けることになっていた。ハルトの年齢ではまだ必要ないと考える親も多いが、アヤカとケンタは、この決断がハルトのためになると信じていた。
少し離れた席では、近所に住んでいるユウキが、母親のマユミの隣で、不安そうに膝を抱えていた。マユミは、ユウキの包茎手術について、特に深い関心は持っていなかった。友人のハルトが手術を受けると聞き、「ああ、そういうものなのね」と、まるで美容院で髪を切るような、あるいは脱毛サロンに行くような感覚で捉えていたのだ。 マユミはユウキの手をそっと握り、励ますように微笑んでいる。マユミは、この機会に手術を受けさせることにしたのだ。
友情と手術の謎
「ねぇ、ハルトくん、今日、何しに来たの?」ユウキが、ハルトの座る椅子のそばにそっと寄って尋ねた。
ハルトは絵本を閉じ、ユウキに顔を向けた。「んー、パパと一緒にね、ちんちんの皮を切ってもらうんだって。」
ユウキは目を丸くした。「え?ちんちんの皮を切るの?僕もなんだ!ママがね、お兄ちゃんになるためだって言ってた!」
ハルトは少し得意げに頷いた。「そうなんだ!パパがね、サッカーするときも邪魔にならないし、お風呂で洗うのも楽になるって言ってたよ。それにね、パパもするんだよ!」
「え!ハルトくんのパパも?!」ユウキは驚いて、自分の母親であるマユミの方を見た。そして、すぐさまマユミの腕を引っ張り、小さな声で言った。「ママ!ハルトくんのパパもね、ちんちんの皮を切るんだって!」
マユミは、ユウキの言葉に一瞬目を丸くしたが、すぐにケンタの方を見て、笑顔で頷いた。「そうなんだ、すごいね!ユウキも、ハルトくんのパパみたいに、しっかりお兄さんになるんだよ。」
ユウキはまだ少し不安そうだったが、パパも一緒なら大丈夫だろうと、どこか安心した表情を見せた。二人は顔を見合わせ、不安と期待が入り混じった表情で、再びそれぞれの親の隣に戻っていった。
「パパ、今日、お医者さん、何するの?」ハルトが絵本から顔を上げて尋ねた。
ケンタは、アヤカの隣で不安そうな顔をしているハルトを見て、優しく微笑んだ。「パパはね、ハルトと同じように、ちんちんの余分な皮を切ってもらうんだよ。ハルトは、ちんちんの皮をちょっとだけ切ってもらうだけだよ。」
アヤカがハルトの頭を撫でながら言った。「そうよ、ハルト。パパもね、ハルトと同じ手術を受けるから、心強いでしょう?」
ハルトは、アヤカの言葉に大きく頷いた。パパも自分と同じ手術を受けると知って、彼の不安は和らぎ、喜びで顔を輝かせた。「うん!パパも怖くないよ!」ハルトは、小さな声でケンタにそう言ったのだ。パパも一緒なら、どんな手術だって怖くない。そう心強く感じたのだ。
「うん、もうハルトとママがいれば十分だからね。」ケンタはハルトの頭をもう一度撫でた。「ハルトは、これでちんちんがもっときれいになるし、大きくなっても困らなくなるんだよ。サッカーするときも邪魔にならないし、お風呂で洗うのも楽になるって、先生が言ってたからね。」
ハルトは、まだよく理解できていないようだったが、パパが一緒なら大丈夫だろうと、どこか安心した表情を見せた。
母親たちの会話
アヤカとマユミは、近所で顔を合わせることが多く知り合いになった。アヤカがハルトの手術のことをマユミに話したことから、今回の手術の運びとなったのだ。
ケンタがハルトに説明している間、マユミがアヤカに話しかけた。「アヤカさん、ケンタさん、ついに今日なんですね。ハルトくんも、よく頑張るね。」
アヤカが微笑んだ。「ええ、ありがとうございます。ハルトはパパと一緒だから心強いみたいです。マユミさんのところも今日でしたよね?」
マユミが頷いた。「はい、ユウキもです。ケンタさんから聞いて、うちもずっと気になっていたので、この機会にと。」マユミの口調は、どこか軽い。まるで、ちょっとした用事を済ませるかのような感覚だった。
アヤカは、少し声を潜めてマユミに話した。「実はね、夫にもついでに包茎手術を受けさせたかったんです。ハルトの手術と一緒に、この機会にまとめてやってもらおうと。それに、ずっと言っていた精管切除も一緒にやってもらうことにしたんですよ。ハルトもね、早いうちに済ませておいた方が、後々良いと思って。」
マユミは、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに納得したように頷いた。「ああ、なるほど…それは賢明なご決断ですね。子育てって本当に大変ですものね。」
ケンタは、その会話が聞こえたのか、少し顔を赤らめながらマユミの方を見た。「あの…マユミさん、実は俺も、今日、もう一つ別の手術を受けるんです。精管切除というんですけど…妻が、ついでにって…」
マユミは、ケンタの照れくさそうな様子を見て、優しく微笑んだ。「はい、アヤカさんから伺いました。これで、もう安心ですね。」
ケンタは、どこかホッとしたように、照れくさそうに頭をかいた。「はい…これで、もう安心かなと…」
手術前の準備と診察
「ケンタさん、アヤカさん、ハルトくん、どうぞ。」
看護師の声が響き、ケンタ、アヤカ、ハルトは立ち上がった。診察室は二つ並んでおり、まずケンタたちが呼ばれた。トレーの上には、見慣れない器具が並べられている。
「ハルトくん、こんにちは。怖くないからね。」医師はハルトに優しく話しかけた。医師と看護師は、本日の手術がハルトの包茎手術のみであると認識していた。
医師がケンタに説明を始めた。「ケンタさん、本日はハルトくんの包皮切除ですね。よろしいでしょうか?」
ケンタが頷こうとしたその時、アヤカが医師に尋ねた。「先生、すみません。実は、夫のケンタも、ついでに包茎手術もお願いできますか?ハルトのサッカーチームで流行ってるみたいで、この機会に一緒に…あと、以前から検討していた精管切除も、もし可能でしたら一緒に…」
医師は、一瞬驚いたような顔を見せた。看護師も同様に目を見開いた。ケンタは内心、これで医師が「急には無理ですよ」と断ってくれるだろうと期待していた。しかし、その期待はすぐに裏切られることになる。
医師はすぐに穏やかな表情に戻り、時計をちらりと確認した。「なるほど、ご主人様もですか。少々時間はかかりますが、本日は他に急ぎの予約もございませんので、大丈夫です。一緒にカットしましょう。精管切除も承知いたしました。」
**ケンタの期待に反して、手術の話はトントン拍子に進んでいった。**アヤカは安堵したように微笑んだ。「ありがとうございます!」
医師はケンタとアヤカに、それぞれの手術に関する同意書を渡した。
「こちらが同意書になります。内容をご確認いただき、ご署名をお願いいたします。」
ケンタは、少し緊張した面持ちで同意書に目を通し始めた。その隣で、ハルトが首をかしげながら、同意書を指差してアヤカに尋ねた。
「ねぇ、ママ。精管切除って、なんのこと?」
アヤカは一瞬戸惑ったが、すぐにハルトの目を見て優しい声で答えた。「えっとね、ハルト。パパがね、もうお兄ちゃんやお姉ちゃんを作らないようにするお手術なんだよ。ハルトがいるから、もう十分なんだって。」
ハルトはまだ完全に理解できていないようだったが、医師のほうを向き、きっぱりと言った。「じゃあ、僕もする!」
医師は困ったように、しかし優しくハルトに説明した。「ハルトくん、君はまだ小さいから、精管切除はできないんだよ。精管切除は、大人になってから、赤ちゃんをもう作らなくていいって決めた人がする手術なんだ。君はこれから大きくなって、たくさんのことができるようになるから、今はまだ必要ないんだよ。」
アヤカが慌ててハルトを抱きしめた。「ハルト、あなたはまだ小さいから、今はパパだけね。あなたは違うお手術だから。」
ハルトは少し不満そうだったが、「ふーん…わかった。」と、小さな声で呟いた。
ケンタは、まさかハルトがそんな質問をするとは思わず、少し気まずそうにしていたが、アヤカと医師の自然な説明に安堵した。彼は同意書にサインをし、アヤカもハルトの同意書に署名した。
「では、まずそれぞれ排尿を済ませておきましょうか。手術の前に済ませておいた方がいいですからね。」
ケンタとハルトは、二人並んで診察室の奥にあるトイレへ向かった。小便器の前で並び、ケンタは自分の局部を見つめた。今日で、これまでの形とはお別れだ。ハルトも、パパの真似をするように、小さな体で一生懸命排尿した。
診察とカットライン、そして精管切除の計画
診察台に横になったケンタとハルト。まずはハルトの番だ。医師は、ハルトの局部を消毒した後、穴の開いたサイズチャートで最適なクランプのサイズを測り、医療用マジックペンで慎重に切除ラインを描き込んでいく。
「ハルトくん、これが君のカットラインだよ。この線に沿って、余分な皮を切除するからね。これで、もっときれいになるんだよ。」医師はアヤカにも確認した。「アヤカさん、このラインでよろしいでしょうか?」
アヤカはハルトの局部に引かれたラインをじっと見つめ、少し考えるような素振りを見せた。そして、口を開いた。「先生、もう少し、あとほんの少しだけ、深くカットしていただけませんか?それと、小帯も一緒に切除してほしいのですが。」
医師は、アヤカの追加依頼に再び一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静に対応した。「なるほど、もう少し深くですね。そして小帯も。承知いたしました。ハルトくん、少しだけだけど、さらにきれいになるよ。」医師はペンを持ち直し、ハルトの局部に引かれたラインをわずかに深く修正し、小帯切除の印も加えた。修正後のハルトの管理番号は、**「H-1.8D」**となった。「D」は「Deep(深く)」を意味する。
ハルトは、医師が描き直したラインを見て、よく分からないながらも「もっとたくさん!」と無邪気に言った。
医師は、ハルトの無邪気な言葉に困ったような顔を見せたが、すぐに優しく答えた。「ハルトくん、これはね、必要な分だけを切るのが一番なんだ。あまりたくさん切りすぎると、かえって困っちゃうことがあるからね。このくらいが、ハルトくんにとって一番いいんだよ。将来、大きくなっても、ずっときれいに過ごせるようにね。」
ハルトは、医師の言葉に納得したのか、それ以上は何も言わなかった。
次にケンタの番だ。医師は、ケンタの局部を消毒し、同様にサイズチャートで最適なクランプのサイズを測り、医療用マジックペンで切除ラインを描いていく。
アヤカは、ケンタの局部に引かれたラインにも目を凝らした。そして、躊躇することなく口を開いた。「先生、夫のカットラインも、もう少し深くお願いできますか?それと、小帯も切除してほしいのですが。」
医師は、アヤカの要望に穏やかに頷いた。「ケンタさん、奥様のご要望ですが、よろしいでしょうか?より深いカットと小帯切除で、よりすっきりとした仕上がりになります。」
ケンタは、アヤカの積極的な要望に驚きながらも、ここまで来たらまな板の鯉だと思い、観念したように頷いた。「はい…お願いします…」
医師はケンタの包皮に引かれたラインをさらに深く修正し、小帯切除の印も加えた。修正後のケンタの管理番号は、**「K-2.8D」**となった。「D」は「Deep(深く)」を意味する。
「これで、ケンタさん、あなたのカットラインは、このくらいが適切だと判断しました。そして、精管切除についても説明しますね。」医師はそう言って、ケンタの股間を軽く触りながら説明を始めた。「精管は、この辺りを通っています。ごく小さな切開を加えて、精管を処理します。麻酔はしっかり効かせますので、痛みはほとんどありません。」
その時、アヤカが口を挟んだ。「先生、精管切除の他に、精巣摘出もできるんですか?」
医師は、アヤカの突然の質問に一瞬表情を変えた。しかし、すぐにプロの顔に戻り、真剣な眼差しで答えた。「はい、可能です。精巣摘出はより確実な避妊効果がありますが、ホルモンバランスが大きく崩れるため、通常はお勧めしていません。もし摘出される場合は、精管切除よりもさらに2cmほど切り開く必要があります。ケンタさん、変更したいですか?」
ケンタは、まさかそんな話が出るとは思わず、青ざめた顔でアヤカを見た。「え、聞いてないよ!ダメだよ、そんなの!」
アヤカは、ケンタの狼狽した様子を見て、くすりと笑いながら言った。「あら、冗談よ、冗談!先生も真剣に聞かないでくださいよ。」
しかし、医師の表情は真剣なままだった。「医療行為において冗談は通じません。患者さんのご希望を正確に把握することは、私たちの責務ですから。」
ケンタは、医師の言葉にさらに怯えたが、アヤカは再び「冗談ですよ」と繰り返し、ようやくその場は収まった。
ケンタとハルトのカットラインは、明らかにケンタの方が深く設定されていた。大人の包皮は子供に比べて厚みがあるため、より多くの切除が必要となる場合が多いのだ。
まず、ケンタの局部に麻酔が打たれる。続いてハルトにも麻酔が打たれた。チクリとした痛みはあったものの、すぐに感覚が薄れていく。ケンタは、ハルトの小さな顔を見て、大丈夫だと心の中で呟いた。
精管切除と包皮切除の開始(ケンタとハルト)
ケンタは、まず精管切除から開始された。医師は、ケンタの陰嚢を軽く掴み、指で精管の位置を探る。そして、小さなメスを手に取り、ごくわずかな切開を加えた。出血はほとんどない。そこから、細い鉗子を使って精管を慎重に引き出し、切断し、両端を縛り、そして電気メスで焼灼するという一連の処置が行われた。ケンタは、麻酔が効いているため痛みはなかったが、引っ張られるような鈍い感覚と、焦げ付くような微かな匂いを感じた。
「これで精管切除は終わりです。」医師は手際よく傷口を縫合し、ガーゼを当てた。
次に、ケンタの包皮切除だ。医師は、「2.8cmの金属クランプ」をケンタの包皮に慎重に装着した。ネジが締め付けられると、「キィ…キィ…」という金属音が聞こえ、包皮の先端が血の気を失い、白く変色していく。
医師は電気メスを手に取り、フットペダルを踏んだ。「ジーッ」という機械音と、肉が焼けるような独特の匂いが室内に充満する。マジックで引かれたラインに沿って、余分な包皮が切り取られていく。痛みはないが、やはり焦げ付く匂いは強烈だった。
その瞬間、隣に横たわっていたハルトが、じっとケンタの手術を見つめていた。電気メスがケンタの包皮を切り取るその瞬間、ハルトは目を輝かせ、「切れたー!」と無邪気に叫んだ。ケンタは、切り取られた自身の包皮が、ガラスのシャーレに置かれるのをぼんやりと見つめた。それは青白く、端は乱雑に焼かれてしまっていて、自分のものながらも哀れで、どこか不気味だった。急に取り返しのつかないことをしたという感覚がケンタに襲い、彼は青ざめた。アヤカもまた、安易にもっと深く切ってほしいと言ってしまったことを、少し後悔していた。
ケンタとアヤカは、罪悪感を感じ始めていた。彼らは平静を装っていたが、内心ではハルトの手術も中止させようかという葛藤が生まれていた。しかし、彼らがそう決断するよりも早く、医師はハルトの手術を準備し始めた。
いよいよハルトの番だ。ケンタとアヤカに見守られながら、医師はハルトの局部を消毒した後、マジックで描かれたラインと、「H-1.8D」という管理番号を再度確認した。
医師は「1.8cmの金属クランプ」を手に取り、ハルトの包皮に慎重に装着した。ネジがゆっくりと締め付けられると、ハルトは少し顔をしかめたが、痛みはないため、じっと耐えている。包皮の先端が白く変色していく様子を、ケンタとアヤカは固唾を飲んで見守っていた。
医師が電気メスを手に取る。その時、ケンタとアヤカは、ハルトの白く繊細な皮膚にメスが入る瞬間を前に、本当にこの選択が正しかったのか、ほんの少しだけためらいを感じた。そして、フットペダルが踏まれた。「ジーッ」という低く鋭い機械音が響き、独特の焦げ付く匂いが再び室内に広がる。ハルトの白い皮膚は徐々に焼け焦げ、貫通し、クランプのベル部分の金属が剥き出しになった。その瞬間、アヤカは「あっ」と小さく声を上げた。医師は一瞬電気メスのスイッチを止めたが、すぐに決意したように再度スイッチを踏み込んだ。ハルトは目をつぶり、じっと耐えていた。電気メスが彼の小さな包皮を焼く音と匂いは、ケンタとアヤカの胸に、拭いきれない罪悪感として残った。
そして、「ジーッ」という電気メスの音がやんだ時、医師がピンセットでつまみ上げた、薄く小さな皮膚の断片が、ガラスのシャーレへと運ばれていくのが見えた。それは、ハルトの体から切り取られた、彼の包皮だった。小帯も同時に切除されたことで、よりすっきりとした見た目になっている。
「はい、おしまい。ハルトくん、よく頑張ったね。」医師の声は優しく、ハルトの緊張を解きほぐした。
「終わった…」ケンタは、呆然とハルトの小さな局部を見つめた。白く、焼かれた端がわずかに赤みを帯びたその皮膚は、もう元には戻らない。先ほどの自分の包皮を見た時の不気味さが脳裏に焼き付き、一抹の不安がよぎった。アヤカもまた、ハルトの包皮が切り取られたことで、心にぽっかりと穴が開いたような感覚を覚えた。「これでよかったのかしら…」漠然とした後悔の念が、二人の胸を締め付けた。しかし、もう取り返しはつかない。彼らは、重い沈黙の中で、幼い息子の未来を、そして自分たちの下した決断を、複雑な思いで見つめていた。
ユウキの手術
ケンタたちの診察と手術が終わり、次にマユミとユウキが呼ばれた。
「ユウキくん、マユミさん、どうぞ。」看護師の声が響き、二人はもう一つの診察室へ。
診察室に入る前に、ユウキはトイレを済ませるよう促された。マユミは、少し寂しそうな表情でユウキの包皮を眺めながら、トイレを手伝った。もうすぐ、この幼い体が、新しい形になるのだ。ユウキは、マユミの視線を感じたのか、少しだけ恥ずかしそうに下を向いた。
診察室に入ると、まずユウキの番だ。医師は、ユウキの局部を消毒した後、穴の開いたサイズチャートで最適なクランプのサイズを測り、医療用マジックペンで慎重に切除ラインを描き込んでいく。
「ユウキくん、これが君のカットラインだよ。この線に沿って、余分な皮を切除するからね。これで、もっときれいになるんだよ。」医師はマユミにも確認した。「お母さん、このラインでよろしいでしょうか?」
マユミは頷き、「はい、お願いします。」と答えた。
医師は、ユウキの包皮にラインを引いた後、「U-1.7」と書き加えた。これはユウキのクランプサイズが1.7cmであることを示す。
麻酔の注射が打たれ、ユウキは一瞬だけ顔をしかめたが、すぐに感覚が薄れていく。
医師は「1.7cmの金属クランプ」を手に取り、ユウキの包皮に慎重に装着した。ネジがゆっくりと締め付けられると、ユウキは小さな声で「ん…」と唸ったが、痛みはないため、じっと耐えている。包皮の先端が白く変色していく様子を、マユミは固唾を飲んで見守っていた。
ユウキが手術で怯えている間も、マユミはスマホを操作していた。友人グループに「息子が今、ちんちんの手術してるの!これでサッカーももっと上手になるって」とメッセージを送ったり、手術室の様子を写真に撮ろうと試みたりしていた。息子の手術を、まるでSNSのネタのように考えているようだった。
医師は電気メスを手に取り、フットペダルを踏んだ。「ジーッ」という低く鋭い機械音が響き、独特の焦げ付く匂いが室内に広がる。ユウキは勇気を振り絞り、目を大きく開けて、自分の包皮が電気メスによって切り取られる瞬間を見届けた。彼の小さな視線は、切除された薄い皮膚の断片がガラスのシャーレへと運ばれていくのを、じっと追っていた。それは、ユウキの体から切り取られた、彼の包皮だった。
「はい、おしまい。ユウキくん、よく頑張ったね。」医師の声は優しく、ユウキの緊張を解きほぐした。
切除した包皮の説明と処置
それぞれの診察室で、医師が切除した包皮について説明を行った。
ケンタの診察室では、医師が小さなガラスのシャーレを手に取り、アヤカの前に差し出した。シャーレの中には、ハルトの包皮(管理番号:H-1.8D)と、ケンタの包皮(管理番号:K-2.8D)、そしてその横にはケンタの精管の切断片が並べられていた。
「こちらが、切除したものです。ハルトくんのものは直径約1.8cm、ケンタさんのものは直径約2.8cmほどの円形で、比較的厚みがありますね。」医師はそれぞれの断片を指し示した。「小帯も問題なく切除できました。精管もきれいに処理できました。術後の出血もほとんどなく、傷跡も時間の経過とともに目立たなくなりますからご安心ください。」
アヤカは、シャーレの中の二つの包皮片と精管の断片を、じっと見つめていた。そして、ふと口を開いた。「先生、あの…もし、もしもの話ですが…このハルトの包皮って、また元に戻すことってできますか?」
医師は、アヤカの突然の質問に一瞬言葉を詰まらせた。そして、困ったような表情を見せたが、すぐにプロの顔に戻り、慎重に言葉を選んだ。「奥様、一度切除した組織を完全に元に戻すことは、現在の医療技術では極めて困難です。特に、このように電気メスで焼灼して切除していますので…」
しかし、アヤカは医師の言葉を遮るように言った。「大丈夫です、先生。問題ありません。ただ、気になっただけですから。」アヤカの表情は、一見すると平静を装っているように見えたが、その目の奥には、拭いきれない後悔と、取り返しのつかないことをしてしまったという苦悩が垣間見えていた。医師は、そのアヤカの言葉に、再び少し困ったような表情を浮かべた。
看護師が、少し怒ったような口調で言った。「奥様、私たちは診察の際、そして同意書の説明の際にも、包茎手術は一度行うと元には戻せない、重要な判断であることを、繰り返し説明いたしましたよね?」
医師もまた、真剣な眼差しでアヤカに言った。「仰る通りです、奥様。今回の手術は、不可逆的な処置であり、熟考の上でのご判断をお願いしたはずです。今回の処置は、元に戻すことはできません。」
アヤカは、医師と看護師の言葉に、わずかに顔色を変えた。しかし、彼女はすぐに平静を取り戻し、「はい、存じております。失礼いたしました。」と答えた。
ケンタは、アヤカのその問いかけに驚き、複雑な表情で妻を見つめた。彼は、アヤカの心の中に渦巻く葛藤を感じ取っていた。
一方、ユウキの診察室では、医師が小さなガラスのシャーレを手に取り、マユミの前に差し出した。シャーレの中には、ユウキの包皮(管理番号:U-1.7)が置かれていた。
「こちらが、切除したユウキくんの包皮です。直径約1.7cmほどの円形ですね。術後の出血もほとんどなく、傷跡も時間の経過とともに目立たなくなりますからご安心ください。」
マユミは、シャーレの中の小さな包皮片をじっと見つめ、安堵のため息をついた。そして、すぐにスマホを取り出し、シャーレの中のユウキの包皮片を数枚撮影した。「ねぇ、これ、友達に送ってあげようかな?みんな、興味津々だと思うのよね!」彼女はそう独り言ちて、嬉しそうにスマホを操作していた。その時、マユミはふと、ケンタと同じように自分の夫も手術できないかという思いが頭をよぎったのだ。夫はいつも忙しく、なかなか病院に来る時間がない。せっかくここにいるのだから、もし可能なら…
看護師が、手早くそれぞれの局部にガーゼを当ててくれる。痛みはほとんどなく、ただ今までとは違う、どこか開放されたような感覚があった。
「傷跡もきれいに仕上がりますよ。」医師が優しく付け加えた。ケンタもハルトも、ユウキも、自分の体が、新しい形になったことを漠然と感じていた。それは、まるで、体に新しい「区切り」ができたような、直線的で、すっきりとした感覚だったのだ。
最後の別れと処理、そしてススムの到着と予期せぬ展開
この病院では、希望すれば自分の包皮を最後に自分で捨てるという、儀式のようなものが用意されていた。自ら包皮との別れを行うことで、新しい自分を受け入れるきっかけとするのだという。
看護師がケンタに声をかけた。「ケンタさん、切除された包皮ですが、ご自身でゴミ箱に入れますか?それとも、こちらで代わりに入れましょうか?」
ケンタは、意を決して「自分でやります」と答えた。彼は診察室の隅にある、医療廃棄物用の黄色いゴミ箱の蓋を開けた。そのゴミ箱の中には、すでにいくつかの、ケンタたちのものとよく似た、しかし少し形や大きさが異なる皮膚の断片が、静かに横たわっているのが見えた。中には「2.9」や「3.4」といった、さらに大きな管理番号がマジックで書かれた包皮片も確認できたのだ。 自分たちのものよりもはるかに大きな包皮片を見て、ケンタは、様々な年齢の男性が同じような経験をしてきたのだと、改めて実感した。
ケンタは、シャーレを傾け、まず自分の包皮と精管の断片を、ピンセットでつまみ上げ、ゴミ箱の中へと落とした。「コトン」という、小さな音が響く。
続いてハルトも、看護師に「自分で捨ててみますか?」と尋ねられたが、まだ小さな彼は少し戸惑い、ケンタの顔を見ていた。ケンタが優しく頷くと、ハルトはシャーレを受け取った。そして、ケンタと同じように、ピンセットで自分の包皮をつまみ上げ、ゴミ箱の中へと放り込んだ。「コトン」と、また一つ、小さな音がした。
ハルトは、ゴミ箱の中の包皮を興味津々で覗き込み、目を輝かせた。「わぁ!たくさんあるよ!おっきいやつも、小さいやつも!ねぇパパ、これ、パパのおちんちんの皮?」彼は、特に大きくて厚みのある包皮片(K-2.8D)を指差し、自分の包皮(H-1.8D)も指差しながら、そう言った。
その時、看護師が少し眉をひそめて、ハルトに注意した。「ハルトくん、汚いから触っちゃいけないよ。」
アヤカは、涙を浮かべ少し躊躇いながら、ハルトの小さな手を握り、ゴミ箱の中の二つの包皮に別れを告げるように手を振った。
一方、ユウキの包皮について、看護師がマユミに尋ねた。「ユウキくんの包皮ですが、ご自身でゴミ箱に入れますか?それとも、こちらで代わりに入れましょうか?」
マユミは、特に迷うことなく「ああ、お願いします」と看護師に廃棄を依頼した。彼女にとって、それは「削った足の角質や切った爪」のようなもので、特に思い入れはなかったのだ。 看護師は、手早くシャーレの中のユウキの包皮を、医療廃棄物用の黄色いゴミ箱へと入れた。「コトン」と、小さな音がした。
ケンタとハルトが会計を済ませ、マユミとユウキが会計を待っている間に、「マユミ!遅れてごめん!」という声が聞こえ、待合室のドアが開いた。マユミの夫、ススムが息を切らしながら現れたのだ。
マユミは、ススムの到着に安堵の表情を浮かべたが、すぐに意を決したようにススムの腕を掴んだ。「ススムさん、ちょうどよかった!先生に、あなたの包皮の状態も診てもらえないかしら?」
ススムは、突然の妻の言葉に目を丸くした。「え?俺の?どういうことだ?」
医師は、ススムの様子と、マユミの積極的な姿勢を見て、にこやかに言った。「すみません、本日の手術はもう難しいですが、診察はできますよ。どうぞこちらへ。」
ススムは、少し戸惑いながらも診察台に上がった。医師はススムの局部を丁寧に診察した。手早くサイズチャートで測ると、それは最大の3.4cmを示した。医師は、医療用マジックペンで切除ラインを慎重に書き込んだ。
マユミは、ススムの局部に描かれたカットラインを見て、すぐにスマホを取り出し、数枚撮影した。「あなたやっぱり包皮が多すぎるのよ」と笑った。そして、「ユウキのカットラインも撮っておけばよかったわ」と付け加えた。
「ススムさんの場合、包皮が多く余っているので、4cmほど切除します。クランプに一度には入りきらないため、二段階に分けて切除しますね。」医師はそう説明した。「それと、奥様のご希望ですが、小帯と精管も一緒に切除しますか?」
ススムは、突然の質問によく分かっていない様子でマユミの方を見た。すると、マユミはためらうことなく明るい声で「はい!」と答えたのだ。ススムは、妻の即答に驚いたが、もはや逆らうこともできなかった。ユウキは、父親が来てくれたのが嬉しくて、自分の手術について説明を始めた。
「パパ、この線で切るんだよ。」ユウキは、ススムの局部に引かれたラインを指差し、身振り手振りで説明した。「金属の機械で締め付けるんだけど、痛くないよ!そのあとね、ビーって音がする機械で削るんだ。おちんちんの皮が取れたらこの箱にポイってして終わり!怖くないよ。ユウキも泣かなかったから、パパも大丈夫だよ!」
医師は、ススムの包皮に引かれたラインを再度確認し、小帯と精管切除の印を加え、修正後のススムの管理番号は、「S-3.4+D」となった。「+D」は「Deep(深く)と精管切除」を意味する。
医師は、ユウキとススムの愛情に少し安心したようだった。
医師は、足元の黄色い医療廃棄物用ゴミ箱を覗き込んだ。いくつかの包皮片が散乱する中、時間が経って赤黒く変色していたユウキの小さな包皮片(管理番号:U-1.7)を慎重に探し出し、ピンセットでつまみ上げた。その包皮には特徴的なホクロがあり、ススムはそれがユウキの包皮だとすぐに分かった。変色した包皮の不気味さにススムは少し後悔しているようだった。
「ススムさん、こちらが先ほど切除したユウキくんの包皮です。」医師はシャーレをススムに差し出した。「彼の包皮は、このくらいの範囲を切除しました。術後の経過も良好で、お子様の成長に合わせた適切な処置を行いましたので、ご安心ください。」
医師は、ユウキに優しく問いかけた。「ユウキくん、よかったらおちんちんの皮、パパと一緒にゴミ箱にバイバイするかい?」
ユウキは、ぱっと顔を輝かせ、嬉しそうに頷いた。「うん!バイバイする!」
ススムは、シャーレを手に取り、ユウキに手渡した。ユウキは、小さなピンセットで自分の包皮をそっとつまみ上げ、ゴミ箱の蓋を少し開けて、そこへ落とした。「コトン」と、小さく乾いた音がした。それは、彼らの新しい始まりを告げる音のようだった。
「このマーカーは、しばらく消えにくいので、当分は包皮にラインと管理番号が書かれた状態で過ごしていただくことになります。ご了承ください。」医師はそう告げた。ススムは、自分の局部に書かれた黒いラインと管理番号を見て、複雑な心境になったのだ。しかし、マユミは満足げな表情で頷いていた。
「ススムさん、手術は最短で来週のユウキくんの診察のときに、一緒に切るように予約を取りましょうか?その際、改めて詳しく手術の説明をさせていただきます。」医師はそう提案し、ススムの返事を待たずに看護師に指示した。「看護師さん、ススムさんの来週の予約、取っておいてください。」
その日の夜、ハルトとユウキは、新しい自分になったことをぼんやりと感じながら、ぐっすりと眠りについた。ケンタもまた、隣で安らかに眠るハルトの寝顔を見て、今回の決断が間違っていなかったと確信した。痛みはわずかに残るが、それよりも、心の中にある新しい決意と、家族を守るという思いが、彼を強くしていたのだ。ススムは、まだ手術を受けていないものの、自分の局部に引かれたラインと管理番号を見ながら、これから訪れるであろう変化に漠然とした不安と、どこか諦めにも似た気持ちを抱いていた。
翌日から、ハルトとユウキは元気いっぱいに遊び回った。サッカーの練習でも、今までよりも動きが軽くなったような気がしたそうだ。ケンタもまた、これまでとは違う、清々しい気持ちで日々を過ごすようになった。
春の光が、新しい生活の始まりを優しく照らしている。この手術は、彼らにとって、身体的な変化だけでなく、心にも新しい区切りをもたらす、大切な経験となったのだ。