聖美女子学園
「次に入学しますと、すぐに制服に着替えていただきます。基本は学園と寮にいる間は制服で過ごしてもらいます」 「はい、わかりました。着替えの服とかズボンなどは用意しておく必要がありますか?」 「いえ、ありません。当学園既定の制服と下着をご用意いたします。ただし、ズボンではなくスカート着用となります」 杏里はさも当然というようにさりげなく百合に伝えた。美しい目元がキラリと光った。高圧的な笑みのようなものが頬にあふれた。 「ええっ、ス、スカート…ですか! 男の子なのに」 百合は驚いて聞き直した。どういうことなのか、百合には理解できなかった。
杏里の威厳ある言葉に百合はひるんだ。我が子のことが心配にもなった。この学園に預けていいものかどうか迷いを生じた。 「あと、もう一つ」 さらに杏里は百合に残酷な言葉を投げかけた。 「女子高生の恰好をするといっても、お子さんは男の子に変わりはありません。ただ、この学園の指導方針に逆らったり、言うことをきかないケースもありますので、それが続くようですと去勢という手段もとらせてもらうことも頭の片隅に置いてください」 「ええーっ! きょ、去勢ですって。そ、そんなこと」 「受け入れられないとでもおっしゃりたいのでしょう」 まるでか弱い人間を尋問するように杏里は残酷な言葉を投げかけた。
(略)
迷宮のような校舎の奥へ三人の女性とともに歩いていく。被服室とはさすがに女子高であった名残りが今も尾を曳いているのだろう。いくら母親の強い勧めとはいえ、来るべきではなかった、と圭吾は少し後悔していた。 「ここよ、入って」 裕子は「被服室」と白いプレートに書かれた部屋のドアを開いた。圭吾は部屋に入った。入るとそこには四人の少年が横一列に並んで立っていた。圭吾の方を振り返ろうともせず、四人ともじっと黙って床に視線を降ろしている。肩が心なしかかすかに震えているように圭吾には見えた。
氷室洸. 聖美女子学園 パンローリング株式会社. Kindle 版より一部抜粋.