女子トイレ
高校男子部の担任に職員室に来る様呼ばれた。
そこで聞いたのは
「乃雅、お前、子部へ行け。
お前チンチン無いだろう、何かとその方が都合が良いだろう。」
休み時間の女子トイレは、擦れるような制汗剤の匂い、女生徒たちの笑い声が、白いタイルの壁に反響していた。
一番奥の個室の鍵を、静かに下ろす。
ワンピースの裾を慎重にたくし上げ、
膨らみのない下着を膝まで落とすとき、
指先がストッキングのナイロンに引っかかって微かな摩擦音を立てた。
便座は、太腿の裏をぴたりと迎えた。
恥丘から会陰へと走る、縦一本の縫合痕がピンと張り詰める。
身体から液体を正確に排泄するため姿勢。
――ふっと、下腹部の底で頑なにしがみついていた、目に見えない結結び目が解ける。
緊張から解放された括約筋の弛緩とともに、身体の芯に溜まっていた熱い重力が、
一気に下方に引き抜かれていった。
「……っ、」
喉の奥で、かすかな吐息が漏れる。
突出した器官を持たないその場所からは、
一切の迷いなく、極めて直線的な熱い液体の束が放たれた。
それは、大陰唇や陰裂といった肉の襞に遮られることもなく、
物理的な最短距離を突き抜けて陶器の底へと吸い込まれていく。
水面に触れる落水音は、
既存の女生徒たちのそれとは明らかに異なる、
水琴窟の底に落ちるような硬質で容赦のない音を立てる。
内臓の圧迫がみるみるうちに軽くなり、空気に溶けていくような感覚。
背筋を這い上がる微かな戦慄は、紛れもない快感だった。
男の子としてのガサツな自意識も、
女の子として演じさせられている衣服の息苦しさも、
この排泄の熱量の中ではすべてが等しくリセットされていく。
ただ、自身の滑らかな「空白」を激しい熱が通り抜けていく、
その圧倒的な肉味的充足だけが、支配していた。
最後のひとしずくが会陰の皮膚を伝って落ちたとき、
指先は、ワンピースの裾を握りしめたまま、
じんわりとした確かな温もりに満たされていた。
そこにあるのは、失われた傷跡ではない。
何色にも染まらない、ただ完全に無垢な空白だった。