目覚めたら睾丸摘出①
薄暗いホテルのスイートルーム。カーテンの隙間から漏れる街のネオンが、部屋を妖しく染めている。俺――アキは、今日も女装でパパの前に座っていた。
黒いレースのブラウス、短いプリーツスカート、透けるストッキング。ウィッグのロングヘアが肩に落ち、甘い香水の匂いが漂う。鏡に映る俺は、誰が見ても女の子。男の部分なんて、隠してしまえば存在しないも同然だ。
今日のパパは、50代後半の裕福な中年男。名前は知らない。ただの金づる。バーで出会い、甘い声で誘惑してここまで連れ込んだ。パパ活の定番パターン。オヤジは俺の太ももに視線を這わせ、満足げに頷く。
「アキちゃん、本当に可愛いね。今日はたっぷりあげるよ。シャワー浴びてくるから、ゆっくり待ってて」
冗談めかした言葉に、俺は内心で嘲笑う。馬鹿なオヤジ。シャワーの水音が響き始めた瞬間、俺は素早く立ち上がった。ベッドサイドの黒革カバンに手を伸ばす。ファスナーを静かに下ろし、中を漁る。財布がすぐに見えた。カードの束、現金の厚み。心臓が激しく鼓動する。これで今月は楽できる。
指が財布に触れた瞬間――。
「何をしてるんだ、アキ?」
背後から氷のような声。振り返る間もなく、腹に重い拳がめり込んだ。柔らかい腹筋が内側から潰されるような衝撃。息が止まり、視界が白く揺れる。オヤジの顔が、怒りと狂喜で歪んでいる。俺は床に崩れ落ち、意識が急速に闇に落ちていった。最後に感じたのは、冷たい床と、オヤジの荒い息遣いだった。
……
目が覚めたとき、体は冷たい手術台の上に固定されていた。両手両足は太い革ベルトでがっちり拘束され動かせそうにない。首も金属の固定具で押さえられ、口には巨大なボールギャグが押し込まれ、顎が外れそうなほど広がっている。唾液が喉に溜まり、息苦しい。うめき声しか出せない。
視界の正面に、巨大なモニターが設置されている。そこに映っているのは――俺の下半身。白いシーツが剥がされ、股間が完全に露出。陰毛は綺麗に剃り落とされ、皮膚が白く輝いている。陰茎は恐怖で萎縮し、小さく縮こまっている。そして、玉袋が照明に照らされて、柔らかく膨らんでいる。消毒液の強い匂いが鼻を突く。
俺はパニックに陥った。体をよじろうとするが、ベルトが皮膚に食い込み、痛みが走るだけ。
「ようやく目が覚めたか、アキちゃん。……いや、本名はヒロシか」
オヤジの声が響く。白衣を着て、ゴム手袋をはめた姿で現れた。手に持っているのは、銀色に光るメス。表情は穏やかだが、目が異様な興奮で輝いている。
「俺を騙そうとした罰だ。お前みたいな女のマイガものが男の部分を全部失くして本物になりたいんだろ?
「今日は特別に願いを叶えてやるよ。局部麻酔だけだから、感覚は少しは残ってるだろ。動けない状態でオスが終わっていくのを感じてろ変態!!」
オヤジはゆっくり近づき、俺の股間に手を伸ばした。冷たいゴム手袋の指が、玉袋の皮膚に触れる。ぞわぞわとした感覚が背筋を駆け上がる。モニターにアップで映る自分の玉袋。指が皮膚をなぞり、軽く押す。柔らかい肉がへこむ様子が、リアルタイムで拡大される。
「まずは、準備からだ。皮膚を丁寧に消毒して……」
オヤジは消毒液をたっぷり含んだ綿を取り、玉袋全体を拭き始めた。冷たい液体が皮膚に染み込み、ひんやりとした刺激。指が何度も往復し、皮膚をなぞるように塗り広げる。敏感な部分が震え、俺の体が無意識に反応する。ギャグ越しに息が漏れる。
「んっ……」
「もう感じてるのか? ホントに変態だな」
オヤジの声が低く響く。次に取り出したのは、細い注射針。局部麻酔用だ。針先が玉袋の皮膚に近づき、ゆっくり刺さる。チクッとした痛みが走り、液体が注入される。左側、右側、それぞれに何度も。針が皮膚を突き刺すたび、体が跳ねる。モニターに映る針の動きが、恐怖を増幅させる。
麻酔が効き始め、下半身が少し痺れる。でも、完全に感覚が消えるわけじゃない。むしろ、痛みが鋭く残るように調整されているようだ。
「さあ、本番だ。遊んでやるよ」
オヤジはメスを手に取り、刃先を玉袋の左側に軽く当てた。冷たい金属の感触。ゆっくりと、皮膚をなぞるように滑らせる。曲線を優しくトレースする。刃が皮膚に触れるだけで、ぞくぞくとした快楽のような恐怖が走る。俺は目を見開き、モニターを見つめる。刃の光が反射し、皮膚がわずかにへこむ。
「ここを……なぞってみようか」
オヤジは囁きながら、メスを少し強く押し込んだ。皮膚が裂け、薄い赤い線が引かれる。軽い痛みが遅れてやってくる。血がにじみ出し、滴り落ちる。モニターに赤い液体が広がる様子が映る。俺のうめき声がギャグから漏れる。
「んぐぅ……!」
「もっと深く、突いてやる」
メスがさらに進む。皮膚を丁寧に切開し、玉袋の内部を露出させる。薄い膜が現れ、白い睾丸が覗く。オヤジの指がそれを優しく触る。ピンセットで掴み、ゆっくり引き出す。精索が伸び、血管が脈打っているのが見える。
オヤジの指が、むき出しになった左の睾丸に直接触れた。ゴム手袋越しでも、温かくて柔らかい感触がはっきりと伝わってくる。ピンセットではなく、今度は素手のように指先で優しく包み込むように掴み、軽く転がす。俺の体がビクッと跳ね、拘束ベルトが軋む音が部屋に響いた。
「ほら、見てみろ。アキちゃん。お前の大事な金玉が、こんなに無防備に晒されてるぞ」
オヤジはモニターのカメラを調整した。レンズがゆっくり近づき、俺の玉袋内部がさらに大きく拡大される。白く丸い睾丸の表面が、照明に照らされてつやつやと光っている。細かな血管が浮き上がり、精索がピンと張って脈打っている様子まで、克明に映し出される。息が詰まる。自分の体の一部が、こんなに無遠慮に、他人に晒されている現実が、頭を真っ白にする。
オヤジの指が睾丸を軽く押す。柔らかい肉がへこみ、すぐに元に戻る。そのたびに、鈍い圧迫感が下腹部に広がる。麻酔が効いているはずなのに、感覚はまだ鮮明だ。触られているという事実だけで、体が震え始める。膝が小刻みに震え、手首がベルトに擦れて赤くなる。
「震えてるな。怖いか? それとも……興奮してるのか?」
オヤジは嘲るように笑いながら、指を滑らせて睾丸の表面をなぞった。親指と人差し指で軽くつまみ、ゆっくり上下に動かす。まるで玩具を弄ぶように。俺の呼吸が荒くなり、ギャグの隙間から涎が糸を引いて落ちる。モニターに映る自分の睾丸が、指に弄ばれてわずかに揺れている。屈辱と恐怖が、胸の奥で渦を巻く。
オヤジは突然、手を止めた。
「今なら、まだ間に合うぞ、アキちゃん」
低い声で囁く。顔を俺のすぐ近くに寄せ、目が合う。狂気と興奮が混じった瞳。
「謝れば許してやるよ。『ごめんなさい、パパ。もう二度と騙しません。これからは女の子として尽くします』って、ちゃんと声に出して言えればな」
俺は必死に首を振ろうとした。いや、謝りたい。許してほしい。このまま終わらせてほしい。体が震え、喉が動く。ギャグ越しに必死に声を絞り出そうとする。
「ん……んぐっ……! んんっ……!!」
でも、出るのはくぐもったうめき声だけだった。唾液が泡立ち、顎から滴り落ちる。言葉にならない。声が出せない。俺の目から、涙がぽろぽろと溢れ出した。
オヤジはゆっくりと顔を離し、肩をすくめた。
「言えないのか。……はい、時間切れ」
冷たい宣告。
次の瞬間、メスが再び動き出した。オヤジは精索の根元をピンセットで固定し、メスを当てた。刃先が血管をなぞるように軽く滑り、そして――。
一気に押し込む。
「っ……!!」
激痛が爆発した。電気が走ったように下腹部が焼け、視界が白く閃く。精索が切断される瞬間、血が勢いよく噴き出し、オヤジの手袋とトレイを赤く染めた。左の睾丸が、ぷつりと離れ、トレイの上に転がる。ピンク色の肉塊が、わずかに震えながら静止した。
俺の体が激しく痙攣する。ベルトが軋み、手足が無意味に暴れる。ギャグから「んぐぅぅぅっ!!」という獣のようなうめきが漏れ、涙が止まらない。
モニターに映るのは、血まみれの左側と、まだ残った右の睾丸。空っぽになった左の玉袋の皮膚が、惨めに縮こまっている。
オヤジは血を拭き取りながら、穏やかな声で続けた。
「一つ目、終了。まだ右が残ってるぞ。アキちゃん。次はもっとゆっくり味わわせてやるからな」
指が、今度は右の睾丸に伸びる。俺の震えは止まらない。恐怖と痛みと、失われた感覚が、頭の中を埋め尽くす。
これで、俺のオスとしての部分は、もう半分しか残っていない。
オヤジの指が、再び右の睾丸を優しく包み込んだ。カメラがさらに近づき、俺の最後の男の証が、大きく映し出される。
「さあ、次はこっちだ。震えながら、ちゃんと見てろよ」
メスが、再び光を放ちながら近づいてくる――。