新入社員ヌーボーを味わう女
序章:7月の人事異動
「もう、この時期かぁ……」
冷房の効いたオフィスで、真夜(35歳)はデスクトップ画面に映し出された人事異動のリストを眺めながら、小さく息をついた。
ジメジメとした7月の空気とは裏腹に、彼女の胸のうちは毎年この季節になると奇妙な高揚感で満たされる。
独身、彼氏なし。しかし、社内では密かに恐れられ、そして若い男性社員たちの間ではある種の「栄誉ある洗礼」として囁かれる存在――それが真夜だった。
彼女の趣味、それは**「新入男子社員の青田刈り」**。
まだ社会の垢もついていない、ピュアでハリのある若い肉体を言葉巧みに誘惑し、自室のベッドへと引きずり込む。そして心も体も骨の髄まで味わい尽くし、飽きたら何事もなかったかのように切り捨てる。そんな背徳の遊びを、彼女は長年繰り返していた。
しかし、今年の真夜は少し気だるさを覚えていた。
(どの子も似たり寄ったりね。若いっていうだけで、結局は同じ。なんだか、刺激が足りないわ……)
マンネリに支配された退屈な日常。そんなある日の仕事帰り、彼女はふと立ち寄った占いブースで、奇妙な老婆と出会う。
奇妙な出会いと、禁断の果実
「おや、お嬢さん。その目はすべての快楽を味わい尽くし、退屈に飢えている目だねぇ」
占い師の老婆は、水晶玉を覗き込みながら不気味に笑った。真夜は冷めた目で鼻で笑おうとしたが、老婆の次の言葉に動きを止めた。
「あんたの退屈な性衝動に、極上の刺激を与えてやろう。これをあげるよ」
老婆が差し出したのは、薄気味悪く光る、絹のように滑らかな**「真紅の手袋」**だった。
「なんだい、これ?」
「欲深いあんたにぴったりの道具さ。その手袋をはめればね、**『相手の身体の中で一番ほしいもの』**が、形を伴って綺麗に引っこ抜けるのさ。試してみるかい?」
悪魔の囁きのような言葉に、真夜の歪んだ好奇心が刺激された。信じはしなかったが、面白半分でその手袋を受け取り、バッグの底に放り込んだ。
狩猟の夜、そして劇的な瞬間
数日後、今年のターゲットが決定した。
配属されたばかりの、あどけなさが残る大学上がりの新人・蓮(れん)。くりっとした瞳と、少し頼りなげな笑顔が、真夜の猟奇的なスイッチを入れるのに十分すぎた。
「蓮くん、書類のことでちょっと相談があるんだけど……今夜、うちに来ない?」
会社の飲み会の帰り、真夜の魔の手から逃れられる新人がいるはずもなく、蓮は素直に彼女のマンションへとついてきた。
お酒が入り、いい雰囲気になったところで、真夜は巧みに彼をベッドへと誘う。
熱を帯びた肌が重なり合い、最高潮に達したその瞬間――真夜の脳裏に、言いようのない強烈な衝動が駆け巡った。
(もっと欲しい。この子のすべてが欲しい。彼の、一番熱くて、一番誇り高いアレが、今すぐ私のものになればいいのに……!)
その時、真夜の脳裏にあの占い師の言葉が蘇った。
彼女は素早くベッドサイドのバッグに手を伸ばし、あの「真紅の手袋」を右手に滑り込ませた。
「え……?」
異変に気づいた蓮が、目を見開いて声を上げる。しかし時すでに遅い。
真夜の右手は、迷いなく蓮の最も敏感なシンボルをガッチリと掴み込んだ。
「ぐっ……ああっ! なんだこれ、痛い、痛いっ……!」
常軌を逸した冷たさと、吸い付くような熱を同時に放つ手袋。蓮が絶叫し、逃れようともがく。しかし、真夜の目は狂気に満ちて輝いていた。
「動かないで……。私に、あなたのこれをちょうだいっ!」
ずぷっ、ずるるっ……!
生々しい肉の剥離音とともに、なんと蓮のシンボルが、根元から綺麗に引き抜かれた。
出血はない。ただそこにあるのは、真夜の手の中で脈打つ、生々しい「それ」だった。
「ひっ……ああああっ! 返して、返してくれ! 僕の……僕の身体が……!」
蓮は股間を抑え、恐怖と絶望に歪んだ顔で泣き叫んだ。自分の身体から大切な何かが失われたという事実。男としての尊厳のすべてを奪われた彼は、もはやただの子どものように怯えるしかなかった。
逆転する肉欲のトポロジー
だが、その悲痛な絶叫と涙に濡れた美しい顔を見た瞬間、真夜のなかに沸き起こったのは、慈悲ではなく――耐え難いほどの、狂おしいまでの性的興奮(ムラッ)だった。
「ふふっ……泣き顔も、可愛いじゃない……」
真夜は震える蓮をその場に放置し、引き抜いたばかりの「それ」を、自分の熱く濡れた股間にそっとあてがった。
するとどうだろう。血肉の生々しさは消え失せ、それはまるで最初からそこにあったパーツかのように、真夜の身体にぴたりと、綺麗に吸着したのだ。
奇妙な結合感。自分のなかに、男の象徴が直接埋め込まれているという背徳の快楽。
すっかり「女の子の心」に変わり果て、恐怖で身体を震わせる蓮を前に、真夜のなかの欲望はもはや抑えきれなくなっていた。
「さあ、可愛い蓮くん。……今度は、私の番よ」
自分の股間に備わった異物を震わせながら、真夜は泣きじゃくる彼の上に覆いかぶさった。
理性をかなぐり捨てた獣のような営みが終わる頃、部屋にはぐったりと気絶しかけた蓮と、満ち足りた表情で煙草をふかす真夜の姿だけがあった。
終章:日常という名の狂気
すべてが終わり、朝の光が差し込む頃。
真夜はベッドで青ざめている蓮に、その「パーツ」を綺麗に洗い、優しく手渡した。
「ほら、お別れの時間よ。ちゃんと元に戻しなさい」
不思議なことに、真夜の手から離れたそれは、蓮の身体に触れた瞬間、何事もなかったかのように彼の元の場所へとスルリと収まった。蓮は自分の身体を確認すると、悪夢から逃れるように、一言も発さず逃げ出すように部屋を飛び出していった。
数日後。
会社のフロアでは、蓮は顔色を真っ青にしながらも、何事もなかったかのように真夜を避けつつ、日常を過ごしていた。もちろん、昨夜の出来事を誰かに話すことなど恐怖でできるはずもない。
真夜もまた、何食わぬ顔でデスクに向かい、キーボードを叩いていた。
ただ――。
心なしか、今年の7月は、去年までとは比べ物にならないほど刺激的で、退屈とは無縁の甘い蜜の味がした。
また来年、新しい新入社員がやってくる。
その時、彼女はまた、あの真紅の手袋をはめるのだろうか。
オフィスに響くコピー機の音を聞きながら、真夜は妖しく、そしてゾッとするような笑みを浮かべた。