中納言師時、法師の玉茎検知の事
今となっては昔のことだが、中納言師時というお方がおられた。
その御もとに、極めて黒い墨染の衣に不動袈裟を掛け、大きな木欒子の数珠を繰りながら、一人の聖法師が立ち入ってきた。
師時公が「あれは何者か」とお尋ねになると、法師は殊更に哀れっぽい声を絞り出し、「この儚き世を逃れがたく、煩悩の鎖に繋がれた苦悩の輪廻を断ち切るため、自ら男の標(あかし)を削ぎ落とし、生死の境を出でむとした聖にございます」と語り、衣の前をかき上げて見せた。
そこにはまことの男根はなく、ただ陰毛ばかりが茂っていた。
公は一見して異様に気づかれた。
師時公は、宮中や闇の回廊にひそかに配され、かつて羅切師の手によって完璧な処置を施された「本物の羅切子」たちの身体と、その独特の匂い立ちをよく知っておられたからである。
本物の羅切は、その傷痕の結び目も、男の気配を削ぎ落とした肌の艶も、まるで別様の美しさと冷ややかさを纏っている。
しかし、目の前の法師が晒した股ぐらには、羅切特有の緊張も、造形された身体の美しさも欠けていた。
「......これは怪しきことかな」
公は、法師の垂れ下がった袋の膨らみが、羅切のそれとは明らかに異なり、中に異物をひねり込んでいるような不自然な肉の歪みを見逃さなかった。「誰かある」と侍を呼び寄せ、法師を押さえつけさせた。
法師はなおも「南無阿弥陀仏」と念仏を唱え、真面目くさった顔で「さあ、いかようにも」と足を投げ出したが、公は密かに忍ばせていた確信のもと、十二三の幼き小侍を召し出し、「その股の上を、柔らかき手で撫で上げさすれ」と命じられた。
羅切を知る者ならば、真に削がれた肉体ならばどれほど撫でさすろうと、男の証が蘇るはずもないことを知っている。
だが、小侍がなめらかな手でさすり続けるうちに、法師の顔色が変わり、「今はもう......」と制そうとする。
公は「よい塩梅になってきた。もっとさすれ」と嘲笑った。
まもなく、不自然に偽装されていた毛の隙間から、松茸のごとき猛々しい男根がぬっと露わになり、腹へビターンと打ち当たった。
本物の羅切を騙り、煩悩を断った聖として施しを乞おうとした狂惑の法師の愚行に、師時公をはじめその場の者どもは声を揃えて大笑いし、見破られた法師もまた手を打って転び伏し、笑うほかなかったのである。