第一章:目覚め
白い壁、無機質な機械音、消毒液の匂い。ゆきはゆっくりと瞼を開いた。ぼんやりとした視界に映るのは、見慣れない天井と、点滴の管だった。
「ここは…?」
掠れた声で呟くと、すぐそばから聞き慣れた声が返ってきた。
「ゆきちゃん、目が覚めた?よかった…!ずっと、ゆきちゃんの名前を呼んでいたんだよ」
声の主は、親友のひまりだった。いつものように明るく微笑んでいるけれど、その瞳の奥には、どこか異様な光が宿っているように見えた。
「ひまり…?私、どうしたの?」
「ゆきちゃん、ついに女の子になれたんだよ!長年の夢が叶ったんだ!私がずっと、ゆきちゃんのそばにいたからね」
ひまりの言葉に、ゆきは自分の体に手を伸ばした。胸は膨らみ、股間には何もなかった。
「本当に…?私、女の子に…?」
「そうだよ!私が、ゆきちゃんを女の子にしたんだよ」
ひまりは嬉しそうに微笑み、ゆきの頬を撫でた。その指先は、ひどく熱く、ゆきの体を這うように動いた。
第二章:楽園
退院後、ゆきの生活は一変した。ひまりは、まるで献身的な恋人のように、ゆきの世話を焼いた。可愛い服を着せ、綺麗なメイクを施し、一日中べったりと寄り添った。
「ゆきちゃんは、世界で一番可愛い女の子だよ。私だけの、特別な女の子」
ひまりの言葉は、愛情深く、甘美だった。しかし、その愛情は、次第にゆきを束縛し、支配するようになっていった。
「ゆきちゃんは、私だけを見ていればいいんだよ。他の男の子と話したりしちゃダメだよ」
ひまりの独占欲は、日に日に強くなり、ゆきはまるで鳥籠の中の鳥のように、自由を奪われていった。
クラスでは、ひまりの奇妙な行動が目立つようになっていた。彼女は、クラスの男子たちに、性転換手術を執拗に勧めていた。
「男の子なんて、汚いよ。女の子になって、私たちと一緒に綺麗になろうよ」
ひまりの言葉に、最初は戸惑っていた男子たちも、次第に彼女の熱意に惹かれ、手術を受ける者が増えていった。
クラスは、いつしか女子校のような様相を呈し、ひまりはまるで女王のように、女の子たちを従えていた。
第三章:狂気
ある日、ゆきはひまりの部屋で、信じられない光景を目にする。部屋の隅には、ホルマリン漬けの瓶がいくつも並び、中には切断された性器が浮かんでいた。
「ひまり、これ…?」
ゆきの問いに、ひまりは恍惚とした表情で答えた。
「可愛いでしょう?みんな、女の子になるために置いていったの。私が、大切に保管してるんだ」
ひまりの言葉に、ゆきは背筋が凍り付くのを感じた。ひまりの愛情は、いつしか狂気へと変貌し、ゆきを蝕んでいた。
その夜、ゆきはひまりの部屋から逃げ出した。しかし、すぐにひまりに見つかり、連れ戻されてしまう。
「ゆきちゃん、どこへ行くの?私を置いていくなんて、許さないよ」
ひまりの瞳は、狂気に満ちていた。ゆきは、ひまりから逃れられないことを悟った。
第四章:破滅
それから、ゆきはひまりの言う通りに行動するようになった。ひまりの愛情は、ますます歪んでいき、ゆきはまるで人形のように、操り人形のように、ひまりの言いなりになるしかなかった。
クラスの女の子たちは、ひまりの狂気に気がつきながらも、見て見ぬふりをした。彼女たちは、ひまりの支配から逃れることを恐れ、ただひたすら、ひまりに媚びへつらうしかなかった。
ある日、ひまりはクラスの女の子たちを集め、奇妙な儀式を始めた。
「みんな、もっと綺麗になろう。もっと、もっと、私だけの女の子になろう」
ひまりの言葉に、女の子たちは恐怖で震えながらも、従うしかなかった。
儀式は、ひまりが用意した祭壇のような場所で始まった。祭壇には、切断された性器が並べられ、異様な雰囲気を醸し出していた。
ひまりは、女の子たちに祭壇の周りに輪になるように指示し、奇妙な呪文を唱え始めた。その声は、低く、不気味で、女の子たちの恐怖心を煽った。
呪文が終わると、ひまりは女の子たちに、祭壇に並べられた性器に触れるように指示した。女の子たちは、震える手で性器に触れ、奇妙な感覚に襲われた。
「さあ、みんなで一つになろう。私だけの、完璧な女の子になろう」
ひまりの言葉と共に、女の子たちは恍惚とした表情を浮かべ、奇妙な踊りを始めた。その踊りは、激しく、乱雑で、まるで何かに取り憑かれたようだった。
儀式の最中、ゆきはふと、窓の外に目をやった。そこには、夕焼け空が広がっていた。
「綺麗だな…」
ゆきは、生まれて初めて、美しいと感じた。しかし、その美しさは、すぐにひまりの狂気に塗りつぶされてしまう。
「ゆきちゃん、どこを見ているの?私だけを見ていればいいんだよ」
ひまりの言葉に、ゆきは絶望した。彼女は、もう二度と、この狂気から逃れることはできないのだと。
そして、儀式は、狂気の宴は、夜遅くまで続いた。
結末
儀式の後、ゆきは完全にひまりの操り人形と化し、自我を失っていた。ひまりは、満足げに微笑み、ゆきを抱きしめた。
「ゆきちゃん、これで私たちは永遠に一緒だよ」
しかし、ひまりの狂気は、次第に彼女自身をも蝕んでいった。彼女は、切断された性器に執着し、それを食べるようになった。
ある日、ひまりはクラスの女の子たちを集め、最後の儀式を始めた。
「みんな、私と一緒に、永遠の美を手に入れよう」
ひまりは、祭壇に並べられた性器を手に取り、それを口にした。女の子たちは、恐怖で震えながらも、ひまりに従い、性器を食べ始めた。
その光景は、まさに狂気の宴だった。
エピローグ
数日後、クラスの女の子たちは全員、変わり果てた姿で発見された。彼女たちは、まるで抜け殻のように、生気を失い、ただひたすら、ひまりの名前を呟いていた。
ひまりは、行方不明のままだった。彼女がどこへ行ったのか、誰も知らなかった。
しかし、町の片隅にある廃墟で、ひまりのものと思われる日記が見つかった。そこには、歪んだ愛情と狂気に満ちた、少女の独白が綴られていた。
「私は、ゆきちゃんを愛していた。誰よりも、何よりも、愛していた。だから、ゆきちゃんを私だけのものにしたかった。永遠に、私だけのものに…」
日記の最後には、こう書かれていた。
「私たちは、永遠の美を手に入れた。もう、誰にも邪魔されない。二人だけの、美しい世界で、永遠に…」
-
投稿:2025.03.21
割れた蜜月の夢 -少女たちのユートピア-
著者 たべっこ呪物 様 / アクセス 638 / ♥ 4
この作品が気に入りましたか?