「私、高野望はおちんちんなんていりません!
だから今からおちんちんを切って女の子になります!
みんな!あたしが女の子になる瞬間を見守ってください!」
全校生徒の集まる体育館で朝礼は行われる。
この朝礼で1日1人だけおちんちんの切断を許される中学校。
私立「聖触(せいしょく)学園中学校」。
おちんちん切断の順番が来た生徒は朝礼前に身を清め、その産まれたての体で登壇し、全校生徒と教職員が見守る中、宣言をし、そして…
高野望は病院で目覚めた。
そして今朝の記憶を思い出し、心から安堵した。
「良かった。ちゃんと女の子になれた。」
病院のベッドで仰向けに寝かせられながらも、下半身からは数本の管が伸び、腕には点滴針が刺さっていることは確認できた。
そして確信した。“自分はもう女の子だ”ということを。
聖触学園は男女比3:1の私立中学校だ。
ここで言う男女比とは、“生まれたときに割り当てられた性別”のことである。
しかしこれはあくまで入学当初の比率で、卒業時には男女比がなくなり、全員女子生徒となっている。というより2年生以上は全員女子である。
国家公認で、未成年しかも中学生の性転換が認められている唯一の教育機関であり、
現状では男子から女子への性転換のみを専門としている。5年後に女子から男子への性転換専門の「聖触学園 藤沢」の開校に向けてのプロジェクトも進行中だ。「藤沢」の方は“生まれたときの性別”が女性の生徒のみを受け入れる予定だ。いろいろと事情があるがここでは割愛する。
「聖触学園」は難関校である。
学力試験に加えて作文試験において各生徒の内面の在り方が厳しく審査される。でも国内において合法的に中学生で性別を変更できる唯一の方法であるため非常に倍率が高い。
また手術の安全面やその後のケアの観点からデリケートゾーンの脱毛を校則とし、美容皮膚科と業務提携して校内に脱毛サロンを構えている。本校学生には学割が適用され、定価の半額となる。
教職員は性別違和の知識に富んだ女性のみで構成されている。もちろん性転換経験者も含まれる。
作文試験において、男子受験生はおちんちん切断への思いや女の子への憧れを論じ、女子受験生は自身が女子である喜びと身体的女性化を切望する男子への思い、そんな男子たちに自分ならどのようなサポートが出来るかについてを論じる。
作文試験の配点は高く、どれだけ自己と対話し、確固たる女性像と男性器切断への好奇心、仲間への思いやりがあるかを総合的に判断される。
なぜ性転換したい男子だけの学校ではないのか?
それは“生まれた時から女子”の生徒も必要だからである。
男子として生を受けた児童は否が応でも男子としてグループ分けされてしまう。女子のグループと馴染む男子は奇異の目で見られるのは今も昔も変わらない。
つまり無事に女性になれたとしても、“どのように女性として振る舞えばいいのかわからない”生徒が多いのだ。
そこで重要になるのが女子として生を受け、男子の女性化に強い好奇心を持つ女子生徒たちだ。
彼女らは新たに女の子の仲間入りをした「女の子1年生」を温かく迎え、女子としての在り方や振る舞い方、姿勢や仕草、趣味やコーディネートなど女子としての当たり前を「女の子1年生」に伝授する役割を担う。
そして全ての男子生徒が中学1年生の段階でおちんちんを切断して女の子に性転換し、中学生活を通して普通の女子としての友情や恋愛観を磨いていくのである。
入学した男子生徒は本名とは別に、自分が名乗りたい下の名前を登録できる。
高野望も本名ではない。“健吾”という名前はいかにも男らしく少し気が滅入る名前だった。
かといっていきなり“女の子らしい”名前を名乗る勇気も無かった。だからどっちでもいける“望”にしたのだ。
結構そういう生徒は多い。“優”とか“晶”とかも人気の名前だ。
在学中の変更も可能だ。いざ性転換して女の子としての自分に自信が持てて、“もっと女の子らしい可愛い名前にしたい”と願う生徒の気持ちにも寄り添うのが本校の人気にも繋がっている。またそうやって女性名を中学生のうちから名乗っておくことで、成人後の戸籍変更時の名前登録の助けにもなるのだ。
病室でひとり、
「“の”は可愛くて好きだから残して“のどか”とかもいいなぁ。」とつぶやく。
でもせっかく入学してからみんなに“望”と呼ばれて愛着があるのに変えるのももったいない気がしてきた。
「そうだ!漢字だけ変えて“望”から“望美”にしよう!」
自分の中で名案が思いつきもうウキウキが止まらなかった。
1週間病室でオンライン授業を受け、退院した。
入学時にすでに採寸していた女子の制服に身を包み、周囲に溶け込めるようにウィッグを被った望美は天にも登る気持ちで登校した。
名前の変更申請は入院中に母親に頼んであり、すでに受理されている。
土日を挟んでこの1週間、5人の生徒がおちんちんを切った。今日の朝礼でも1人が“おちんちんいらない宣言”をして自らのおちんちんを切り落とす。
そんな日常、女子のグループに仲間入りし、ガールズトークを楽しむ毎日。
もう高野望美は完全に女の子。
自ら望んだ性を手に入れた喜びと感動。
毎回のおしっこにすら感激してしまう毎日。
女の子同士で戯れ、女子同士の距離感の近さに少しの戸惑いと安心感を得る。
彼女たちの幸せはまだ始まったばかり。
卒業までは長いようで短い。
女の子としてのこの瞬間を大事にしたいと思いながら、望美はみんなのいる教室でつい大きな声で叫んでしまった。
「あたし女の子だよ。女の子になっちゃった。おちんちん切って女の子になれて本当に幸せ!」
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投稿:2025.03.22
おちんちんいらない宣言!
著者 たべっこ呪物 様 / アクセス 617 / ♥ 7