新入国管理法
貧困を抜け出すため、俺は出稼ぎに来ただけだった。
婚約者との生活を豊かにしたかった。
ただそれだけだったんだ。
なのに、全てを失ってしまった。
俺の祖国は、貧しい。
国連に言わせてみれば、「最貧国」に分類されるらしい。
仕事はキツくて危険だが、その日暮しを支える程度の金しかもらえない。
そんなもんだから、将来を誓った相手もいたが、なかなか一緒になろうとは言えなかった。
そこで俺はブローカーに2,000ドルを支払い、豊かなこの国に出稼ぎに来たという訳だ。
しかし、飛行機の中には50歳以上のおっさんばっかりだな。俺の様な20歳そこそこの若者はいなかった。
ちょっとした居心地の悪さを感じながら人生初めての飛行機というものを楽しんだ。
入国審査に来た。
用意された偽造パスポートは、なんとか審査官の目は欺いた様だった。
そしたら、なぜか個室に連れられた。
小柄でかわいらしい審査官が何かの書類を見せながら、長々と説明してきた。
難しい英語であれこれ言われたが、なんのことかよくわからねぇ。字はもともと読めない。
"pregn...なんとか?", "sperma?", "total emasc...なんとか? "なんか言っていたがよくわからなかったので同意しといた。
チンコや金玉の絵が書いてあってエロかったな。処置の後に射精しろだって。
1,000ドル余計に払わされそうになったから、それは断っておいた。
もしかして、この国では子供が減っていると聞くから、子供を作ることが求められているのか?この国の女は色白で華奢な感じがして悪くない。
現地妻がいてもいいか、この審査官もなかなか可愛いな。
そんなことを考えていたら、白衣を着た医者と、なぜか銃を持った屈強な警備員が入ってきた。
「こちらの処置台にどうぞ」
頑丈な感じの椅子に移らされたところで、医者が点滴を採った。入国にあたっての抗生剤か栄養剤か何かか?
「では、鎮静及び鎮痛を行います。」
「ん?どういうことだ?」
そう言った瞬間、急に意識がぼーっとしてきた。
なぜかズボンを脱がされていく。
「やめて、くれ、、」
抵抗をしたが警備員に押さえつけられ手足は固定された。
「大丈夫ですよ、安心してください。麻酔をするので、痛みは最初の注射だけですからね。」
こわい、こわい、こわい、何が、おきているんだ、、?どうなるん、だ、、?
「では今から精巣に針を差しますね。」
手際よく、医者が右の玉に針を刺していく。確かに痛みはない。次に左の玉にも針を刺された。
俺の大事な玉に、何を、してくれているん、だ、、?
「では今から加熱していきますね。10分程度です。股間がじんわり温かくなるくらいですから。」
なんか、股間があたたかい、、これになんの意味があるんだ、、
「あと5分くらいで造精機能は完全に喪失します。」
ん?今なんて言った、、?造精機能がどうたらって、どう言うことだ?
「はい、処置は終了しました。造精機能はほぼ喪失しています。最後に、エタノールを注入して処置を終了します。」
ちょっと玉が痛い、、あ、、
俺の意識はそこで途絶えた。
ものの数分で目が覚めた。
医者が点滴を抜いていた。
「さっきの造精機能喪失って、どういうことだ?俺に何をした?」
「ご説明があったかと思いますが、入国にあたって、造精機能の放棄が義務付けられています。」
曰く、近年、出稼ぎに来た男性労働者がこの国の女性と婚姻し、子供を作ることで定住する事例が増加傾向となっていると。そこで、出稼ぎのために入国する男性については、造精機能の放棄が義務付けられた。
また、強姦件数も増えているため、陰茎を併せて放棄することを義務付けるという議論もあったが、人権を考慮して任意の上、報奨金を支払った上での陰茎除去を提案することになったらしい。さっきの1,000ドルと言うのは、陰茎放棄の際の報奨金だったみたいだ。
つまり、俺は子供を作れなくなったと言うことか?
「ふざけるな!俺は金を稼げると聞いてきたのに、なんで玉をダメにされなくちゃなんねえんだ!」
医者につかみかかったところで、屈強な警備員取り押さえられた。
「俺の玉を元に戻せ!祖国であいつと結婚して子供を作るんだ!ふざけんなよ!」
「同意を得たと聞いていましたが、ご理解いただいていなかったんですね。通常であれば処置後、数回の射精をしてもらい精子の混入率が基準値以下となれば入国となりますが、入国を取りやめとなれば、射精処置は免除することができますよ」医者は申し訳なさそうに説明した。
「いずれにせよこいつは公務執行妨害で強制送還だ。先生、とりあえず下がって。」
俺は有無を言わさず、留置所に押し込まれることになった。
結局、数日勾留された後、祖国に強制送還となった。
帰国してすぐ医者に相談したが、精巣はすでに固く萎縮して、機能を失っているらしい。
勾留期間にセンズリをこいたもんだから、受精可能な精子はほとんど残っていなかったそうだ。
許せねぇ。
ブローカーを呼び出して、ボコボコに殴ってやろうとしたが、現地のギャングに囲まれてしまった。
逆にボコボコにされ、挙句、チンコを切断され、首を切られそうになった所を警察に保護された。
なんとか一命は取り留めたが、イチモツさえも失ってしまった。
婚約者も、どっかに行っちまった。
そっか、出稼ぎにおっさんばっかだったのは、家族を養うために玉を失ってもいい奴らばかりだったんだな。
もう何も残っていない俺は病院のベッドで、明日の医療費も払えない状況に絶望した。