オートガイネフィリアのМ医師2
女医はメスを軽く回し、まるで指揮者のように女たちのざわめきを静めた。
聞こえる? まだ意識ははっきりしてるみたいね。
彼女は彼の頬を軽く叩く。
その指先は驚くほど冷たい。
周囲の女たちが顔を寄せてくる。
見覚えのある顔ばかりだった。
かつての恋人。飲み会で知り合った女性。
浮気相手など。その視線には、共通したものがあった。軽蔑。憐れみ。好奇心。
そして、どこか楽しげな期待。
一人の女が笑いながら言った。
「ほんと、この人ってさ」
「いつも女を下に見てるくせに——」
別の女が続ける。
「女好きよね」
くすくすと笑いが広がる。
女医が彼の耳元に顔を近づけた。
「大丈夫」
「あなたの**大好きな“女子”**と同じようにしてあげるわ」
メスの刃先が、彼の視界の端でゆっくりと揺れる。
「これからはね」
彼女は、楽しそうに言った。
「あなたも“女子”だから」
女たちの笑いが一斉に弾けた。
「そうよね」
「女子なんだから」
「男子トイレなんて、もう無理ね」
誰かが言った。
「これからは女子トイレしか使えないわよ」
別の女が続ける。
「安心して。私たちが使い方、ちゃんと教えてあげる」
彼は声を出そうとする。
だが喉からはかすかな息しか漏れない。
女医はその様子を観察するように見つめていた。
「怖い?」
彼女は微笑む。
「でもね」
メスが静かに持ち上がる。
「あなた、昔こう言ったの覚えてる?」
彼女の声は優しかった。
「“女は楽そうでいいよな、媚びてりゃいいんだしと”」
女たちの表情が変わる。
笑顔の奥に、長い時間蓄積された感情が滲む。
「だから」
女医は静かに言った。
「あなたにも、代わりの人生を用意してあげる」
手術灯の光が強くなる。
彼の視界が白く染まる。
女医の声だけが、はっきり響いた。
「さあ」
「手術、始めましょうか」
そして女たちが一斉に近づいてきた。
——だがその瞬間、
彼の頭の奥に、もう一つの疑問が浮かぶ。
なぜ、この女医が“主導者”なのか。
彼女は、ただの浮気相手だったはずだ。
それなのに——
まるでこの場を ずっと前から計画していた かのように、
落ち着いている。
女医は彼の目を見つめ、
小さく囁いた。
「やっとこの時が来たわね。嬉しいでしょ。」
その言葉に、
周囲の女たちが静かにうなずいた。
次の瞬間——
彼はようやく気づく。
この“手術”で、自分がどうされてしまうかを。