オートガイネフィリアのМ医師3
女医はメスを持ったまま、しばらく彼を見つめていた。
周囲の女たちの笑いが少しずつ静まる。
彼女の表情だけが、さっきまでと違っていた。
楽しげな仮面の奥に、別の感情が浮かんでいる。
「ねえ」
女医は静かに言った。
「私がどうしてここにいると思う?」
彼は必死に声を出そうとする。
だが、やはり言葉にならない。
女医は肩をすくめた。
「まあ、覚えてないでしょうね」
彼女はゆっくり歩き、手術台の横に立つ。
白衣のポケットから、薄い布を取り出した。
レース。
淡い色の女性用下着だった。
女たちがまた小さく笑う。
「懐かしい?」
女医はそれを彼の目の前で揺らした。
「あなた、こういうの好きだったわよね」
彼の背筋が凍る。
記憶がよみがえる。
夜の部屋。
カーテンを閉めたアパート。
彼女だけに見せていた秘密。
「覚えてる?」
女医の声は穏やかだった。
これを着けて、私にフェラさせるの好きだったよね。根本にハサミあててもらうのも好きだったよね、切って下さいとか、笑っちゃったけど。
女たちの何人かが顔を見合わせる、ホントМだよねと。
女医は続けた。
「私が下着をつけているのを見るのが好きなんじゃなくて」
「自分が着るのが好きだった」
周囲の女たちがざわつく。
「でもね」
女医は彼を見下ろす。
「私は付き合った」
「あなたの趣味も、遊びも」
彼女の声が、少しだけ低くなる。
「それでも私は一緒にいた」
一瞬、沈黙。
そして彼女は微笑んだ。
「なのに」
「ある日、急に終わり」
彼女は彼の顔に近づいた。
「“飽きた”って」
女医は静かに言った。
「大好きな女性下着が似合うようにしてあげる」
メスの刃が光る。
「中途半端じゃなくてね」
「ちゃんと」
「一生似合うように」
女たちの誰かが言った。
「優しいじゃない」
別の女が続ける。
「夢を叶えてあげるんだもの」
女医はうなずく。
「そう」
「私は優しいの」
彼の耳元で囁く。
「あなたが大好きだった“女子の世界”」
「これからは、外から眺めるんじゃなくて」
彼女はメスを構えた。
「中で生きるのよ」
女たちの笑いが、再び広がる。
手術灯の光が強くなる。
彼の視界が白く揺れる。
そして女医は最後に言った。
「安心して」
「似合うように——」
「丁寧に作り直してあげるから」
メスがゆっくりと下ろされていこうとしていた。そこで、清楚な雰囲気の女性が発言。
「彼って、こんな状況でも興奮してない?」
「看護婦さんたちにも診てほしがってるわ」女医に促された若い看護婦はメジャーで測定→「17.5センチです。亀頭直下に、全周性に雑な縫い目があります…何かの手術跡でしょうか。ホントにはち切れそうで、苦しそう、最後だから、吐精させてもいいですか?」。
女医は冷たく言った。
「吐精の必要はないわ。パンパンに精子が充満した睾丸ごと取っちゃうんだから」と。