源判官九郎義経公の御子を身ごもった静御前は、出産を間近に控えていた。しかし気になるのは、男の子だった場合 鎌倉殿が殺してしまうのではないかということである。御前と 付の産婆2人は、女の子であれと毎日願を掛けるのを欠かさなかった。
出産数日前、静御前は苦しげな息をしながら2人の産婆に言った。
「もしも男であったらば、鎌倉殿の御家来が見える前に・・・・玉を抜いてやって呉れませぬか。そ れで何とか命乞いをしてみたい。なんとしても九郎どのの御子を育てたいのです」
「・・・・わかりました。しかし御前様、神明を疑ってはなりませぬ。疑いさえせねば、必ずや、お なごの子であらせられましょう」
しかし出産の日、ようやくに産まれた子は、南無三、男の子であった。
「どうじゃ、女の子か・・・?」
かすれた声であえぎながら御前が尋ねる。
産婆は涙ながらに、
「男の子でございます・・・。ご立派な若様でございまする・・・」
まだ臍帯のつながったままの胎児を 御前の胸の上に乗せた。
御前は子供を強く、しかし優しく抱きしめ、もう一度名残惜しげに眺めてから 胸の上で仰向けに抱いた。頬には涙が光っていた。
「頼みます・・・」
「御前様、お許しを・・・」
小刀を袋に当て、ひとおもいに半分ほどを切り開くと、てらてらと血に濡れた 白く美しい精珠がこぼれだす。産婆の1人がそれをつまみ、もう1人が 涙でぼやけた視野の中で切り離した。
そのときカラリと障子が開き、家来3人を伴って頼朝公自らが現れた。
「産まれたか。どうじゃ」
「・・・男か。やむを得ぬな、・・殺せ」
家来の1人が進み出た。
産婆は平伏し、切り離した珠をささげ持って懇願する。
「お待ちくだされ。この御子は、へその緒を切って母上様から離れるよりも早く、・・・まだ母上様 と離れておいででないのに 精珠を失われたのでございます。女として育て、尼寺に入れるという ことで ご勘弁くださいませぬか」
「ならぬ。男は男じゃ。」
「後生でございます。女として相応しからぬときは、命をお断ち下さって結構でございますれば、な にとぞ・・・」
静御前も、枕から頭をもたげて言う。
依然として助命を肯んずる気配はない頼朝公だが、さすがに困った御様子。
そこへ、話を聞きつけた政子が入ってきた。
「またお前か。もう言うことは聞けぬぞ。男であったら殺すといってあったのだからな」
「しかしこの御子は、もはや男ではないではありませぬか。唐の国から伝え聞いたところによれば 珠を抜かれたものは男として育たぬとか・・・。わたくしにお預けいただきとう存じまする。尼寺 に入れるよりも、女官として使ったほうが 育ち振りがよくわかるというもの」
「それによいのですか、あの件のこともございますが・・・」
どういうわけか、頼朝公はぎくりとした様子だったと伝えられている。
「・・・わかった、もうよい。よきにはからえ!」
それを聞いて安心したかのように、泣き声があがった。御名は珠子姫と決まった。
こうして姫は、政子付きの女官候補生として屋敷にとどまることになった。
静御前は姫が6歳になったのを契機に引き離され、尼寺に入った。
しかし御年10歳の頃から姫の素行が乱れ始めた。立って排尿するとか、他の少女とレズ行為に耽るということが始まったのであった。
心配した母御前は、馬尿から製したという唐わたりの秘薬を贈った。徐々にではあったが、2年余りも経つと 容貌・体つき共に女らしくなり、類まれな美少女になっていった。
しかし、肝心の素行は変わる気配がない。
「このままでは、九郎殿のたった一人の御子が殺されてしまう」
ついに決意した母御前は、口実を設けて姫を 自らの尼寺に呼び寄せた。
女官総出で姫を戸板に縛りつけ、服を脱がす。
「これほどにおなごの体になっていながら、なぜ無茶なまねばかりするのか・・・」
皆あまりの美しさに息を呑んだが、ただ、局部に ぴこんと可愛らしく突きでたものがあった。
猿轡をかませ、姫と歳の近い女童5人で 痛みを和らげるために全身をさすってやる。
女童の一人で、姫とも面識のある八重が、姫の小さな突起を自らの体内に入れ、腰を少し浮かして 根元に刃を当てた。
ひと思いに引いたとたん、姫の体がビクンと脈打ち、うめき声がもれた。しかし 3分の2ほどしか切れておらず、急いでもう一度引いて切り離した。
そのまま姫の臀部は 絹地でぐるぐる巻きにされ、その上から焼酎が振りかけられた。八重も、姫の体の一部を宿したままの局部に 布を巻かれた。
姫は縄を解いて横たえられ、同じく血のにじんだ布を巻かれた八重が脇に寝ていたわる。
「これで姫も、おなごとして生きてくれるじゃろう・・」
ところが出血が止まらず、夜半に意識を失った姫は、そのまま亡くなってしまった。美しい少女そのままの様子であったといい、その墓は今も某所に残っている。
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投稿:2007.03.02
姫君の悲話
著者 ベンツピレン 様 / アクセス 14042 / ♥ 7