(何でこんなオークションに参加してしまったんだろう・・・)
僕は安易に、そして勢いに任せて、性器のオークションに参加したことを悔やんだ。
これは、ある日、僕の元に一通のメールが届いたことから始まった物語である。
「性器のオークションに参加しませんか?」
いかにも怪しい件名のこのメールは、普段なら、開かれずゴミ箱行きとなっていただろう。
だが、その時の僕の精神状態は、今思い起こしてみても普通ではなかったのだ。
この奇妙なメールが届く数日前、僕はつきあっていた彼女と別れていた。
彼女の名前は美佐。
彼女は、自分自身には甘いというか、自由奔放というか・・・、でも僕に対しては、とてもやきもち焼きで、一言でいえばわがままな女性だった。
そのわがままぶりには、僕も、もてあまし気味だったが、抜群のルックスとプロポーションを持つ彼女に惹かれ、僕は彼女の虜になっていた。
彼女と別れて数日・・・、あらためて彼女と体をあわせた時間に未練を感じている自分がいることを実感した。
彼女の代わりになる女性などいない。彼女のぬくもりを思い出すと眠れない。
あの最高のひとときを、もう過ごすことなどできないのに、欲求だけは途切れることなく湧いてくる。
僕は、欲求の根源を憎んだ。こんなものがなければ、きっと、もっと気持ちが楽になれるのに・・・
そう思いこんでいたそんなとき、そのメールは届いたのだ。
メールには、「性器のオークション開催!性器の提供者募集」とあった。
(もう、こんな思いから解放されたい)
その思いから、僕は「睾丸を提供します」と返信してしまった・・・
返信は、すぐに来た
そこには、待ち合わせの日時、場所が指定してあり、そこから連絡先に連絡するよう書かれている。
僕は、開催者から指定された時間に待ち合わせ場所に行き、連絡を取った。
しばらくすると迎えのものが現れ、会場まで連れて行かれた。
会場につくと、控え室に通され、今後のスケジュールが説明された。
その日は、5人がオークションにかけられ、僕は5人目だということ。
現在3人が終了し、これから4人目のオークションが始まるところで、僕の出番は約一時間後になるということ。などが説明された。
僕は、これから始まる4人目のオークションを見学したいと申し出たが、提供者の見学は許されないと言われた。
そして、出番の前に係員が呼びにくるので、それまでにシャワーを浴びて、ガウンに着替えておくように指示された。
僕は指示されたとおり、シャワーで体を清め、ガウンに着替えて出番を待った。
時間になって、係員に誘導されて別室に行くと、ベットのような台が用意されていて、その上に全裸で仰向けに寝るよう指示された。
ガウンを脱ぎ全裸で台に寝ると、両手・両足・腰回りをベルトで固定された。また声を出せないように口はふさがれ、股間にはタオルがおかれた。
完全なまな板の鯉状態だ。何をされても逃げようがない。ここで、少し不安が頭をよぎった。
台に固定された僕は、そのまま舞台の袖まで運ばれた。係員は舞台中央の司会者に合図を送る。
ここで舞台の司会者から「それでは今日最後の商品です。どうぞ」と紹介され、会場の拍手とともに、僕は舞台の中央に運ばれた。
観客席は、照明が薄暗く舞台からはよく見えない。大勢の観客がいるようだが、様子はよくわからなかった。
ここで、僕にカメラが近づいてきた。舞台上には、映画館のような大きなスクリーンがある。
そのスクリーンに、台に固定された僕が映し出された。会場から拍手がおこる。
続いて、カメラは僕の顔に近づいてくる。スクリーンに顔がアップになる。
女性客のざわめく声が聞こえる。観客席の一番前にいる女性の話し声が聞こえる。
「なんで、こんなイケメンが、オークションに出てるの?」など話しているのが聞こえた。
司会者:「さてそれでは、最後の商品はこちらです」
僕の股間のタオルがはぎ取られ、カメラが僕の股間をアップでうつす。
スクリーンには僕の性器がアップになった。
僕の性器は、小さいわけではないが仮性包茎だ。
会場から歓声とともに「包茎だ」という声があがる。
僕:(はずかしい・・・。こんなことなら剥いておけばよかった)
司:「はい、本日最後の商品は、こちらの睾丸2つです。この包茎のペニスは商品ではありませんよ」
会場から笑い声が聞こえる。
司:「それでは、オークションをはじめます。まず、一万円からスタートです・・・」
その司会者の言葉から、オークションが始まった。
ここで会場の照明が明るくなった。会場の様子が初めてわかる。
僕:(こんなにたくさんいるんだ)
会場には300人くらいだろうか、老若男女、金持ちそうな人から、そうでなさそうな人まで、様々な人が僕を(性器を?)見つめている。
僕:(え?女だけじゃないんだ。こんなにたくさん男がいるの?)
会場の男女比は半々、もしくは男の方が多いくらいだった。睾丸なんて欲しがるのは、女性ばかりだと思っていた僕は、会場を見て驚いた。
僕:(そうか・・・この中の誰が落札するか、わからないんだ・・・)
そんな当たり前のことを、僕は、初めて、この場で考えた。落札するのは女性だと思いこんでいたのだ。少し恐怖感じて、後悔の念が頭をよぎった。
そんな僕の心配をよそに、オークションはどんどん進行していく。値段は着々をと上がっていく。
10万円を超えたころから、二人の女性の一騎打ちムードとなってきた。
一人は、20代と思われる若い女性で、ルックスは普通だが、何でこんな所にいるんだろうと考えてしまうような、普通ぽい好感が持てるタイプ。
もう一人は、50才は超えている感じのおばさんで、太めで、厚化粧で、いかにもお金持ちという感じのタイプだった。
幸い落札しそうなのは、女性に絞られた。
しかし、正直いって、おばさんの方はちょっと遠慮して欲しい。
僕は心の中で、若い女性の方が、落札してくれるよう祈った。
しかし、この二人は、見た目通りの経済力だったらしい。
おばさんの50万の声を聞き、若い女性からのコールは完全に止まってしまった。
僕:(僕の睾丸は・・・僕の大事な男の象徴は、こんなおばさんに落札されるのか・・・おばさんのものになってしまうのか・・・こんなオークションに参加するなんて、なんて馬鹿なことをしたんだろう・・・)
おばさんに落札されてしまう。そんな現実を直視して、僕は、その時、オークションに参加したことを完全に後悔していた。
続く・・・
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投稿:2009.03.27
恐怖 〜性器のオークションに参加して〜 前編
著者 タマタマ 様 / アクセス 22380 / ♥ 17