「まぁ、ぴったりね。よく似合っているわ、晶くん」
晶がドアを開けて練習室に入ってくると、ポニーテールの女性、穂積優花先生はそう言った。
晶はもじもじしながら立っている。バレエ用のレオタードに白いタイツ。
タイツに下半身を覆われている感覚が奇妙でむずむずする。
「それじゃあ、ストレッチから始めましょう」
晶は床に座り、開脚をすることになった。しかし、今までバレエなんてやったこともない晶は
180度開脚をすることができない。
「う……先生、これ以上できません……」
苦しそうな晶を見た先生は
「じゃあ、先生が手伝ってあげるわ」
と言って、晶の後ろに座った。晶の股を左手で抱え、右脚をもう片方の腕で抱え込む。
先生の腕がちんちんに触れたことにドキっとする間もなく、先生は思い切り晶の右脚を引っ張った。
ゴキリと音がして、股に激痛が走る。
「うわああああ!」
あまりの痛さに先生の手から逃れようとするが、右足に力が入らない。
「あ、あ、どうなってるの?」
パニックになっている晶に向かって、先生は平然と言い放った。
「大丈夫よ、股関節を外しただけだから」
「え?」
晶が問い返す間もなく、今度は左脚がボキっと音を立てる。
「ああああああ!」
「これで両側とも外れたわ」
そう言って晶を開放したが、晶は動くことができなかった。両脚が重い。
全く力を入れることができない。まるで自分の足じゃないみたいだ。
「う、あ、なんで」
「あなた、いつもこの教室のこと見てるでしょ」
「!」
晶は心臓を掴まれたような気がした。低い声で先生は続ける。
「あなたは気づかれていないつもりだったと思うけど、こっちはちゃんと分っていたのよ。
女の子は男の子の視線に敏感なの。コーフンしながらずっーとこっちを見てる子なんて
すぐわかっちゃうわ。」
「……」
晶は背筋が寒くなった。そうか、バレてたんだ。
突然、先生は教室の扉に向かって声をかけた。
「あなたたち、入っていらっしゃい」
すると、扉が開いて、数人の女の子が入ってきた。晶と同学年かそれより上の子たちだろうか。
皆レオタードにタイツ姿だ。
女の子たちはタイツに包まれた足をするすると滑らせてあっという間に晶の周りを取り囲んだ。
皆可愛らしい顔をしているが、今は険しい表情が浮かんでいた。
「この子が、覗きをしてたんですか?」
少し栗色がかかった髪の女の子が口を開いた。
「ええ、そうよ」
先生が答えると、女の子たちは口々に「やだぁ」「変態」と言った。
晶はうつむいた。
「そうね、覗きなんて卑怯なことをやっているんですもの。将来きっとろくな子にならないわ。
大きくなったら犯罪者になっちゃうかもしれない」
たまらず晶は声を上げる。
「あの、ごめんなさい!悪いことしたのは謝ります。もうこれからはしませんから」
「でも、今までは見てたんじゃない!」
「そうよ!それに、きっとまた覗くに決まってるわ!」
四方から晶を責める声が降り注ぐ。
「うぅ、ごめんなさい、ごめんなさい……」
思わず晶は涙声になっていた。あぁ、どうしてこんなことしてしまったんだろう、と後悔していた。
「穂積先生、この子どうするんですか?」
今度は晶の真後ろにいたボブカットの女の子が尋ねる。
「当然、お仕置きをするのよ」
「え、お仕置き!?」
晶は驚いた。
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投稿:2009.06.07
体験レッスン〜2〜
著者 EGUMI 様 / アクセス 13101 / ♥ 5