2000X年、国は女性の旗と呼ばれる政治団体によって運営されていた。男性社会から女性社会に変わりつつある中で彼女たちは次々と女性に有利になる法律を創り上げていった。これにより不満を持った男性が急増し、中には暴力に出るもの達もいた。その中でも一番彼女達を悩ませたのが痴漢犯罪の多発であった。女性が有利といえどもちろんおとなしい女性も多く何も言えないことをいい事に日頃のはけ口をぶつけようとする痴漢犯罪者達に彼女達は激しい憤りを覚えた。
時の女性の旗の党首、天上沙羅はこの状況を打破する為、ある法案を創り上げた。それが特別痴漢犯罪対策措置法、通称「Tゲーム法」である。
武は目を覚ました。 体がまだ重く、なかなか起き上がれない。多分数時間前だったように思う。帰宅途中の電車の中、いきなり前の女性が痴漢と叫び出し、自分を指差したのだ。訳も分からず係員によって駅のホームへ引きずりだされ、そこから、そこからの記憶がない、いったいここはどこなんだろう。しばらくして目が慣れてきたせいか、武はこの場所に自分以外にも人がいることに気付いた。それもたくさんいることに、しかも全員男性だ。さらにおかしな事に気がついた。そこにいる男性全員が両手に手錠をはめている。まさか・・・武は視線を自分の両手に移した。もちろんそこにはきっちりと手錠がかけられていた。なんだよこれ!
しばらくしてそこにいる男達が起き始め、辺りがざわつきはじめた。男達を見るとサラリーマン風の人や学生風と種類はさまざまだ。武はさらに目線を先にむけた。自分の前は段になっていて、その先に1本のマイクが置いてある。ちょっとした野外ステージか?いや野外ではない、どうやらどこかの学校の講堂らしかった。いったいなんなんだ!
「おい、どうなってんだよ!なんだここ?」「今何時なんだ!」俺たちどうなるんだよ!」
場内ではあちこちから男たちの声が聞こえた。それが静まったのは一人の女性が登場した時だった。その風貌にはおもわず目を奪われるものがあった。女は黒いライダースーツに身をつつんでいた。胸元にはチャックがあり、胸元ぎりぎりまで空けている。それを見て誰かがこう言った。「SMの女王さまってか?」女はそれには答えず、にこりと笑い、武の前にあるステージへとのぼっていった。
「みなさん、こんにちは、私が今回のあなた達の担当をさせていただきます。川島静です。、ではさっそくルール説明を行います。」そう言って彼女はてにもっていた大きめのファイルを手にした。その時、「おい、なんのことか分からねえ、ちゃんと説明しやがれ!」そう言って男の中の一人が叫んだ。それに合わせて、次々と男達が声を発しはじめた。再び場内はざわつきはじめた、そんな中、武は声を発することができなかった。女の顔に釘付けになっていた。女は笑っていた、その笑みはさわやかなものではなく、どこか気味が悪くぞっとさせるものがあった。
「仕方ありませんね。では説明しましょう。」ざわめきがやむのを待って女はしゃべりだした。
「みなさんは特別痴漢犯罪対策措置法をご存知ですよね。我々政府が今年に制定した新しい法律です。この法律の基本理念はか弱い女性を痴漢の被害にあわせないようにすることにあります。」
ここまで聞いていた武は奇妙なことに気が付いた。さっきまで声を発していた男達が全員黙ってしまったのだ、なぜ?まさか・・・
そのまさかだった。女は続ける。
「そう、みなさんはこの新しい法律の最初の参加者となるべく集められた痴漢犯罪者なのです。、法律の内容はいたって簡単、毎年、痴漢歴のある人間、現行犯も含めランダムに40人選抜します。そして選ばれた40人にとあるゲームに挑戦してもらいます、うまくクリアできれば罪も帳消し、家に帰れます。」
家に帰れるという部分で男達には安堵の表情を浮かべるものもいた。しかし彼らは後に気付く事になる、帰れるどころか生きてでられるかも分からない世界に放り込まれてしまったという事を。
「それではルールを説明しましょう。」そう言って女はファイルを開く。
「ではこの法律に基づき実施される特別痴漢犯罪者対策実験、通称Tゲームについて説明します。ここは我々が廃校の講堂を改造してつくった実験本部エリアです。みなさんはここから廃校の向かいにある地下鉄の駅へ行き電車で終点まで行ってもらいます。電車の中も駅周辺も人はいません。我々政府がゲームの為にかしきってます。そして終着駅に隣接するファンタジータワーの最上階にゴールエリアを設けてあります。そこまで行けばゴールです。みなさんは無罪放免、家に帰れます。」
「なんだよ、単なるウォークラリーかよ。」後で誰かがつぶやいた。その声を聞き取ったのか女は
「いま私語をしたあなた、ちょっと出てきてもらえます?」そういって胸元のチャックを少しさげた。
「おれだよ。」そういって後から男が飛び出してきた。女はにこりと笑う。男は何を勘違いしたのかにやけ顔になった。勢い込んでステージにあがり女の前に立つ。女はその男にだけ見せるように自分の胸元をひろげた。白い乳房が露わになる。おお、男は感嘆の声をあげた。その時である。「ザクッ!」
一同の耳にレモンを包丁で切れ目を入れるような音がきこえた。一瞬男の目が止まった、視線の先で女が笑っていた、男」の股間から大量の血が噴出し男はわめきながらステージをよろよろと歩き回る。場内は騒然となった。男の股間は血まみれでそこにあるペニスも玉も原型をとどめていない、ミンチのように切り刻まれたようだ。狂う男をみながら女は片足をあげて見せた。武はぞっとした。女の膝からあしのつま先まで1本のラインがはいっていたが、その線は刃物になっていてそこには血にまみれた肉片がこびりついていたのだ。あの刃に覆われた足せ股間を蹴り上げられたのか。しばらくして男はステージから落ち2秒後に死んだ。言葉をのんだ男達を見回し女はこう付け加えた。
「このようにみなさんが行くエリアには複数の去勢者がいます。つかまったらこうなりますので気をつけてください。ちなみに私がゲームのスタートの合図をだしてから10分後に私を含め5人の去勢者がこのエリアに登場します。まずはこのエリアから離れて下さい。では、」武を含め39人の男達は全員顔をみあわせ息をのんだ。
「ゲームスタート!」
女が合図をうったと同時に男達は走り出した。武もそれに続く、猛スピードで講堂を出て隣の校舎へ駆け込む。学校を出るにはグランドを出るコースもあるが、隠れやすいという利点があると思いとっさな判断だった。武は全速力でわたり廊下を走った。誰にも逢わない事を願って。
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投稿:2009.11.13
Tゲーム1
著者 初心者 様 / アクセス 10569 / ♥ 0