二階の職員室に通されるとそこには柴木以外に三人の男がいた。
「武、これが俺のチームだ。」
そういって柴木は一人ずつ順に紹介していく。
「まず、一番窓ぎわにいるのが内藤憲次、実はこいつ手品が得意でな、その証拠にこの手錠も、解いてくれたんだ。」
そういって柴木は机にある手錠を指差した。
「後でお前も解いてもらうといいぜ。その方が逃げ易いからな。」
「さて、次にそこのパソコンいじっているヤツが岩佐幸一、ハッキングも得意なんだぜ。」
そういわれて、武はパソコンに向かっている男を見た。もちろん彼にも手錠は無い、真剣な眼差しで何かの作業をしているようだった。
柴木は続ける。
「さて、最後にそこの机で作業してるのが江口勝平だ。」
武は柴木が指差した方向に目を向けた。そこには体格の大きいたくましそうな男が机に座っていた。
「まあ無愛想なやつだが頼りにはなるぜ、格闘技経験者だからな。」柴木が付け加える。
こうして一通りの自己紹介を済ませた4人は改めて今後の行動について話し合うことになった。
まず口火を切ったのは岩佐だった。
「やっぱり思ったとおりだったよ、ヤツらは俺たちの居場所をこの手錠のマイクロチップの信号から特定して、定期的にあの女たちのもとに情報を送っている。」
それを聞いて武は思わずぎょっとした。自分たちの場所は彼女らに知られているとするなら助かる道などない。
武の顔つきを見て柴木は笑い飛ばしながら
「ははは、心配すんなよ。だからこそ俺たちは必勝法をおもいついたんだ。」
柴木の言葉にすこし破顔し岩佐は続ける。
「ただ、このゲームの管理してる情報は直接あの女たちに送られるんじゃなくて、いったん本部のコンピューターに送られて、解析後彼女らのもとに送られるようになっている。つまり、」
「本部から送られてくる情報を遮断することができれば俺たちの位置はばれることは無いんだ。」
「不可能だな。そんな事は、」
今まで黙って聞いていた江口がはじめて口をはさんだ。
「誰の情報がどの経路でくるかなんて特定すんのも時間がかかる、第一すべての情報を遮断するなんて不可能だ。」
「その通りだ。」
江口の反論を柴木が受けとる。
「そこで俺と岩佐で考えたんだ。遮断するんじゃなくて、ヤツらの情報経路そのものをマヒさせられたらどうかとな。」
「そうだ。」
柴木の答えを待っていましたというように岩佐は続ける。
「そこで俺は今まで実験していたんだ。まず本部コンピューターに一定時間ウイルスを流しつづけ、その間にこのゲームの管理コンピューターに偽の位置情報を作成して流し、あの女たちがどういう行動をとるか、結果は成功だったよ。シザーってコードネームのやつがこの1階校舎の男子トイレに移動してきた。」
それを聞き武ははっとした。これでなぜ柴木があのトイレに来たのか、そしてなぜ自分が助けられたのかも理解できたのだった。
「で、今後の展開は?」
眠い目をこすりながら内藤が二人に尋ねると岩佐はパソコンをいじり図面を出した。
「これはこの廃校から地下鉄までの図面を表わしたものだ。今から5分後に管理コンピューターに偽の位置情報データが、本部のコンピューターには情報伝達を妨害するウイルスが同時に流れるようにセットしておいた。俺たちはこれが発動している間にここのルートを通って一気に地下鉄の駅まで行く。」
そういって岩佐はパソコンの一点を指でなぞった。
「よし、みんな出発の準備だ。」柴木が言った。
その時である、職員室の前に人の気配がした、4人の会話が止まる。
職員室の扉は机や椅子などでバリケードされていたがソレはなんとかドアを開けようと金属てきな何かをぶつけ始めた。それが何か分った事で再び武の中に戦慄が走った。
「よし、みんな窓からにげるぞ!」柴木がこの言葉を言い終わるか言い終わらないうちに職員室のドアのガラスが粉々になり、バリケードが破壊され凄まじい音がこだました。
そこに立っていたのはあの女だった。黒いキャミソールに巨大な鋏を持った去勢者、コードネーム=シザー。先ほど以上に目は赤く血走っている。柴木の催涙スプレーで苦しめられた怒りもあるのだろう。
「お前ら、全員 殺す!」
そう言って女は鋏を振り上げ突っ込んでくる。
「ちくしょう!」
突進してくる女に向けて柴木はまた催涙スプレーを向けた。しかしその瞬間、柴木はおもわずうめいた。
柴木の手から催涙スプレーが落ちていった。と同時に彼の人差し指と親指も。女の鋏が切りつけたのだ。
あまりの痛さにうずくまろうとする柴木を武はむりやり起こし窓へ走る。あと数メートル。
「逃がすかあ!」
女は逃げていく武の背中めがけ槍投げのごとく鋏を投げた。
鋏は放物線を描きまっすぐに武の背中へ。
「させるかあ!」
江口の棒がその鋏を弾き落とした。
「柴木、逃げろ!俺はこの女を倒したら後を追う。」
見ると江口勝平はさっきつっかえ棒になっていた棒の切れはしを握って女に構えていた。
「江口、お前。。」
何か言いかけた柴木に対し江口は振り返らずに叫ぶ。
「いいから、早く逃げろ。岩佐が偽情報を流したってこの女を食い止めねえと無駄になっちまう。こいつは俺が引き受けるから逃げろ!」
女が動いた。さっき落とした鋏を拾いにかかろうとする。
「ちっ!」
江口は棒を突き出し、女を妨害しようとする。
「行こう!柴木。早く急がなきゃ!」
武は柴木の手をとり窓の外へ飛び出す。
それを確認すると江口は棒をかかげ女に突っ込んでいった。
「おらあ!」
棒を女の顔めがけ突きあげる。しかしその瞬間、視界がふさがれた。
「ぐあ!」
江口の顔に激しい痛みが走った。女が柴木が落とした催涙スプレーを手にしていたのであった。
しかしそれを確認する間もなく鋭い蹴りが江口の無防備になった股間を襲う。
「ぎゃ!」
あまりの激痛に思わず股間を押さえる江口。赤く充血した目から涙がこぼれる。
「ふふふ、格闘技経験のある男でもココは鍛えられないのね。」
そう言うと女はゆっくりと鋏を拾い上げた。
ようやく目が慣れてきた江口は女に向けて構えなおした。
「ふふ、まだ闘えるんだ。男らしい。」
女はゆっくりと鋏を振り回しながら近づく。江口は構えながら距離を測る。
女がにやりと笑んだ、その瞬間もの凄いスピードで突っ込んでくる、江口はその一撃を間一髪かわすと同時に回し蹴りを女の腹めがけ叩き込む。
「ぐ!」
一瞬女は腹を抱えうずくまるも女の顔がほころぶ。その瞬間、女の右足が飛んだ、江口の股間を蹴り上げる。
「ぐああ!」
うめく江口に女は容赦なかった。それと同時に左足がはね、江口の左睾丸を蹴り潰した。
「あああ!」
目を血走らせて股間を押さえる江口勝平、その顔めがけ女の鋏が襲った。
女の鋏が江口の目を潰し大量の血が顔から噴出す。
「ぎゃああああああ!」
目を抑えのたうちまわる江口にゆっくり近づくと女は彼のジーパンのチャックをおろし
「はい、よく出来ました。ご褒美あ、げる!」
と言い女は残忍な笑みを浮かべた。
江口の体にあらたな激痛が走った。女は彼の剥き出しのペニスを鋏でちょん切ったのだった。
「ぶちっ!」
痛みにのたうちまわる彼を見ながら女は高らかに笑うのだった。
しかしその目は窓から出て行く彼らにむけられていたのだった。
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投稿:2010.05.09
Tゲーム4
著者 初心者 様 / アクセス 10242 / ♥ 0