ジャングルの奥地、人が秘境と呼ぶ場所に、不思議な大樹の下で繁栄してきた人々がいた。
その樹には神通力が宿り、その根が張るところには常に豊穣がもたらされ、恐ろしいジャングルの獣たちにも侵されぬ聖域になったという。
しかしながらその神とも呼べる大樹の力は決して永遠ではなかった。生贄が何年に一度、その樹には必要だったのだ。それも一風変わった生贄を大樹は求めた。
大樹は男の、若く力強い男根を生贄として要求したのだ。
赤い満月の夜、人々が続々と家から出てくる。今宵は生贄が捧げられる聖なる夜だ。人々はぞろぞろと大樹に絡みつかれるかのように作られたピラミッドの前に集まる。
ピラミッドの頂上は大樹の枝や根に囲われ、くぼ地となったそこには精霊の仮面を付けた神官長と巫女たちが並び、その真ん中に腰布を巻いただけの逞しい青年が仁王立ちで構えていた。
齢は18といったところであろうか、まだ子供のようなあどけない顔立ちをしていた。
「タルタ、あなたのお父さんよ……。しっかり見ておきなさい。」
祭壇を下から見上げる群衆の中に、ひと際恍惚とした女性がいた。その手には3歳くらいの男の子を抱えている。
彼女こそ、今宵生贄に捧げられるあの青年の妻であり、抱えられている男の子は彼の息子なのだった。
タルタは母親の腕から身を乗り出すようにして、晴れ舞台に乗った父へと手を振りまわす。
一児の親とは思えないほど若い青年は、人ごみの中から自分の息子を見つけると軽くほほ笑んだ。
「おお、我らが神樹様…。今年のニエは一族きっての駿馬ともいえる若者でございますよ。ささ、ニエをこちらに。」
大樹がざわざわとうなり始めた。まるで早く生贄をよこせと欲さんばかりの葉鳴りの音に群衆がどよめく中で、着々と準備は進んで行く。
巫女たちの手によって、生贄の青年が祭壇の真ん中に立てられた丸太棒に、腰を突きだすようにして縛りつけられた。
一人の巫女が青年の腰布をはらりと取り去った。一糸もまとわぬ野性身あふれた雄の姿が衆目に晒される。
人々の目を引くのはやはりその男根だろうか。生贄の一族としてこの日の為だけに数々の長茎術を施され磨き上げられた男の証は、まさに神へと捧げられるにふさわしい一物であった。
巫女たちが青年の身体を拭き清め、神官長が壺をもって現れた。
巫女と神官長によって粘り気のある中身が青年の体中に擦り込まれていく。同時にそのペニスも神官長と巫女の手によって扱きあげられた。
「んんんっ……。 あっ、ふぅぅううっ……。」
はち切れそうな筋肉で覆われた肉体をてらてらと妖しく光らせ青年はうめいた。鎌首をゆっくりゆっくり持ち上げ、子供の腕のような大きさのペニスはついに勃ち上がった。
逞しい若者と、その身に似合った猛々しい供物を喜んだのか、大樹が枝を軋ませる。
巫女たちの愛撫によって青年は先端から次々と汁をこぼし、陰茎をマグマのようにめぐる血で熱くした。
だが射精は許されない。いつの間にか大樹から伸びてきた触手がペニスの根元をしっかりと結わいつけ、一滴の精すら溢れないように締め付けていた。
青年は苦悶の表情を見せる。立派なペニスは根元を締め上げられることで紫に変色し、さらに勃起を続けていた。
「神樹様もお喜びじゃ。今年のニエは素晴らしいと仰っておられる。」
大樹の神託を受け終えた神官長からその言葉を聞いた青年は、舞い上がりそうなほどに喜んだ。
生贄の一族として生まれ、一生懸命に磨き上げたペニスを神に捧げることを生きがいとしてきた青年にとって、大樹の祝福は最大の幸福であった。
しばらくして巫女たちの愛撫が止み、神官長が青年のペニスを握る。
青年の男根はしっかりと硬さを保ち、熱く脈打っていた。射精寸前まで追い込まれたペニスはもう限界まで膨らんで、今はただ儀式の終わりを待ち続けている。
「神樹様、さあ準備が整いましたぞ。今この若きあなたの子供より神樹様に、猛々しく育った種と根を捧げましょうぞ。」
鋭い儀式刀が巫女から神官長に渡される。いまやいまやとその時を待つ群衆の目の前で、鈍く光る切っ先が生贄の根元にあてがわれた。
「んっんおぉおおぉおおおおおぉああああっ!!!!」
雄たけびと共に、誰のものよりも優れた男の証がすっぱり切り落とされた。
あの巨根も、種の詰まった袋ももはや青年の身体には残っていない。
夥しい出血と男を失った激痛が刀の切り裂いた股を襲った。
すると大樹が触手を伸ばし、青年から離れても勃起を終えない男根を拾い上げた。
すかさず神官長が先ほどまで青年の男根を縛っていた触手の一本を捕まえ、一礼ののち切る。
切り口からは白い液体が溢れた。触手たちは拾い上げた生贄のペニスを切り口にあてがうと、青年の股間から溢れる血しぶきに身を躍らせた。
「あ…。あへ……、あうぅ…。」
出血多量で青ざめる青年の口から快楽の声がもれた。人々が感嘆の声をあげる。青年の切り取られたペニスがびくびくと生気を取り戻し、大樹の触手と一体化したのだ。
良く見ると他の触手たちもどうやら先代の生贄たちが捧げた男根と繋がっているらしく、我先にと青年の新鮮な血を浴び続けている。
「おお、神樹様。我らに永遠の繁栄と、導きを与えたまえ!」
青年の中にある血が全て流れた頃、大樹の触手たちは一斉に大地へ向けて精液を放った。
大樹の精液を受けた畑は作物が枯れることなく育ち、またその地には害ある虫や獣も寄り付かなくなる。これで後十数年は村の繁栄が約束されたのだ。
「りっぱだった……。あなた……。」
青年の息子、タルタは父親のものだったペニスから放たれた熱い噴射を間近で母と共に浴びた。
その間中、まだ射精を知らぬタルタの陰茎は父の後を追いたいとでも主張するようにひくついていた。
至極満足した顔つきの青年は、ペニスを失った不完全な雄の肉体を夜に晒しながら、眠るように大樹へと召された。
その肉体は巫女たちによって丸太棒から外されると、ピラミッドを転げ落とされ、見物人たちによって村へと運ばれた。
四肢を切断され、ありとあらゆる人々がその体の思い思いの部分を拝借していく。生贄の肉は村の皆で分けられ、食べられた。大樹の加護が宿っていると信じられているのだ。
タルタも父の肉を食った。
父が自分の中を満たしていく気分は、タルタに生贄の一族として何をすべきなのか教えているようだった。
次の生贄にふさわしい男となるため、タルタは周囲も驚くくらいに切磋琢磨した。
日々魔羅を伸ばし、磨く。体を鍛え健康に大変気を使った。また夜には頻繁に大人の男たちを訪ね、力を授けてほしいと尻を自ら広げ、精をもらった。
そして十数年の月日がたち、遂にタルタも父と同じく生贄に捧げられる日が来た。
妻との間には既に、あの時の自分と同じ年の赤ん坊が出来ていた。
次の生贄になるわが子の前で失態は見せられぬと気合をいれるタルタ。タルタは筋骨逞しい男へと成長し、その男根は父親のそれと比べても大きいくらいに育ちきっていた。
幼馴染である親友の神官長にペニスを掴まれたタルタは、いよいよと歯を食いしばった。
儀式刀のひんやりとした冷たさ。そして刹那に刎ね切られた己の巨根。
全身を駆け巡る痛みの中でタルタは自分を呼ぶ声を聞いた。懐かしい父の声だった。
(タルタ、がんばったな……。さすがは俺の息子だ…。)
(父さん…!? なぜ、父さんが……。)
(俺の意識は神樹様の中にあるのだ。切り落とされた男根と共に、俺達ニエは永遠に神樹様の中で大地に種をまくのだ…。)
(とう、さん…。ああ、父さぁんっ!)
鮮血をまき散らす体に別れを告げ、タルタは愛おしい父親に抱きついた。
赤い月の夜が終わり、大樹が今日も大地に白い種を噴く。
生贄の魂を宿した大樹の肉の根は、いつまでも萎えることなく延々と逞しく岐立しながら、次の生贄を待っているのだ。
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投稿:2010.10.31
男根樹の生贄
著者 モブ 様 / アクセス 20461 / ♥ 10