私は千葉県の山中にある学校の理事長をしている。学校の名前は「サクラメント学院中学校」「サクラメント学院高等学校」で、全寮制の男子校。各学年200人の小規模な学校で、中高一貫なので高校での募集はしていない。
創立したのは今から40年前。最初から進学に力を入れて、創立第1回の卒業生から東大や国公立医学部の合格者を輩出。その後どんどん実績を伸ばし、あっという間に全国の注目校となった。今では東大合格者は毎年30人以上、国公立医学部合格者も同じぐらいいるという全国有数の進学校だ。
サクラメント学院の支援母体は一応「日本サクラメントキリスト教団」というプロテスタント(新教)の教派で、私がニューヨークのコロンビア大学に留学していたときに、現地の「サクラメントキリスト教団」の教会に通っていたのが縁となっている。
元々日本では伝道してなかったんだが、俺が帰国後に日本で学校を作ることになったら、莫大な献金を集めてくれたり、宣教師を派遣して教会まで立ててくれた。
おかげて学校の経営は授業料や寮費に頼らなくても安定しているし、日本の教団の布教も順調、今では教団直営の病院や老人施設まで建設された。。
「サクラメント」というのは「秘蹟」という意味で、洗礼や聖餐といったキリスト教の儀式のことだけど、教団の教義はプロテスタントの中では少々変っている。キリスト教の聖典である聖書は、天地創造やモーゼ、ダビデが出てくる旧約聖書と、キリストとその弟子を描いた新約聖書に分かれていて、旧約聖書だけを使うのがユダヤ教で、旧約聖書と新約聖書を使うのがキリスト教。
で、例えば食物禁忌とか安息日とか割礼とか、旧約聖書の教えを新約聖書が絶対ではないとした部分があれば新約聖書に従うのが普通のキリスト教だけど、サクラメントキリスト教団は、旧約聖書の教えと新約聖書の教えは、両方とも等しく守るべきとするのが特徴だ。
サクラメント学院では教団の教えに従って、創立当初から中学1年の新入生に「割礼」を受けるように勧めてきた。割礼とは旧約聖書に出てくるユダヤ人の習慣で、まあ包茎手術みたいなもので、ユダヤ教徒やイスラム教徒は今でもそれに従っている。
もちろん強制ではなかったが、全寮制で入浴時なんかはお互いの性器丸出しになるわけだから、やっぱり包茎では恥ずかしいという感じになって、創立3年目ぐらいからは入学式の翌日に、新入生全員が広い体育館の特設会場で、割礼の儀式を受けるようになった。
さて、旧約聖書で禁忌とされているものの一つに「自慰行為」がある。学院ではこの対策として、個室は作らない、生徒のプライバシーは認めないを徹底していた。寮は8人部屋で、自習室と寝室と娯楽室に分けられていて、それぞれに個人持ちの机やベッドはあるけど、仕切りやカーテンなどはなかった。
トイレも大便器も個室ではなく、むき出しの洋式便器がずらっと並んでいるだけだ。
創立してから8年ぐらいすると、日本サクラメントキリスト教団に所属する教会の信徒の家庭からも新入生が入るようになっってきた。まあ、入試が難関になってきてからは、信徒家庭出身者は若干入学試験で加算しているのだけど、それでもかなり学業優秀なわけだ。
そしてその信徒家庭出身者あたりから、入学時に割礼だけじゃなくてペニスの切り落としを希望する新入生が出てきたんだ。これは実はアメリカのサクラメントキリスト教団の系列の学校では結構普通に行われている習慣で、それを日本でもということだった。
こうして最初の年は5人の新入生が割礼に替えてペニスの切除を受けた。その新入生の成績が偶然だったかもしれないが極めて優秀で、全員学年トップを走ったため、次の年から希望者が急増し、割礼だけで済ましていた在校生からも、ペニス切除の申し出が出るようになった。
学院もペニス切除をした生徒は自慰行為の恐れがないことから、寮の一部を個室化してこれに応え、個室の魅力がますますペニス切除者を増加させた。
こうして創立20年目には新入生の約半数がペニスを切断するようになり、それらのペニスは校内に標本として展示されていたが、この頃、教団直営の「サクラメント総合病院」で、他人同士のペニスの移植手術がほぼ100%成功するという画期的な医療が確立された。そこで新入生が切断したペニスをその年の卒業生に移植することになり、その状況が一変、新入生全員がペニスの切除に応じることになった。
ここで毎年3月末に行われている移植手術の様子を説明しよう。
まず、体育館の特設会場のベッドに、その年の新入生が全裸で仰向けになって横たわる。ただし、顔だけはテントのような特殊なカバーで覆われている。そこにその年の卒業生が成績順に入ってきて、自分に移植して欲しいペニスの持ち主を選ぶ。選ばれた新入生のベッドは、そのまま別室の手術室に運ばれ、その隣に寝た卒業生の下腹部に、ペニスが移植される。
新入生のペニスの切断位置は、かっては腹腔内部から完全に切除していたけど、6年後に後輩のペニスを移植で再縫合すうrことになってからは、若干の付け根を残すようになった。
卒業生にとってこのペニス選びは悩みの種でもある。大きくて立派なのが良いと思うかもしれないけど、第二次性徴前のペニスは、移植されると卒業生の睾丸から出されるホルモンの影響を受けて、見る見るうちに成長していくことが多い。そこで早熟で既に大きくなったペニスが上物とは限らないというわけだ。
私立学校なので、卒業生と新入生の人数が違ったらどうするのかと心配されるかもしれない。そういう場合は、大学浪人生に1年待ってもらうことにしているけど、実際には卒業生の中に、昔と同じように再接合せずに、慣れたペニスなしの人生を選択する生徒が1割ぐらいいるので、新入生のペニスは毎年余って、標本も少しづつ増えているんだ。
ところで私の元には、今ちょっと悩ましい知らせが届いている。
教団直営の病院から「性器の6年間冷凍保存とその後の再接合に成功した」というニュースが届いているんだ。こうなると卒業まで自分の性器を保存しておいて再縫合してもらうことが可能になるわけだ。
今の生徒は睾丸を残しているから、教義上罪である自慰はできなくても、性欲は普通にある状態だったわけだけど、陰茎、陰嚢、睾丸を全て除去すれば、性欲も無くなってすっきり勉学に勤しむことができるはずだ。その上、再接合するペニスだって自分のものならば、卒業時に選んだりする悩みも解消されるだろう。
でも良いことだけではない。
「6年間冷凍保存方式」にしたら、将来の新入生のペニスを当てにしている6学年1200人はどうすればいいのか。パニックが起きないよう、これは当分極秘にするしかないと考えているところだが、誰か良い知恵はないだろうか。
2055年11月
学校法人サクラメント学院 理事長 記
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投稿:2010.11.14更新:2021.10.20
サクラメント学院
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