時は大航海時代あたりまでさかのぼる。
前触れのない嵐が、太平洋を航海中の貿易船を吹き飛ばした。
熟練の船員たちは蜘蛛の子を散らすように荒らぶる海へ消えた。
今回が初めての航海だった若い船員、レオンもまた、海水をたらふく飲んで、波に飲まれたところで気を失った。
彼は奇跡的にある大陸へと漂流した。しかしその地は地球上にはない場所だった。
レオンは漂流するうちに、とある異界に迷い込んでいたのだ。
地球とそっくりの青い星に形作られた別世界。レオンの地球と違う点は唯一つだった。
息を吹き返したレオンは、周囲から針を落としたような微弱な声が無数にするのに気が付いた。
日光に焼けた肌の上を何かが大勢歩いている。全身に圧迫感を感じた。
顔をあげて見ると、自分の仰向けになった身体が、細いロープでがんじがらめに海岸へと縫いつけられているではないか。
レオンは彼が昏倒している間にそんなことをした、何者かの姿を見た。彼は信じられない思いでいっぱいだった。
なぜならそれらは5セント硬貨にも満たない、ちびの小人たちだったからだ。
「お前たち、何してるんだ!?」
軽く声を出しただけで、何人かの小人たちが吹き飛んだ。レオンはびっくりして息を止める。
小人たちは怯えていた。いきなり自分たちの国にこんな大きな人間が流れ着いたのだから、どうしてよいものか分からないのだ。
取りあえずありったけの一番太いロープでレオンを縛りつけたが、それすら簡単に引きちぎられそうに見える。
この世界では巨人のレオンにとって、小人たちは何とも脆弱な生き物だった。
あたふたする小人の意図がだんだん読めてきたレオンは、しばらく静観している事にした。
先ほどから小人どもが何十人もまとまって、何か槍のようなもので自分の身体を刺そうとしているが、自分がでかすぎるせいで針が刺さったようにすら感じない。
只でさえ、ぶ厚い筋肉に守られた丈夫な身体がうりの船乗りに対して、怪我を負わせられる者などそうそういない。小人たちの挑戦は誰が見ても明らかに無謀だった。
何度か騒がしい小人の群れを鼻息で飛ばし、レオンはそろそろ立ちあがろうとした。
しかし、首は持ちあがったが、海に鍛えられた逞しいボディの大半が動かない。
漂流の疲れが残っているせいだ。寝ていれば回復するだろう。
レオンは安心して、また眠ってしまった。
しかしその認識は大きく間違ったものだった。
彼はここまで流されてくる途中、暗礁にぶつかって脊髄を損傷していた。
彼の身体が微動だにしないのは疲労のせいではない。全身不随でマヒ状態だからだ。
二度とこの海岸から起き上がれる身で無くなってしまったことなど露知らず、レオンはこの小人の国で腕力を振るい、自分が支配者になる夢を見ていた。
巨人が眠っておとなしくなってしまったのを機に、小人たちはこの状況に対し対策を立てはじめた。
とにかく相手を知らねばならない。この巨人と我々には何か違いがあるのだろうか? 言葉は通じないがただ大きいだけの人間であるようにも見える。
小人たちはレオンの着衣を徐々に焚火を使い燃やしていった。もちろんレオンにとっては火花が散っているようなレベルの炎だが、それでもただの木綿である船員服は簡単に破ける。
上半身、下半身とも全ての身につけたものが燃やされると、張り裂けそうな逞しい肉体を除き、小人たちの男性と全く変わらない裸体が現れた。
日焼けと潮焼けが色濃い皮膚、船の揺れに耐える太い足腰、商品のワイン樽などを何個も抱えられる逞しい上体の筋肉が露わになったが、しかし小人たちの視線はある場所に一点集中していた。
いびきをかいて寝るレオンの股間には、ドラゴンのような大スケールのペニスが猛々しく勃起していた。ずる剥けの亀頭は男臭い粘液を僅かに垂らしている。
反りの一際激しい一物はアーチを描き、その根元から遠く離れた彼のへそに先端を着地させている。
半月状に反り勃った立派な魔羅と、引き締まった腹筋の間には膨大な空間が広がり、レオンが手を滑り込ませたとしても余裕に収まりきるだろう。もちろん小人たちも背伸びをしようがつま先立ちになろうが、脈打つアーチの天井には到底届かない。
それは巨根という域を超えた巨根であった。実際、レオンは仲間内の船乗りと酒場でペニスの比べ合いをした時、2位のペニスに大差をつけて圧勝した程の男だ。
彼はここ何日か航海で忙しく、まともに自慰もできなかった。その為、その滾り方も尋常ならざるものだった。
幹は夢精寸前なのを堪えるように脈動し、ヒメリンゴのような左右のふぐり玉は並々ならぬ精子を蓄え解放を待っている。
古今東西目にしたことのないような長茎をもつ巨人の噂は、その日のうちにあっという間に王都まで届いた。
末端の村を突然襲った風変わりな事件は、国の統治に忙殺される女王の耳にも入る。
「ふむ、わらわも一目見てみたいものじゃ。龍の一物を持つ巨人とは面白い。」
しかし今は女王にとって、とても忙しい時期だった。国政をほっぽり出して遠方へ遊びに行けるような時分ではない。
そこでどうしても我慢の出来なかった彼女は残酷な触れを出した。レオンの逞しい男性器を、切り取ってでも王城まで運んでくるように勅命を出したのだ。
翌日の朝、レオンは大あくびをかきながら目を覚ました。
いつの間にか素っ裸に剥かれていることに驚く。その浅黒い素肌の上で、小人の子供たちが遊んでいる。
子供たちは何度も何度も巨人のうねりくねった腹筋の上を行き来し、朝立ちによって一際反りかえった陰茎のアーチを何度も面白そうにくぐっている。
尿道の先から流れ出すべとべとしたカウパー腺液に、鼻を摘まみながら集まる興味津々な男の子たち。
逆さまにへそへと埋まった雁首の出っ張りは、子供たちの人気スポットらしい。
子供が座ったり立ったりするたびに、ふっくらとした亀頭はびくびくと揺れ、変わったアスレチックになっていた。
しばらくすると、子供たちと入れ替わりになって、鎧馬に乗った王国騎士団が海岸に到着した。
噂に聞いていた巨人の見あげるような体躯に、騎士一同は驚愕する。村人のかけた縄梯子で一人ずつ昇っていくと、彼らは次々に抜刀した。
一方のレオンにとって、彼らの持参した長剣はまるで猫の髭に見えた。こんなもので自分を傷つけられると思っている、哀れな小人の群れに腹が痛くなってくる。
小人は王国に生えているどの大木よりも太いペニスの幹に向かって、黒い若木のようなレオンの陰毛を切って進む。
足の間に落ちないよう気を使いながら、騎士団は雄々しい巨根の周りをぐるりと探索した。
赤くそそり立つ柱は臭気と熱気を放っている。剣先が通るかどうかも分からない。
隊長は少し悩んだ後、試しに攻撃を仕掛けることに決めた。
王都できっちり手入れされた数多の剣が、騎士団によってレオンのペニスにふるわれる。
だが全く斬れない。血を吸った海綿体の弾力にはじき返されるばかりで、一筋たりとも傷が付けられない。
己の象徴たる肉茎にいたずらされているレオンは、その微妙な感覚をもたらす小人の行為にますます腹をよじれさせた。彼らが一体何をしたいのか全く分からないのだ。
汗水たらして刃を打ちこむ騎士団たちには諦めの色が浮かんでいた。
この巨根に対しては、一流の鍛冶屋が丹精込めて打った槍も剣もまったくの無意味であった。隊の中で一人しか使えない大斧すら弾かれる。
腹いせに一人の兵士が赤く充血した亀頭に剣を突きたてた。その瞬間、当たり所が良かった為にレオンは溜まった精液を大噴射した。
「はっはっはっは!! 小人ども、溜まってたもんを抜いてくれてありがとうよ!」
白い濁流にみるみる腹の上の蛮族が流されていく様を見ながら、レオンは射精の快感に酔いしれた。久方ぶりの射精は気持ちよく、何発も何発も精子を溢れさせる。
騎士団は恐れをなして退却した。半数以上を巨人のペニスの激しい吐瀉物によって失い、残ったものも精液まみれである。
すごすごと引き上げていく騎士団を摘まみあげてやろうとするレオンだが、やはり身体は動かない。
少々不思議がり始めていた彼であったが、特に気にはとめなかった。
その上、玉が吊りあがる程の射精からきた虚脱感のせいで、レオンはすぐにまた寝入ってしまった。
おめおめ王都へ帰って、恐ろしい女王の罰を受ける訳にはいかない騎士団は、すぐに国中の学者を呼び集め、どうにかして巨人の一物を屈服させる方法を模索しようとした。
「それなら、いいものを発明しましたよ。」
真っ先に手を挙げたのは、国内でも有名な偏屈として知られている発明家の老人である。
彼はその恐るべき自身の発明品について説明した。
聞き終わった騎士団は、すぐに手配を下し、発明家立案の計画を遂行する。
身体の上で着々と進む準備を知らず、レオンは翌日の朝までぐっすりと眠った。
騎士団に剣で突かれ大量に射精したにも関わらず、まだ大きな反りを維持している彼のペニスが、これから訪れる運命を知ることはない。
騎士団は早朝のうちに全ての準備を整えた。いよいよ、レオンの巨大なペニスを去勢する時がやってきたのだ。
脈々と滾ったままの肉棒のアーチが朝日を受ける頃、その付け根にはロープが巻かれていた。
只のロープではない。それは細いテグス状のワイヤーロープで、極限まで研がれた糸の凶器ともいえる、発明家の最高傑作だった。
鉄のロープの両端に結んだ馬50頭の力で、地上から交互に引きあい、糸が引かれることによって生み出された破断力によって、その見事なものを擦り切る。
それが発明家の打ちたてた、『巨人の暴れ龍』寸断計画であった。
馬に鞭が打たれ、まず巨人の右手の方からワイヤーが引っ張られる。
きりきりと擦れる音を聞いたレオンはびっくりして頭を起こした。
眠りから起きた途端に、陰部から鋭い痛みを感じる。見るとそこには目に見えるか見えないかぐらいの細い糸が巻きついているではないか。
締まる糸が徐々に動いているのがレオンには分かった。確実に肉が裂けていく感触。太く長い陰茎の付け根を滑っていく糸は、血の滴を垂らしている。
睾丸ごと自慢のペニスを去勢されつつある巨人は狼狽した。何とか身体を動かそうとするが、もちろん運動神経は断絶されていて二度と治らない。
彼は忘れていたのだ。自分たちが船をつくり、荒波をかき分ける術を手に入れたように、人間という種族はどんな困難をも、その知恵と技術で乗り越える力を持っているのだということを。
レオンたちが先人の努力によって海を制したように、小人たちもまた神のようなペニスに挑戦し、それを手に入れる方法を見つけたのだった。
「ぎゃあああああーーー! やべっ、やべろおおおーーーー!!」
どれだけ泣き叫んでも、全身をマヒしてしまったレオンにはどうすることもできなかった。
右の馬が休まされると、次は左の馬が鋭い糸を引き戻し始める。レオンの巨根を締める輪の直径がどんどん狭くなっていく。
マヒしてしまった運動神経とは別に、レオンの感覚神経はしっかりと残されていた。
激痛に叫び続ける彼の顔は、まさに阿鼻叫喚の様である。
もがくことすらできずに、若い雄にとって最も大事な器官を少しずつ千切られていく。先輩船乗り達から受けたどんなしごきも耐え抜いたレオンですら、そんな苦痛と屈辱には勝てない。
血と脂で切れ味の悪くなったワイヤーが、洗浄されるために回収された。
地獄の拷問が止まったとはいえ、レオンのしなったアーチを描く巨根は根元から血を垂れ流している。
まだ脊髄の損傷に気が付かず、逃げようと頑張るレオンをよそに、騎士団が昨日と同じようにして巨人の腹に昇ってきた。
血の海となったペニスの根元までたどり着くや否や、騎士団は一文字に周囲を斬ったワイヤー痕に向かって剣を突き立てはじめた。
「いぎゅあああああっーーー!!!」
昨日の大射精で失われた戦友の仇を討たんとでもするかのように、騎士団員たちは返り血も意に介さずレオンの暴れ龍に斬りつけていく。
オナニーの扱きに耐える外側の皮に比べ、内部の組織は柔らかく、彼らの剣や斧でも十分に肉は削げる。
とうとう口から泡を出して、レオンは思いつく限りの命乞いをした。しかし異世界の巨人の言葉など、誰も理解できる者はいなかった。
再び悪魔の発明品がレオンの象徴を縛る。あと少し糸を引くだけで、彼の立派な男性器は間違いなく彼の逞しい肉体から無くなってしまうだろう。
「いやだーーー!! ちきしょう、神様——!!!」
彼の信じる神はこの地にいない。彼の哀れな陰茎の運命を握るのは、彼の小指にも満たない小人たちだった。
「あ…? ああああああっーーー!?!? お、俺のチンポ…が…。」
3、2、1センチと輪の直径を縮めるワイヤーの戒めは、遂に巨人の雄々しい象徴を全てカットし、一本の張りつめた糸に戻った。
海の男の大切な子作り玉が、袋に詰まったままレオンの腹から離れて、大地の上にどさっと落ちた。
重たい睾丸に引っ張られて、素晴らしいアーチをつくっていた反りの激しい肉根が、両足の間から滑り落ちていく。
目が潰れそうな勢いでレオンは泣いた。喉ががらがらになるまで彼は嘆いた。
波に叩かれ、塩で磨かれた、己の恥ずべきところなど一つもない肉体に、弓のようにしなった立派なものが無くなってしまった。
もう二度と味わえなくなったオナニーのしびれる快感、女の味を思い出し、彼はただひたすらに絶望した。
勃起したまま彼の男根は切除された。そのせいで出血がひどく、巨人の血の洪水に村が壊されぬよう、騎士団隊長は暴れ龍討伐の終わった傷口を焼き塞ぐことにした。
ただ火を焚くのではレオンの巨体に対して焼け石に水である。そこで騎士団は近隣の山から石炭と、にえたぎる溶岩を汲ませて持ってこさせた。
「あぢ、あぢいいいいいっーーーー!!?!?!」
石炭を傷口に積まれ、溶岩が注ぎ込まれる。
1000度を超える星の血液を無残な股間にかけられ、レオンの腹筋と陰部はぶすぶすと炭化した。じゅうじゅうと焼きただれる大腿部には醜いかさぶたが出来あがっていく。
余ったマグマはついでに喉へと垂らされた。レオンの声帯は潰され、これで嵐のようなレオンの唸り声も二度と出なくなる。
村の者たちは静かになった巨人を見て、騒音に悩まされることが無くなったことに安堵した。
そのころ、レオンから切り離された龍のごとき一物は、学者たちの手によって綿密に形や長さの記録が取られた後、女王陛下の待つ王都に届けられるまで萎えぬよう加工処理された。
硬い樫の木のように反りかえった勃起状態の巨根は、およそ100頭の馬に引かれ、台車に乗って王都でお披露目された。
王都市民は恐ろしいサイズのペニスを見つめ、どんな凶悪な巨人が攻めてきたのだろうかと根も葉もない空想で盛り上がった。
「いやはや、なんと巨大な男根か。これはまさしく身を反らした龍のようだな。」
謁見の間に運び込まれたレオンのペニスは、じっくりと女王や側近の貴族たちに見物された。
彼の元に生えていたときと同じように、謁見の間の天井ぎりぎりにアーチを描くよう立てられている。
「この一物の汚い汁飛ばしで、わが国家最高の兵たちが半分も死んだとはな。わらわも見てみたかったものじゃ。」
もはや叶わぬ望みとなってしまった戯言を漏らし、女王は甲高く笑った。
その晩のことだが、また前触れのない嵐が起こり、海岸に放置されたレオンを襲った。
翌日村人が様子を見に行った時には、その巨躯はどこにも残されてはいなかったという。
そして異国に残された彼の巨根はというと、国中の人間がこぞって観賞した後、暴れ川として名高い国一番の大河に、新しい橋の芯棒として使われた。
驚く程の毛細血管が束になって集まり、そのまま硬化しているそれは、多少の豪雨ではびくともしない頑丈な橋になった。
女王はその橋にレオンからの贈り物として『巨人橋』と名を与えたが、国民には定着しなかった。なぜなら彼らの大半は巨人そのものを見たことがなかったからだ。
どんな洪水でも流れぬその橋は、もっぱら国民の間では『巨根橋』と言われるようになった。今では子宝祈願のスポットとしても有名になったそうだ。
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投稿:2010.11.24
ある船乗りの去勢
著者 モブ 様 / アクセス 18024 / ♥ 8