大学2年の夏休み、僕は遠出をした。
僕を満足させるものはどこにもない。生まれた時からずっとそうだった。
僕はジーンズの上から内部のコックリングをさする。
ペニスは大きく勃起していた。
小学校に通っていた頃、僕は公園で知らない男性にレイプされた。
その時の記憶は鮮やかに残っている。男の酒臭い息や毛むくじゃらの足、ガテン系っぽい服装が目に焼き付いている。何よりペニスが大きかった。
子供だったからそういう印象を持ったのかもしれないけれど、彼の肉茎は幼い僕の肛門を裂くことなど造作もないようだった。
僕は病院で20日間入院した。そこで僕は童貞を無くした。
相手は若い女性の看護師だった。僕が肛門裂傷の痛みで動けないことをいいことに、彼女は気安く僕に跨ってきた。
何回彼女の中にイってしまったのだろう。良く覚えていない。ただその時の看護師が僕のことを可愛いと言ったことは覚えている。
他人から見れば、まるでこっちが誘ってきているように見えるらしい。
退院してから、僕は男らしさに執着した。可愛らしさを自分の中から払拭したかった。
ジムに通い始めたのは中学校に入ってすぐだった。僕はそこでも狙われた。
シャワールームに入っていた時、とびきり親切だったインストラクターのお兄さんに、僕は突然襲われた。彼は中学生くらいの筋肉質な子供が守備範囲だったらしい。
本当の兄くらいに思っていた人だったから、僕は結構ショックだった。彼は自分の好みな身体になるよう僕の肉体を鍛えさせたのだ。
犯されながらまた可愛いと言われて僕は泣いた。
でも、僕は後ろから突きいれられながら、その時初めて手を使わず射精した。それ以来僕は、お尻で感じられるようになってしまった。
高校では美術部に入った。部活内での交流で、初めて僕に彼女ができた。
彼女はよく僕にヌードモデルを頼んできた。僕は鍛え続けた肉体を存分に晒してあげた。彼女が言うなら、勃起した姿やどんな恥ずかしいポーズも取った。
後日、僕は本屋で同人誌コーナーにふと目をやった。そのうちの一冊に、彼女に見せてもらったスケッチブックの構図そのままの僕が表紙を飾っていた。
内容は僕が男女に限らずめちゃくちゃに輪姦されているものだった。僕は吐き気をこらえながら家に帰った。
その同人誌は学校でも一部の人に人気があり、本を知っている人はたびたび僕と関係を持とうとしたし、本の通り強姦集団に襲われたりした。
そしてなんとか僕は大学に入った。
入学式のあと、ラグビー部に誘われた。今までの経験からいえば断るべきだった。
でも僕は一図の望みを持って入部してしまった。その結果、僕はみんなに初日から輪姦された。
もう僕は諦めていた。そういう運命なんだと自分に言い聞かせた。
汗臭い体育会系の男たちに尻を掘られても、垢で蒸れたペニスを咥えさせられても、僕は全てをすんなりと受け入れた。
僕に第一声をかけてきた大柄なキャプテンに後ろを貫かれた時、また可愛いと言われた。僕はいつまで可愛いままなのだろう。
白濁まみれになって部室に放置されるのは慣れっこになっていた。今度はボディービルサークルの奴らが僕を求めてやってくる。
僕はいつしかマゾヒズムに目覚めている自分に気が付いた。めちゃくちゃにされると興奮する。
中学から鍛えてきたこの肉体を差し出し、何の抵抗もせず、好きなだけ弄ばれたかった。
男も女も、子供も大人も老人も関係なく僕を痛めつけて欲しい。
ハッテン場にも足しげく通って掘ってもらった。征服欲の強いお姉さん方に鞭打たれるのも好きになった。
だけど、僕はもうそれでは満足ができなくなっていた。
どんなに酷く扱われても、既に経験済みのプレイではとてもじゃないが、僕の勃起は鎮まらない。
僕は僕を満たしてくれるものを探す旅に出ることにした。もう大学には戻らないかもしれない。
どこかの海岸沿いにつくられた旧国道を、僕はバイクで走っていた。古びたモーテルの看板が見えた。
いかにも、といった感じの淫らなオブジェが庭を飾っている。
なんとなく引かれるものを感じ、僕はそこで宿泊することにした。
「ふふ、あなた、どうしてここにやってきたの?」
受付の女性は美しい人だった。目鼻のきっちり整った西洋風の美形で、色っぽい胸を従業服のなかにきっちり納めている。
「特に、どうしてって聞かれるような理由は…。」
「あらそう、変ねえ? まあいいわ、おひとり様でよろしいかしら。」
僕は鍵を貰うと、不思議なことを聞く係員の女性と別れ、2部屋しかない客室の片方に入った。
部屋の内装はまるで女性の内部を思わせる。ピンク色の壁紙が一面を覆っていた。調度品も淫欲を高ぶらせるようなものが置いてあった。
スモークシートの張られたガラスの戸棚を開けると、大小様々なディルドが所狭しと並べられている。
僕はなんとなく一番大きいディルドを手にとって、勃ちっぱなしの自分のペニスと比べてみた。
一回り以上僕の方が大きい。自分より大きなものでもないと、きっと僕のマゾ的欲求は満足しないだろうから、僕はそれを元の位置に戻した。
テレビもない、冷蔵庫もない、完全にヤる為だけの部屋で、僕はキングサイズのベッドにトランクス姿で寝転がる。そのまま天窓から星を眺めていた。
今夜はずっと股間を腫らしたまま過ごしそうだ。僕の欲望を満たしてくれる相手などそうそういるはずもない。
ただ性交するくらいでは、僕はもう何も感じられないのだから。
「一人で寂しくおやすみ中かしら? お客様。」
さっきの受付嬢が勝手に僕の部屋へと入ってきた。咎める暇もなく、彼女はベットに足を掛ける。
「な、なんのつもりですか!?」
「ここはセックスの為のモーテルよ。一人で泊まるなんて許さないわ。こんなにいい身体なのに勿体ない。」
乳首に女の舌が当たる。熟練の匂いを漂わせるくすぐり方だが、やはり何にも感じない。
僕の胸に指を這わせ、腹筋のでこぼこをなぞりながら、彼女は細枝のような指をトランクスの中に滑り込ませる。
「ふふ、こんなにいきり勃たせちゃって。相当長い間だしてないわね。」
「ちょっとした不感症なもんでね。きっと君にも無理だよ。」
「まあ、そんなことを言っていられる余裕はないかもよ?」
妙に自信あふれる痴女だ。服を脱ぎ捨て、彼女はプリンのように柔らかな胸で僕の胴体を揉んだ。
ぺろりとトランクスをずらされる。膝までゴムが下がり、やっと僕のペニスは布地から解放された。
それはバネが仕掛けられているように跳ねあがり、彼女の臀部に引っかかった。
「きっと満足いくはずよ? なんたって、私はね…。」
大きめのコンドームで僕の一物をラッピングし、彼女が笑う。
ふいにキスをされた。
別に気持ちよかったわけでもないのに、僕は何故か、ぼーっと意識を飛ばしてしまった。
気が付くと僕は見慣れぬ場所に寝かされていた。
ピンク色の部屋はすっかり消え去り、シェードランプで照らされた密室が広がる。弱い光は僕を照らすだけで精一杯らしく、部屋の四隅に闇をつくっていた。
僕は裸のまま拘束されているらしい。分娩台に股を広げた状態を維持されている。
手足の自由もないから、股間を隠すこともできない。
足の側に鉄の扉が見えた。ヒールの鳴る足音が近づいてくる。
「起きたみたいね。本当の『モーテル』へようこそ。」
受付の彼女だった。白衣に身を包んでいる。
「どうなっているんだ…? 本当のモーテル?」
彼女が何を言っているのか理解できない。僕はどうなるのだろう。
「ここは一生に一度だけの、究極の快楽が味わえる場所よ。」
注射器を手に彼女が近寄ってくる。僕は首筋に一回、両の胸に各一回、尻に2回と次々針を打たれる。
睾丸と陰茎には合わせて10発分の薬剤が注ぎ込まれた。鋭い痛みと共に、僕の身体に久々の性的快感が満ちてくる。
「な、何を打ったんだ…、すごい、身体が煮えたぎってくる…。」
「猛毒よ。あなたは24時間後に死ぬ。その間、あなたの身体は火のように淫奔を求め続けるようになるの。」
恐ろしい宣言をされたがちっとも恐怖が生まれてこない。
腹の奥が押し縮められていく感覚に襲われる。溜まった性欲が濃縮され、筋肉に伝わってそこら中亀頭になってしまったみたいだ。
「そして、あなたはこれから24時間何をされても絶対に死なないわ。何をされてもね。」
彼女が乳首を一舐めするだけで、さっきまであんなに穏やかだった肉茎が雫を漏らす。
「あ、あっ! ああーーー、もっと、もっとお…。」
「慌てなくてもいいのよ。まだ夜は長いんだから。」
誰かが彼女に呼ばれたらしい。ぞろぞろと何人も狭い室内に入ってくる。
鼻を突く匂いは、汗だくになった男の臭気だ。
「おああーーーー! はっはあっ、はぐううううあうあっーーーー!!!」
彼女の去った部屋で、僕は大勢の男の相手をした。
暗闇で何人その部屋にいるのか分からない。だけど相当多い事は分かる。
顔の見えない彼らの肉体は鋼のように締まっていた。化物のような筋肉量が目に映る。
でかい体躯の男たちは全員、陰毛の森を築く股間に、野球のバットをつけたみたいな黒々しいコックを持っていた。
全ての男性的要素において、僕は彼らに敗北していた。だけど最高だった。
自分より優れた男たちになすすべなく虐げられる。久しぶりの興奮が僕をめちゃくちゃにする。
たわしで亀頭がごしごし洗われている。恥粕がみるみる取れていくのと同時に、ペニスにマチ針がたくさん刺さるような激痛が走って、僕は何度も射精した。
カエデの葉のように両手の指が広げられる。何をするのかと思っていたら、指と指の間に太いペニスが次々差し込まれた。
片方で4本、合計8本もの猛々しい男根に奉仕できた。熱い幹が行き来され、指を挟み潰した。
拳を握ると硬くなった亀頭の群れが掌に擦りつけられる。そして動きも一段と速くなった。
両足にも沢山の肉棒が殺到したが、親指と人差し指でのみしか太いペニスを挟めなかった。
僕はものすごく彼らに対して申し訳なかった。
髪の毛を引っ張られて、首だけ逆さの状態で分娩台の端から落とされた。
顎を引かれ、勝手に口が開く。首の骨がぎりぎり軋む。
目の前で逆さまになった男性器が見えた。アボガドのように大きな睾丸が目線の先にぶら下がっている。
「うぐぐうう…。」
男の下半身が近づいてくる。僕は強引にフェラチオを強要された。
太い雁首がすぐ喉に到達し、僕は窒息しそうになった。毛むくじゃらの陰嚢が両目にばちばちと当たる。
失明しそうなくらいの勢いのつけ方に対し、僕は舌を使って目の前の男に感謝の意を伝えた。
その時お尻に向かって熱気が飛んできた。手つかずだったそこに濡れた肉塊が当たる。
僕はとうとうやってきたその瞬間に狂喜乱舞した。出来れば指なんかで慣らさないでくれ。
ぶっといのをそのまま僕にくれ。
「もごおおおおーーーーー!!?! 」
誰かの沸騰した肉棒が僕の一番深い場所まで入ってきた。熱々のホットドッグを突っ込まれたみたいで、腸内が大火傷しそうだった。
どんな奴のどんなペニスが僕を犯しているのか見たかった。だけど僕の頭は依然逆さまのまま、乱暴に使用されている途中で、その願いはかなわない。
発射された男のカルピスが僕の大腸を満タンにした。ねじり抜かれた肉棒に続き、新しい巨根が僕の火照った穴にあてがわれる。
「あひっひひいいいいーーー!!」
ダンベルシャフトのような剛根の進行は、僕のGポイントなどとっくに通り過ぎてしまっている。僕の陰嚢は腰を打ち当てる男と僕の間に滑り落ち、プレスされて潰されそうだ。
それでもよかった。僕が気持ちよくなれるのは前立腺刺激じゃないから。
ひたすらに大勢から苛め抜かれることだけなのだから。
何十人もの強大なペニスに抱かれ、僕は何回も陰茎を振るわせ達した。
僕の全身をくまなく覆うのは、誰のものかも分からない真っ白い飛沫の塊だ。
体中の筋肉が男の精に汚されていた。そのせいで布団でも被っているみたいに暖かかった。
冷たい印象の暗い部屋は暑苦しい男たちの匂いでむせかえるように変化していた。
最後の一人がとびきり激しい射精を腹の中にぶちまけてくれた。きっと今ので注がれた精液は十二指腸くらいまで満たしただろう。僕はお腹パンパンだった。
「ああ、ど、こに、いくんだよお…。 いかないで、もっとやって…。」
僕の哀願も聞かず、気の済んだらしい彼らはとっとと引き揚げてしまった。
長い静寂が室内に戻ってきた。僕はじれったかった。
誰か、もっともっと僕を傷つけて欲しい。
彼女は確か、究極の快楽が味わえると言っていた。こんな程度では僕にとって究極とはいい難い。
鉄の扉がまた開いた。早く早くと心臓が早鐘のように鳴る。
「あーあ、いい格好になっちゃって。男のシロップ漬けみたい。」
白衣をまとった受付の彼女だ。僕は恥も外聞もなく叫んだ。
「お願いします、お願いします、僕をもっと弄ってくださいっ!!」
「ぶっ、くくくくくっ! こんなマゾ男は初めてよ!」
彼女に爆笑されるのもまた快感だった。猛毒が僕を殺すまで、後何時間だろう。
最期の最後まで僕は享楽に殉じたかった。
「はーい、それでは皆さん、お手元にフォークとナイフはちゃんと持っておいででしょうか?」
金属のかちゃかちゃと磨れあう音がした。大勢の男たちに替わって、今度は女たちが僕を取り囲んでいる。
丸身を帯びた安産型のスタイルが多い。乳房と陰部を下着で覆っただけの女たちは猫のように舌なずめりをした。
銀色に光る数多のナイフとフォーク、それが何をする為にそこにあるのか。僕は興味津々だった。
「見て下さい。美しい力瘤、引き締まったもも肉、脂肪分のない柔らかな肉質。素晴らしいですね。」
受付の彼女が僕の身体にナイフを置いて、部位の説明をしている。
勃起した状態が一番食べごろなんですよ、と言われて、そそり立つペニスにナイフを当てられた僕は、ようやく趣旨を理解した。
筋金入りのマゾヒストの僕でさえ、いくらなんでもそれは洒落にならないと思った。彼女らは僕を食肉のように生で食うつもりなのだ。
「大量の精液でトッピングされた今がとてもおいしいんですよ。さ、まずはどこをいただきましょうか?」
「はーい、私、このおちんちんが食べてみたいでーす。」
ブーイングが上がった。僕のペニスは人気が高いらしい。ちょっと嬉しかった。
僕の一物を誰が食するのかがじゃんけんで決められた。結果、竿は受付の彼女が、玉は他の二人が食べる権利を勝ち取った。
「じゃあ、まずはおちんちんを残さず切ってしまいましょう。」
白衣の彼女が肉斬り包丁を取り出した。分娩台が動かされ、足を限界まで開かされた僕は、己の象徴を女たちに自ら捧げる格好となった。
「誰か引っ張っておいてください。そう、そんな感じで。」
敏感な亀頭が引っ張られると、彼女は付け根に包丁を添えた。
異常性愛でしか満足できなくて、ほとほと僕を困らせてきた肉茎とはいえ無くなってしまうのは複雑な心境だ。
僕は嬉しいのか恐ろしいのかわからずに震えるだけだった。
ぶしゃっ。
僕の膨張した肉棒が、二つの雄玉と共に皿へ盛られた。
「やっぱり気持ちよかったのね。この子、白目を剥いちゃってるわ。」
彼女の声がした。素晴らしい感動だった。これほどの苦痛と解放感はもう二度と味わえない。
僕の血を吸ったスポンジのような海綿体が裂ける瞬間、
尿道を包丁が切断する瞬間、
僕の種を育んできた双球が身体を離れた瞬間、怒涛のような射精感が僕を襲った。
男でなくなる絶望感は、そのまま絶頂の信号に脳内変換された。
切り取られた一瞬の間に、一生分のオナニーをしたような快感が生まれる。ペニスのことしか考えられない。
「あひいい! おあ、あええ、お、おあああああーーー!?!?!?!?」
僕は血流と共に、切断面からスペルマの潮を吹いた。
受付の彼女は白衣を翻し、僕から切り取った陰茎を扉の向こうに持って行ってしまった。
残った女たちの手で、収穫された金玉に僕の血液と精液がドレッシングみたいにかかった。
「いっただっきまーす。」
「あむあむ、うん、濃厚でおいしー!」
僕の睾丸を食べた女は、もちもちした触感が楽しいと言った。逆にもう一人の方はこりこりした歯ごたえが堪らなかったそうだ。
どっちの感想が正しいのか、僕にはわからない。僕も食べてみたいと思った。
そしてそれを火蓋に、僕の身体はどんどん屠殺される牛のように食されだした。
太ももの肉は丸ごとかぶりつかれた。飢えた鬼のように犬歯をたてる女性の食いっぷりが凄まじかった。
山脈のように鍛えられた腹筋は一山ごとに切り取られた。胸筋も上腕の肉も同じようにして女たちの腹に収まっていく。
白衣を真っ赤に染めた彼女が部屋に帰ってきた。持ってこられた銀の皿の上には、僕の大切なペニスが調理されて横たわっていた。
「おちんちんを油でにかりっと揚げてみました。どう? 一段とおいしそうになったでしょう?」
彼女は特別に、それを食べさせてくれるらしい。僕は感涙した。
こんがりきつね色のそれを、彼女の掌が僕の口に押し込んでくる。熱々の油で揚げられた亀頭が、喉に食い込んだ。
何百本ものエノキ茸を一気に噛んだような、弾力ある硬い歯ごたえだった。ちょっと栗の花臭い肉汁が溢れだしてくる。
一旦歯が通るようになると、皮はかりかりで、中は鶏肉のように柔らかい。自分の泌尿器がこんなにおいしく表情に富んだ食材だったとは気が付かなかった。
自分の男根料理に夢中になっている間にも、僕の全身にはナイフが走っている鈍痛があった。
狂気の女集団に、どんどん僕の鍛えられた良質な肉が削ぎ取られていった。無残な姿にされていく自分を感じれば感じる程、僕の肉体は血気盛んに勃起した。
ペニスを失ってからは、全身が性器のかわりに快楽を呼び集めているようだった。これぞ、まさしく僕が望んだ究極の快楽だった。
僕の軽くなった肉体は受付嬢の女に担がれ、鉄の扉を抜けた。鍛え上げた筋肉を余すとこなく食事にされ、僕は瞼ひとつ動かすことすらできない。
モーテルの表にでた。さっきまでいた場所は地下室のようらしい。さざ波の音がする。
海が見えてきた。砂浜に連れてこられたようだ。これ以上僕になにをするつもりなのだろうか。
「もうすぐ注射から丸一日が経つわ。その前に、ひと足早く火葬にしてあげる。」
十字架が運ばれてきた。かろうじて形を残す僕の手と足に五寸釘が打たれる。
ハンマーが釘を打つたび、脳を打つような痺れがあった。
男たちに囲まれる。彼らの大きなペニスから放尿が始まり、僕の顔を狙い撃ちにする。
ちょうど失血していて喉が渇いていた。ありがたく思い、僕は雄臭い黄金水をごくごく飲んだ。
神の子のように、僕は十字架に架けられる。茨の冠の代わりなのだろうか、僕の破れたトランクスが頭にかぶせられた。
「さあ、これでフィナーレよ。よがり狂って天に召されなさいな。」
砂に十字架が突きたてられる。ガソリンがかかった藁の塊に松明の火が燃え移った。
僕はいろんな人に見あげられていた。僕をたっぷり犯してくれた逞しい男たち、僕の筋肉をおいしそうに食べてくれた美しい女たち、みんな僕を見て笑っている。
「あーーー、あーーーあああっーーーーー!!!」
駆け上がった火が足を嬲る。下半身が火の達磨になった。もうじき僕は死ぬ。
存在しないはずのペニスが、熱い射精を繰り返している。
この永遠に続くかのような業火の愛撫を身に受けて、僕の意識は海の底へ、堕ちていく…。
鳥のちゅんちゅんという優しい鳴き声がした。僕は飛び起きた。
キングサイズのベッド、ピンクの壁紙。そこはモーテルで借りた部屋だった。
すっかり朝日が昇り、海鳥が歌声をあげながら飛び交っている。
「うーん、あんた、昨日はすごかったねえ?」
隣には受付の女が起き上がって僕を見ていた。僕も彼女も生まれたままの姿でシーツに包まれている。
僕の身体はいたって健常だった。どこも食われていないし、あれだけしつこかった股間の昂りもさっぱり萎んでいた。
「い、いったい…。あれはなんだったんだ…?」
「私、ちょっとした超能力みたいなのを持ってるんだ。」
僕の精液で膨らんだコンドームをいくつも摘まみながら、彼女は言った。
「私とセックスした奴に、望み通りのいい夢を見せてやる力なの。あんたもすっごく気持ちよさそうで良かったわ。」
言葉が出なかった。彼女は本物の女神だった。僕の旅はここで終わりだ。
「ねえ、あんたは一体どんな夢を見たの?」
「僕は、ぼく、は…。」
おもわず僕は彼女を抱きしめた。号泣した。
どんな羞恥プレイをさせられても、どんなに鞭打たれても、こんなに涙が出たことはなかった。
彼女は驚きもせず、優しく頭をさすってくれた。
あんた、やっぱり可愛いねえ。そんな声が上から振ってきた。
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投稿:2010.11.24
モーテルでの一夜
著者 モブ 様 / アクセス 16571 / ♥ 3