日の本共和国の首都、T京では今密かなブームとして女子学生の間ではやっているものがあった。
リアル体感型格闘ゲーム、『チンポー・ファイター』略してTFである。
今日もまた、ストリートジャングルで出会った二人の女子高生が、目線を交わし火花を散らしている。
凛としたスジのある目をした女の子、明美はこの日、頭に茶髪を盛るだけ盛ったギャル女の真理亜に絡まれてしまった。
原因はファーストフード店での行列に真理亜が割り込みをした、していないの口論からだった。
「いくら一日限定10個までのオスバーガーが食べたいからって、順番無視しないでよ!」
「何言いがかりつけてくれてんの、まじうぜーんだけど? アタシは昨日並んで駄目だったんだ!」
真理亜は手入れの行き届いていないセットされた髪をいじりながら、明美を小馬鹿にしたように睨む。
「何それ、だから何なわけ?」
「わっかんねーのかよ、だからアタシは今日ここから並んでもいーんだよ!」
昨日の話など関係ある筈がない。明美は理屈の通っていない言い分に怒り心頭だった。
「分かったらどけよ、まじジャマなんですけどー。」
「待って、だったら決めましょう!」
TFで。そう言って彼女はチンポー・ファイターのコントローラーを鞄から取り出すと、真理亜の鼻先に突き付けた。
「へえ、あんたもやるんだ。でもてめえじゃアタシには絶対勝てねーよ!」
「やるのやらないの、どっち!」
真理亜は明美から売られたケンカを買った。完全に舐めた目つきで自分を見る馬鹿女に、対抗心をめらめらと燃やす明美であった。
TFのプレイ用ドームに着いた明美は、携帯で何処かに連絡を取る。
「はい、もしもし?」
「卓弥? 今すぐドームに来なさい。TFやるわよ。」
電話の話し相手は明美の同級生で幼馴染、さらに彼氏である卓弥だった。
彼は明美の命令にうめき声を漏らした。
「ええ! い、今ちょっと手が離せない用事があって…。」
「そんなの関係ないわ! いいこと、10分以内に来なかったら…どうなるか分かるわよね?」
携帯をパタンと閉じ、明美は真理亜の方をぎっと睨んだ。
彼女もまた、自分の彼氏らしい男と通話中だ。相手の野太い声がこっちにまで聞こえてくる。
TFは特殊なゲームである。プレイには人間が二人一組にならないといけないのだ。
大抵は男女のペアになり、その場合は女がプレイヤー、男が必ずファイターになる。
コントローラーは女が持ち、その操作によってファイターは動く。先に相手のノックダウン、気絶が確認されたら勝ちだ。
つまりTFとは、人間を格闘キャラクターにして実際に戦闘させる遊びなのである。
卓弥が到着したのは8分後だった。よほど速く走ったのか、息を切らしている。
「早いわね、顔くらいちゃんと洗ってきた?」
「う、うん…相手は誰だい?」
びくびくしながら卓弥は明美に聞いた。その時、爆音が向こうからやってきた。
黒く馬鹿でかい車が乱暴な縦列駐車を決めてドームの傍らに停車する。
「おう、マリア。相手はどこのどいつだ。」
「ああーん、吾郎。あいつよあいつ。あの馬鹿そうな女。」
真理亜に吾郎と呼ばれた男は、卓弥の二周りはでかい大柄な男だった。いかにも不良といった感じで、未成年にも関わらず煙草を吸っている。
「なんだあの野郎、スーパーから逃げてきたモヤシみたいじゃねえか?」
「どどどどうしよう、あいつ、むっちゃ強そうだよ…。」
華奢な草食系の卓弥が恐がるのも無理はない。さっきまで吾郎は誰かを殴っていたらしく、虎柄のジャンパーに新しい血が付いていたからだ。
「やめようよ、謝ろうよ、どうせ大したことじゃないんでしょ?」
「弱気ね、大丈夫よ、私に任せておきなさい。」
意地の張り合いになると、卓弥では明美を止められない。卓弥は頭を抱えながら明美と一緒にドームへ入った。
スタンバイルームに入り、卓弥は服を全部脱いだ。
服を着た状態からの外目では分からないのだが、彼の身体は結構鍛えられていた。柔軟で、細いが締まった筋肉に覆われている。
ただ唯一異常なポイントを除けば、まず間違いなく女の子ならかぶりついてしまいたい肉体だろう。
「うん、コンディションは抜群みたいね。さてコントローラーの調子はどうかしら?」
鞄からTFコントローラーがぬっと姿を現した。卓弥は喉を鳴らした。
なぜならそれは、まごうことなき彼自身のペニスだったからである。
チンポー・ファイターの一番面白い部分として、そのコントローラーが何で出来ているかについて説明したい。
優れた外科医療技術によって、T京では身体の一部を切断した後、それを別に生かしておく技術ができた。それは生体維持装置の完成である。
切り取った部分を、例えば手首など、そのまま放置しておいては死んでしまう組織をこの装置に繋げるとする。
するとみるみる血色を取り戻し、持ち主の身体についているのと何ら変わりない機能を保つことができるのだ。
しかも無線通信によって神経の電気信号まで伝達することができるので、自分の身体にあるのと変わらない動きができ、寒い痛いなどの感覚も全くぶれずに感じることができる。
この技術をゲームに転用したのが、大ブームとなったTFなのである。
ファイターとなる男性は、自分の男性器をまるごとプレイヤーに委託する。
プレイヤーは生体維持装置に繋がれた男根をスティックに、睾丸をボタンにしてファイターに命令を下す。
男は大事な己の象徴を女に預け、女は男を必ず勝利させてやろうと奮闘する。プレイの中で、お互いの信頼度は必然的に高まる。
そういう理由から、特に交際している若い男女の間で、TFは絶大な人気を誇るブランドゲームになったのだ。
四角い箱のような生体維持装置に接続された卓弥のペニスを、明美は感度を確かめるようにいじる。
「うっ! はあ、はあううっ…。」
卓弥の股間に装着された神経の送受信デバイスから、波のような快感がやってくる。卓弥は性的興奮を感じ、その情報は遠く離れたペニスを硬くそそり立たせた。
「今日もばっちり反応してる。熱くなってびくびく唸って、まるでうなぎみたいよ。」
「や、やめてよ、そんなこと言われたら恥ずかしいよ…。」
デバイス以外何もない股間をぎゅっと切なさそうに卓弥は押さえた。
ペニスを前に倒されれば、彼は前に動く。後ろなら後方にステップする。
さらにペニスを擦り上げると、卓弥は顔を快感に歪めながらジャンプした。
「まずまずの調子ね。さあ、あいつをぎったんぎったんのめためたにしてやりましょ!」
「無茶だよ、殺されちゃうよお…。」
泣きごとを言う卓弥の耳を引っ張りながら、彼女は足取り強く、TF闘技ルームに向かった。
「遅いじゃん、てか、まじだるいんですけどー。」
TF用の特設リングが設けられた闘技ルームの奥で、相手サイドの真理亜がファイターの吾郎と共に並び立っている。
吾郎もまた全裸であり、その股間にデバイスを装着していた。もちろんペニスはない。
「おう、モヤシ君のご登場か。よく逃げねえでやってきやがったな。」
ドスの聞いた声で話掛けられ、卓弥は委縮する。どう見ても自分が敗北するビジョンしか見えないらしい。
相手の大男は筋骨隆々の胸筋を見せびらかし、ボディビルダーのように太い腕を掲げて威嚇している。吾郎と卓弥とでは、まるで像と小鹿が対決するようなものだ。
「景品のオスバーガーは取り置きしてもらったわ。勝負に勝った方がこの引換券を手に入れるってことでいいかしら?」
たかがハンバーガーの取り合いで戦わされることを聞いた卓弥は、負けん気の強い彼女にあきれてものが言えなかった。
「いいぜ、だがこっちもちょっとだけルールをつけ加えさせてもらおうかい。」
どこまでも尊大な態度を崩さない吾郎は言った。
「この勝負に勝ったほうは、負けた方のコントローラーとファイターを手に入れる。それが追加条件だ。」
「いいわよ、アンティルールね。」
二つ返事でパートナーに相談もすることなく、明美は即答した。卓弥は猛反対した。
「大丈夫大丈夫、あんなやつらへっちゃらよ。」
「何言ってんだよお! もし負けたら僕、どうなると思ってるんだ!」
本気で泣いてしまいそうな卓弥に、明美は突然口づけをした。その一発で彼は呆けたように目をぱちくりさせた。
「私を信じてよ、卓弥。絶対勝たせてあげるから。」
真理亜と吾郎は顔を浅ましく歪ませて、弱気で情けないファイターと無謀なプレイヤーを嘲笑った。
ボクシングのリングと同じサイズのバトルステージに上がって、卓弥と吾郎は向かい合う。
その上空からTFコントローラーを握った両者のプレイヤーが向かい合う。
「なに? その租チン。吾郎のサイズの半分もないって感じー。」
真理亜の手に握られた吾郎の男根は、確かに彼女が言うとおり平均を大きく超えた巨根であった。明美が目測で測るに、22センチはあるのだろうか。
ただしそれは卑猥なピアシングだらけで、汚い色素の沈着した肉が気持ち悪い光沢を放っている。
卓弥のペニスもそう小さいわけではなく、むしろ余裕で平均サイズを超している。だが持ち主の邪悪なオーラをも移植された禍々しい男根と比べると、いささか迫力には欠けていた。
「はん、いくらチンポが馬鹿でかくたって、使い手が悪けりゃ性能は発揮できないわよ?」
「まじうぜーし、っていうか、そのセリフそっくりお返しするし。」
審判マシーンが登場し、ついにゴングが鳴らされた。
「そんじゃいきますかあっ!!」
吾郎はオオカミのように吠えると、いきなり卓弥の細い胴目掛けてタックルした。
間一髪スティックを引いて、卓弥を突進から逃がした明美は、すかさず右の金玉を軽く指で押す。
その命令はパンチだ。
「うおおおっ!!」
卓弥の繰り出した鉄拳はまともに吾郎のわき腹にヒットした。しかし、むっちりした筋肉でガードされた吾郎の体躯には全く歯がたっていない。
「はあ? なにいまのパンチ? 吾郎に効く訳ないでしょ?」
「まだまだこれから!」
今度は左の睾丸を軽く押す。それはキックの合図だ。
ローキックが吾郎の腰に決まる。すると吾郎はスリップしかけた。
「へっ、ちょっとはやるな! そろそろお遊びはやめて、まじでいこうぜマリア!」
「来るわよ、卓弥。気をつけて!」
真理亜の手によって、がちゃがちゃとせわしなく吾郎の巨棒が揺さぶられる。それに合わせて吾郎は攻撃を開始した。
明美もその動きに応戦する。ガードを維持しながら卓弥は俊敏にステップを踏んで、剃刀の刃一枚の間隔で吾郎のラリアットを避けた。
当たれば確実に顎の骨が砕けたであろう。卓弥は身震いし、的確なプレイをする恋人の判断力に感謝した。
「ちょっと、なにこれー! ぜんぜん攻撃があたんないんですけどー!?」
「卓弥は元陸上部のエースなんだから。速さでは誰にも負けないわ!」
その証拠として、上半身はそれ程でもないが、卓弥の下半身は逞しく膨らみ、スプリンターとして鍛錬を積まれたしなやかな筋肉が織り込まれている。
腕力のさほどない卓弥にとって、そのスピードは大きな、そして唯一の武器だった。
「けっ、うさぎみてえに跳ねやがって! そんなら俺はライオン様だあ!」
吾郎は立ち停まり、すううっ、と息を吸い込み始めた。一体何をするつもりか分からないが、明美は一旦卓弥に距離を取らせる。
肺に目一杯まで空気を溜めこみ、吾郎の胸筋はさらに膨れあがった。顔にヘモグロビンが集まって赤くなっている。
「があああああああーーーーーーー!!!!」
ばりばりとガラスが割れるような吠え声によって、闘技ルームの空気がびりびり震えた。
吾郎の放った音の大砲が、正面に立っていた卓弥を直撃した。肋骨が折れたのではないかと感じるくらいの衝撃に、軽く吹っ飛ぶ卓弥。
この反則的な音響攻撃はどうやっても回避しようがない。
「きゃーーー! 吾郎ってば、さいっこーーなんだけどお!!」
「卓弥!? しっかりして!」
自身も轟音の余波によってがんがんと耳鳴りがするなか、ばったりと倒れ伏した卓弥に何度も呼びかける明美。しかし彼はぐったりして反応がない。
「へっ、俺の罵声をもろに受けて目え回さねえやつあいねえよ!」
卓弥の頭をひっつかみ、怒鳴り声の効き具合を確かめる。卓弥の脳みそはぐらんぐらんに揺れていて、どこに吾郎がいるのかすら分からない。
「さあリンチの始まりだあ! 好きに命令してこいよマリア!」
オッケーと軽く返事をした真理亜は、好き勝手に吾郎を暴れさせる。あらかじめ耳栓をつけていた真理亜のダメージは軽微なもので、スムーズに真っ黒なスティックをごりごり動かしていく。
「ぐぎゃっ!! あげえっ!!」
「おらっ! ぼろ雑巾にしてやるよお! くたばっちまいなモヤシ野郎!」
「卓弥! 卓弥あああ!!」
剥きだしの腹に石のような膝をつきいれる。大の字に寝転ばせて、その上にジャンプしてのしかかる。股間のデバイスを強打し、めり込む金属の痛みに悶絶させる。
卓弥は無抵抗のまま、嬲り殺しの目にあった。明美は彼を助けようと、必死に硬さを失わないペニスを握って動かし続ける。
しかしどれだけ握っても、彼の陰茎はコントローラーとしての役目を果たさない。
「いいざまじゃん、オスバーガーの順番をゆずんないからこうなるっていうかー? ぶっちゃけアタシたちに向かってくるのがアホなんじゃねー?」
勝利を確信した真理亜はVサインをつくりながら明美を馬鹿にした。明美はまだ動かない卓弥に向かって命令を発信している。
「お願い、お願い卓弥…動いてっ!!」
願いむなしく、卓弥は吾郎によって後ろから羽交い締めにされる。首を絞められ、とうとう意識が薄くなっていく中で、卓弥は敗北と明美との別れを覚悟した。
「おまえを手に入れたら、まずはてめえのチンポコでてめえのケツの穴をほじってやるよ。生体維持装置の電源を切ってから、イチモツが腐っちまうまで掘りっぱなしにしてやるぜえ!」
おぞましい発想を、明美にも聞こえるように吾郎は言った。
「ああ、それからおまえの彼女も俺が楽しく犯してやるから安心しろよ。へっ、マリアからでっけえ俺のチンポを返してもらう時が楽しみだあ!」
その一言が、卓弥の折れかかった心を怒りの炎で修復した。
ありったけの気力を絞り、先ほどの吾郎が放った声の弾に負けない大声で、卓弥は明美を呼んだ。
「明美っ!! 何をしてもいい! だから僕の頭を覚醒させてくれっ!!」
「た、卓弥…!」
いつもは控えめで、自分のいうことばかりやる自主性のなかった卓弥が、私に命令している。叱咤されて、明美の心もリングの上の恋人と同じく復活した。
「いぎいいいいいいいっ!!!!」
明美は手の内にある、卓弥と自分の想いを繋いだペニスの尿道に、よく尖った親指の爪を突き刺した。
焼けつくような激痛がデバイスから送られ、卓弥は強制的に脳震盪から復帰する。
「なんだあ!? この回復、一体何しやがったあ!?」
「うそ!? まじでありえねーし!!」
相手が驚いた隙をついて、卓弥は自分を締め上げる丸太のような腕から逃げだした。
「ここからがっ! 本当の勝負だ!! 明美、あれをしよう!」
「あれ、ね! わかったわ!!」
二人にしか分からない意識疎通をし、再び軽快な足運びで反撃に出る卓弥。
吾郎はもう一度泡を吹かせてやろうと、息を吸い始める。だが明美も、同じ轍は二度も踏まない。
「うおおっ! 足払いだとお!?」
「はっ、ふっ! もうあの声は出させないぞ!」
頻繁に足払いをして、巨体を崩しにかかる卓弥だが、狙いは甘かった。
「じゃーんぷ、じゃーんぷ! これだけで避けれるっつーの! 馬鹿の一つ覚えって感じー!」
繰り出される最下段への蹴りを、縄跳びを跳ぶようにして吾郎は回避する。
ただ上下に手を動かすだけの単調なスティック操作に、プレイヤーの真理亜も正直退屈のようだ。
「なんだなんだあ!? 大ボラ吹いといて、お前らの策はこんな幼稚園児みたいなもんかよ!」
余裕の表情を取り戻しつつある吾郎。真理亜も小馬鹿にするような表情が戻っている。
「アタシたち、今日あんたたちに勝ったらこれで20連勝! 記念にもならない相手でがっかりって感じだけどねー!」
明美は思わず大爆笑してしまった。卓弥も含み笑いを堪え切れないようだ。
てっきり相手が降参してくるものだと思っていた真理亜と吾郎は、逆に笑われたことで逆上した。
「てめえら! 何がそんなにおかしいんだあ!!?」
「ぷっ、くく! 可笑しすぎる、こんなにツボを押した笑いは久しぶりだわ!!」
「明美、くっくくっ! 僕らこんな奴らに苦戦しちゃってたなんて、本当に笑えるいい冗談だったね!」
「まじきもいんですけど! なにおちょくってんだよ、弱えくせに!!」
明美と卓弥は笑うのをやめた。その笑顔には勝利への確信があった。
足払いは依然継続しているが、一発として吾郎には入っていない。一体何がそんな自信を生み出すのか、相手の二人は困惑する。
「言っちゃう? 僕らの戦績。」
「そうね、身の程知らずにとくと教えてやりましょ!」
「「私たちは(僕たちは)、これで95連勝目だ!!」」
その言葉と同時に、吾郎はがくんと膝をついた。がっしりした肉体は、びくびく痙攣している。
「な、なに!? まじどうなってんの!?」
慌てて真理亜はペニスで出来たコントローラーをがちゃがちゃ動かす。しかしそれは帰って吾郎の異変を増大させるものだった。
「ぐっ、あ、てめえら…まさか、そんな…!!?」
「足払いは別に当てることが目的じゃなかったんだ。真の目的は、君をジャンプさせること。」
卓弥は得意そうにぶんぶんと足を振った。持久力に長けた彼の長足は、疲れ知らずのように動きの質を衰えさせない。
「足払いばかりやってれば、プレイヤーはジャンプの指示を連続で出して回避させるでしょ? でもそれって、あんたの彼氏の一物をずっと扱いているってことだわ。」
真理亜ははっと気が付き、無意識に吾郎の陰茎を上下していた指を動かすのをやめた。
いつの間にか吾郎の巨根は限界まで赤く張りつめ、今にも暴発してしまいそうだ。
ジャンプのコマンドが陰茎を上に扱くことを利用した、TFならではの巧い戦法だった。
「もう触るだけでこいつはイってしまうわ。その隙に蹴りの一発でKOよ。」
「そうしなくてもスティックを握られてないファイターなんて、疲れた僕でも十分倒せるさ。」
「う、ううう! この卑怯者どもがあああ!!」
果たして音響攻撃などという不意打ちを使った者が言っていいセリフなのかどうか、定かではないが、吾郎は悔しそうに吠えた。
「降参したら? アンティルールも無しにしてあげるからさあ。」
「うるさいっ!! やってみなきゃわかんねーじゃん!」
格下の相手だと思われて馬鹿にされ、真理亜の頭には血が上っていた。
完全に詰みの状況であるにも関わらず、自暴自棄になった真理亜はスティックを強く握った。
「おま、ちょっと待てっ!! …う、うひいいいいいいいいっーーーー!!!??」
スティックが前に倒された瞬間、吾郎は恥も外聞もない嬌声をあげて、一気に達した。
真理亜の掌で、醜い巨根が精子を排出しようと脈動する。しかし精液そのものは本体のデバイスに空いた排泄用ホールから溢れだす。
足払いの的確な打ち方により絶妙な扱き方を、知らず知らずのうちにコントロールされた彼のスティックは膨れ上がり、ピアスを弾き飛ばすような勢いで震え勃っている。
身体の奥底から強烈な射精感が次々生まれ、吾郎は尻もちをついてM字に開いた股の機械部品から、臭い雄のミルクを大放出した。吾郎には快感が強すぎて何が何だか分からない。
「さあ、フィニッシュいくよ! 準備はいい?」
「もちろん! 足が疼いて仕方ないよ!」
明美は卓弥の逞しい肉棒を、だらしなく転がる吾郎の方に向け、同時に彼の金玉を二つ同時に引いた。
睾丸の同時引っ張り、それは決まり手発動の合図である。
「せいっ! やああっ!!」
カモシカのような足腰をしならせ、卓弥は跳んだ。空中で一回転し、そのかかとを吾郎の快楽に歪むアホ面に叩きつける。
「あごばあっ!?!?」
見事に空中回転蹴りが炸裂し、吾郎は気持ちよさそうな表情のまま、自分の出した穢れた汁の中に沈んだ。
「ビーッ! シアイシュウリョウ! 勝者、プレイヤー=アケミ!」
審判ロボットが吾郎の気絶を探知し、終わりを告げるホイッスルを鳴らした。
明美はリングまで駆け下り、前半から痛めつけられていた彼氏に駆け寄った。
「へへ、大丈夫大丈夫! …こんなのかすり傷だって。」
傷だらけのボディを誇らしげに見せる恋人の顔は、打撲と痣で膨れ上がり、血で汚れていた。
そんな卓弥に明美は抱きつき、ご褒美にキスをする。
そのとき、一撃でノックアウトされた吾郎を置き去りにして、逆ギレを起こしながら真理亜は退場していった。
「ねえやっぱり可哀そうだよ。やめたげようよ。」
「嫌よ。こいつが言ってきたことじゃないの。」
スタンバイルームには包帯を巻いた卓弥と、明美がいる。
そして真理亜に見捨てられた哀れなファイター、吾郎がベンチに縛りつけられている。
「たしか、あんた卓弥のお尻に卓弥のチンチンを入れてやるって言ってたわよね?」
吾郎と一緒にほっぽり出された彼のコントローラーを取り出すと、明美は黒々とした男性器を生かしている生体維持装置のソケットを抜く。神経伝達回路も切られた。
ピーピーッと警告音が鳴りだす。吾郎は発狂しそうな形相でそれを取り返そうと躍起になるが、縛られているので少しも動けない。
「ほら、あんたの大事な大事なおチンポさん、あと5分もしたら腐っちゃうね!」
「やめやがれっ…やめてください、それだけはやめてえ!!」
「えへへ、じゃあ、これを今からあんたの尻にぶち込むから、それでイったらその時点でスイッチ戻してあげる。」
明美と卓弥に向かって拡げられたお尻の穴は、汚い毛で秘門を隠している。そこに明美は、無理やり吾郎の巨根を何の遠慮もなくぶち込んだ。
「おぎいいええええええーーーーー!!?!?」
尖った銀のピアスに内壁を引っ掻かれ、吾郎は絶叫した。金属の突起物だらけで覆われた長い肉棒は、ずんずん持ち主の肛門を広げていく。
「ほらほら、後1分もないみたいよ。早くしないとあなたの汚い棒はうんこと同じになっちゃうね!」
「いやだああああーーー! は、はやくイかせてくれえっ!!」
元々黒く尖っていた彼の一物は、どんどんさらに黒ずんでいき、組織が壊疽し始めた。
大きな双球は腐臭を放ち、今機械に繋がれたとしても、もう精子を製造することはできないだろう。
散々慣れない前立腺刺激での射精を強要された吾郎は、何人もの女に無理やり突っ込まれてきた罪深き悪根を自分の大腸で腐らせた。
彼がようやく射精できたのは、明美がそれを肛門に突きさしてから15分も経った後だった。
「あー、すっきり! 私と卓弥を舐めてるからあーなんのよ!」
「…時々、僕は明美が物凄く恐いよお…。」
すっかり弱気な草食系男子に戻った卓弥は、戦利品のオスバーガーを渋々口に運んでいる。
どう見ても男の一物を模った具材の数々を、男である卓弥が食べるというのは相当きついことだったらしい。
「後5連勝、そうすれば100連勝よ。あんたとの約束通りこれは返してあげる。」
町の真ん中で、己の象徴を鞄から取り出され、思わず卓弥はぎゃっと叫んでしまった。
「やめてよお、僕のそれ、早く隠して。恥ずかしいからさあ…。」
「100連勝したら…。」
愛おしい人から切り取っても、なお温かいまま活きているペニスに、明美は頬をすりすり寄せる。
卓弥が恋人の愛撫に我慢している傍で、彼女は耳打ちした。
「100連勝したら、私の初めてもあげる。だから、卓弥の初めても頂戴。」
「…うん、もちろん。僕でよければ。」
その時卓弥のペニスから警告音が流れてきた。
「うそっ!! 使い過ぎでコントローラー壊れたみたい!!」
「ええええっ! は、早く病院に行かないと、僕男じゃなくなっちゃうよお!!」
さっきまで良いムードだった二人は血相を変え、タクシーを捕まえると一番近い病院に急行した。
その後、ちゃんと彼女らは100連勝を達成し、今では家族として暮らしているそうだ。
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投稿:2010.11.24
チンポー・ファイター
著者 モブ 様 / アクセス 15176 / ♥ 4