朝から憂鬱だ。私の通う女子高では今日健康診断が行われる。体重がばれるのが嫌なのではない、身体測定でみんなの前で下着姿になりたくないのだ。
一ヶ月前、私は窃盗の罪で少年院に送られた。ちょっとしたゲームのつもりだった。まさかこんな罰を受けるとは思ってもいなかったのだ。弁護士に聞いたはなしだが半年前に法律が改正され、少女による軽犯罪は初犯の場合教育の目的で陰茎と陰嚢、つまりおちんちんを切除することが決まったのだそうだ。みだりに生殖機能を不能にしてはならないと医療法で定められているが、女性のおちんちんには排尿機能のみで生殖機能はないため、法には触れないそうだ。理解できない。
陰部切断系を受けたのは私が初めてらしい。担当弁護士や人権団体は刑を免れるよう動いてくれたが、希望はかなわず、先月刑は執行された。見せしめのつもりだろうか、翌日の新聞に執行後の写真が載った。
(陰茎、陰嚢切除刑を執行された少女)
今は前開きのないパンツをはいている、いや、はかされている。
二度と罪を犯さないように、一年間は前開きのない”去勢少女用”の下着をみにつけることが義務付けられているのだ。人権侵害も甚だしい。もう立ちションもできない。人目を忍び個室で前開きのないパンツをおろし、本来大便をする場所でしゃがんでおしっこをするのだ。
(去勢少女用下着)
私はいつも体育館のわきのほとんど誰もつかわないトイレを使うようにしている。
それでも個室に入るのを見られたことがある。誰だかわからないが連れションをしながらこんなことを話していた。
「あの子、万引きをして捕まった子だよね。」
「わざわざこんな遠くのトイレまできて、うんちをするのをみられたくない小学生じゃないんだから」
「ちがうよ、おしっこするとこをみられたくないんでしょ」
「おしっこなら個室に入ることないじゃん」
「えー知らないの?あの子おちんちん無いんだよ」
「あぁそっか、万引きしておちんちん切られたんだ、かわいそー」
身体測定の時間が着た。同級生はみな下着姿になっている。かわいいブラジャーに
カラフルなアニメ柄のブリーフ、レディース・ブリーフというらしい、を身につけている。一方私はブラジャーは同じだがパンツは小さな、前開き、いわゆる社会の窓の無い下着を身につけている。”あきらかに周りの子とはちがう。おちんちんが無いのがはっきりとわかるのだ。
私は一秒でも早く保健室から飛び出したかった。私のおちんちん…かついておちんちんが付いていた場所に視線を感じる。ようやく、検査がおわり逃げるように保健室を後にした。慌てて飛び出したため身体測定の記録用紙を忘れたことに気づき鳥に戻ったとき、同級生が話している声が聞こえた。
「私、おちんちんの無い女の子ってはじめてみちゃった」
「やめなよー彼女も切りたくて切ったんじゃないんだし」
「でもおちんちん無いのってどんな感じなんだろう」
このような陰口を聞くことはもはや慣れていた、いい気分はしなかったが、我慢をしていた。でもあの行動だけは許せなかった。
ちょうど私が保健室のドアを開けた時だ。
「ほら、こうすればつぐみちゃんの気持ちわかるよ」
「きゃはは、本当だ。私もやってみよー」
彼女たちはおちんちんを足の間に挟んではしゃいでいた。
彼女たちは私が立っていることに気がついた、空気が凍った。
「あっ・・・ごめん」
私は黙って彼女を睨みつけた。ただ一言のみ発して。
「許さない」
検査表を取り保健室を後にした。
(続く)
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投稿:2010.11.25
復讐(前編)
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