太陽照り付けるコロッセオの中央で、衆人環視の中、二人の剣闘士が決闘中だ。
赤髪の気前が良さそうな好青年、ジダルは斧を振るう大柄な戦士である。
青髪の陰った瞳をしている美青年、テティスは双剣を操り、手数に優れる戦士である。
斧と剣で戦う二人の奴隷は、幼き頃より共に修練を重ね、お互いに親友と呼ぶべき間柄であった。
両者とも実戦の血と汗で磨かれた逞しい体躯を持ち、その皮膚は10才頃からの決闘の古傷で埋め尽くされている。
ジダルが硬そうな上腕二頭筋を盛り上がらせ、両手斧を振りまわす度、歓声が上がる。
鼻先をかすめる距離でかわしたテティスは、双剣をジダルの横っ腹に突き刺そうと、両肩を唸らせる。
口笛が鳴り、太鼓が鳴る。どちらが勝つかで賭けが始まり、人々はヒートアップしていた。
何故唯一無二の親友同士がこうして刃を交えるのか。それは二人の夢を叶える為だ。
ジダルとテティスにはもう一人友達がいた。奴隷侍女であるフリエである。
彼らと同じ年頃の女の子であり、神秘的な清楚さを秘めた波動のベールを纏っている。滑らかな金髪の彼女を見れば、きっとユニコーンも振りかえってしまうだろう。
ジダルとテティスの幼少から、厳しくひもじい剣闘士の訓練時代を支えてきた精神的支柱である。
その彼女をどうにかして奴隷から解放し、自由の身に帰してやるというのが、少年時代のジダルとテティスが誓い合った約束なのだ。
丁度新しい見世物が必要だと思っていた彼らの主人は、本来なら身の程知らずといえるジダルたちの嘆願を聞きいれた。
「フリエだけと言わず、お前たちにも自由のチャンスをやろう。」
そう言われて嬉しそうな笑みで向かい合う二人に、人でなしの主人は冷酷な含みを持ってつけ加えた。
「お前たちが決闘して、勝った方を奴隷から解放してやろう。ただし、敗者はその場で処刑だ。」
奴隷にとって、主人の決定は絶対である。自由にしてくれと言い出した方でもある二人には、辞退すら許されなかった。
「ジダル、まさかこんなことになるなんて…。」
「もちろんやろう、フリエの為に。誓っただろう?」
青い髪を焦げそうなくらいに毟りまわし、取り乱すテティスに対し、ジダルは覚悟を決めてしまったかのように落ちついていた。
最近の賭けで、人気一位、二位を争っている二人の剣闘士であったが、体格の細めなテティスはジダルに大きく筋肉量で劣っていた。
自分が勝つと分かっているからこそ、ここまで冷静でいられるのだ。テティスは親友の肝が据わっている姿をそういう風に捉え、密かに心を軋ませた。
「そこまでえっ!!」
2時間にのぼる激闘の末、ついに勝敗が決した。
ジダルが片手に斧を持ち換えた瞬間、テティスの双剣が遠く決闘場を囲む石壁までそれを弾いたのだ。
テティスは目を瞑っていた。ジダルの斧が自分の胴を上と下に分けたと思っているのだ。
やがて予想していた地獄の苦痛がやってこないことを疑問に思い、うっすら目を開ける。
「はは、やられたよ。お前の勝ちだ、テティス。」
テティスは愕然とした。あっけからんと笑いながら、赤い髪の親友が自分を祝福しているではないか。
「手を、抜いたんだな…?」
「何言ってるんだ。お前が俺より強かった、ただそれだけさあ。」
ジダルは初めから負けるつもりだったのである。テティスという只一人の親友を彼が守るには、こうするよりほかなかったからだ。
やり直しを求めたテティスだが、その声は客たちの歓声にかき消され、誰にも届かなかった。
「さあさあ、先ほどの試合はお楽しみいただけたでしょうか? さて次は無様な敗者、剣闘士ジダルの公開処刑ショーでございます!」
残虐な興奮に満ちた拍手と囃し立てる声が、円形闘技場にこだまする。
テティスは血まみれの闘技場中央部にしゃきっっと立つジダルを、歯痒そうな思いで見ていた。
自分が本来なら、あそこで処刑される筈だったのである。これから無残に殺されるというのに、ジダルは誇り高そうな戦士の顔を崩さない。
誇り高い筈である。まんまと彼は、かけがえのない友、テティスを奴隷から解放することが出来たのだから。
「その前に、勝者テティスの望みを一つだけ、叶えてやることにしましょう! さあ勝者よ、何を望む?」
意地悪な彼らの主人は、そんな二人の心境を知ってか知らずか、そんなことをテティスに聞いた。
暗い影を落とす瞳を揺らめかせ、テティスは友の為にどうしてやれば良いか考えあぐねたあげく、呟くように言った。
「フリエ、を、彼に、…一回だけでもいいから、抱かせてやって、ください…。」
ぎょっとしたのはジダルであった。これから死にゆく自分に、何をさせる気だと怒りだす。
「知ってるんだ。お前も、そしてフリエも、お互いに好きなんだってことぐらい…。」
「な、そんなことはないっ! お、お俺は別に…。」
「はっはっは! これは面白い申し出です! お聞きになりましたでしょうか皆さん! この者は、これから自分の妻となる女を、この負け犬野郎に突きだしたのです!」
意外すぎるこの願いに、彼らの主人は嬉々としてその旨を観客に伝えた。
早速、フリエが連れてこられる。血に濡れた決闘場にふさわしくない、金髪の美女は毅然とした態度で中央へと進み寄る。
さっきまで彼女は幼馴染二人の殺し合う様をずっと見届けていた。さぞかし唇を噛んだのだろう。血の痕が口元についている。
「願いを聞き届けよう勝者テティスよ。さあ、敗者ジダルと奴隷女フリエよ。ここで存分に交わうがいいぞ?」
下品な黄色い声が客席から降ってくる。なんと彼らの主人は、観衆が見ている前で二人を性交させる気なのだ。
奴隷解放を嘆願した時と同じだった。またしても墓穴を掘ってしまったテティスは、己の愚かさを呪った。みすみす二人を見世物にしてしまった罪に苦しみもだえる。
「いいのよテティス、よく言ってくれたわ。」
天使のような救いの声が、テティスを慰めた。ジダルも、親友の思いやりある心を汲みとって優しい言葉をかける。
テティスは地面に伏して、恥さらしな自分の顔を隠した。
闘技場の中央に、木の杭が立てられ、そこにジダルが括りつけられる。
彼は全裸に剥かれていた。鎧で覆われていた肉体は、日差しによって強く輝く。
調教された人食いライオンを、抱えて止められる石柱のような胴は、しっかりと肉の盛った腹筋、胸筋を観衆に晒す。
豪胆なシックスパックをつくる腹筋の盛り上がりによって、何処にへそが隠れているのか分からない。
その腹を一文字に裂く刀傷は、かって彼のはらわたを露出させた程の深い傷である。
重たい斧を軽々振りまわせる両腕は、サイの前足のように節くれだった肉が入り組んで出来ている。腕一本だけで大の大人を投げ飛ばせる怪力が詰まっているのだ。
死闘をくぐりぬけてきたジダルの肉体は、全身戦いの為だけに鍛え抜かれていた。
彼の下腹部に注目した剣闘士好きの婦人連中は、そこにぶら下がるペニスに悲鳴を上げた。
少しも皮の余っていない剥けた亀頭は、まだ勃ってもいないのに、精液の射出口に向かって鋭く尖っている。
肉の幹は太い柳の枝のように垂れさがっている。髪色と同じ、赤い恥毛の覆う下には、瓜を二つ並べたような巨丸が太ももを打ち付けている。
会場にいた男の誰もが嫉妬した。どの男たちの一物も、ジダルの名器とは張り合いにならなかったからだ。
あんな立派な男性器を、奴隷風情が持っているのがやはり許せないらしい。
テティスは焼き焦がすような視線を向けられている、ジダルの巨根を憐れんだ。
ああ見えて、ジダルは姦淫に対してとても抑制的だったからだ。もちろん童貞であった。
「やっと見せてくれた。ジダルは恥ずかしがってたから、てっきり小さいんだと思ってたわ。」
初めて見た愛しいジダルの象徴に口を寄せ、鈴口にキスをする。するとジダルの龍根はめきめきと成長を始め、フリエの手の中で熱く燃えるように滾った。
見れば見る程、けた違いに大きい。太い血管を這い廻らせ脈動するそれは、しばらく刺激を与えられていなかった為、白いマグマをいまにも噴き出しそうに尿道口をぱくぱくしている。
「フリエ…、無理なら、いいんだぞ。こんな馬鹿みたいにでかいチンポの相手なんかしなくたって。」
「ううん、私、ずっとジダルを受け入れたかった。どんなに辛くても、後で後悔するのだけは嫌よ!」
乙女の可憐な唇が、男の汗と恥垢の臭気にまみれた先端を吸い込んでいく。
むせかえしてしまいそうなジダルの臭いを我慢しながら、びくびくと別の生き物みたいに蠢く肉棒を、咥内へ納めていく。
「うっ、ぐううう…!」
大好きなフリエの口を、己の汚い巨棒で犯しているジダルは、いきなり全てを発射しそうな怒涛の快感に対して懸命に抗う。
猫のようなフリエの舌は、ぱんぱんに膨らんだ亀頭を包むように刺激し、肉のいぼで射精を誘う。
切り立った段差をつくる雁首に溜まったゴミを舐め取り、彼女は愛する者の大事な部分を余すところなく唾液で洗った。
ジダルは熱い息を漏らし、尻に力をいれてみなぎる精子の暴走を押さえる。かといって、彼の頑張りはもうほとんど限界に近かった。
「もう、いいだろ、早くしないと、俺達ずっと見られてる…。」
「…うん、じゃあ、いくね。」
柱に括りつけられたままのジダルが、身体を下にずらしてしゃがむ。フリエの口元から濡れそぼった股の割れ目に、天空を打つ逞しいペニスがやってくる。
その頃、観客席にいた者は全員、己の陰部を慰め始めていた。初々しく、切ないセックスまでの道程に、性器を熱くしなかった者はいなかったようだ。
ただ一人、テティスだけがいくら陰茎を硬くしても、決してそれには触れようとしなかった。
テティスは布が欲しかった。彼らの一度きりの情交を、二人の世界だけで行えるよう、周囲から隠す大きな布が、今彼の一番欲しいものだった。
「ふうううっ、ジ、ダルぅ、うううあああああーーーー!!!??」
自らの唾液で温かく塗りつぶした男根に、フリエは跨った。大切に守ってきた処女膜があっという間に裂け、鮮血が滴り落ちる。
硬いジダルの腹筋が、いきなり津波のようにうねった。フリエの中のあまりの熱さに、彼は腰を引いてしまったのだ。
小さな恥丘を限界まで広げさせ、尿道と間違えぬよう、彼女は膣内へと猛る肉茎を誘導する。普通の男ならすっぽり入ってしまう頃なのに、まだ半分も入っていかない。
「んんんんっ!! ああーーー、あああああっ!!」
「フリエっ!! 無理するなよっ!!?」
痛みに意識を飛ばしそうになりながらも、ただがむしゃらにフリエは腰を振る。
自分の持つ大斧の柄よりも太いだろうペニスを、フリエに導かせているジダルは、無駄に成長してくれた己の爆根を恨んだ。
他の者は立派な一物だとうらやましがる。しかし、こんなものは無用の長物なのだ。もっとスリムな男性器なら、フリエも苦しまずに済んだと言うのに。
何より、フリエの悲鳴によって、自分が更に大きくおっ勃たせているのが、ジダルには腹立たしかった。
「ああっ、あ、はいった、ううううんんっ! いやあああああんーーーー!!!」
「うおおおおっ! フリエっ! 狭いぃ、チンポがっ! 煮える…。」
赤い肉釜に、勃起した幹が全部入った。肉の襞がジダル自身をぎっちり掴み、ヘビが締めあげるような前後運動が発生する。
高温の女陰部に侵入したことで、それまでの我慢が切れたジダルは、縛られたポーズで自分から盛んに腰を振った。
「あっ、あっ、あっ、あああっ!!! はあううううっ! ジダルのっ! はちきれそうよおっ!!」
「すまん! 止まらない! とめられないいいーーーー!!!」
ようやくほぐれてきた処女の膣内を、ジダルは剣闘士の怪力を存分にふるいながら乱暴に掘り込む。
処女の血と唾液と愛液の潤滑剤がうまく作用して、挿入の苦痛を両者から取り除いていく。
子宮の奥までぐいぐいと押し当てられた巨根は、窮屈な内部で折れ曲がりながら、尿道口を開いて大瀑布のごとき射精を行った。
「きゃあああああーーーーー!!!?!?!」
「おおおっ、おおおおおおおおーーーーー!!?!?」
白い子種の海が、あっという間に子宮へつくられた。収まりきらぬ濁流はフリエの温かい筒を辿り、地面に向かって逆流する。その濃さといったら、何人孕ませられるのか想像もつかないものだった。
彼らを取り巻きながら自慰に耽る客たちも、その瞬間にイった。所々で白い水柱が立ち、女性の潮が客席を汚す。
もう妊娠して何週間も経ったかのような、ジダルの熱い精液で膨れた腹を押さえ、フリエは逞しい肉棒をそっと体内から抜いた。抜くのと同時に血痕まみれの地面に倒れ伏す。
「テ、テティス。フリエを、頼む…。」
息も絶え絶えになりながらフリエの介抱を頼むジダルは、まだ射精を終えていなかった。
200センチを超える長身の頭上を、切れ目なく超えていく太い一本の白線は、彼がたぐいまれな絶倫家であることの証明だった。
数分にも渡る射精がひとまず終わっても、ジダルの巨大な陰茎はそそり立ったままであった。
フリエは幸運にも、しばらく奥で休まされた。多分、これから起こる更に過酷な地獄絵図に、彼女は耐えられなかっただろう。
「…はっ! こ、これは大変見苦しいものをお見せしてしまいました!! 申し訳ございません!!」
謝罪するジダルらの主人に、観客からの激励のエールが答えとして帰ってくる。お客たちは奴隷の迫力あるセックスショーにだいぶ満足したらしい。
「ご声援ありがとうございます。では、皆さま、これから先ほどの失礼な場面のお詫びとして、処刑までに一つ、軽い余興をご用意させてもらいます!」
テティスが彼の主人に呼ばれ、手渡されたのは自身の獲物である双剣だった。いつの間にか、綺麗に血糊が落とされている。
「では勝者テティスに、はしたない敗者ジダルの股ぐらで育ちに育った、男としての汚い証をばっさり切り落としてもらうことにしましょう!!」
おおーー! と今までで一番の歓声が上がるなか、テティスの顔は髪の色と同じぐらいに青ざめた。親友の大事な一物を、この手で切り取れと命じられたのだ。
「ほら、さっさと剣をあのふてぶてしいチンポに当てないか!」
手を添えられて、テティスは限界まで勃起したジダルのペニスを挟むようにして、逆手に持った双剣を下向きに交わらせられた。
ジダルは腹筋にひやりとした感触を得た。研がれた二つの剣身が触れているのだ。へそのあたりで二本の鉄剣がクロスしている。
そのまま鋏を当てられているように、ジダルの逞しい象徴の根元が、鋭い刃にきりきりと締められている。
「かまうことない。すっぱりとやっちまえ! …じゃないとお前が、罰を受ける。」
ジダルの度胸が、テティスには信じられなかった。親友である男に、オスとして最重要な器官をためらいもせず差し出す勇気など、一体どこから湧いてくるのだろうか。
この恐ろしく太く、長いだけの肉塊を、親友の為に捧げるかどうかなど、別に迷うことでも何でもない。ジダルはそういう粋な男であった。
しかしやはり、彼はどこかで去勢の恐怖と闘っていた。斜塔のように勃った大きい陰茎は前後左右にふるえ、どうやっても己の身体が震えているのを隠せない。
どうせ後で処刑されるとは分かっていても、男の誇り、猛る証を失うことに、本能が拒絶を叫ぶのだった。
「ほらほら、お客が待っているだろう!? さっさとその醜いイチモツを刈り取れっ!!!」
テティスはジダルの目を見た。「やれよ、やるんだ。」覚悟に輝く瞳はそう言っている。
「う、うう、ううああああああっーーーー!!!!」
テティスは叫びながら、愛用の双剣をクロスしたまま下に滑らせた。両サイドから血液の満ちた巨大なペニスが裂ける。
その途端、沢山の白い塊が堰を切ったように噴出する。陰茎切断を感じたジダルの雄としての本能が、子孫を残そうとしているのだ。
切れ味の良い双剣は、単剣の二倍の勢いで肉厚なペニスを斬り断つ。挟撃によって、そそり勃った太い巨根は素早く挟み切れていく。
「いっ! ぐうう…ぎいいいっ…!」
絶望的な暗黒の痛みがジダルを襲ったが、彼は叫び声を喉に押しとどめようとした。しかしうめき声は漏れ、痛みに瞑られた目からは涙が止まらない。
「どうでしょうか? この二人は親友でした。しかし今その親友の手で、奴隷には勿体ないほど立派な男の勲章が斬られていきます! 全く、勝者とは敗者に残酷ですなあ!!」
会場が笑いに包まれる中、テティスは親友の去勢を自ら行い続ける。
その顔面は陰茎から迸る血と、男性機能の危機から生じた強制射精によるジダルの精液、そして彼自身の涙で、美男子だったのが嘘のように醜くなっている。
「テティス、は、早くチンポ全部斬ってくれえっ!! …いっ! いぎあああっ!!?!」
千切れゆくジダルの巨大な証は血に染まった精を吐き続け、持ち主を激痛と快感の嵐に苦しませた。
ジダルは全身の鍛え抜かれた筋肉を、ギリシャ彫刻のように膨れあげて硬直させ、苦痛の終わりを只待つのみだった。
「あああ、ああああ!! ジダル…。やっと、やっと斬れたよ…。もう、終わったよ、終わったんだ…。」
ずどん、と海綿体の詰まった肉棒が地面で重そうな音を立て、テティスの双剣が彼の指から落ちる。
小さな老人用の杖くらいはあろうかという、ジダルの長く太い龍根は、10分かけて本人の雄々しい肉体から切り離された。
ジダルの若い身体からは、雨に濡れたように脂汗が放出されている。去勢の苦痛に耐え抜いた剣闘士の筋肉は痙攣し、まるで強敵を打ち倒した直後のようだ。
「おいおい、まだでっかいキンタマが残っているじゃないか!」
顔をあげたテティスは、自分の犯したミスに気が付いた。彼の双剣は確かにジダルの陰茎を跡形もなく落とした。
しかし大きな睾丸にいたっては、右が半分だけ切り口を晒しながらぶら下がっており、左に至っては全くの無傷である。
「おら、完全に男で無くなってもらわなきゃ、ショーとして意味ねえだろうが! さっさと剣を拾え!」
がたがた震えるテティスは、主人の命令を遂行できそうにない状態まで陥っていた。
もう一度、今度は親友の子種玉を奪えと言われても、これ以上彼にジダルを切り刻めるような気力はない。
「そうかい…言うことを聞かないつもりか…。」
こうなるのを見越していた彼の主人は、へたり込んだテティスにとげのついた鞭を振るおうとする。
その時、沈黙を破ってジダルが縄を引きちぎり始める。
「ぐおおおおああああ!!!」
雄たけびが上がって、一気に彼の腕の戒めが解かれた。すぐに槍を持った警備兵が豹変したジダルを取り囲む。
すると彼は、自由になった腕を血だらけの陰部に伸ばし、己の種がたっぷり含まれた双球を掴んだ。
「…ふ、ふう! ふんんんんんぬううううう!!!」
なんということだろうか。彼はめきめきと腕を鳴らし、自分で自分の睾丸をちぎり取ったのだ。
心臓から直通で送られてきたかのような熱い血潮が、完全に何も無くなった去勢痕から間欠泉のように溢れる。
ジダルのはちきれそうな雄の肉体と、濃い精子を育んできた瓜のような金玉。それが本人の手によって精管をぶちぶちといわせながら、袋ごと逞しい体躯から消えていく。
胸辺りまで腕が引きあげられた時、異常に長かった精管はぷつんと切れ、二つの睾丸は完全にジダルから離断した。
「ど、どうだいお客さん! 俺のデカくて汚いキンタマは!! 奴隷野郎の臭い精子がみっちり詰まった、俺の自慢のキンタマを見てくれ!!」
両手を高く上げ、ジダルは自ら去勢した特大のふぐり玉を観衆に見せつけた。冷や汗と貧血で蒼白になった顔面に、無理やり不自然な笑顔をつくっている。
彼自身の大きな掌にようやく収まっている、重量感あふれる巨大な白子を、観客は一瞬あっけにとられて見ていた。
「あっはははははっ!! あいつ自分でキンタマ抜き取りやがったぜ!!」
「すごい! すごいわ!! なんて面白い奴なの!! そして馬鹿だわ!!!」
「随分と嬉しそうにもぎ取ったじゃねえか!! でっけえもん持ってるくせに、女になりたかったのかよ!!」
口々に観客が彼を嘲り笑う。客席は怒涛の笑い声で埋まった。
「いまからこの俺の、みっともなく太った卑しいキンタマを握り潰すからな! どうかお客さん方、ちゃんとみ、み、見ててくれよな!!」
ぐっと万力のような握力を込めて、自分の大玉を二つとも肉の欠けらに変えてみせ、また大喝采を受ける。並々ならぬ数の精子が、血肉と共にジダルの顔へ飛び散った。
毟り取られた男の宝玉が跡形もなく潰れた時、それを感じ取ったかのようにジダルの身体は跳ねあがり、残留していた白いエキスをすべて股間から排出して見せた。
「うひゃひゃひゃひゃ! …おっと失礼。なんと素晴らしいことでしょうか! 頭のおかしくなった奴隷が、自らの穢れた玉を自分でちぎって、さらには粉々にしてしまいました! とんだ変態野郎です!!」
テティスには親友の乱心したかのような行動の意味が分かっていた。ジダルは、自分を仕置きから助けるため、こんな狂気じみたパフォーマンスをやって見せたのだ。
男の一番弱いところを自らの手でもぎ取る。その行為がどれだけのことか、男のテティスにとってそれは想像するまでもないことだ。
ジダルはもう、痛みすら感じていないのだろう。それ程の激痛、それ程の苦痛が彼を襲ったのだ。
「ははは…。俺のキンタマ、もっとよく見てくれええ…。」
薄ら笑いすら浮かべて、自分で潰した己の金玉を掲げる発狂寸前のジダル。
テティスは彼の為に剣を握れなかったことを、悔やんでも悔やみきれなかった。
「さーあ、皆さま、本日のメインイベント、敗者で変態豚である奴隷、ジダルの処刑ショーを始めようと思います!!」
闘技場に、斬首刑に使われる刑具が運ばれてくる。腕と腰を固定するベルトが十字架の形をした箱型の断頭台から生えている。
頭の乗る部分は穴が開いて、桶が下で罪人の首を待っている。
黒頭巾をしっかり被った処刑人が、死神のように音を立てず現れた。
ジダルの斧とは用途が違う、重さに比重を置いたハルバードのような断頭斧が登場し、会場は一気に湧いた。
処刑に際し、フリエが呼び戻される。彼女はジダルの無残な股間を見た途端、また倒れかけた。
1時間まえくらいには、確かに自分を悦ばせてくれた立派な男性器が、赤い陰毛を僅かに残して、全て消え失せていては仕方がない。
「どうして…どうして、こんな非道いこと…うっ、ううう…。」
テティスは今すぐ自分の双剣で首を掻き切ってしまいたい衝動に駆られた。自分がやったんですなどと、果たしてこんな状態のフリエに告白できるだろうか。
処刑される者は服を着ることを許されない。元々全裸だったジダルは自分で処刑台に進み、親友たちの未来に捧げられる自分の身体を、処刑人の自由にさせる。
十字架状の箱にうつ伏せで寝かされたジダルは、頭を首桶の上になるよう固定され、腕を十字の左右の端で縛られた。胴体は筋肉が太すぎて、拘束ベルトがまわらない。
足は箱を挟んで地面へと降りており、まるで両腕を伸ばしたまま、断頭台にはいはいをする赤ん坊のような格好でジダルは貼り付けられた。
ジダルは真っ黒い穴が眼前に広がっているのを見た。そこに自分の頭は堕ちていき、暗闇で息絶えるのだ。
首を落とす為の斧が掲げられた。処刑人の荒い息遣いが聞こえてくる。
(へへへ…。テティス、フリエ、二人で幸せにな…。)
ジダルは只、親友と愛した者の未来だけを考えていた。死の恐怖はほとんどない。
ざしゅうっ。
ごとんっ。
一気に振り降ろされた斧は、太く締まったジダルの首を一刀両断した。
首受け桶がジダルの頭を受け取り、その上にどくどくと鮮血が降る。
ジダルの残された首なしの胴体はびくびくと痙攣し、鋼のように鍛えられた全身の筋肉をしばらく膨張させた。
そして力を失った肛門がぱっくり開くと、湯気の立つ大便がぼとぼと溢れだす。
ジダルの筋骨凄まじい裸体は、ぐったり弛緩し、体中の穴から尿や血、汗など水分の全てを垂れ流した。
処刑人が桶からジダルの生首を取り出して観客に見せる。
生命力にあふれていた彼は、なんとまだ生きていた。僅かに瞼を動かし、口を力なく動かしている。
すると呼吸の落ちつかない処刑人は、おもむろにズボンを脱ぎ、醜悪な勃起姿のペニスを外気に晒した。
そして、ジダルの口をこじ開けさせると、いきりたった己の肉棒をフェラチオさせたのだ。
「うあああああああーー!!! ああああああーーーー!!!!!」
叫んだのはテティスだった。最期の最後まで親友が嬲り者にされる様に、とうとう精神が耐えきれなくなったのだ。
ごぷごぷと、卑猥な音を立ててジダルの口は犯された。彼はまだ瞬きをしている。
生きた性便器として人生最後の役目を全うさせられる、元グラディエーターの男は一筋の涙を流した。
処刑人があっという間に達した。早漏の白い液体は喉を通り、斧で切断された食道から流れ出る。
ジダルの目からは光が消えていた。彼はもう二度と瞬きをしなかった。
「お楽しみいただけたでしょうか!? 奴隷男の無残な最期、いやあ、それにしても自分でキンタマを抜くなんておっタマげましたねえ!!!」
「ぎゃははは! うまいこと言うねえ!!」
「最高だった!」
「またこういうのやってくれよ!!」
処刑人がようやく己の欲望を全て吐きだし、無造作に転がしたジダルの首を、テティスは拾い上げる。
延々と吐き出された処刑人の精液で、赤髪を白く染められ、彼はまるで老人の生首のようであった。
「さあ、それではこの汚い変態オス奴隷の死体を片付けてもらいましょう!! ライオンちゃん、カモン!!」
檻の門が開き、4頭の雄ライオンが入ってくる。
彼らは日頃から自分たちを屈服させてきた仇敵の剣闘士が、精悍な顔立ちの首も、逞しい男性器も失ったことに気が付いた。
体温を失っていく若者の胴体に4頭は群がり、腸や肋骨を引っ張りだし、逞しい腕や足をバラバラにする。野獣たちは思う存分ジダルの亡骸を遊びながら喰った。
一際大きなライオンが、彼の打ち捨てられた男根のなれの果てをくんくん嗅いだ後、ヘビをちぎるように牙で砕き喰った。
観客は感嘆の声を上げ、この世に二つとない大砲のような、極大の名器が辿った最期を祝った。
その惨景を見ないよう、ジダルの肉や骨が砕ける音を聞かないよう、テティスは闘技場を退場するまでフリエの目と耳をかたくふさいだ。
彼女は白濁まみれのジダルを胸に抱えながら、その間何も言わなかった。
そして、月日がながれ、二人は正式に奴隷から解放され平民に格上げされた。
自分たちがどんなふうにして奴隷の身分を脱したのか、それを隠すために彼らは遠く海の見える村で新たな生活を営むことにした。
ジダルの忘れ形見である娘が、ついに産まれると、テティスもフリエも大喜びした。
それからの日々は2人にとって幸せの連続だった。
だがテティスは夜通しうなされた。自分たちが幸せな毎日を送るのを、地獄からペニスと頭のない全裸のジダルが、己の首を抱えて睨んでいるのだ。
日々どれだけ股間を熱く濡らしても、テティスはフリエと肉体関係を決して持たなかった。
しかしそれでも、テティスの潜在意識は、悠々と自由に生きている彼自身を決して許しはしない。それが忌々しい悪夢となって、テティスを蝕んでいく。
ジダルの悪夢を毎夜見たテティスは、ある決意をする。
「テティス、あなたがジダルのことで気に病む必要ないのよ。馬鹿なことはどうかやめて!!」
「駄目なんだ。俺は、こうしないとジダルのやってくれたことに対して、顔向けできない。」
ジダルが眠る、岬の首塚までやってきたテティスは、短刀を懐から取り出した。
「俺だけが、お前の可哀そうな屍の上で、のうのうと楽しく生きていくなんてできない。」
そう言うと、痛いほど勃起したペニスを出し、彼は自分でそれを斬り落とした。
「ぐううううっ!! ジ、ダル、お前ばっかり、痛かったよな、苦しませて…。ごめんな…。」
残った睾丸も、かつてジダルがやったように手でちぎり取ったテティスは、それらをまとめて親友の首塚に供え、そのまましばらく意識を失った。
その自己去勢を行った夜から、彼は二度とジダルの出てくる悪夢を見なくなったという。
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投稿:2010.11.27
グラディエーターの献身
著者 モブ 様 / アクセス 16529 / ♥ 11