男たちに連れてこられたのは町外れの浜辺の小屋だった。
港と違ってこちらには漁船の姿もなく閑散としている。
小屋と言っても中は結構広さがあり、入ってすぐの土間が2畳ほど、その奥に畳敷きの20畳の部屋が細長く延びている。土間の一部は階段につながっていて、階段の先、2階の周りは回廊のようになっている。つまり、体育館みたいに真ん中は2階まで吹き抜けで2階は柵越しに1階を見下ろせるようになっている。体育館と違うのは、左右の回廊をつなぐように大きな梁がむき出しになっている点だ。
ボクが恥ずかしい姿のまま土間から畳の上に上がらされると、部屋のまん中にたむろしていた男たち——黄色い褌を青い半纏の下に剥き出しにした男、タオルを首に巻いた男、やたら陽に焼けた男の3人——がにたにたした顔で寄ってきた。
「なんだ生ッちろい奴だな?」
黄色褌をがそう言いながらボクの尻を叩いた。
「これが、愛ちゃんといちゃついていたという例の奴か」
「そうだ」
熊顔が低い声で答える。
「なんだ豊漁だな。ミツイシが東京で釣り上げて来たのが一匹いるしな」
「今年はうちの町で若衆入りが2人しかいねえから、もう、町の若い奴を去勢するわけにはいかねえもんな」
「んだんだ。もう、他所の奴を引っ張ってきてニュウハーフにするのがいちばんだべ」
「んだんだ。町の男は協力して子どもを増やさねえと」
「まあ、こうしてよそ者を去勢すればいいわけだ」
男たちは口々に勝手なことを言っている。
「お願いです、助けてください」
ボクは男たちに懇願したが、誰も聞いてくれる様子はない。
タオルを首に巻いた男がいきなりボクの睾丸をまさぐった。
「ちんぽはそれほどじゃないが、玉は結構大きいな。お前、去勢されるんだぞ。どうだ、今の気分は?」
「お願い、助けて」
返事の代わりに玉をひねりあげる。
「ひいぃ」
「お前よ、ちょうどよいときにつかまったわ」
もうひとり、陽に焼けた男がボクの肛門に指を入れてきた。
「今晩、ほれ、あそこにいる奴を去勢するから、よく見とけ」
「・・・」
部屋の中央の台の上で褐色の男がひとり静かに寝ている。
「お前がこれからされることを生で見れるんだべ、幸せもんだなあ」
「いや。同じじゃねえ。こいつは俺の考えでやらせてくれ」
シンちゃんがつぶやいた。
周りの男たちが怪訝そうな顔をする
「どうするつもりだ。去勢しないのか?」
「いや、去勢はするさ」
まるで、犬や牛でも扱うかのような言い方だ。
「やめて!」
誰かがボクのあそこを叩く。
「うるせえな。どうせおめえはもう男じゃないんだ」
「なんだ、シンちゃん、どうするの?」
「愛子に去勢させようと思う」
タオルが大きくうなづいた。
「おお、それはいい。町の女も他所の男と付き合うと男がどうなるか思い知るな」
「お前はここだ。ここは特等席だからな」
ボクはペニスを掴まれて、褐色の男が寝ている台の脇に引っ張ってこられた。梁から縄が垂れている。後ろ手に縛られている縄がそれにくくりつけられる。
褐色の男。言っても陽焼けサロンで焼いているのかサーファーなのか髪は茶髪、耳にはピアスが光るいわゆるチャラ男という感じだ。男は両手両足を台の端に縛られ大の字になっている。睾丸の根元赤い紐が巻かれそこからペニスが屹立している。睡眠薬で眠らされているのだろうがこんな姿で勃起しているのが不思議だ。
「おらおらヤラシイ目で見るな」
「ちんちん勃っているだろ。こいつには薬飲ましてあるから、勃起薬をな。勃起しているとこを一気にすぱっと切ってやるんだ」
「ゲンゴ爺、こんなもんでいいかな」
「そうだな。後は肛門にこいつを刺しておけ」
どこからか現れた老人がひとり、こけしのようなものでボクのペニスをつつく。
タオルがそれを受け取ってボクの背後に回る。
黄色褌がボクの前にしゃがんでチャラ男と同じ細い赤い紐でボクの玉を縛る。
「ううううう」
「どうせ切り取るんだから腐るくらいきつく縛っておけ」
「やめて・・・」
「ここはな若衆宿といってな、若者を教育する場所なんだ」
ゲンゴ爺が何事もなかったかのようにつぶやく。
「昔はな、若い奴がいっぱいいただろ。中には男として役にたちそうもない奴もいた。で、そういう奴は去勢して女にしていたんだ。もちろん、みんな、男のままでいたいからな。若い男たちは男らしく育つわけさ。それでも昔は若い奴もたくさんいたからな。何十人かにひとりは去勢してきたんだぞ。まあ、去勢されるだけじゃない。ここに閉じ込めて毎日毎晩上も下も犯られ続けるわけだ。肉便器というやつだな。ま、男だから妊娠の心配もないが、みんな、1年も経つとたいてい頭がおかしくなっちまうし締まりも悪くなる。そういう奴は外国漁船に売ってさらに船で奉仕させる。ガイジンはあそこもでかいから、それでも役にたつんだろう。で、また、新しいのを去勢する。だども、最近は若者も少ないから、そういう伝統も守れないんだ。でも、伝統は守らなけりゃならない。外国船に売る金は結構、大きいからな」
金目当てなのか・・・
「で、最近じゃ、毎年、都会に行っちゃさらってきてひとりふたり去勢するわけだ」
「ひいいい」
肛門に焼け付くような痛みが走る。
「お前もこれからそういう運命だわな。まあ、同じときにふたりは珍しいが、それだけ肛門のもちもいいだろ」
肛門の痛みに加えて直腸がこわばる感じがする。何かを押し入れられたのだろう。さっきのこけしなのか。
男たちがボクの両足を開き、淡々と床の輪に足首を縛り、逆Y字のかたちに固定する。
ゲンゴ爺は
「去勢待ちの奴はこうして勃たせておくしきたりだ」
「ほら、起きろ!」
熊顔がチャラ男のペニスを横殴りすると、その顔がぴくんと震えた。
「目が覚めたか?」
チャラ男が目を開けてあたりを見回している。裸にされてペニスを突っ立てているボクの姿を見て、急に我に返ったのか台の上でバタバタ暴れ始めた。
「チクショウ、なんだよ、これ、ほどけよ」暴れれば暴れるほど睾丸が絞まりペニスが怒張していく。
(つづく)
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投稿:2011.04.26更新:2011.04.30
若衆宿伝説(2)
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