私が小学生になって初めて仲良くなったのは、瞳ちゃんという子だった。
私とは別の幼稚園に通っていて、同じピアノ教室に通っていたことがきっかけだった。
瞳ちゃんは、色白で髪を長くのばしていて、はっとするような美少女。
その上、お勉強もよくできて優しくって、私みたいに、どっちかというとお転婆の男勝りで、弟と一緒に泥まみれになって転げまわっていた色黒で髪の毛も短くってというタイプとは正反対だった。
「かなえちゃん。うちに遊びにおいでよ。」
ある日、瞳ちゃんは私に言った。
瞳ちゃんの家は、2階建ての大きな家だった。
「いらっしゃい。あなたがかなえちゃんね。」
「…はじめまして、瞳ちゃんのお母さん。これ、うちのおかあさ…いえ、母が瞳ちゃんとご家族へどうぞって。」
私が差し出したイチゴのパックを受け取りながら、瞳ちゃんのお母さんは言った。
「あらあら。そこまで気を使ってくれなくったっていいのよ。」
通された瞳ちゃんの部屋には、きちんと片づいていてピアノの上にぬいぐるみがいくつも飾ってあった。
部屋の隅にはユキちゃんハウスまで。
「お片付けできないから」ってお部屋をもらえない私なんかとは大違い。
「全部、お誕生日やクリスマスにおじいちゃんやおばあちゃんやパパやママがくれたの。」
瞳ちゃんは、そこに目をやりながらそう言った。
そこに、瞳ちゃんのお母さんが、ケーキと紅茶をいれたお盆を持ってきて、こう言った。
「ママはちょっと用事があって出かけてきますからね。1時間くらいで戻るから。」
「はーい。」
元気良く返事をした瞳ちゃんは、ユキちゃんハウスを引っ張り出して言った。
「かなえちゃん、ユキちゃんで遊ぼう」
ユキちゃんハウスの中には、ユキちゃんと弟のタロウくん、ユキちゃんのお友達のサッちゃん、ユキちゃんのボーイフレンドのケンイチ君のお人形まであった。
「ユキちゃんのお友達や弟は、ピアノでよく頑張ったら買ってもらったんだ。…お医者さんごっこしようね。ユキちゃんが先生で、サッちゃんが看護婦さん。タロウくんとケンイチ君が患者さん。かなえちゃん、誰の役がやりたい?」
「瞳ちゃんが決めていいよ。瞳ちゃんのお人形さんだもん。」
「じゃあ、ユキちゃんとタロウくんとケンイチ君が私で、サッちゃんがかなえちゃんでいい?タロウくんかケンイチ君の役をやってもいいよ。」
「…瞳ちゃんが決めたのでいいよ。」
「タロウくん、お熱があるようですねえ。注射を打ちましょう。サッちゃん、注射を用意してください。」
「はい、用意しました。」
「じゃあ、打ちますよ。…ちくっ!!」
「うえーん!!」
「あらあら、泣いちゃいましたねえ。…では、次の患者さんのケンイチ君。」
「…おやあ?ケンイチ君はちょっと難しい病気みたいですねえ。全部服を脱いでください。」
瞳ちゃんは、ケンイチ君の服を、全部手早く脱がしてしまった。
それから、ピンク色の練り消しゴムを取り出して、何か作り始めた。
作り終わったそれをケンイチ君の体にくっつける。
…それは、本物そっくりの、タマタマの入った袋と、おちんちんだった。
「…ケンイチ君は、どうやらおちんちんとタマタマの病気みたいですね。この注射は、サッちゃん看護婦さんには難しいみたいだから、私直々にやりましょうね。」
あっけにとられている私を尻目に、瞳ちゃんは、待ち針を取り出す。
「まず右のタマタマですよ…ぶちゅっ!!」
そう言いながら針を突き立てた。
「次は左に…ぶちゅっ!!」
「おやおや、効き目がないようですねえ。…最後はおちんちんの先っちょから…ぶっちゅーっ!!」
待ち針は、ケンイチ君のおちんちんの先っちょからぐりぐりとねじ込まれて、まるでアメリカンドッグのように串刺しにしてしまった。
「…全然効果がないですねえ。このおちんちんとタマタマはもう駄目です。切ってしまいましょうね。」
瞳ちゃんは、待ち針をしまって鋏を取り出すと、練り消しゴムで出来た、ケンイチ君のおちんちんとタマタマの付け根にあてがった。
そして…
「ちょっきん!!」
付け根から、切り落としてしまった。
「これで治療は終わりです。痛み止めのお薬を出しますからね。」
なんだか、さっぱりしたような嬉しいような顔をしている瞳ちゃんに、私は思わず声をかけた。
「あのね、瞳ちゃん。」
「なあに?」
「男の子にいじめられてるの?それとも…誰か、男の人に変なことでもされ…」
「別に、そんなこと、何にもないよ、かなえちゃん。パパのことも、クラスの男の子のことも大好き。」
瞳ちゃんは、涼しい顔で言葉を続ける。
「でもね。パパと一緒にお風呂に入ってるとき思ったの。…これ、切っちゃったら、どうなるのかなあ、って。それを考えたら、なんだか、ぞくぞくするような、変な気持になって、止まらなくなっちゃったの。あ、本当はやっちゃあいけないって判ってるよ。頭の中だったり、タロウくんやケンイチ君にだけだったりするから大丈夫。…でねえ。」
瞳ちゃんは、、にっこり笑って、言った。
「かなえちゃんは、どんな気持ち?」
私は、実は、ケンイチ君のおちんちんがいじめられたり切られたりする間中ずっと、おまたが変な感じがしていた。
「…よかった。」
「このことは、二人だけの秘密だよ。」
「…うん。」
それから、私は、瞳ちゃんの家に行ったり、私の家に誘ったりするたんびに、人がいないのを見計らって秘密のお遊びをした。
弟の持っているヒーローの人形をこっそり持ち出して、
「わはははは!お前の大きなおちんちんをたくあんのように切り刻んでやる!!」
「や、やめろぉ!!」
正義のヒーローらしい、太くて長い練り消しで出来たおちんちんと大きなタマタマは、切り落とされた揚句にままごと用の包丁で細切れにされた。
「お、おれの…俺のおちんちんとタマタマがぁ!!」
自分で演じながらも、泣きわめくヒーローの姿に、ぞくぞくする感じが止まらなかった。
ある時は、切り落としたケンイチ君のタマタマとおちんちんをユキちゃんにくっつけたりもした。
「か、返してよお、ぼくのおちんちんなんだぞ!!」
「やーだよ!絶対に返してやるもんか!!」
(楽しい!私今、すっごく楽しい!!)
マンガ雑誌やアイドルグラビアの男の子たちに、紙に描いたおちんちんとタマタマを糊づけしてはさみで切り落としたりもした。
「全員、切り落とし刑でーす!!」
「罪状、私たちが切っちゃいたいからでーす!!」
二人して、笑いが止まらなかった。
二人の秘密のお遊びは、うちのお父さんの転勤という形で、ある日あっさり幕を下ろした。
最後まで、秘密のお遊びのことが周りにばれることはなかった。
でも、ときどき思い出すし、そのたんびにぞくぞくしている。
「…んだよかなえぇ。」
「…何でもないよ、純也。」
たとえば、今こうやってる時とか。
「…いぢっ。お前、なんで時々歯ぁ立てるんだよ。…まあ、おれも癖になっちまってるし、そうしねえと物足りねえくらいだけど。」
瞳ちゃん、今何やってるのかなあ。
瞳ちゃんも、彼氏のを、こうやっていじめてみたいって思ってるのかなあ。
それとも…
いじめてるのか、なあ。
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投稿:2011.05.05
秘密のお遊び
著者 真ん中 様 / アクセス 18418 / ♥ 0