聡は風呂の中で股間を見詰めて溜息をついた。
「はあ〜〜〜っ」
この半年程はいつもそうである。
間もなく6年生の夏休みを迎える。
その前にはブルマ検査が待っている。
彼は、それが心配なのだ。
情報として出回っている今年の合格範囲より、やや小さい。
こっそりとトイレの中でパンツを脱いで見せ合った友達は全員が彼よりもずっと大きかった。
「僕、女の子になんかなりたくないよ」
だが既に彼は級友からは『聡子ちゃん』と呼ばれ、体育の時間に白い短パンを紫色のブルマにすりかえる悪戯もされたし、無理矢理に女子トイレに放り込まれたこともある。
母親にブリーフのパンツは子供っぽいからトランクスを買ってくれと頼んだら断られた。
風呂から出た彼は裸のまま布団に潜り込むと、おちんちんを手で刺激した。
今、やっとかないと一生できないもんな。
そう考えると射精が終わった直後は惨めな感情が、こみあがってきて涙が零れ落ちた。
そして遂にブルマ検査の日が訪れた。
聡以外の男の子は自信満々である。
何故か、この学校は巨根が多く、例年の合格率が異常に高いのだ。しかも昨年は全国平均の倍近い数値を記録し新聞が取材に来た程である。
もちろん、ギリギリ合格だった聡はコンプレックスを刺激され惨めさが増大しただけだったのだが。
「よっ、聡子ちゃん。ブルマになったら俺の彼女にしてやってもいいぜ」
そんなことを笑いながら言ってくるのはクラスメイトの浩志だった。
浩志は絶対に合格だろう。
何しろ先生よりもずっと大きいのだ。
そしてそれを自慢にしていて、休み時間になるとパンツを脱いで見せびらかすことも度々だった。
「お前等も俺ぐらいあったらよかったのにな」
そう言ってブルマの子を怒らせることも多かった。
ブルマは従順になるように教育されているから怒ることは滅多に無い。
それが怒るのだから相当なものである。
浩志の情け容赦無い残酷な中傷の中で聡はズボンを脱いだ。
そして付き添いとして傍らに控えている母親を横目に見ながらブリーフを脱いだ。
最後なんだからトランクスを穿きたかったな。
聡は、二度と穿くことが無いのにと思うと悲しかった。
そして、小刻みに歩いて股間にまだ男の子の証、明日には無くなっているであろうものが揺れる感覚を噛み締めた。
浩志は順番が先なのに既に脱いでいる。
そして、母親からいい加減にしなさいと尻を叩かれていた。
聡はブルマ検査の担当医師の前に立った。
「大きさは、ちょっと小さいか」
その何気ない呟きは聡を絶望させるのに充分だった。
もう無くなってしまうと完全に諦めた。
いいじゃないか。
もう一生分ぐらいオナニーはしたじゃないか。
セックスできなかったのは残念だけど。
そんなことを考えると、おちんちんが大きくなって来た。
それを見ながら医師はクスッと笑った。
男の子はバカにされていると思って少しだけムッとした。
「よし、合格」
えっ?
「あの合格ってブルマに合格って意味ですか?」
「君は、おちんちんを切りたいのかい?希望するならそうしてあげるけど」
聡は首をブンブンと横に振った。
「で、でも、僕のって小さいのに」
「大きさは、少し足りてないけど膨張率が凄いから。今年から将来性も加味して判断するようになったんだよ」
や、やった!
聡は母親に言った。
「ねえ、僕ずっと男なんだからトランクス買ってよ」
「不、不合格?」
浩志は愕然とした。
「な、なんでだよ。おかしいよ、俺のってこんなに大きいじゃないか!それにロクに見ないで不合格なんて絶対にヘンだよ」
ブルマ検査官は冷酷に宣言した。
「検査する必要が無いんだよ。君は精神的理由でブルマになるんだから」
浩志の母親も納得できない様子だ。
「それはどういう意味なんですか?」
「今年から、メンタル的な点も考慮されることになりまして検査に先だって天然女性の児童とブルマの児童からアンケートを行いました。男の子にしておきたくない子がいるかってね」
浩志は真っ青になった。
「じゃあ、女どもが俺のことを?」
「そう、ブルマにして欲しいって言ったんだ。女性に人気の無い男の子を男の子のままにしておかない方が良いっていう政府の方針もあるし」
「そ、そんなバカな話ってあるかよ!」
浩志は暴れ出そうとしたが屈強な係官に取り押さえられた。
彼の母親は、その場に泣き崩れた。
浩志の不幸はそれで終わったワケではなかった。
彼は一種の見せしめなのだ。
ブルマ法が施行されて以来、男性は一種の特権階級に戻ってしまった。
そのことを危惧した女性勢力が小さい頃から女性を敵に回す怖さを教えようとしたのである。
さっきまで苛めっ子として君臨していた男の子は今や惨めな晒し者だった。
体育館に大きく足を広げた格好で台に固定された彼に多くの女子やブルマが声を掛けていく。
「残念ね。こんなに大きいのに」
「明日っから大変だね。わたしたちの後輩だよ」
中にはハサミを取り出してチョキンと音を立ててみせる子もいた。
やがて、女性執行官が登場した。
「みなさん、度を越えたセクハラ行為を行う者は、世の中によって制裁を受けます。彼はその罪を体で支払うことになるのです」
館内は静まり返っている。
「もうすぐ切っちゃうものですから、お仕置きを追加しましょう」
執行官は、そう言うと艾を取り出した。
「日本古来のお灸です。これを据えます」
ま、まさか?
浩志は恐怖に震えた。
艾の据えられた位置は予想を彼の予想を越えていた。
皮を剥かれた性器の赤黒い部分に置かれたのである。
「お、俺のチンチンを切ってくれよ〜、頼むから〜」
彼がそう絶叫するのはおよそ半時間後のことだった。
追記
いわゆるブルマ法のメンタル的見せしめと言われる事例に関しては初年に1人だけが報告されている。
記録映像が残され今も容易に閲覧できるが追跡調査は公開されていない。
が、当時から噂のあったショック死や自殺は否定されており立派なブルマになったと当局の資料には記されている。
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投稿:2011.11.23更新:2011.11.23
ブルマ法移行期の話
著者 移管 投稿者:佐藤ダイスケ 様 / アクセス 13338 / ♥ 3