「どーだ、すげえだろ!!俺、ドウル様のとこでやってもらったんだぜ!!」
学校のトイレで、悪ガキ仲間に、己が股間の物を見せながらシュミルは自慢する。
「…痛かったろ、それ。」
「そこを我慢すんのが男ってもんだろ?俺は、ミムクみたいな臆病もんじゃあねえもんな!!」
シュミルのペニスは、包皮が切り取られていた。
割礼を受けた印だ。
ミムクとシュミルは、同じ12歳同士で、二人とも仲間内では一番最初に割礼を受けていた。
ただし、呪術医であるドウルのところで割礼を受けたシュミルとは違って、ミムクは街一番の大きな病院で、大学を出た専門医に、麻酔をかけられて手術を受けていた。
だから、ミムクのことは、同じ割礼者でも「臆病者」とそしられていた。
「ねえシュミル。割礼って、一体どうすんの?」
ドドルの問いに、シュミルは返す。
「ドドル。お前、まだチンポの皮切ってねえんだろ?教えるより、やって見せた方が早いよ。俺、やり方覚えたから…やってやるよ。あした、俺んちに来い。俺の父ちゃん、出稼ぎに行ってるし、母ちゃんも、明日は隣町に行くから留守なんだよ。」
「え…?でも、怖いよ、俺。」
「怖い痛いじゃ男がすたるってもんだよ。痛い思いをしてこその男ってもんだ!!あっさり終わっちまうから、心配すんなって!!」
シュミルは、そう言って胸を張った。
翌日、シュミルの家にやって来たのはドドル、それから、ドドルの弟で、5歳になるジュンカだった。
「なんだ。ジュンカの奴も来たのか。」
「うん、ジュンカの奴、どうしても付いてくるって言うから。お前もチンポの皮を切るんだぞって言っても、それでもいいからって。」
「…なら、仕方がねえか。さあ、下半身裸になって、チンポ見せろよ。」
2人が下半身裸になると、目の前の、小さな2つの男性器を見ながら、シュミルは言葉を続けた。
「まずはドドルの番だ。…そこに大きく股をひらいて座るんだ。」
シュミルが指した一角には、ぼろ布が敷き詰められ、そばには、水を張った洗面器と、割りばしのように深く切り込みを入れた木の枝、それから鋭く割られたガラス片が用意されていた。
ドドルが、言われたとおりに、手を後ろにつき、両足をMの字に大きく広げた。
「…動くなよお!」
シュミルは、木の枝に入れた切り込みに、ドドルの包皮の先端をひっかけて、そのまま、包皮をくるくると引っ張りながら巻き上げてゆく。
「い…いてえよお、シュミル!!」
「我慢しろよ!男だろ!!」
ペニス全体が、ぴんと引っ張り上げられ、もう、包皮を巻き上げる余裕がなくなった頃、シュミルは、木の枝の真下にガラス片を入れ、一気に横に薙いだ。
「ぎゃあっ!!」
ドドルが、激痛に吠え、体を大きくのけぞらせた。
「いてえよお!!いてえよおぉぉぉぉ〜っ!!」
ドドルは、声を張り上げて泣き喚き始めた。
手で押さえた股間からは、鮮血が滴り落ちる。
「早く洗面器でチンポを洗って、布をぐるぐる巻きにするんだよ!!」
シュミルが、鋭い口調で叫んだ。
ドドルの出血が収まった頃、改めてシュミルの作業は再開される。
今度は、ジュンカの番だ。
さっきまでは虚勢を張っていたのに、いざ兄の割礼を目の当たりにし、次は自分の番となったら、顔色を変えてがたがた震え始めた。
「やだ…やだやだやだ!!」
ジュンカは、怯えて逃げ惑うが、ドドルとシュミルに、あっという間に押さえつけられ、後ろ手に縛られてしまった。
「ドドル…絶対に、ジュンカの足を閉じさせるなよ!!」
ドドルは、ジュンカの両足首を後ろからつかんで、大きく広げさせた。
だが、何度開こうとしても、ジュンカは足を力任せに閉じようとする。
「全く、どうしようもねえなあ…そうだ、こいつで!!」
シュミルは、部屋の片隅にあった箒を手にする。
そして、その柄に、ジュンカの大股開きにした足首をくくりつけてしまった。
ジュンカの小さなペニスは、哀れにも縮みあがってしまっているが、シュミルは、さっきやったように、ジュンカの包皮も巻き上げて行った。
ジュンカの体は、がくがくと震えている。
「や…やだよおシュミル!ボク、怖いよお!!」
「大丈夫だって、ジュンカ、俺に任せろ!!」
ガラスの破片を片手に、シュミルは言った。
「動くなよお…っ!!」
そして、木の枝の下に当てたガラスの破片を薙いだ。
ジュンカが、あろうことかそれをよけようとして大きく身をよじったのは、まさにその時だった。
「ぎゃあぁああ〜!!」
ジュンカの悲鳴は、ドドルの物とは明らかに違っていた。
出血の量も、全く違う。
シュミルのガラスの刃は、身をよじったジュンカのペニスを、付け根からそぎ落としていた。
「お、俺が悪いんじゃねえぞ!動いたジュンカが悪いんだからな!!」
血みどろでのたうちまわって泣き喚くジュンカを見ながら、シュミルは叫んだ。
—近代化と因習のはざまで…レニンダ共和国の抱える問題—
早急な近代化を進めているレニンダ共和国の首都、ウサルガ近郊の街、ルワマルで、割礼にまつわる事件が発生した。
ひとつは、マルカ族の呪術医、ケサラが起こした物だ。
既に、病院での割礼を済ませていたマルカ族の12歳の少年、ミムクに対し、「執刀が呪術師の手による、伝統的なものではない行為は正式な割礼とはいえない」とし、亀頭の一部を切り取ってしまったという物だ。
少年は、すぐに病院に運ばれたが、切断された亀頭を接合する手術は失敗してしまったということだった。
もう一つは、割礼のまねごとをした12歳になるルンガ族少年、シュミルが起こした事件だ。
シュミルによって、包皮もろともペニスを切断されてしまった、5歳になるジュンカは、ペニスを切り落とされたことによる大量出血とショックで、その日のうちに死亡してしまったという。
ジュンカの兄である12歳のドドルは、不衛生な環境での包皮切除が原因で感染症を起こし、その後ペニスが壊死してしまい、睾丸にまで細菌感染が及んだために、男性器を睾丸もろとも切除する措置が余儀なくされた。
この事件に対し、ドドル達が属するザルタ族での長老会議が開かれ、「二人分の男性器と、一人の子供の命が失われたので、シュミルと、彼の兄も男性器を失うべきだ」という決定のもと、シュミルと、その兄の14歳になるキルクは、ペニスと睾丸を無麻酔で切除する刑に処すという決定が下され、二人ともペニスと睾丸を失ってしまったということだった。
呪術師ケサラと、ザルタ族の長老会議のメンバーは、警察によって逮捕されたが、マルカ、ルンガ、ザルタの連合長老議会は、「痛みを伴う行為に耐えることこそが、男に与えられなければならない試練である」「命を奪ったわけではない」「大人なら死刑である」と、ケサラとザルタ族長老会議に対しての支持を表明し、ケサラとザルタ族長老会議メンバーの早期釈放を求めている。
ここレニンダ共和国では、急激な近代化に伴い、インターネットや高速道路も整備され、首都ウサルガにはビルも建ち並んでおり、海外への留学経験を持ち、諸外国と変わらない価値観を身に付けた若者も増えている。
反面、伝統的な習俗も残っており、そちらの方が長年に渡って馴染みの深い年配者や地方出身者を中心に、それを支持する者も多い。
地方に行けば行くほど、新しく制定されたレニンダ共和国憲法より、因習に基づく長老議会の決定の方を優先する動きさえあるという。
レニンダ共和国政府は、これまでにも多くの男の子が、子供同士での割礼のまねごとや、不衛生な環境下での割礼による感染症が原因で、ペニスや、時によっては睾丸も…最悪の場合には命を失ってしまうという例を挙げ、「子供は、割礼のまねごとはしないこと」「割礼は、病院で、麻酔をかけた上で行うこと」というキャンペーンを行ってはいるものの、まねごとの件はともかく、割礼自体は、圧倒的大多数の家が、上記の理由により古くからの呪術医のもとで行う道を選ぶという。
果たしてこれを、我々は、「野蛮な行為」と切り捨てるべきなのであろうか。
それとも、「急速な近代化による歪み、矛盾」「先進国の価値観の押しつけ」と見るべきなのであろうか。
レニンダ共和国は、数々の問題を抱えたまま、近代化への道を模索し続けている。
(文責・世界連合通信)
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投稿:2011.11.28更新:2011.11.30
通過儀礼2
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