男子大運動会
「紅組代表宣誓!我々紅組の男子生徒は、正々堂々と競い合うことをここに誓います!」
「蒼組代表宣誓〜。蒼組の男子生徒は、せいせいどうどうと戦うことをちかいま〜す。」
そこには二人の男子高校生がいた。片方は赤い鉢巻を、もう片方は青い鉢巻を額に締めている。
両者ともに、上半身裸の短パン姿である。彼らの眼前に広がる男子生徒の列も、見渡す限りの肌色一色である。
ここ、金精高校では今日、毎年恒例の教育行事である『全国一斉男子大運動会』が開催される。
小中学校で催される普通の運動会と何が違うのかといえば、参加資格があるのは高校二年生以上の男子生徒のみである点と、
結果によって今後の人生が大きく左右されるという点である。
苦しい戦いを勝利した組の三年生には特別な報償が与えられるが、敗北した組の三年生を待つ結末は悲惨なものである。
彼らには重いペナルティが科せられるからだ。
彼らは男に生まれたことを後悔し、残りの生涯で永久に生き恥をさらすことになる。
たいていの男子学生はその話をタブーとし、めったに話題にしようとはしない。
「え〜それではこれより、第120回帝国立金精高校男子大運動会、宣誓式を終了します。え〜続いて、準備体操を…。」
教師がカセットテープのスイッチを押す。おなじみの音楽がスピーカーからグラウンドに響き、男子たちはリズムにのって身体を揺らし始めた。
残暑の厳しい校庭で行われる男子大運動会の様子を、女子生徒たちは冷房のきいた涼しい校舎の窓から見下ろす。
男たちの神聖な闘いに交われない彼女たちは、こうして彼らだけの運動会をただただ眺めながら、せわしない談話に夢中であった。
「うわ、タツムラくんって意外とマッチョ過ぎ〜…顔はいいんだけどさ〜、私的にはちょっとひくわー。」
「え〜!? 全然細いじゃん! 野球部のトラのほうがなんかゴツいし。」
「きゃ〜! タツムラ先輩〜!! こっち見たかも〜!」
「無口で表情固めだけど、そこがクールなんだよね〜。やっぱり勝ってほしいなあ〜…。」
「ちょっとフケツよあなた達! ああ、男なんて…不浄な輩のハダカなんて、見ただけで目が穢れちゃう!」
普段は別々の授業が多いなか、なかなかお目にかかれない男子の裸体に興奮するものもいれば、
窓とは反対方向を向いて、まるで純潔を守っているかのように目を瞑っている女子生徒もいる。
「辰村く〜ん、女子がキャーキャーおっしゃっておられますぜぃ? ちょっと手でも振って差し上げろよ。」
紅組代表であるサッカー部主将の辰村三年生は、蒼組代表の野球部主将、寅野三年生からの挑発的な言葉にも眉ひとつ動かさず、
黙々と準備体操を続けていた。
この二人は校内一仲が悪いことで、学校外でもかなり有名である。
彼らはこの学校で、人気を二分するサッカー部と野球部の主将同士である。
「まああれだ、俺の蒼組は俺を含めて生え抜きぞろいだしな。女子には悪いけどさ、辰村くんの紅組には勝ち目なんてねえぜっ。」
見よ、この筋肉を! と言わんばかりに力瘤をつくり、寅野三年生はガンガンと叩いてその硬さを辰村三年生に見せつける。
事実、組み分けに不正があったのではないかというくらいに、今年の蒼組は各部活からの有力選手、レギュラー陣がひしめきあっていた。
補欠選手の多い今年の紅組と比較して、ガタイや力量に恵まれた男子生徒がほとんどである。
「…勝負を決めるのは、筋力や技術だけじゃない。あきらめなければ、道は開ける。」
「はん、そのむかつく精神論が今日こそ無意味だって証明されるわけだ。こりゃ楽しみだなぁ。」
「なんとでも言え。俺は紅組のみんなを信じている。それに、俺にも絶対にかなえたい夢があるしな。」
「はい? ゆめぇ?」
体操のテープが終わり、男子生徒全員が隊列を元の間隔にもどす。
すると朝礼台の上に巨大なクレーンによって何かが吊り下ろされてきた。
「来たぜ…。」「あれが…あの…。」
男子生徒たちが囁き合う。目の前に現れたのは異様ないでたちをした、真っ白なプラスチック製の手術台であった。
長さ一メートル程度、ベンチプレスに使うような長方形のベッドに、腕を置くための台が左右に伸びている。
ベッドはちょうど、航空機の翼の生え方を逆さにしたような形をしていた。
その手術台が異様なのは、開脚装置がついているところだ。ロボットアームの先端に輪っかが備わっており、
ここに足首を固定することが誰にでも想像できた。
ここに人間が横たわれば、どのような格好になるかは一目瞭然である。
おしめを替えられる赤ん坊のように股間を曝け出し、一切の抵抗は不可能となるだろう。
「あそこに寝ることになるのは俺かお前か、どっちになるか楽しみだぜ。」
「これだけは言っておく。寅野、俺は、お前には絶対に負けない。」
手術台の設置工事が業者の手によって行われる中、辰村三年生は去年の大運動会のことを思い出していた。
当時の彼、辰村二年生もまた紅組であった。
サッカー部に所属する男子生徒のほとんどもまた紅組であり、尊敬する先輩たちとの共闘に辰村二年生は並々ならぬ思いで挑んだのだ。
だがしかし、紅組は惨敗に終わった。
運が蒼組に味方しているかのように、怪我での選手欠場やささいなミスが降り積もった結果であった。
その日、辰村二年生は初めて人前で泣いた。三年生を元気に送り出せなかった悔しさは計り知れないものであったからだ。
「俺は夢を叶えられなかったけれど、お前は叶えろよ。絶対だぜ?」
当時のサッカー部主将がその場で辰村二年生に後を託し、それから一年、辰村三年生は立派に主将の任を務め上げた。
感情を極力抑え込み、ただただストイックな姿勢を貫き、決して涙を見せない鉄の男、辰村三年生はこうして生まれたのである。
(先輩、俺はあなたと同じ夢を、あなたの代わりに絶対叶えてみせます…。)
「…あれ?開会式終わったんですか? …は、は〜い! では第一競技、玉入れスタンバイしてくださーい。」
司会を務めるのは、放送部所属の女子生徒である。校舎内に設置された放送本部から、忙しい教師陣に代わってマイクを握る。
校庭の隅に設けられた入場口に、玉入れの出場選手が集まると、そこには紅組と蒼組に分かれた二つの脱衣かごが置いてあった。
出場選手たちが短パンに手をかける。
唯一の着衣であった学校指定の体操着を全員が脱いでしまい、下着ごと指定の脱衣かごに次々と放り込んだ。
「それでは選手の皆さん、入場を開始してくださ〜い。」
全裸の男子生徒たちが校庭の中央を目指して行進する。古代オリンピックのように、競技はすべての着衣をつけずに
行われる決まりとなっているのだ。
校舎で涼んでいた女子生徒たちは、入場する選手たちの裸姿に、突然沸騰したお湯のごとく騒ぎ出した。
「きゃああ! 男の身体ってすごい!」
「フケツ! わたくしたちの目を潰すおつもり!!?」
さすがは高水準の運動を義務付けられた金精高校の男子生徒である。役に立たない肉をぶら下げている者は皆無であった。
胸板は厚く、足腰や腕はとても逞しい。軍隊ばりに均整がとれた筋肉隆々の男たちが、紅組蒼組どちらにも揃っていた。
ペニスの大きさは男子生徒によってまばらであるが、下腹部がほどよく引き締まっているせいでどの生徒も
十分な長さがあるように見える。
「オトコのコのお股ってあんなふうになってるんだ〜! カワイイ!!」
屋外での全裸、女子に身体の隅々まで観察されているという状況のなか、その性器に僅かながら血を集めてしまう者もでる。
特に大運動会への出場が初体験となる二年生男子のほとんどは、行進中に半勃起したペニスを揺らしながら歩いていた。
玉入れ競技が始まった。辰村三年生は紅組の控えテント内にて、その様子から片時も目を離さず見守っている。
「ああ〜とぉ! これは若干蒼組が優勢でしょうか〜!? 紅組のお手玉はほとんど地面に逆戻りです!」
勝敗は、大差をつけて蒼組に旗が上がった。やっぱりか、と誰かが言いだし、既に紅組の中では諦めムードが漂い始めている。
「こりゃもう勝ったも同然だなっ!! 紅組のみなさんお疲れさんで〜すぅ!!」
寅野三年生の野次と、それに同調した蒼組の部活動精鋭部隊からの嘲笑が、隣のテントから追い打ちをかけるように飛んでくる。
「あきらめるな! まだ始まったばかりだ…ここから挽回してやればいいだろ!!」
辰村三年生はしょぼくれる紅組の男子生徒全員に喝をいれると、大声を出した勢いで短パンを脱ぎ捨て、
そのまま全裸で校庭を横断して次の競技へ出場した。
(とにかく、他の奴らにまかせちゃおけない…。俺が、俺が紅組をひっぱらなきゃどうすんだ!)
100メートル走、騎馬戦、障害物走、綱引き…昼食を除いて延々と続く競技に、辰村三年生は率先して出場し続けた。
「キャプテン、じゃなくてり、リーダー! 少し休んでくださいよ! 体もたないッスよ!」
「はあっ…はっ、俺の心配はいい、大丈夫だ。それより巳岡、お前の方こそ休んどけ。」
サッカー部の後輩である巳岡二年生の進言にも耳を貸さず、次の大縄跳びに出場するべく辰村三年生は歩みを止めないでいた。
「では、プログラム12番、大縄跳びの開始です!!」
「かけごえあわせていくぞ!!」
全裸の男子高校生が縄の回る狭い範囲に10人並び、一斉にジャンプして縄をかわす。
躍動する衝撃により、チンポが振りあがり、前の生徒の背を打つ。
そのまま肉棒が己の腹筋を叩くので、多くの出場選手たちは集中力をかき乱された。
女子生徒たちはかわいいおもちゃのように上下する彼らのペニスを指さして、くねくねと身を悶えさせている。
「きゃーー! タツムラく〜ん!がんばって〜!!」
女子生徒の熱い歓声が飛んでくるが、辰村三年生はまったく聞いてすらいなかった。
彼の頭は勝利に対する執念で煮えたぎり、とてもそんなことに気付く余裕はない。
辰村三年生のペニスは彼の規則正しく六つに割れた腹筋へ当たって、そこからはさながら打楽器のような
弾けた音が奏でられている。
むちのようにしなる長いチンポによって、前の男子生徒の背中には赤い筋すら浮かんでいる。
むき出しの亀頭が自分の腹と前の背中にこすられ続け、辰村三年は思わず下半身を震わせてしまった。
断続的に襲う敏感な場所への摩擦に、彼のいちもつは徐々に熱を帯びる。
(やばい…なんとか沈めないとっ!)
このままでは集中力の妨げになる。そう判断し、辰村三年生はとっさに己のペニスをつかんで固定した。
すでに片手では収まりきらないほどに、軽くではあるが勃起している。
「辰村く〜ん! 運動会の最中にオナニィでちゅかあ〜?」
「紅組のやつら見てみろよ!お前らの大将ってば、こんなときにマスかいてやがるぜえ!」
そんな場面を見逃すはずもなく、寅野三年生が控えテントから蒼組総勢で辰村三年生を集中攻撃する。
さすがに無視することはできず、辰村三年生の顔は真っ赤になった。女子生徒までもが笑いをこらえている。
「やっ、ちがっ…!! 俺は真剣だ!!」
そのとたん、集中力の切れた辰村三年生の足に縄がひっかかり、カウントが0にもどる。
急いで体制を整えようと号令をかける辰村三年生だったが、もはや全員の気力は無に等しく、それは辰村も例外ではなかった。
(俺、また負けるのか…? そんな、先輩との夢も叶えられずに、またっ…。)
「それではついにプログラム15番! 最終競技の組対抗リレーを開始します!」
最終競技として待ち構えているのは、もっとも得点の高い競技であるリレーであった。
辰村三年生以下、サッカー部の尽力によりまだまだ紅組の逆転できる機会は残っているのだが、
部活動のレギュラーばかりを集めた選りすぐりの蒼組メンバーに対して、紅組はもはや完全に戦意を喪失している。
「なんだよ〜辰村く〜ん。そんなにへばっちゃってつまんね〜な。」
膝に手をつき、肩で息をしている辰村三年生のそばに、軽い足取りで寅野三年生がやってくる。
彼はこれまで一度も競技に出ていない。エースの満を持しての登場に、蒼組の士気は最高潮に達する。
「俺さあ、めっちゃくちゃ体力残しておいたんだけど、辰村くんがそんなじゃ、はりあいねーじゃんかよ〜。」
「くそっ…まだ、終わって、ない…。」
砂だらけで満身創痍の辰村三年生を尻目に、鼻歌交じりで寅野三年生は短パンを脱ぐ。
辰村三年生にひけをとらない逞しい肉体と、ずんぐり太った大きめのチンポが露わになった。
「お前に勝って、俺は卒業してからの華々しい人生をスタートさせてもらうぜ!」
空を切るようなピストルの合図で、紅組蒼組双方の第一走者が走り出した。
その差はぐんぐんと開いていく。紅組の選手はもう初めから勝負を諦めてしまっているようだ。
「何やってるんだ!! …くそっ、くそうっ…!!」
「はははっ!! これが現実ってやつだ、なあ、辰村く〜ぅん?」
もう喝を入れる声すら上がらず、裸のまま鉄の男は地べたにへたりこんだ。絶望が彼を襲った。瞼がどっと重くなる。
(もう駄目なんだ…。俺、また負けちゃったんだ…。)
「キャプテンっ! …じゃなかった! リーダー! 辰村先輩!!」
辰村三年生が顔をあげると、そこには巳岡二年生が立っていた。彼の目には、まだ闘志の炎が消えずに燃え盛っている。
「リーダー! あきらめないでくださいッス!! 俺が何とかします! だから、あきらめないで!!」
そういうや否や、巳岡二年生は走者の位置につき、バトンを持つと猛烈なスピードで走りだした。
みるみる蒼組の走者、鼬原二年生に追いつき、肩をぶつけあう。
「な、なんだこいつ!? 離れろよっ!!」
あっ!と辰村三年生が漏らしたときには、鼬原二年生の肘が巳岡二年生の顔面に直撃した後であった。
巳岡二年生は転倒し、裸のまま土の上を滑った。
それでも、巳岡二年生はすぐに立ち上がった。髪の毛は白線の粉で真っ白に、鼻からは真っ赤な
鼻血をたらしながら、それでも走る。
紅組の勝利をただひたすら信じて、全力を尽くす。
その姿が、辰村三年生には去年の自分と重なって見えた。
先輩たちの門出を祝ってあげたい一心で走っていた、そして負けてしまった、あの最後のリレーを思い出す。
(そっか、今俺があきらめたら、巳岡もきっと、俺みたいに…。)
ふと目をやると、朝礼台上に設けられた手術台には、透明度の高いビニール製の無菌テントがかぶさり、照明器具が取り付けられていた。
それを見てから、もう一度走っている巳岡二年生を見る。彼の決意は固まった。
巳岡二年生から燃え移ったかのように、辰村三年生の心に闘志の炎が再燃する。震える太ももをしばき、筋肉から乳酸を払う。
鼬原二年生が寅野三年生にバトンを渡し、ついに蒼組は最終走者へとバトンが委ねられた。
その数秒後、全身ぼろぼろの巳岡二年生が走者待機所へ駆けてきた。
擦り傷だらけの腕でバトンを精一杯伸ばし、辰村三年生の手に渡す。
「辰村せんぱ、勝って、がっでぐださいっ!!」
「…ああ、任せろ!」
辰村三年生が寅野三年生を追う。あっという間にその距離は縮んでいく。
のたうつペニスが太ももや腹を叩き、辰村三年生はまたもや陰部のこすれる快感に襲われるが、もはや
そんなことは彼にとってはどうでもよかった。
疲労困憊の肉体はただ、後輩を自分と同じ理由で泣かせまいという決意の力のみで動いていた。
彼の並々ならぬ気迫に、追われる寅野三年生はぎょっとしてたじろいだ。
「こ、こいつっ! チンポおっ勃てながらっ追いついてきやがる!」
「うおおおおおおお!!!」
やがて彼のペニスは鋼柱のように完全起立した。激しく動く脚部の動きにもびくともせず、ぴたりと腹筋に張り付いている。
「くそっ、ふざけんな辰村あああ! お前には、お前には絶対に!!」
重たい衝撃が辰村三年生の股間を潰した。腹を狙おうとした寅野三年生の裏拳が、辰村の睾丸に炸裂したのだ。
胃液が逆流し、辰村三年生の口から洩れる。校舎内から女子生徒が悲鳴を上げた。
悶絶するような痛みの中、彼は気絶寸前でなんとか踏みとどまった。
「勝つ! 俺が、かつんだあああああ!!!」
渾身の力で、腹の底から響く雄たけびを上げながら、辰村三年生はゴールに飛び込む。
弾丸のようにゴールテープを破り、二回転三回転して、テントの柱にぶつかりようやく彼は止まった。
「辰村先輩!」
巳岡二年生がかけより、立ち上がらせるために肩を貸す。
「巳岡…俺は勝ったのか…?」
「…はい! キャプテン、じゃなかった、リーダーの、紅組の文句なしの勝利ですよ!」
そう言って、ふと視線を憧れの先輩へと向けた巳岡二年生は、その迫力に思わず目が釘付けになってしまった。
辰村三年生のペニスは完全に勃起し、睾丸は殴られたことによって真っ赤になっている。
おまけに反り返ったカリ首の特徴的な亀頭からは、大量の先走りが地面にまで糸を引いていたのだ。
物理的な刺激のせいだけではない。辰村三年生の下半身は勝利に対する喜びに満ちていた。
「…あっ!!! り、リーダー、閉会式の前にシャワー浴びなきゃいけないッス!!」
「そうだったな、それじゃあ、紅組のやつら、俺についてこい!!」
「え〜、それでは、第120回帝国立金精高校大運動会、閉会式を行いたいと思います。」
開会式と同じように並ぶ両組の様子は、開会式のときと逆転していた。
紅組はまさかの勝利に沸き立っており、蒼組はまさかの大敗に全員が暗く沈んでいる。
女子生徒はと言えば、落ち込んでいる者もいれば、手を取り合って踊っている者もいた。
「え〜、両組とも、大変激しい熱戦を繰り広げてくれました。とくに最後のリレーはどちらが勝っていてもおかしくはなかったでしょう。」
「おかしい…こんなのぜってえおかしい…。いやだっ…こんなの認めねえ!!」
寅野三年生がぶらぶらと大きなチンポを揺らしながら地団太をふんでいる。
誰がどう見ても圧倒的に自分たちの方が有利であったにも関わらず、こうして負けてしまったことで彼は憤慨していた。
「それでは、まずはじめに表彰式を行いましょう。紅組代表、蒼組代表、まずは前に。」
「はいっ!」
「…は〜ぃ…。」
辰村三年生と、寅野三年生が前に出る。金精高校の理事長が、辰村三年生にトロフィーを手渡した。
紅組の列からたくさんの拍手が沸き起こる。
「おめでとう紅組。さあ、まずは代表である、あなたから始めましょうか?」
「は、はいっ! ぜひとも!!」
…そして次の瞬間…
勝者となった辰村三年生は…、朝礼台の階段に自ら足をかけた。
トロフィーを巳岡二年生に預けると、彼は嬉しそうにビニールシートで作られた透明の無菌テントに入っていく。
彼の目の前には準備の整った白い手術台が用意されていた。
「アオムケニ、ナッテ、シュジュツダイノ、ウエニ、ネテクダサイ。」
機械音声に導かれるまま、辰村三年生はその身を白いベッドに横たえた。
手術台の側面から伸びた翼に沿って、ぐっと高くあげられた両手と、開脚装置によって開かれた両脚、そして胴部に、
拘束用の革バンドが自動でかけられる。
静かに手術台が、辰村三年生の頭の方を上にして縦に立ちあがっていく。
そして手術台は、拘束された辰村三年生の裸体を朝礼台前の男子生徒たちに展示するような角度で停止した。
そこにいる男子生徒すべての視線が、辰村三年生の男らしい肉体に注がれている。
筋肉が張り、サッカーボールを追い続けることでぱんぱんに膨らんだ大きな足は、ロボットアームによってむりやりに開脚され、ペニスやきゅっと締まった肛門を隠すために閉じることは叶わない。
バンザイするように高い位置で固定された腕も、足ほどではないが太くて逞しい。
少し肘を曲げるだけで、火にあぶられた餅のような、ふっくらとした力瘤が立つ。
きっちりと手入れされているのか、脇の下は毛がそこまで目立たない。反面、陰毛はやや茂りすぎている。
細身の胴体には脂肪分がほとんどなく、盛り上がった筋肉の美しい筋が、外からナイフで刻みつけたように走っている。
(ああ、みんなが俺の体を見てる…。俺、今日勝てて本当に良かった…。)
冷たい消毒液が全身に噴霧され、伸びきった陰毛が処理される。
男子も女子も、教師陣も含めてその場の全員が、手術台に拘束された辰村三年生に注目している。
衆人注視の中、濃い陰毛を剃りおとされることに興奮し、彼はペニスを固くそそり勃たせていた。
期待と見つめられる興奮により先走りがあふれ、重量感のある肉筒を艶めかせている。
「フェイズワン、セイシノ、サイシュヲ、オコナイマス…。ジンコウチツ、スタンバイ、シマス…。」
手術台の下から、別のロボットアームが伸びてくる。
その先にはペットボトルによく似た、筒状の透明な人工膣が備え付けられていた。
筒の先端には女性器を模した縦割れ状の穴が開いており、辰村三年生の勃起するペニスの真上に陣取る。
人工膣から粘り気の強い潤滑剤が流れ落ちる。
媚薬成分を含んだ潤滑剤は、そそり立つ男根に染み込んでいく。
辰村三年生は己の象徴がさらに激しくいきり勃っていくのを感じていた。
「ペニスヲ、ジンコウチツニ、ソウニュウ、カイシシマス。」
人工膣がゆっくりと降りてくる。緩慢な動作に待ち切れず、辰村三年生は腰を左右上下に震わせた。
やがて、辰村三年生の充血した立派な亀頭が、人工膣内へと飲み込まれていく。
「うあ、あっ…くああああっ…すげえっ! 気持ち、いいっ!!」
本物を凌駕する食いつき、締め付けを誇る人工膣は、オナニーの経験が殆どない辰村三年生をいともたやすく吠え狂わせた。
勃起時は20センチ近くまで膨張する自慢の巨根が、すんなりと機械の中に収まっていく光景は、彼にとって
ちょっとした感動でもあった。
自分の手でも握りきれないものが、いともたやすく肉壁へ包み込まれていく。
「うわああ、俺のチンポ、機械に食われちまうよおっ!!」
辰村三年生はもはや鉄の男ではなかった。
厳しい顔立ちは未知の快楽に屈し、おびえる幼子のように涙や鼻水を垂れ流している。
拘束された両腕は力瘤を蓄え、拳を握りしめて快感に耐えている。
呼吸とともに逞しい胸板が上下する。引き締まった尻が跳ね上がる。
「いぐうう!! もういっちまうよお! ああ俺、みんな見てる前で精子だしちまうっ!! あああーーーいくっ!!」
鍛えられた六つの腹筋が一気に引き絞られた。過酷な競技への連続出場、その度に重なった性器への刺激により、
ほぼ寸止め状態であった彼のペニスはついに我慢をやめる。
びゅるるっ、びゅるっ、びゅるびゅる…。
熱い液体が肉筒を駆け上がり、尿道から吹きあがる。
濃厚な若い精子たちは集められ、人工膣から伸びたチューブを通って、別の容器に納められていく。
「はひっ、はひっ…! 紅組のみんな! これっ、すごいぞっ! くそっ! また締め付けがぁっ…!!」
紅組の三年生男子は気持ちよさそうに射精した彼を見て、待ち切れなさそうに歓声を上げた。
部活の後輩、クラスメイトたちの目の前で、強制射精させられた辰村三年生は、手術台から頭を起こし、
心底うれしそうな顔で紅組の面々を見渡していた。
人工膣の内部で、辰村三年生の雄々しいチンポが歪な形になるほど強く締め付けられている。
人工膣が透けているのでその様子は丸見えだ。全ての精を絞りださせるため、機械はその手を休めない。
「うおおおっ! またっ! たっぷりいっちまう! 射精するっ! みんな見てくれっ! これが俺の精子っ…ああ、いくうっ!!」
熱狂する男子陣に対して、いまだ校舎内にて待機する女子生徒たちもまた、各々興奮を隠しきれないようであった。
「タツムラくん、ちゃんと見てるよ〜! きゃ〜! いっぱいでてるうう!」
「でもこの後、あれ切っちゃうんだよね…。」
「そうね…なんか、ちょっとかわいそうかも…。」
すると、窓の反対側をずっと向いていた女子の一人が怒気のこもった表情で振り返った。
「何言ってるの! 男なんて下等な性別よ! た、タツムラ君だって…きっと、きっとうれしいわよ!」
そういうと、潔癖症の女子は頬を赤らめて、持っていた本を逆さに読み始めた。
「そうだよね…タツムラくん、ようやくオンナのコになれるんだよ? 私たちが応援してあげなくっちゃ!」
「すごい…タツムラ先輩のあそこ、すごく大きくなってる…あんな怖いのを大昔のオンナのコはお腹に突き刺されてたんだ…。」
「セックスだっけ? 歴史で習ったな〜…ほんと、男って野蛮だよ。」
この時代、女子と男子の社会的地位は歴然とした差があった。女性は高貴な存在として、ありとあらゆる自由と
社会保障が約束されているのだ。
その下で、男性にはありとあらゆる自由、権利がない。
女性たちがきままな生活を謳歌するために、その礎としての奴隷というのが、彼らの存在意義であった。
女性は幼いころから自らの性の優位性を学び、男性は自らが劣悪種であることを刷り込まされながら育っていく。
たとえ同じ学校に通っていても、男子と女子とでは授業のレベルから学食まで何もかもが全く違うのである。
男子にとって、女子の命令は絶対であり、逆らえば法律で罰せられる。
そんな男たちにも救済措置をという声を受け、およそ100年前に、彼らにも生まれ変わるチャンスが与えられる。
それが、今行われている全国一斉男子大運動会である。
その大会にて敗北した者たちは、これから一生奴隷階級として女性に尽くさなければならない。
だが晴れて勝者となったものには、性転換による女性社会への参入が許される。
性転換はこの国で認められてはいないが、この大会によるものだけは例外である。
この国に生まれた男子たちは、そのほとんどが小学生のころからこの大会での勝ち組を目指す。
そして、この一日のためだけに短い少年期を筋トレ作業に費やすのだ。
もちろん辰村三年生もまた、そうやって少年期を過ごしてきた者の一人である。
「セイエキ、キテイリョウノ、10ミリリットルヲ、カクホシマシタ。ジンコウチツヲ、ペニスカラ、ハズシマス。」
人工膣に洗浄液が投入され、辰村三年生のペニスが清められた後、水音を立てて、長い肉茎からそれが外される。
集められた精子は後に冷凍凍結され、番号を振り分けられたのちに、保管センターで体外受精の希望者を待つこととなる。
「辰村先輩…いよいよッスね! 女の子になれるなんて、俺うらやましいッス!」
「ちくしょっ、辰村の野郎、いい思いしやがって…くそっ…。」
辰村三年生は目の前に集結している紅組を見下ろしていた。
自分たちのリーダーが、これから生まれ変わる瞬間を見逃がさないようにと、彼らは朝礼台を取り囲んでいた。
人工膣が収納され、代わりに何本ものロボットアームが手術台から現れる。
その一つに備え付けられた、鋭いメスの刃波が照明を反射する。
「フェイズツー、コレヨリ、ダンセイキ、セツジョノタメ、シュジュツノ ジュンビヲ、カイシシマス。
…マスイハ、ドウシマスカ?」
「麻酔なんてなしだ! 一生の体験だからな!」
了解、と機械が答えると、開脚装置が辰村三年生の両足を裂ける限界まで広げる。
無麻酔施術の激痛に備え、肩や胸にも拘束用のベルトがかかる。
ロボットアームが彼の立派なペニスを掴んだ。
重い肉棒を人間の手のようにがっしりと握りしめ、定位置に固定する。
「紅組のみんなぁ! ありがとう! 俺が生まれ変わるところを、みんなでしっかり見守っててくれぇ!!」
その言葉の直後、辰村三年生の口に舌を噛まないよう、開口器具がつけられた。
勃起の冷めやらぬペニスの根元に、そっとメスがあてがわれる。
「デハ、ダンセイキノ、セツジョヲ、カイシシマス…。」
メスが辰村三年生の肌を滑る。皮膚の下から、鮮やかな体内組織が露出し、血が飛び散った。
「むうあーー! ぐあああっ!!」
肉にメスが入った瞬間、彼は雄たけびを上げた。
それでも、辰村三年生は顔をぐっとあげ、自分のチンポが切除されていく様子を目に焼き付けようとする。
(うあああああ!! これで、女になれる…。さよなら、俺の、自慢のチンポ…。いっ、ぐあああううっ!)
メスはゆっくり時間をかけて、辰村三年生の象徴を彼自身の肉体から切り離していく。
辰村三年生の逞しい身体はしっかり拘束されていたにも関わらず、弓なりに反って全身の筋肉を
鬼の形相に浮き立たせていた。
熟れたトマトのように腫れあがった睾丸ごと、メスは彼の雄々しい巨根をえぐる。
脂汗をにじませ、力いっぱい隆起する全身の筋肉は、燃え尽きんとする炎の最後のきらめきのようだ。
大事な雄性が失われつつあるこの瞬間、彼の肉体は本能のままにビルドアップし、己がまだ
男であることを世界に誇示し続ける。
このとき、辰村三年生の心には、男のままでいたいというわずかな後悔があった。
だがあまりも小さな感情であったため、そのことに気づきもせず、彼は
蛇口をひねったように流れる涙をうれし涙と勘違いしていた。
「あ、ああ、うわあああああーーー!!!」
深く、男根の根元に食い込みながら薙いできた鋭いメスが、再び肉の間から現れる。
そして、ペニスは元あった位置から大きく滑る。
ロボットアームが辰村三年生の象徴を掴んだまま上昇し、それを引きちぎろうとする。
肉のちぎれる音がわずかにして、ペニスが筋肉質な身体から完全に切り離された。
男の誇りをすっかり奪われた肉体に、血の雨が降りそそぐ。
辰村三年生の全身を覆う筋肉は鮮血にまみれながら激しく痙攣し、施された去勢の痛みを何度も反芻していた。
高校生離れした大きな男根を、学校新聞の取材者がカメラに収める。
そこからしたたる血の向こうには、幸福感にゆるみきった辰村三年生の顔があった。
「やっひゃ…。やっひゃああああ!」
男の証を失った股間部を見つめ、辰村三年生は喜びの奇声を上げる。彼の念願がかなった瞬間であった。
先ほどまで、溢れんばかりの雄性を示していた若い肉体は、伸びきったゴムのように弛緩してだらしなく横たわっている。
ロボットアームに納められた男根は、そこから廃棄物用のパックに移された。
何の利用価値もないので、大運動会勝者の切り取られたペニスはもれなく焼却処分する規定になっている。
「辰村先輩…すっげえかっこよかったッス…。俺も来年は、キャプテンみたいにっ…!」
巳岡二年生はとうとう男を捨てた主将の姿に羨望の眼差しを向けていた。
憧れの先輩があられもない姿で拘束され、強制的に何度も射精させられ、筋肉の筋を浮き立たせながら陰茎を切断されていく様子を、
彼は朝礼台の真正面に陣取ってずっと応援していたのだった。
「巳岡、今日からお前が…キャプテンだ…。野球部に、鼬原の奴なんかに負けないサッカー部に、しろよ…!」
「は、はいっ! 辰村先輩!!」
「タツムラく〜ん! だいじょうぶ!?」
「女の子のこと、私たちがいろいろ教えてあげるからね!」
女子生徒たちのなかで、血しぶきと辰村三年生の吠えたけるような叫び声に観賞を中断した者はいなかった。
彼女たちにとってもやはり、女に生まれ変わるのが男にとっての一番の幸せであるというのが常識であった。
男子が様々な洗脳教育を受けてきたように、彼女たちもまた、そうとは知らされずに洗脳教育を受けているのである。
医師団が朝礼台に上がり、本格的な術後処理を進める。
ようやく麻酔がかけられ、辰村三年生がぐっすり眠ったところを、医師団のメスが逞しい腹筋の縦溝に沿って切り裂き、
下腹部から残った男性器の各器官を次々と摘出していった。
残った紅組の男子生徒は体育館に集合した。
そこには朝礼台上の設備と全く同じものが、ずらりと人数分用意されている。
喜び勇んで、次々と三年生たちは好きな手術台へ寝転がった。
一人しか入れない無菌テントの外では、部活の後輩である二年生たちがうらやましそうに、全裸で拘束された先輩たちの姿を見つめる。
「おまえが今日から、新生金高バスケ部のキャプテンだ! しっかりやれよ!!」
「マジっすか!? やった! 俺マジがんばるッスよ!」
一部テントの前ではもうすでに部活動の引き継ぎ式が行われている。
やがて装置が一斉稼働し、全裸の三年生たちは大きく股をこじ開けられた。
「んひゃああああ!! こりゃ気持ちいいぜっ!! 見ろよ! 俺の精子がどんどんぶっ飛んですげえ!!」
「やったんだ…俺も、これでやっと、女に…っ! ぐぎゃあああああーー!」
体育館での閉会式は、機械に精を絞り出される者の嬌声と、男の証を切り取られる者の泣き声に包まれていた。
そして、それから半年が過ぎた、4月の中頃…。
巳岡三年生は部活動を終え、男子寮へ帰ろうとしていた。
彼はサッカー部の新主将として、最近めきめきと頭角を現してきているところである。
旧知のライバルであり、野球部の新主将でもある鼬原三年生とは、さっそく新一年生の入部を巡って
一悶着あったばかりであった。
「今年は元気な一年が多くてうれしいなあ…。新しい編成も考えなきゃ…ん…?」
巳岡三年生の自室の前に、彼の見知らぬ女性が佇んでいた。
さらりとした黒の長髪に、おしゃれな桃のスカートを履き、手提げかばんを両手で持っている。
「ま、まさか、辰村先輩ッスかっ!? どうしたんですか一体!」
振り返ったその女性は、巳岡三年生に向かって微笑する。
きっと、彼以外にその女性を去年のサッカー部主将であると気付いた者はいないだろう。
彫りの深いイケメンであった彼は、丸い小顔の美女に変貌していた。
切れ長の目は大きくぱっちりと作りかえられ、大きなまつげが特徴的だ。
日焼けしてやや黒かった肌は、色白のきめ細やかなすべすべ肌に生まれ変わっていた。
広かった肩幅はぐんと縮まって、小枝のような両足は半年前までサッカー部のエースとして活躍していた人物のものとは
思えないほど、華奢なつくりである。
「やっぱり、巳岡にはわかっちゃったね。どう? 私可愛くなったでしょ?」
「駄目ですって! ここ男子寮ッスよ!? 見つかったら俺、治安警察に通報されちゃいますよ!」
「じゃ、誰かに見られる前に、巳岡の部屋に隠れちゃおうかな。」
巳岡三年生に与えられている部屋は、眠るスペースがあるだけの狭い一室であった。
私物の持ち込みは一切禁止され、サッカーボールすら置いてはおけない。
「いやだ、懐かしい。今思えば、よくこんなところで寝られてたなあ。」
「あははは…あ、もしかして臭いますか? ごめんなさい…。」
巳岡三年生は落ち着きのない様子で布団を片付けている。
本当にこの小柄な美少女が、自分の模範としていた鉄の男であったのかと、疑わずにはいられないのである。
「お菓子あるんだけど、食べる?」
おもむろに彼女が取り出したのは、砂糖のたっぷり練りこまれたスイーツの詰め合わせであった。
「いえっ! そういうのは、自分もちゃんと女になってからに…。」
口にできる食品に厳しい制限のある男子には、キャンディですら手が届かない嗜好品である。
巳岡三年生の夢は、女に生まれ変わり、お菓子を主食にすることであった。
ここで辰村の好意に甘えることによって、決意が鈍ってしまうのを巳岡三年生は恐れたのだ。
「す、すっげえ変わっちゃいましたね…辰村先輩。あんだけ筋肉モリモリで身長もすごい高かったのに…。」
「そうなのよ。ほら見て。」
そう言うと辰村は、上に着たシャツをいきなりたくしあげた。
巳岡三年生はとっさに腕で隠そうとしたが、男の性が働き、その身体をまじまじと見てしまう。
岩盤のように堅く、引き締まった腹筋はあとかたもなく消え失せていた。
その肉体はまるで卵のように艶やかな曲線美を描き、実に女らしい。
たっぷりの脂肪を蓄えた胸をブラジャーが支えている。女性の乳房を見る機会などなかった巳岡三年生にとって、
あまりにショッキングな体験であった。
「オチンチンを取ってもらった後、何カ月もかけて病院で全身整形されたんだけどさ…小学生から苦労して
ガッチガチに鍛えた体が数カ月でこうなっちゃったんだから、流石にびっくりしたわ。」
「で、でも、すっげえ可愛いッス…っ!!」
「ふふ、ありがと。じゃあサービスしちゃう。」
シャツの次は、スカートのすそを引っ張り上げる辰村。縞模様の女性用下着を着用し、当然ながら、股間のふくらみは控えめであった。
下着の下には、生まれながらの女性と変わらぬ割れ目が隠されている。
「ふふん、どうかな。遺伝子治療とかホルモン調整とか、とにかくいっぱい大変だったけど、その甲斐もあったってもんね。」
閉会式後、辰村は外科整形と遺伝子操作によって、全身を覆っていた男らしい筋肉の鎧をすべて取り払われた。
そして美しくくびれた腹の中には、彼の細胞から作りだされた子宮が埋められている。
この時代、子宮は子を成す器官として用いられることはない。だがそれを体内に持っているということが、この時代での絶対的なアドバンテージなのである。
「私の先輩の夢がね…スカートを履いて街を出歩くことだったんだ。でも、一緒の大会で先輩は負けちゃってさ。悔しかったなあ…。」
「それは…うう、つらいッスね…。」
「私がその夢を引き継いで、今こうしてスカートを履きながら巳岡の部屋まで来れた…。先輩は、今どうしているんだろう…。」
しばらくの沈黙ののち、口火を切ったのは巳岡三年生であった。
「辰村先輩、その、ところで、あなたはどうして俺に会いに来たんですか…?」
「そうね…チェックしにきたのよ。巳岡がちゃんと頑張っているかどうかをね。」
目をつぶりなさい…。そう言われ、女性の命令には絶対服従することを刷り込まれている巳岡三年生は、すぐにまぶたを閉じた。
何が始まるのだろうかと身構えていると、ユニフォームの上着が一気にまくりあげられる。
巳岡三年生の体に電撃が走る。
「サッカーするにはまあまあかな…。でももっと腹筋とか、腕の肉とか、バッキバキになるくらいに鍛えないと負けてオンナのコにはなれないよ。」
「こ、これでもっ、結構休みなく鍛えてるつもりなんスけど…。」
連なる山を作りつつある腹筋の盛り上がり方を、辰村は指でなぞって確かめた。巳岡三年生はじっと耐えるが、生理的反応は抑制のしようがない。
「なんだ、勃起してるじゃない。せっかくだからこっちも見てあげるわ。」
辰村はハーフパンツに手をかけると、下着ごと一気にずりおろした。
へそを穿たんとする元気のいい勃起体が外気に晒される。
「やっ…! 辰村先輩! これはさすがにやばいッスよ!」
「いいのいいの。うふふ、相変わらず立派なオチンチンね。」
辰村はじっと彼の股間を見つめていた。そして、その脈動する肉棒を掴む。
「ひいっ! …ああっ! 何するんですかっ!!」
「すげえ、びくびくしてて、固くて、熱くて、太い…。」
そのまま辰村は後輩のチンポをしごく。その弾力は懐かしいものであった。
自らの手の中でさらに熱く、大きくなっていく男根に、彼は不思議と心を魅かれた。
半年前、自分が望んで切り落としてもらったものを握っている。
二度と握ったり、しごいたりすることのないと思っていたものに再び触れている。
巳岡三年生にどうして会いに来てしまったのか、それは辰村自身にもよくわかってはいなかったのだが、
彼はようやくその理由を知った。
彼は、巳岡三年生ではなく、彼のペニスに会いたかったのである。
「ああ、これだ…長くて、硬くて、太くて、熱い、でっけえ俺の、自慢のチンポ…。」
彼はいつの間にか男の口調に戻ってしまっていた。
巳岡三年生のものを、失われた己のものと錯覚しながら、彼は長い肉筒を強くしごき続ける。
本当は女になって後悔しているのかもしれないと、辰村は初めて思い至った。
必死に彼はその考えを否定しようとするが、男根への焦がれるような想いは消えて無くならない。
「あっ、あっ! いきますっ! 辰村先輩の手で、俺のチンポいっちゃうッス!!」
腰を震わせた巳岡三年生の肉棒から、勢いよく精液が発射された。
射精の瞬間、辰村の手の中でペニスの直径が一段と大きくなる。
運動によって抑制されていたはずの性欲は、柔らかな手によって全てかき乱され、彼のペニスからは
貯め込まれていた大量のしぶきが散った。
「ひ、ひどいッス…。あんまり部活以外で体力使わないようにって、控えてたのに…。」
自分の吐きだした欲望を片付けるため、雑巾をもってこようとした巳岡三年生だったが、呆けたような辰村の様子を見て中断する。
「た、辰村先輩だいじょうぶッスか!? もしかして、俺の汚いのがかかっちゃいましたか!?」
「…え? ああ、うん、私は大丈夫よ。」
辰村は自分の手を見ていた。さっきまで後輩のチンポを鷲掴みにしていた手には、その熱がまだ残っている。
「違う…私は、女になりたかったのよ…。女になれて、こんなにうれしいんだから…。」
辰村の大きな目から米粒大の涙がこぼれる。
巳岡三年生の顔面はいよいよ蒼白になり、ひたすら頭を下げ始めたが、辰村はまったく見てもいない。
粗末な寮部屋の窓から夕陽がさしかかる中、涙を流すその訳を、彼女は後輩に悟られないことを願った。
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投稿:2012.03.22
男子大運動会
著者 モブ 様 / アクセス 35596 / ♥ 17