俺の名前は溝口ツトム。れっきとした人間様だ。だが、ここ最近は素っ裸で首輪をはめて、時々ムチでしばかれる生活を送っている。理由は聞いてくれるな。人にはそれぞれ事情ってもんがある。人生いろいろだ。
「トム、いらっしゃい」
おっと、御主人様の呼び出しだ。まったく、モテる男はつらいね。今晩はこれで四回目だ。いくら絶倫の俺様でも、さすがに弾切れだ。逆さに振っても鼻血も出てこねえぜ。
と、思っていたのが表情に出ていたのだろうか。そばによるなり思いっきり金玉を踏みつけられた。脳天を突き抜けるような痛みに、思わずキャインと鳴きそうになるが、股間を引っ込めることは俺のような身分のオスには認められていない。世知辛い世の中だ。
鼻水を垂らしながら仰向けに腹をさらけ出した服従のポーズをとると、ようやく、ハイヒールの形をした凶器をのけてもらえた。やれやれだぜ。
「いい子にしなきゃだめよ」
御主人様はそういいながら血のような真っ赤に塗られた爪で俺の乳首をつまむ。彼女は左の乳首だけがお気に入りのようで、いつも抉り取られるんじゃないかと思うような勢いでつねる。おかげで俺の乳首は左だけが大きく腫れ上がっていて、左右の大きさが全然違う。まったく、人前でおちおちシャツも脱げやしない。
余計なことを考えていたのがいけなかったのだろうか。チンポの先から先走りがトロリと床に垂れ落ちた。ヤバイ! 慌てて手で拭おうとしたところに、すかさずきついムチが飛ぶ。鼓膜がジンジン痛むくらいの音が鳴って、粗相を隠そうとした手の甲に赤い筋が刻まれた。あまりの衝撃に指の感覚がなくなって、手自体からは痛みを感じる事もなく、ビリビリとしびれている。
「違うでしょう、トム」
御主人様は、さも飲み込みの悪いバカ犬を諭すかのように言う。俺は目尻に涙を滲ませながらコクコクと頷いた。そして、床にはいつくばって、垂れ落ちた自分の汁を舌で舐め取った。ザラリと床のホコリと一緒に、苦味の強い粘液が口に入ってくる。正直、自分のチンポの穴から垂れた汁なんて、こんなことでもなければ絶対に口にしたくなんかはないんだけれども、粗相の後始末のやり方は、ずっと前から嫌というほど教え込まれている。さっきは、ついうっかり反射的に手が出てしまっただけだ。
「そうよ、いい子ね」
俺が床の汚れをきちんと舌で拭い取ったのを見て、御主人様は俺の背中を軽く引っかいた。思わず、鼻から息が抜けて変な声が出る。俺は肩甲骨の裏が弱いんだ。
「ちゃんとしていればごほうびもあるのよ」
御主人様は俺を転がして仰向けにさせると、また玉袋を踏みつけた。でもさっきとは違うんだ。さっきのは情け容赦なく踏み潰される勢いだったけど、今回のこれはごほうびだから、じわじわコリコリといたぶられる感じなんだ。それのどこがごほうびなんだって? チッ、やられたことのねえ奴にはわからねえよ。痛みってのはなあ、痛みってのはなあ、チクショウ、俺の人生返してくれ。母ちゃんに胸張って会える人生返してくれ。アヒッ。
俺が甘えた声を出すのを見て、御主人様は眉をしかめた。いけねえ、また調子に乗っちまったか?
案の定、御主人様は足をのけて、後ろに控えていた男を呼び出した。それまで大喜びでブンブン振っていた俺のイチモツが、こころなしかしょんぼりする。
「ジョー、手伝いなさい」
やたら彫りの深い、身体のごつい男がのっそりと、伏せの姿勢から立ち上がって近づいてきた。奴は俺のライバルだ。村田ジョージといって、御主人様とのつきあいは俺より長い。だから、やたらと先輩風を吹かせてくるし、俺が調教中に粗相をしておしおきをくらっていると、馬鹿にしたように見下して鼻で笑いやがる。今は俺と御主人様の時間なのに、ずうずうしい奴だ。
しかし、悔しいけれども流石に奴の躾は完璧で、御主人様が贔屓するのも納得できるぐらい、命令に忠実なんだ。ことあるごとにキャンキャン騒いでいる俺とは格が違う。なにより屈辱的なことに、チンポも俺よりずっとデカい。あの重そうな玉袋が鞭打たれてブラブラ揺れてるのを見ると、つい感心して見入ってしまうくらいだ。
しかも、奴が鞭打たれるのはおしおきじゃない。ペットの犬がブラッシングしてもらう程度の感覚で、奴は自分から急所をぶってもらうんだ。御主人様も、まるで日課のようにそれは欠かさない。そんときの野郎の優越感に浸った顔! 憎たらしいにも程があるってなもんだ。
俺が敵対心剥き出しで奴をにらんでいると、奴は薄笑いを浮かべながら、乱暴に俺の股を割り開いた。御主人様さえ見ていなかったらこんなことは絶対にさせないのだが、残念ながら俺が反抗することは許されていないのだ。
「マッサージをしてあげなさい」
ジョーは御主人様の言葉にゆったりと頷くと、眉毛を馬鹿にしたように持ち上げながら俺のキンタマを握り締めた。男のごつい手に大事なところを弄られるなんてぞっとしないが、嫌がっても御主人様がやれと言った以上、逃げることはできないし、こいつはやめない。喜んで俺の玉を揉む変態野郎だ。イテ、イテテ!
デカい手で揉み潰されたタマから脳ミソに直通で悲鳴が届く。得意満面のジョーの顔を蹴っ飛ばしてやりたいが、そんなことをすれば御主人様の不興を買って、逆に奴の株を上げてしまうことになるのが眼に見えている。俺は大人しく自分で膝を抱え上げて、野郎にキンタマを揉まれるしかないのだ。
ギュウギュウと容赦なく締め付ける奴の握力で、俺の大事なタマは形が変わってしまっている。なお悪いことに、俺のチンポは勃ちっぱなしなのだ。それはもうビンビンに。決して俺はホモじゃないぞ。男にキンタマ握られたって嬉しくないんだ。ああ、でも、御主人様が見てる。満足そうな笑みを形のいい赤い唇に乗せて、涙ぐんでる俺の顔を見てる。
突然、御主人様が手を伸ばして、先走りでどろどろになった俺のチンポの先をつまんだ。ジョーもそれには驚いたようで、羨ましそうに俺を見る。へっざまあみろ。
しかし、度肝を抜かれたのは俺も一緒だ。御主人様は、いつもよだれ垂れ流しの俺の汚いチンポコなんか、めったに触ってくれない。だから俺は嬉しくて嬉しくて、涙を流した。相変わらずごつい手でキンタマは潰されそうなままなんだけれども、ほっそりスベスベのひんやりした指先が、俺の先っぽをやわやわと撫でて擦って……ア、イク……
ふと、それはまずいことに気づいた。
あわてて腹に力を入れてザーメンを押しとめようとしたが、逆に勢いをつけた形になって、びゅるびゅると間の抜けた音を立てて飛び出した汚い汁が、俺の顔やらジョーの顔やらに思いっきり飛び散った。普段の俺なら顔射されて汁まみれのジョーを指差して、大笑いしてやるところだが、今の俺は恐怖のあまり震え上がってそれどころではなかった。だって御主人様の許可なく射精なんて、調教初歩の子犬しかやらない大失態だ。俺は小学一年生のときに、先生の話が長くておもらししたときのことを思い出してしまった。クラスメートが馬鹿にした顔で俺を笑う。種汁を引っ掛けられてジョーは少し怒っていたが、その目に浮かぶ表情は、あのときのクラスメート達と同じように、俺を馬鹿にしてあざ笑っていた。
俺は怖くて御主人様とは目をあわせられなかった。今更、このトシになって、御主人様におもらしで叱られるなんて、恥ずかしすぎる。
「トム、自分が何をしたかわかっているの?」
俺はビクリとした。わかっている。わかっていると言いたいが、わかりたくないというのが本音だ。恐々と視線を上げると、御主人様の失望したと言わんばかりの呆れた顔が目に入る。今すぐ土下座して謝らなきゃいけないのがわかっているのに、俺は頭が真っ白になって、身体が動かなくて、俺は自分の膝を抱え上げたまま、ガキみたいに泣き始めた。
しゃくりあげる俺の前にかがみこんで、御主人様は俺のどうしようもない馬鹿息子をつまむ。
「ダメな子ね。こんなオチンチンは切ってしまおうかしら」
俺はビビッて竦み上がった。ブルブルと身体全体が恐怖で震える。だってそうじゃないか、チンコをちょんぎられるなんて。そんなことされたら、その後どうやって気持ちよくなりゃいいんだ。そりゃ、ケツの穴を突かれたって、玉袋を揉まれたって、乳首を吸われたって、男がイケるのは知ってるが、そんなの全部同じじゃない。全然違う。チンコと一緒じゃない。
しかし、御主人様が一度言い出したからには、従わなければ許してもらえないことを俺は知っていた。ああ知っている自分が憎い。いや、憎いのは暴発なんかしやがった俺のチンポコだ。俺の馬鹿野郎。
「さあ、トム。ちゃんと謝りなさい」
御主人様が言った。俺は、べそをかきながら答える。
「ご、ごめんなさい。御主人様……許してください……」
「駄目よトム。お行儀よく、謝るのよ」
御主人様が怒っている。俺は涙が止まらない。御主人様に許してもらうには、俺は自分で罰をねだらなきゃならないんだ。
「俺の……俺のチンチンを……」
切ってくれ、なんて言えない。でも、勝手に罰を変えることなんて、もっと許されない。俺は涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにしながら、イヤイヤというように、首を振った。
御主人様はため息をつくと、鎖を手にとって、俺を首輪で壁につないだ。
「反省するまでそこにいなさい」
冷たく言い放って、御主人様はジョーのところへ行ってしまう。ジョーはまだ顔から俺のザーメンを垂らしたままだったので、御主人様は濡らしたタオルを手にとって丁寧にジョーの顔をぬぐった。ジョーは気持ち良さそうにして御主人様にきれいにしてもらっている。
「トムにも困ったものね」
「馬鹿な奴です」
ジョーが偉そうな口を利いた。御主人様もそれを咎めるでもなく、奴の金玉袋を爪を立てて抓る。
「少しはジョーを見習ってくれると良いんだけど」
奴は俺のほうを見て得意気に微笑むと、腹を出して御主人様にチンポコを踏みつけてもらっていた。俺は悔しくて、自分が惨めで仕方なかった。
「あなたはおりこうさんね」
ジョーはそんなことを言われながら抱きしめてもらっている。御主人様に亀頭をヒールでぐりぐりしてもらいながら抱きしめてもらっている。それでもって鼻なんか御主人様のアソコに埋めてクンクン匂いなんか嗅いでやがる。クソッ! クソッ!
「あなたはトムみたいな我侭は言わないわよね」
「当然です。御主人様に叱ってもらえるなら、喜んでどんな罰でも受けます」
「じゃあ、あなたのオチンチン、切ってあげましょうか?」
さすがにジョーも少し返答をためらった。いつもこれ見よがしに引き締まったケツが、ひくりと震えるのが見える。しかし、ジョーは御主人様の顔を見つめて答えた。
「はい、お願いします」
俺は開いた口が塞がらなかった。なんてことを言うんだ。
御主人様は、本当に嬉しそうな顔で、母親を喜ばせる台詞を吐いた息子を抱きしめるように、ジョーのチンポコを踏みにじった。搾り出されるように、じゅるりと先走りが床に広がる。ジョーは従順に御主人様の許可を得ると、床を舐めて自分の汁を啜った後、御主人様の靴までしゃぶって清めた。
「私のペニスを切り取ってください」
「本当にいいのね」
「……優しく……お願いします」
ジョーは頬を赤く染めて、恥ずかしそうに言った。まるで、初恋の女教師に告白する中学生だ。
「いいわよ。優しくしてあげる」
御主人様が、ジョーのうなじに優しくキスをした。俺は目の前で起こっていることが信じられなくて、じたばたと騒いだが、二人は俺のことなんか目にも入らない様子だった。
「いらっしゃい」
御主人様に導かれ、ジョーがテーブルの上に縛られる。デカいイチモツは蝋燭みたいにまっすぐ突き立っていた。
「ジョー、どうする? 最後に一度使いたい? それとも、このまま切ってもらいたい?」
御主人様がジョーのイチモツを扱くと、奴はぎゅっと目をつぶり、快感に耐えていた。
「御主人様が決めてください」
俺は勝てないと思ったんだ。ショックで打ちのめされた。そんなの、使いたいに決まってる! ジョーが最後にヤリたいと思ってることくらい、俺にだってわかる! でもジョーは忠実な犬らしく、全てを御主人様に委ねた。その潔さ男らしさに、俺は完璧に敗北を認めるしかなかったんだ。俺はジョーを尊敬した。足元にひれ伏して拝む気にさえなった。
「いい子ね。ごほうびをあげなくちゃ」
御主人様はそう言うと、ジョーの顔の上にまたがった。ちょうど割れ目のところに口元が来ていた。ジョーが舌を伸ばして、御主人様のアソコを舌でまさぐるのが見える。
う・ら・や・ま・し・い!
俺だってそんなことをさせてもらいたい。しかも、その間に御主人様は、シェービングクリームをジョーの股間に塗りたくって、ジョーのチン毛を剃っているのだ。俺は鎖につながれて、指を咥えて見ているしかないというのに、酷すぎる。
やがてジョーの股ぐらがツルピカになると、御主人様はジョーのチンポコをちょん切る準備を始めた。そのとき、情けない顔でしょんぼりしている俺に目をやり、命令する。
「トム、ジョーのオチンチンを舐めてあげなさい。これで最後だから」
俺は素直に頷いた。勘違いしないでもらいたい。俺はチンコなんてしゃぶりたくはない。いつもの俺だったら、命令に従うフリしてジョーのきわどいところに噛み付いてやったり、不満タラタラで奴を気持ちよくさせてやろうなんて、これっぽっちも思わなかっただろう。
でも、御主人様の言うとおり、これがジョーのチンポの最後なんだ。こんなにでっかくて太くてきれいな形してるのに、もう切られちまうんだ。だからジョーが最後に一発気持ちよくなれないのは気の毒だと思った。他に女の子でもいれば、その娘にやってもらうほうが奴も嬉しいんだろうけど、ここには俺しかいないわけだし。結局のところ、ジョーは生意気だけどそう悪い奴じゃないんだ。
それに俺は単純に嬉しかった。なぜって、完全に御主人様に見捨てられたんじゃないかと思っていたからだ。このままずっと、壁につながれたまま、声もかけてもらえないんじゃないかと、俺は心配していた。だから、これは俺の名誉挽回のチャンスでもあるわけで、俺がジョーを気持ちよくさせてやれば、御主人様だって俺のことをもう少し見直してくれるかもしれないんだ。
だから、御主人様が俺をテーブルの足元につなぎなおすと、俺は従順にジョーの股間にしゃがみこんで奴のチンポコを手に取った。奴はちょっと心配そうな顔をしていた。まあそうだな、前にやらされたときは下手なフリして傷つけちまったからな。だけど、今日の俺は素直に負けを認める気持ちになってたから、心配すんなとウィンクして、丁寧にしゃぶってやったんだ。
もちろん、マズい。クサい。エグい。でも、もし俺がジョーの立場だったら、最後の射精はちゃんと気持ちよくなきゃイヤだ。
ジョーが気持ち良さそうに鼻を鳴らして呻き声を上げたので、御主人様が作業の手を止めて俺の頭を撫でてくれた。俺も嬉しい。調子に乗ってもっと激しく攻めてやる。流石にジョーは我慢強かった。我慢汁はダラダラ溢れているが、俺みたいに勝手におもらしなんて、しない。
それでも俺がいつになく真面目にやったので、奴も顔を真っ赤にして歯を食いしばって耐えていた。そして、ようやく音を上げる。
「ご、御主人様っ! ……もう……もうっ!」
御主人様はそれを聞いてジョーの枕元に座った。
「イカせて下さい……お願いします」
「いいわよ、見ていてあげる」
御主人様はそっと声をかけて、優しくジョーの髪を撫でた。俺がチュッと音を立てて先端を吸ってやると、ジョーはアンヨをガクガクさせながら、すごい勢いで大量に射精した。そうだ、ガンバレ、ガンバレ。俺も見ててやるからな。俺は犬仲間に心の中で声援を送った。
最後まで出し切って、ぐったりとしたジョーを褒めると、御主人様は俺に手伝わせて、ジョーを縛るベルトをきつくした。下手に動くと怪我をするからだ。自分のイチモツが切られるところも見たいだろうから、背中にクッションを入れて頭を持ち上げる。その間に御主人様は、股間まわりをアルコールできれいに拭いて、麻酔を打って、いろいろ道具を並べて忙しそうにしていた。
ジョーは少し不安そうにそれを見ながら待っていた。俺は隣へ行って、肩に腕をまわし、奴の胸をトントン叩いて励ましてやる。
いつも反抗的な俺がやけに親しげなので、奴は慣れないようだったが、ぎこちなく笑って感謝を伝えてきた。
準備が整ったようで、御主人様がジョーの股間に陣取った。奴のチンポコを持ち上げた後、カリ首やら裏筋、根元やフクロなんかに次々と針を刺して、ジョーに感じるかどうかを聞く。俺は一針一針に、まるで自分のことのように痛みを想像してブルっていたが、ジョーは平然と何も感じないと答えた。麻酔はちゃんと効いてるようだ。
御主人様はジョーのチンポコの穴に、太いカテーテルを通して、中でバルーンを膨らませた。チョロチョロとションベンが流れ出る。結構溜まっていたようだ。俺は今日自分のションベンも飲まされてたからカラッポだけど、ジョーはスカはなしだったからな。
「はじめるわよ」
御主人様の言葉に、ジョーは重々しく頷いた。それを見て御主人様は、ジョーの根元にメスを入れた。ダラリと血が溢れ出る。止血が上手いから噴き出す、というほどの勢いはないんだけれど、止まらない鼻血みたいにジワジワ流れ続けてるんだ。んでもって、パックリ開いた傷口から、中のピンクとか黄色とか白とか赤とか、意外にカラフルなうにゃうにゃが見えてるんだ。グロい。キモい。じっと見てると怖いんだけれど、でも目が離せない。ジョーもそれは同じなようで、だって自分のチンポコだ。見逃すともったいない。でも見てると背筋がぞくぞくして、本当は痛くないのに、想像して痛い。ジョーが眉をしかめているのも、きっとそれだ。俺達はお互い手を握り締めていたが、ジョーの手はじっとりと汗で濡れていた。
特別音がしたってわけじゃないが、ジョーのイチモツがポロリと取れると、奴はヒュッと息を呑んだ。鉄の盆の上にナニが乗り、御主人様は傷口を手早く縫い合わせる。御主人様は何でもできるんだ。
しばらく、じっとその盆の上を眺めていたジョーは、やがてポロポロと涙をこぼして静かに泣き始めた。俺はなんと声をかけていいものやらわからなくて、ただ隣で手を握ってやるしかできなくて、しょんぼりとしていたが、御主人様は処置を終えた傷口にガーゼをかぶせた後、そんなジョーを抱きしめて、その額にキスをしてやった。
「がんばったわね。えらいわ」
「ありがとうございます」
ジョーは鼻声でそう答えると御主人様の胸に顔を埋めてワアワア泣いた。俺はそんなジョーが羨ましくて、嫉妬して、でも、ジョーのやったことは俺には出来ないスゴいことで。でも、もしかしたら、あの時素直に謝っていれば、こうやってチンポを切ってもらった後、慰めてもらっているのは俺かもしれなかったわけだ。そう思うと、怖気づいて逃げた腰抜けの自分が情けなくて悔しかった。
「可愛いオチンチンね」
御主人様はそういって切り取ったジョーのペニスを手に取ると、それにチュッと音を立ててキスをした。
俺は飛び上がって、ジョーは真っ赤になった。だってだって、御主人様が、男の、汚いアレに、キスだ。俺は地団太を踏んで悔しがった。羨ましすぎる! 俺だって! 今度聞かれたら躊躇うもんか! 今度は絶対俺だって!
ベルが鳴った。時間が来た合図だ。御主人様がテキパキと後片付けを始める。俺もつながれていた首輪を自分で外して、立ち上がった。
「村田君、大丈夫か」
俺が声をかけるとジョーは気まずそうに返事をする。
「ええ、なんとか。すみません、溝口部長。僕ばっかり」
「かまわんよ。いい物を見せてもらった。しかし、思い切ったなあ。本当に良かったのか? あのご立派なムスコを切っちゃって」
ジョーの顔色は少し青ざめていたが、とても充実しているのは見て取れた。
「うーん、やっちゃったなあというか、いくとこまでいっちゃった感じはしますけどね。でもまあ、後悔はないです」
「ちょっと触るよ」
俺がちょんぎられたジョーのイチモツを指差すと、御主人様がにっこり笑って手渡してくれた。少し縮んではいるものの、やっぱりご立派なペニスには変わりない。俺が感嘆の声を上げながら眺めまわしている間、ジョーは少し恥ずかしそうにしていた。
「写メ撮っていいかな?」
ジョーに聞くと、大らかに頷いて快諾してくれる。
「いいですよ、っていうか、僕も撮りたいな。部長、僕の携帯も取って下さいよ」
男二人が、ガキのようにワイワイとはしゃぎながら、切り取られたチンポコをパシャパシャと撮影している間に、御主人様はすっきりとあたりを片付け終え、部屋は何事もなかったかのように、ただのホテルの一室に戻っていた。
「そういえば君、明日の会議出られるのか? 結構長引くぞ、きっと」
「う……」
ジョーはしまったという顔をした。すっかり忘れていたようだ。
「まあ、明日もお仕事でしたの? だったら最初に言ってくだされば無茶はしませんでしたのに」
御主人様は目を丸くして驚くと、申し訳なさそうな顔をした。
「いつもお休み前に呼んでいただくものだから、今日もそうだとばっかり」
「いいよ、いいよ。君のせいじゃないから。のめりこんで何も言わないバカが悪いのさ」
「……返す言葉もございません」
ジョーがあまりに情けない顔をするので、俺はその頭をくしゃくしゃと撫でてやった。
「まあいいさ。明日は俺が何とかフォローしてやろう。君はゆっくり寝てなさい」
「申し訳ありません。本当に」
御主人様がジョーに代わって頭を下げる。また少し嫉妬心が湧いた。俺は腰にタオルを巻いて御主人様をドアまで送る。
「ハイ、今日はがんばってくれたからおまけ」
「あら、こんなに。よろしいんですの?」
「気にするこたないさ。ジョーのボーナスだから」
声が届いたのか、ベッドの方から抗議が聞こえる。
「では、また次の機会に。ジョーはチンチンなくなっちゃったけど、捨てないで一緒に遊んでやってね」
「ええ、お電話お待ちしてますわ」
優雅に立ち去った御主人様を見送ると、俺は中へ戻って、備え付けの小さな冷蔵庫から、缶ビールを取り出して蓋を開けた。
「あ、美味そう。僕にも一本……」
「駄目だよ、君にはアルコールはなしだ。傷に響くからね」
「チェッ」
窓の外の夜景は、きれいだった。男二人で眺めるのも味気ないが、俺達には俺達の楽しみがある。
「これ、どうする?」
俺はジョーのチンポコをぶら下げて、ぷるぷると揺らした。
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投稿:2012.05.17
調教未完了
著者 自称清純派 様 / アクセス 13596 / ♥ 46