窓の外はテラスになっておりそこにはいくつか花壇が置いてある、どうやら生徒が授業の一環として植物が植えられるように なっているのだろう。そして隣の部屋も同じ構造になっていた。柴木はそれも計算にいれていたのだろう。
窓から出た逃走者たちは窓づたいに部屋から部屋へ飛び移り一番端の部屋まで走った。背中の下で苦しい息を吐きながら柴木が言った。
「このまま行けば一番端の部屋にたどり着ける、そっから非常階段まではすぐだ。奴が来る前に全力で駆け抜けるぞ!」
追跡者の影はまだ無かった、どうやらまだ江口が食い止めてくれているのだろう。武は少し安堵した。その時!
「痴漢さんみーっけ!」女の子のそれこそ軽はずみな声が聞こえた。前方の岩佐が顔を女の声のする方向へ振り向けた。
校舎の一番端までいた岩佐の前方数メートル先に大きな桜の木がありその上、木の股に寄り掛かるように一人の少女がいた。
ここの学校の制服なのかは不明だが白いシャツに蝶ネクタイ、ブルーのスカート、黒の蝶ネクタイが普通の女の子でないことを表している。
そして彼女の手にあったものは..........
「逃げろ!」岩佐が叫んだ!それと同時に逃走者たちは一斉に駆け出した。真っ先に端の部屋の窓に飛びついた岩佐は彼女の攻撃を間一髪でかわし部屋の中へ滑り込む、武たちもその後へ続こうとするが、その瞬間ヒュンという音がして、それと同時に前方の内藤が悲鳴をあげた!
武の前方を走っていた内藤の背中に飛行機の尾翼のようなアンテナが突き出ていた、背中を抑え苦しむ彼を見て呆然とする柴木、しかし彼にかまっている暇はない、そう判断した武は彼をおぶったまま端の部屋へ駈け出す。
「待ってくれ!」苦しみながらも前へ進もうとする内藤めがけ少女は飛んだ。「うぁ!」ぎりぎりで後ろへ飛び退く内藤、彼の目の前に少女はいた。
「あはははははは!逃がすと思っているの?お兄ちゃんたちみたいな悪い人はあたしが成敗してあげるわ!」少女は手に持っていたボウガンを内藤にむける。「ひぃ!まってくれ。これは何かの間違いだ。そうだ、手品をするから見てくれないか!」内藤はおもむろにトランプをポケットから取り出す、少女は一瞬きょとんとした表情を見せた、その瞬間、内藤はトランプを持っていない方の手から何かを放った。催涙スプレーだった。
「うぁ!」少女は目を覆う、なんと内藤は予備の催涙スプレーを持っていたのだった。
「こんのぉ!」怒りにふるえる少女の顔が凍りついた。内藤の手には少女の支給されたボウガンが握られていたのだった。
「これで形勢逆転だな!」苦しい息をしながら内藤がボウガンの引き金に指をかけ、その時だった。
「ジョキン!」「ぎゃああああああ!」内藤の右肘が飛んだ!追いついてきた女が後ろから鋏で切りつけたのだ!
切断された右腕とともにボウガンが転がった、あまりの激痛にその場をのたうちまわる内藤を女が後ろから押えつける。
「全く馬鹿ね!いくら武器を持っていたって油断は禁物よ、相手は男なんだから!」そういうと女は笑った!
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投稿:2012.08.31
Tゲーム5前編
著者 帰ってきた初心者 様 / アクセス 8115 / ♥ 0