私の名は保喪黒袋造、人呼んで裏のビジネスマン。報酬は一切受け取りません。お客様が満足されれば、それが何よりの報酬でございます。さて、今回のお客様は…。
彼は、舌貝(したがい)益夫(ますお)28歳。世界を股にかけるビジネスマンを目指して一流企業に入社した、エリート候補。しかしその熱意とは裏腹になかなか成績を上げられずにいる。
上司『舌貝君は私に従っていれば間違いないから。ただ言われた通り仕事をしてくれれば良いんだからね。』
舌貝『はい。解ってます。』
と、またいつもの会話があり、いわれるままに仕事をこなし退社した。帰宅途中、彼はベンチに腰掛け、少し夢みがちに独り言をいった。
舌貝『とは言ったものの、本当は僕だっていろいろ考えがあるんだ。いつか僕があいつらより上の立場になって、こういうんだ。「君たちは、僕に従っていれば間違いないんだから、黙って仕事してなさい!」』
保喪黒『ハイ解りました。じゃ、どうすれば良いでしょうか?』
黒いスーツを着た、ちょっと小太りな男性が、つい興奮して、ベンチに立ち上がり声を揚げた妄想中の舌貝に返事をして、そこに立っていた。
舌貝『あ、ご、ごめんなさい。なんでもないんです。独り言です。』
保喪黒『なんだ、そうだったんですか。私はてっきり、あなたが超エリートビジネスマンで、何か仕事のコツを私に教えてくれるのかと思いましたよ。』
舌貝『超エリートビジネスマンなんて、とんでもない。むしろ、私のほうが、なんでもいいから仕事のコツを訓えてほしいくらいです。』
保喪黒『そんな謙遜なさらなくても、結構ですよ。申し遅れましたが、私、こういうものです。』
と名刺交換をしあい、意気投合して保喪黒の行きつけのバーへ行くことになった。そこで舌貝は仕事で悩んでいることを保喪黒に打ち明けた。
舌貝『そうなんですよ、保喪黒さん。なかなかうまくいかなくて、困ってるんです。』
保喪黒『その気持ち、同じビジネスマンとして、よーく解ります。よろしい。それなら私がよいアドバイスをしてあげましょう。騙されたと思って、私の言う通りにしてみてください。先ず、髪の毛を伸ばすのです。肩にかかるくらいまで伸ばすのです。それで結果が出なければ、私に騙されたと泣いても怒っても私を殴ってもかまいません。しかし、必ずよい結果が出ますよ。』
半信半疑な舌貝は、駄目でもともと、と思いながらも、従えば出世ができるかもと、髪の毛を伸ばし始めた。
はじめは同僚や上司から今時長髪をからかわれたが、少しずつだが確実に実績を出し始め、エリート社員として一目置かれるようになった。
一年後、会社で舌貝は上司に呼ばれた。
上司『いやー、舌貝君。今日もがんばってるね。すばらしい。君の業績は眼を見張るものがあるよ。私も君には才能があると見込んでたんだよ。だから、いつも従え従えと時にはきつく言ってきたけど、今の君を見るともう私には何も言うことがないよ。だから、今回は君の昇進を決定したよ。これからは私に代わって君が部下の面倒を見てくれたまえ。』
舌貝『本当ですか!はい解りました。喜んでそうさせていただきます!』
と、大喜びで昇進を受け入れた。そのニュースをもって保喪黒の行きつけのバーにやってきた。
舌貝『もう、大逆転ですよ。これも保喪黒さんのおかげです。』
保喪黒『これはこれは舌貝さん、お久しぶりですね。髪の毛も私のアドバイス通り、肩まで伸ばして、成功したんですね?あなたが大喜びなら、私もうれしいですよ。』
舌貝『はい、おかげさまで大成功しました。今度こそ僕がみんなを僕のやり方に従わせる時がきたんです。そこで実は、保喪黒さんにまた何かアドバイスをいただけたらと思って。』
保喪黒『よろしい。そこまでおっしゃるのならもう一度アドバイスをして差し上げましょう。舌貝さんに満足していただけると私もうれしいです。でもいいですか、私のアドバイスは冗談ではありません、本気です。絶対に従ってくれますか?』
舌貝『え、あ、はい。保喪黒さんの言う通りにします。』
保喪黒『そうですか、では言いましょう。舌貝さん、あなたは丁髷を結うのです。今まで伸ばしたその髪で。そして決してその丁髷を落としてはいけません。』
舌貝『ちょ、ちょんまげですか?』
保喪黒『そうです。丁髷は成人男性の証。そして自信と威厳の象徴なのです。ただ束ねて頭に乗せるだけじゃありませんよ。月代もしっかり剃ってくださいね。成人男性として下着には褌を締めてください。ハイ、これ』と、褌を渡す。
舌貝『で、でも、そんなことで本当に…』
保喪黒『舌貝さん、私のアドバイスの従うと仰ったではないですか?』
舌貝『それは、確かにそうと…』
保喪黒『いいですか、あなたは丁髷を結うのです。結うべきなのです。丁髷を結いなさい。ドーン。』
決意をし月代を剃り始める舌貝。見事な丁髷が結いあがる。そして、戸惑いながらも鏡を見ながら褌を締めると、そこには立派な日本男児が映っていた。それには舌貝も満足したようだ。
自信満々で出社した当初、周りは驚いのだが、髪を伸ばすことで業績を収めるという実績のある彼のことなので、何か策があるのではと特に咎めはなかった。さらに、彼はもう、他の人が意見を口出しできないような仕事ぶりで、肩書きもそれを後押ししていた。できるといえば、もう本社の社長か役員だけかといった具合だ。そんななか、すぐに成果が現れさらにメキメキ功績を揚げはじめたのだから、誰もが舌貝を持ち上げ始めた。そして、海外からも指定で仕事が入るようになり、ついに、海外の超巨大企業と取引をすることになったのだ。
部下A『さすが結ってる丁髷は伊達じゃありませんね。世界に日本のすばらしさを、この会社をどんどん売り込んできてください。』
部下B『ほんと、舌貝さんは私たちのお殿様です。おしゃっる通りに仕事すれば成果が出るなんて、頼れるぅ。』
部下C『そうそう、これからも、舌貝さんに従えぇ、なんつって。』
と社内でも舌貝を部下から頼られる舌貝に、とんでもないチャンスが舞い降りた。何度か取引を重ねるうち、舌貝をヘッドハンティングしたいと海外の超有名巨大企業から申し出が来たのだ。ついに自分が世界の舞台に立つときがきたと大喜びで、そこの社長との交渉に出向いた。
社長『YouはMeのすばらしいパートナーになれます。Youに来てもらう手筈はもうすべて整っています。その身一つできていただいても構いませんよ。Meからの条件はこの契約書に書いてあります。ただ書いてないことがひとつ。その丁髷は落としてください。今までは日本の小さなマーケットの中なのでそれでもよかったかもしれませんが、これからの舞台はです。世界の標準がありますから。では、こちらのサインをしてください。』
舌貝は、社長を目の前に、なにかこの人には逆らえない空気を感じた。と同時に、それは、この人のパートナーにならなければならない、いや、なるために道が備えられていたんだ、という、宿命のようなものだった。契約書の最初の段落と最後の段落にざっと目を通し、舌貝は丁寧に自分のサインをした。
その晩、舌貝は新しい人生の始まりを夢見て出国の準備をしていた。鏡に映った自分の姿を眺めていた。丁髷に褌。今思えばなんて馬鹿な格好なんだ、と思った。しかし、ここまでの成功は保喪黒のアドバイスの故であることを一瞬思い返した。その時、丁髷は切らないでくださいね、という保喪黒の言葉が頭をよぎった。保喪黒がどこかで見ている。舌貝はそんな視線を感じ振りむいた。が、そこには誰もいない。今度は社長の言葉が頭をよぎった。社長の声、視線、凛々しい肩幅、自信に満ち溢れた腕と手。その、世界でトップに立つ、彼に従いたくてしょうがなかった。この丁髷をやめれば彼のパートナーになれる。決意が固まり、舌貝は、バリカンのスイッチを入れた。髪の毛が落ちていき、丸刈り頭へと変わっていった。
出国の日、空港で舌貝が搭乗手続きを済ませると、そこに保喪黒が立っていた。
保喪黒『舌貝さん。おめでとうございます。でも、あなたは私との約束を破りましたね。』
舌貝『あ、保喪黒さん。あ、これは、社長がこれからは世界が舞台だからと…。』
保喪黒『世界を相手にするからこそ、日本人は日本の精神を主張すべきだったのです。あなたならそれができると見込んでアドバイスを差し上げたのに、残念です。まぁ、仕方ありませんね、あなたはあの社長の言いなりになればいいのです。ドーン。』
飛行機が着陸し、舌貝は空港に着くと、出迎えが来ていた。いかにもVIPになった気分で、心が躍っていた。社長のいる大きなビルの一番上の階へエスコートされ、大きな扉の前に立たされた。社長室。夢のようであった。自分のオフィスはどこにあるのだろうか、扉はどれくらい大きいのだろうか、と、くだらないことを考えた。扉が開いた。その扉の割には意外と狭いくらいの部屋に社長は立っていた。舌貝は促され社長の下へ歩き始めた。狭いと思ったが、矢張り広かった。何歩進んでも進んでいない感覚。社長のほうからも歩み寄ってきた。
社長は満足気に手を伸ばし握手をした。それが合図であったかのように大きな扉が舌貝の後ろで音を立てて閉じた。
社長『よくきてくださいました。早速Youの部屋へ案内しましょう。』
と、部屋の奥にある扉を開いた。そこにはさらに廊下があった。幾つかの扉を通り過ぎて、その扉はあった。
そこは彼のプレイルーム。彼とはもちろん社長のこと。
社長『これからはMeのことをマスターと呼びなさい。』
社長の声のトーンが変わった。その瞬間、舌貝には首輪が嵌められた。金属でできてあり錠が掛けられ外すことができない。それにはチェーンが繋がっており社長の手に握られていた。
社長『もっとも、口を利くことは許されていないがね。』
といって今度は舌貝に轡を当てた。突然の出来事に困惑している舌貝を、社長は手馴れた調子で壁際にある貼り付け台へ運び、手足を縛り上げた。困惑している舌貝のスーツをナイフで切り裂き、剥ぎながら、社長、いやマスターはゆっくりと説明を始めた。
マスター『Youとのパートナーの契約、あれはビジネスではなく私生活でのこと。ミスター・シタガイ、Youは、もう、私個人の所有物、トイ、スレイブ、ペット。これから、楽しい生活が待ってます。』
褌姿を露にさせた舌貝の頭を撫で、マスターはナイフの先端を、新しく奴隷となる、舌貝の体を滑らせ、腰で停止させた。そして、彼の体を覆う最後の衣服をあっさりと切り裂き、隠れていたものを開放させた。舌貝の男根は自らの意思を主張するように勃起していた。
マスター『矢張り、Meの見込んだとおり。この男性である証、もうひとつのチョンマゲもMeのもの。しかし、マイペットには必要ないもの。約束どおり切り落としてもらわないと。』
と言って、ナイフを根元に当てた。
舌貝は慄き声をあげるが轡が邪魔で言葉にはおろか、音にさえならなかった。
マスター『そんなに嬉しいかい。だが、もうちょっと我慢しろ。大切なゲストたちがもうすぐ集まるから、そのときまで楽しみはお預けだ。パーティーの余興にこのチョンマゲを落とすプランだ。人生最大の、そして男として最後の大舞台になるだろう。』
舌貝は放心状態を通り越し微笑を浮かべていた。マスターの言葉に、ビジネスマンとして夢見ていたことを重ねていた。世界を股にかけて活躍すること。今、世界でトップ企業社長と同じ部屋で、しかも、マンツーマンでいること。そして、その社長のゲストたちのパーティーに、これから参加すること。さらに、そのパーティーの主役が自分であること。この妄想の連鎖に舌貝はエクスタシーを感じていたのだ。
舌貝の裸体は、貼り付けにされたまま、その時を待っていた。陰毛は剃られ、麻酔と消毒が済まされている。しばしの沈黙があり、マスターとゲストたちが、外の除湿された冷たい空気と共に入室してきた。舌貝が目にしたのは、テレビや雑誌で見たことのあるゲストたちばかりだった。皆が舌貝を見ている、とても興味深そうに。舌貝はまた興奮してしまった。麻酔が効いているはずなのに、舌貝の股下のチョンマゲが勃起している。マスターは特殊な用具を使い、ペニスの先から睾丸を越え、根元に輪ゴムを着けた。これで出血が最小限に抑えられる。ガーデニングようの枝切りバサミとも思える鋏を、そこに挟み入れ、軽く歯を噛ませた。舌貝は、完全に抵抗せず、自分の世界に酔っている。もっとも、抵抗しようとしても、手足は鎖で繋がれ、電気椅子に座らされた死刑囚のように、そこから逃げることはできないのだが。
マスター『では、切ります。』
ポツリと言葉を発し、マスターは鋏の柄を握った。さすがに痛みを感じたのか、舌貝は一瞬腰を歪めた。舌貝のチョンマゲは二枚の刃に挟まれ、鋏についたままだった。しかし、それは確実に舌貝の股間からは剥離されていた。マスターは、鋏ごと舌貝のチョンマゲを、ビニール袋に入れた。そして、ゲストたちに、部屋の外へ出るよう、ジェスチャーで合図をした。ゲストたちは、絵画でも鑑賞するかのように、あるものは珍しそうに、また、あるものは哀れむように、ただゴムだけが残された舌貝の股間を、最後に眺めて部屋を後にした。舌貝はゲストたちから注目を浴び満足だった。別れを惜しむように、一人ひとりを、遠い意識の中で見送っていた。そして、その中には、保喪黒の姿が…。
丁髷は日本の成人男性の証。その丁髷は落とさないって約束したのに。私との約束を破るから、もうひとつの成人男性の証も、失うことになってしまいましたね。でも、まぁ、自国の伝統や文化を、富や名誉の為に捨ててしまうような、弱い人は、従う立場にいる方が、幸せなのかも知れませんねぇ。あの社長、いや、マスターは彼を、自分のペットにしたいって言ってましたよ。従順なペットとしての生活、お幸せに。ウホーッホッホッホー。
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投稿:2012.11.06
裏のビジネスマン 舌貝益夫の巻
著者 tn12613 様 / アクセス 8144 / ♥ 2