「せかいのはんぶんをやろう。」
「いい・・・
咄嗟に言いかけて、咄嗟に言い淀んだ。
勇者、勇者とチヤホヤされてここまでやってきた。おだてられて木に登った経験こそないものの、その言葉で普段なら諦めていた木に登れたことは一度や二度じゃない。
敵の、しかも一番の敵に対峙している今、なぜそんなことを思い出しているのだろうか。
おかしいと思っていた。勇者だ血統だと大変な騒ぎ。その餞で銅の剣も買えやしないなんて。
鉄の槍、鉄の鎧。「その辺の」兵士が装備していることなんてそこらへんの16歳の子供でも知っている。子供が知らなかったのは、たぶん、俺こそが世の中を動かしていると公に認められたという、この感覚だけだろう。
俺こそは勇者である。ゆえに王の経済的支援に頼ることなく、常に結果を出し続けることが出来ていると信じ切っていたこともあった。
そして、思いのままにここまできた。後は倒すだけ、油断さえしなけりゃ簡単なことだとタカを括っていた。
「せかいのはんぶんをやろう。」
こっちは勇者という重圧を与えられつつ、あっちは分厚い鉄の鎧を与えられているにもかかわらずそっちのほうは何も与えられていない奴らを尻目に、とにかく脇目もふらず戦ってきた。
旅の間に見聞きする物事はそれなりの分量になる。
「勇者」はいったいあと何人いたんだ?
しかし俺こそは本物だと、そんな思いがすべてをかき消した。ついさっきまでは。
「せかいのはんぶんをやろう。ただし条件がある。取ってくれ。魔導師に焼かせてもいいし、ドラゴンに食わせてもいいし、望みとあらば俺が直接なんとかしてやる。とにかく傷つけない。痛くはない。」
「だからといって夜の相手どうこうと言うつもりもない。そんな趣味はない。とにかく、俺の横でナヨナヨしててさえくれればそれでいい。」
何が正義だ。どこが悪だ。王は何をどう勘違いしているんだ。そしてここまで来た俺は偉い。その俺が今決着をつけてやる。
そう思った刹那、咄嗟に返事した。
「
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投稿:2012.11.24
はんぶん
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