決勝の準備をしている間、俺は一人でリングのそばに座っていた。
麻美と麻美の友達に、麻美のお母さんらしき人が加わった。
お母さん「麻美、すごいじゃない!あんな強そうな子たち相手によく頑張ってるわ!」
麻美「男なんて金的禁止のルールがなきゃ、あんなもんでしょ。」
友達「いつも練習のときは女の子同士だから、あんまりわかんなかったけど、こんなに効果あったんだね、金的。」
お母さん「そっか、いつもは男の子の急所蹴る機会なんてないもんね。」
友達「普段から、男の子相手に練習したいね。」
麻美「ほんとだよねー。」
女たちの会話が聞こえてくる。
麻美をぼこぼこにして、こいつらぎゃふんと言わせてやりたい。
審判「決勝戦を始めたいと思います。」
俺と麻美はリングに上がった。
審判「始め!」
俺は麻美に近づきすぎないように、少しずつ攻撃をした。
麻美が近づいてきたら蹴りですこし距離をあけて、少し近づいてまた攻撃。
1ラウンドはそうやってなんとかやりすごせそうだった。
だが、最後の1秒、麻美のキックが俺の金玉をかすめた。
なんとか立っていることができたが、脚に力が入らなくてガクガクふるえた。
最後の1秒じゃなかったら、そのままボコボコにされて負けてたかも。
さやかとの試合の時も、今回も運がいいな。ルールに助けられた。
2ラウンド目が始まってもまだ金玉は痛かった。
俺は1ラウンドに比べて明らかに動きが鈍くなっていた。麻美もそれに気付いたのか、攻撃はかなり激しかった。
1ラウンドは俺がリードしていたのに、あんなかすったような蹴りだけで、こんなに逆転してしまうなんて…。
麻美の脚はしなやかで、キックが顔に飛んでくることもあった。
2ラウンドの俺はほとんど防戦一方で、たまに反撃してもかわされ、かわりに重い一撃が顔や腹に入った。
2ラウンドに入ってから麻美が顔や腹を狙い始め、金的は狙わなくなった。
金的を常に警戒していたいけど、そろそろ顔のダメージがきつい。脳が揺さぶられてるし、まぶたもすごく重い。
俺が少しよろけだしたのを見て、麻美が強いパンチを顔面に打ってきた。
俺はあわててガードする。
その瞬間、麻美が俺の金玉を蹴りあげた。
さやかの蹴りとは明らかに違う、脚が胴体に食い込むような強い衝撃。
俺の足が少し浮いたような感覚さえあった。
すぐに尋常じゃない痛みが金玉を襲う。
耐えきれずに俺は地面に倒れた。
圭介「う゛ぅぅぅ…」
あまりの痛みに自然とうめき声が漏れた。
俺は恥ずかしさを忘れて金玉を抑えた。
ものすごく吐き気がする。
麻美は嬉しそうに友達とお母さんの方に手を振っている。
気付いたら10カウントが終わっていて、俺は担架に乗せられた。
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投稿:2013.02.28
「金的あり、ファールカップなし」4
著者 リトルジョー 様 / アクセス 24654 / ♥ 21