■
「SRさんですか? 初めまして。「シー」です」
「あはは。本当に来ちゃったー」
ファストフードでの待ち合わせ。
現れた彼は、まだ半信半疑の様子で、制服姿の「シー」と「I」を眩しそうに見つめた。
ソーシャルゲームのフレンド同士。
わずか数行のメッセージのやり取りの中で、「シー」が何となく女性っぽかったから。イベントで救援をし合い、優先的にアイテムを回した。すぐに来るお礼のレスや、毎日まめにくれる挨拶が心地良かった。だからつい、彼は踏み込んだ。
つい、調子に乗った。
「もっと絡もうよ( *´Д`) 」
LINEのIDを晒すと、意外にも「シー」はすぐに友人登録をしてくれた。
親友だという「I」も参加した。「I」ともフレンド同士だったが、そんなには交流はなく、印象は薄かった。
初めて通話をして、人懐っこく楽しそうに喋る声に、二人が本当に女性だと言うことが分かった。すごくびっくりした。
「シー」は普通の子。でも、興味津々な猫みたいな悪戯っぽさがあった。
「I」は文章での印象とは違って、楽しいこと好きな何となくギャルっぽい印象。
そんな彼女達と話し始めてそれほども経たないうちに、こうして会う機会は訪れた。
■
「SRさん、ぶっちゃけ、出会い目的でしょ? 残念でした。ごめんね」
「え、いや、そ、そんなことは。え? でも、一緒に遊ぶってさっき」
「遊ぶよー。SRさん、危なくなさそうだし。ごめんねって言うのはね、椎?」
「うん。えーと。愛ちゃんとあたし、付き合ってるの」
「え? だ、だって、あれ? 女同士だよね? あれ?」
「あはは。たまには男も混ぜてもいいかなって、さっき椎とね?」
前日の二人との会話。
つまり彼は、「無害そうで」「後腐れなさそうな」遊び相手として選ばれたようだった。
それでも、ドキドキしていた。
彼の量販品の灰色スーツはどこまでも風景に埋没する。けれど。
出会って初めて見た、彼女達の、華やかさ。
「シー」は長い黒髪の清楚な雰囲気。
薄手のセーターを着てセーラーカラーだけ背中に出してて、それがセーラー服の子達のおしゃれらしい。スカートもそれなりに短くて、優等生っぽい感じから少しだけ背伸びした印象。
「I」は明るい茶髪をアップにしていて、ブラウスの胸元もボタンが開いてる。
ハンドメイドっぽいネックレスやブレスレットを身につけて、やっぱりどこかギャルっぽい。
セーラー服とブレザーってことは、二人は別々の学校なんだろうか。
彼はまだ席に着くこともできずに、そんなことをぼんやり考えていた。
「ここからは大事な話。あたしと愛ちゃんと遊ぶなら、貰いたいものがあるんですよ」
「え? それって、つまり、お金の話、かな?」
「あは。独身リーマンは貯めてるんだー? そりゃ、くれるなら貰うけどー」
「あたし達のものになって下さい。SRさんにとってあんまりいい話じゃないかもですけど」
「よ、よく分からないけど、俺、今ものすごくおいしい状況にあるような気がす」
「レズセックスに混ぜてあげるんだから玩具になって、って言ったら分かるかなー?」
愛が立ち上がって彼の耳元で囁いた。長い明るい茶髪をかき上げる。
椎も席を立つと、彼が逃げないように手を回して、反対側の耳に。
「あたし達のデートに、混ぜてあげます。だから」
「男の力には敵わないからさ、マゾ奴隷みたいに振る舞って欲しいんだー」
「ここでやめてもいいですよ。でものこのこ来たSRさんもいけないんですから」
「私達の命令に絶対服従。それが守れるなら、次行こ?」
彼はまるで夢見るような表情で、ただうんうん頷いた。
■
「念のため、です」
ラブホテル。お泊りコース。
椎がバッグから手錠を取り出し、慣れた手つきで彼を後ろ手に拘束した。
「あ、ちょ、待て、待って!」
愛が彼の財布を漁り出したので思わず声を上げる。
「大丈夫、お金はいらない。私達と遊んでくれるんだから、感謝してるんだよー?」
愛が取り上げたのは彼の免許証、保険証、社員証にクレジットカード。それに、ソシャゲーやLINEに使っていたスマートフォン。
それらを手際良く自分のバッグにしまっていく。それをどうしようと言うのか。
「全部シュレッダー行き。でもいいよね? 再発行の手間はかかるけど」
愛がにこにこ微笑んでいる。彼は青ざめた。どうして。何で、そんな必要が。
「ここで帰ってもいいよ。そうしたら、SRさんとは、これきりだけど…」
椎が熱っぽく頬を染めてそんなことを言う。
優等生っぽい印象からは想像もつかない、興奮した表情。
ごくりと唾を飲み込む。嫌だ。この先が見られないなんて、そんなの嫌だ。
「帰る? でもこれは返さないよー。どうする? 悪用なんてしないからー」
愛が悪戯っぽく笑っている。
引き返すならここだ、と理性が警告していた。彼女達はここで解放してくれるだろう。
けれど、彼はゾクゾクしていた。自分がマゾかは分からない。でも。
ここで帰ったら、この先は永遠に見られない。それは確かに感じていた。
「やっぱり止める? 帰りたい?」
椎が心配そうにのぞきこんでくる。答えを待たずに愛が彼の両足の親指同士を器具で繋ぐ。
「私達と、一緒に遊ぶ?」
「帰らない。何だかよく分からないけど、きっと一生に一度の状況に俺あると思う」
「そう」
ぱあっと椎の顔が明るくなって、彼女は恋人の胸に飛び込んだ。
愛は椎を受け止めて、熱烈なキスを浴びながら、いずれ「シュレッダーにかける」彼の品の入ったバッグをどうでもよさそうに部屋の隅に投げ捨てた。
「私達と遊んでくれるのね? ありがとう」
■
「んっ。ちゅ。ちゅっ。愛ちゃん。好き。愛してるぅ…」
椎がキスをしている。彼の目の前で。髪を乱して、熱っぽく、愛の唇を吸い、弄る。
突然始まったレズショー。清楚な黒髪の優等生風の少女が、豊満な明るい茶髪の少女に抱きつき、頬を両手で押さえ、終わらないキスの雨を降らせている。
制服から伸びる手足に汗の玉が浮いて、椎の本気が感じられる。
絡めた脚を締め付けて、吸い尽くさんばかりの椎の熱烈なキス。これだけで、彼には椎が本当に彼女を愛していることが分かった。
二人ともまだ脱いでもいない。制服姿のまま。
愛はパートナーのミニスカートの中に手を伸ばして、くちゅくちゅと愛撫して、椎の反応を確かめて、満足そう。
「あ、あっ。愛、ちゃぁんっ」
椎の足先がびくびくと震えて伸びる。パートナーの反撃に全身で反応している。
「うふふ。今日はギャラリーがいるんだから…」
「愛ちゃん、あっ。やっぱりあたし、恥かしい…」
「椎は嘘つきだねー。いつも自分が一番楽しむ癖にー」
愛は、頬を染めて快感に悶えている椎の細い首筋に舌を這わす。
びくびくと身体を震わせ小さな顔を仰け反らせる椎。
普通の女の子がまるでスイッチが入ったかのように乱れる様に、彼はただ見惚れていた。
「SRさん、ごめんね。椎すごく感じやすいから。一回イかせちゃうねー」
愛が、拘束され呆然としたままの彼に流し目を送った。
「あああっ。あん。愛ちゃん。それ、激しっ…」
椎が可愛らしく声を上げる。愛はキスを続けながら、片手でスカートの中、もう片方の手で制服の下から彼女の胸を責めていた。
椎がもう誰にも遠慮せずに、大声で喘いだ。
「うふふ。本当に可愛い、椎…」
愛しそうに恋人を見つめ、愛は「イっちゃえ」とばかりに指の動きを速めた。
「あ、あああ、あああ、やぁ、やだ、あたし、もう、愛ちゃん、もうっ」
「あはは。なあに椎? ちゃんと言って?」
「あ、愛ちゃんいじわるぅ。や、やぁ、ああ、はあああぁっ」
椎がイった。息を切らせて、ダブルベッドに背中から倒れこむ。
「うふふ」
愛が、指先に絡まる椎の愛液に舌を絡めて、彼を見た。
自然に勃起してしまっている彼だが、未だギャラリーのままでいる。
■
「はぁ… はぁあっ…」
荒く息を吐いている椎。ゆっくり肩を上下させ、うっとりと夢見るような表情のまま快感の余韻を味わっている。
愛はにっこりと笑って、椎と彼を交互に見た。
彼は興奮でわけがわからない。手錠と足枷がもどかしい。これがなければ、彼女達の元へ裸で飛び込んで行っただろう。
早く外して! 外さなくてもいいから早く混ぜて!
まさに必死な表情が、そう雄弁に物語っている。
「しょうがない子だねー。椎。ほら起きて。今日はどうするの?」
にこにこ微笑む愛に頭を撫でられて、彼はご褒美を待つ犬のようにおねだりをした。
「えぇー」
椎がむくりと身体を起こす。まだ夢の世界にいるみたい。
「SRさんの運命は、お姫様の機嫌次第──」
愛が彼の頭をわしゃわしゃとかき回して、意地悪く含み笑いをした。
椎はまるでまだ足の立たない赤子のように、もたもたとベッドから下りると、四つん這いでハイハイして彼の前までやってきた。
「ううっ」
彼は息を飲んだ。
その瞳は、あまり現実的でなく、ついさっきまで接していた彼女と同じとはとても思えず。
そう。
例えるなら、彼を、本当に、ただの玩具として見ているかのような。
「シー、さん」
「黙ってて」
椎は彼の発言を禁じると、勃起している下半身を見つめ、わずかに嫌悪の表情を浮かべると、淡々とズボンを脱がしにかかった。
「シーさん、ちょ、ちょっと」
「ひっかかる。それ、邪魔です」
彼のズボンとトランクスが、かなり乱暴に膝まで下ろされ、二人のレズショーに興奮して大きくなった男性器が露出する。
愛がそれを見てけらけらと笑った。
「椎? SRさんを使って遊ぶんでしょ?」
「…やだ」
「え?」
「やっぱりやだ」
頬を膨らませて、椎は自分のバッグの中を漁った。
スタンガンや千枚通し、ボンナイフなどが辺りに散らばり、彼が顔面蒼白になる。
「見られると興奮する癖にー。やっぱり、男は嫌い?」
愛が長い脚を組み替えながら楽しそうに。黒いレースの下着が見えて、彼はそれに釘付けになる。
愛は当然のようにその視線に気付いて、妖艶に笑った。
「見せてあげてるの。可哀想なSRさんに、サービス」
「じゃあ、今日はこれ」
椎がバッグの底から取り出したのは、結束バンド。
家電のコードなどを束ねるための、どこにでも売っているありふれた物だった。
■
「ちょ、ちょっと、痛い、きつ、い」
ぎりぎり。ぎちっ。
医療用のビニール手袋をつけた椎が、彼のペニスの根本を縛っていく。かなりきつく。
それだけじゃない。嫌そうに彼の玉袋を持ち上げ、伸ばし。
「痛い、シーさん、ちょっと、これはマジであの」
その根本も同じように結束バンドできつく縛った。
手や足だけでなく、ペニスと睾丸も拘束された彼。
椎の痛みを伴う乱暴な取り扱いで少し萎えかけたそのままの姿で、彼の男性器は固定されてしまった。
「できました」
満足そうな椎。
「意味わかんない。これ血止まってるよ多分。より硬くさせて味わいたい的な?」
彼をのぞきこむ愛に、不満そうに口を尖らせる椎。
「もう。いじわる。あたしは愛ちゃん専用です」
「っていうか、SRさん、痛いって言ってるよ?」
「痛いっす」
「あたしが見られるのはいいけど、愛ちゃんでちんちん大きくするのは許せないから」
「大きくさせたくないんだ?」
「大きなちんちんは嫌い」
「あはは。そうなんだ」
ツボに入ったのか、ちょっと涙をにじませて笑う愛。
彼を見て少し「可哀想に」と言うニュアンスも混じってる。
「勃起を止めるのは無理だと思うけどなー」
笑いながら、彼の拘束されたペニスをくりくりと弄る。簡単に血が集まる。
「痛、痛っ!」
「ほらね。SRさん、苦しそう。これで遊べるかなー?」
「もう」
椎は頬を膨らませて立ち上がると、不意に愛をベッドに押し倒した。
「愛ちゃんはあたしだけを見てってばぁ」
「あは。あはは。分かりました、お姫様」
再び楽しそうに睦み合う少女達。拘束された彼の目の前で。
たちまちブラウスのボタンを全て外し、露わになった愛の胸にキスの雨を降らせる椎。
舌を這わせ、胸を愛撫し、敏感になった乳首を吸う。
「あん。あは。椎、くすぐったい」
「愛ちゃん。気持ち良い、でしょ?」
「あはは。うん。いいよ。椎愛してる…」
愛しい恋人の背中を抱きしめながら、愛は彼をちらりと見た。
彼女が望む今日のプレイがどんな結果をもたらすか、愛には何となく分かってきた。
■
「痛い、痛い、ああああ、痛い、です、ちょっと、あの」
彼が勃起するペニスを締め付けるバンドの痛みにもがいている。
椎は一心不乱に大好きな彼女を愛している。
愛はその快感に心地良さそうに身体を震わせながら、時折彼に視線を飛ばす。
「愛ちゃん。よそ見しない。もっと集中」
「あはは。ごめん椎。でもSRさん、痛いって」
椎はちらっとだけ彼を見た。あまり興味なさそうに。
「大きくしなければ、痛くないはずです」
「それは難しいと思うよー? 混ぜてあげるって言ったの、椎じゃない」
たちまち耳まで赤く染まって。
「キスしてくれたら、キスしてあげてもいいかな、ってそういう意味でっ」
「舐め奴隷が欲しかったんだー? SRさんなら、きっとがんばって奉仕してくれんじゃない?」」
「ど、奴隷って。違うよ。あたしと愛ちゃんが愛し合ってる時に、色んなところにキスしてくれたらって」
「うふふ。お姫様は二人きりじゃ物足りないんだよね。うんうん。分かる分かる」
「あ。そ、そういう意味じゃなくって、もっと、こう、二人とも気持ち良くなれたらって」
「分かってるよー。椎は可愛くて酷い子だね。だから私大好きよ。ちゅっ」
彼はただ見せられている。見せ付けられている。
痛い思いをしたくなければ見なければいい。けれど、それはできなかった。
多少なりとも言葉を交わしたことのあるリアルな女性。その二人が今目の前で愛し合っている。
ぶっちゃけ、彼の存在などどうでもいいと言うかのように。
華やかで、艶やかで、エロい。桃源郷に迷い込んだ幸福感ももちろんある。
けれど問題はこの、股間を締め付けるバンドの戒め。
見つめるほどに思わずペニスは勃起して、容赦のない痛みが身を貫く。
例え目を背けてみても、若い少女が睦み合う嬌声が、否応なしに勃起を誘う。
どうにかしないと。このままじゃ本当にただの置物だ。
彼はそう思いはするけれど、後ろ手に拘束され、両足の親指が縛られてるそれだけで、これっぽっちも動けない。
その上、股間は二重に縛られて、勃起するだけで激痛が襲う。
それでも、どこかで彼は期待していた。
選ばれたことに。彼女達のセックスに混ぜて貰えるというその言葉に。
「SRさんのキスを期待してるんだって。どうする? 混ざりたい?」
やんわりと助け舟を出したのはやはり、明るい茶髪を快感に乱した愛からだった。
■
選択肢は二つあった。
痛む股間。戒めで動けもしない体。
今すぐ許しを乞うて解放してもらうか、或いは。
「Iさん、俺、何でもしますから、お願いします、ちょっとこのチンコを縛るのは」
「だって。椎?」
「だめです」
「うふふ。だめだって」
「え? ちょ、ちょっと、愛ちゃん?」
「いいから。こっちこっち」
愛が椎を抱きしめたままくるくると転がった。ベッドの端まで来ると、ふんわり起こす。
二人は大きなベッドの端に腰掛ける格好になった。見下ろす先に、彼がいる。
彼は後ろ手に、膝を曲げ、腰を突き上げたような仰向けの姿勢。下半身だけ脱がされて、縛られて赤黒く変色しはじめている男性器。
彼が、羞恥と苦痛に赤くなる。何とか首だけ上げて、二人を見上げる。
「ほら。SRさん、恥かしい格好」
椎の肩を引き寄せて、楽しそうに言う愛。ブラウスのボタンを全部開けて、ブラもずれ、スカートだって捲り上がっている。
「あは。みっともないです」
椎も笑った。乱れた制服を直そうともせずに、むきだしのおへそ周りに汗がキラキラ光る。リラックスした様子で開いた脚の奥の、下着が愛液で濡れている。
「椎がやったことだよ。SRさん、勃起するとすごく痛いって。どうする?」
「このまま。だって、勝手に大きくするなんて、許さない…」
愛はあはは、と声を上げて笑った。
「そりゃ無理だよー。SRさん、男だもん。ね?」
「あ。愛ちゃん、んんっ」
椎の頬に手を当てて、いきなり愛がキスをする。濃密に舌を絡めながら、ちらちらと彼に視線を送る。
「椎の身体は全部、柔らかいんだよー」
そう説明しながら、椎のセーラー服をたくし上げ、真っ白な胸をくりくり弄る愛。
スカートもめくって、椎の太股の間に自分の脚を割り込ませる。膝先で椎の股間を刺激しながら、同時に椎の太股の上に自分の濡れた股間を押し付ける。
くねくねと前後に艶めかしく動く愛の腰。
「あ。あん。それ、気持ち良い、愛ちゃん、好き…」
椎も夢中になって舌を絡ませながら、密着した愛の全身をもどかしそうに撫で続ける。
「ああああ、ああああああ!!」
彼が激痛に悶え、叫ぶ。とても勃起を我慢できない。目の前に感じる少女達の芳香。足元の自分に降り注いでくる少女達の汗。
すでに股間はぱんぱんに腫れ、根本をきつく縛られたまま、見たこともないような大きさと色になって、彼に苦痛を与え続ける。
「ほら、ね」
「え…?」
愛が椎の手を取って彼を指差した。
「男だから、えっちな気分になると勃起しちゃうのはしょうがないよー」
それを見た椎は、目を細め、はぁはぁと息を吐きながら、薄く笑った。
「いやらしい…」
■
「ふふ。何これ。すごい」
ベッドから下りてきた椎が、彼の両足の間をまじまじと凝視している。
赤黒く変色し、膨れ上がって奇怪な姿となった男性器。それを、たまに指先でつつく。息を吹きかける。
「ああっ、ぐあっ」
その度に痛みで彼が呻く。椎の瞳がキラキラ妖しく輝いている。
「椎。遊ぶ気になったー?」
とん、と愛も下りてきて、頬杖をついて彼の前にしゃがみ込んだ。
「あああ!」
つい愛のスカートの奥を見つめてしまい、彼の股間は哀れにもまた反応する。
あまりに本能に正直な彼を見て、くすくすと笑う愛。
「あは。ちんちん醜い。自分の体なのに、思い通りにできないんですね…?」
「そういう生き物なんだよ。ほら、涙流して言ってるよ。射精したい、射精したいって」
「大きくさせるのも、変なもの出すのもだめ。ちんちんなんてなければいいのに…」
「あは。ちょっと分かってきた。椎は、チンコのないSRさんだったら良かったんだね?」
「そこまでは言ってないけど… ちんちんって一番可愛くないところだと思う…」
「あはは。お姫様は、尻尾振って舐めてくれるワンちゃんが欲しかったのねー?」
「あああ、あああ」
弄ばれている。チンコの所有権を奪われてしまったようなこの状況。
彼は脂汗を流して視線をさ迷わせた。
微笑みながらも、憐れみのこもった愛の瞳。
対照的に、楽しい玩具を見つけたとでも言いたげな椎の瞳。
危険信号が、最後通告をしている気がした。もう限界だ。許して欲しい。
根を上げるなら今しかない。そう強く思った。
「ごめんなさい、痛くて、我慢できません、ギブアップさせて下さいっ。ここで、帰りますっ」
涙を流して、そう叫ぶ。
椎ははっきりと、楽しい遊びを邪魔された、といった不満を表情に出し、
「うるさいですよ」
そう言った。絶望的な宣告に聞こえた。
■
「これでいいかな」
「んぐっ、ふぐっ、ぐうーっ」
「猿轡とかじゃないんだね? あ。そっか。それじゃ舌が使えないか」
椎がバッグから新たに取り出した器具で、彼の言葉は封じられた。
それは、口枷ではあったが、形が大きなOの字で、口を強制的に開かせたまま固定する、そんな器具だ。彼の開けっ放しの口からダラダラと涎が垂れる。
「ベッドに…って、動けないか。ごめんね愛ちゃん。ちょっとSRさんを抱えるね」
「りょうかーい」
彼の体が二人によって浮く。どさ、と大きなベッドの上に転がされた。
「ふふ。ふふふふ」
「楽しそうね椎?」
椎がベッドに横たわって、恋人に腕を絡めた。
その間に、二人の身体に挟まれて、彼はいた。
二人がまた、彼を挟んだまま、愛し合い始めた。
「んんーっ! んんー! ふぁああー!!」
彼が涎と涙を流しながら、悲痛な声を上げる。
それに構わず、互いの身体を愛撫し合う二人。
わざとなのか、椎の真っ白な脚が拘束された彼の股間に触れる。快感なんて少しもない。耐え難い苦痛。
愛もそれに応えるように、くすくす笑いながら、間に挟まれた彼の身体ごと、椎のことを可愛がる。
「舐めてもいいよぉ…? 言うこと聞けないと、ずっと痛いままですよ…」
少女二人の胸の奥に潜っている汗まみれの彼に、そう言う椎。楽しそう。
「んあー! ああー! んぐああー!」
「ちゃんと奉仕してあげて。SRさん、今チンコの危機にあるんだよー」
愛の言葉にドクッと心臓が震えた。
血流を強制的に止められ続けると、そこはやがて壊死する。このままだと、彼のペニスも睾丸も、いずれ永遠にその機能を止めてしまう。
彼は痛みはもちろん、その恐怖にさらに泣いた。
泣きながら、愛の言った通り、椎の身体に舌を這わせ始める。
「ああっ…」
椎が、愛の愛撫以外の感触に嬉しそうに声を上げた。
彼は、夢中になって舐めた。場所なんて分からない。ただ、舌の触れるところを犬のように舐める。せいいっぱいの、奉仕をする。
「あははっ。あん。愛ちゃん、これいいっ。くすぐったぁい」
「うふふ。椎はこういう遊びがしたかったんだー?」
大好きな椎を撫で、抱きしめ、キスをする愛。
目の前で可愛らしく嬌声を上げ続ける椎。
「男嫌いの椎がねー。SRさん、可哀想に。けっこう気に入られたみたいだよ」
「んんー! ふぐー! んあああー!」
「でも多分、椎は男じゃないSRさんをペットにしたかったんだね。私には分かんないけど」
私、バイだから。SRさんのチンコも可愛いと思ってるよ?
愛のフォローは彼にとって何の意味も成していない。
彼はただ、苦痛と恐怖に怯えながら舐め続けるしかない。
■
「SRさん、気持ち良かったよぉ… ちょっと休憩…」
椎が満足そうにベッドにうつ伏せになった。
恋人が、その髪を愛しそうに撫でている。
彼に、男性器の感覚はすでになかった。ずっと痺れているかのようで、ただただ痛い。
もう見るのも恐ろしい。完全に別物。つい昨日まで見知っていた自分の一部とはまるで違う。
このままでは。
彼は、愛に助けを求めた。開口させられたままの状況で、何とか言葉を紡ごうとする。
「ほへふぁいでふ、Iさん、ほのままひゃと俺、助へへ、ほへふぁい、助へ…」
愛はにこにこと微笑んだまま、彼の顔と股間を交互に見つめ、
「もう無理かも」
残酷に、そう言った。
「ちょっとだけ、試してあげる」
愛は舌なめずりをし、歪に膨らみ破裂寸前の彼の性器を見つめた。
「んっ…」
腰を落とす。挿入った感覚もよく分からない。ただ激痛だけが彼を襲う。
一番椎を愛していて、椎とのセックスに勝る快楽なんてないと思っている愛は、適当にその感触を味見すると、
「いい経験にはなったかも」
それだけ言って、彼の性器を追い出した。
それから一晩中、彼は弄ばれた。
主に椎の舐め奴隷として。愛から以外の快楽をもたらしてくれるただの玩具として。椎からすれば可愛いペットとして、扱われた。
やがて彼が泡を吹き、反応らしい反応をしなくなった頃、椎は大きなハサミを取り出すと、
「可哀想。解放してあげるね」
「切っちゃうんだ? そこまで行くとは思ってなかったなー」
じょきん。
じょきん。
躊躇いもなく、彼のペニスと睾丸を根本から切除した。
大した出血もなかったから、椎は特に気にもせずにすぐに大好きな愛とのセックスを再開した。
■
「気絶しちゃった」
「これ、生きてるよね?」
「多分」
「椎、ちょっとがっかりしてる」
そうして。翌朝。
ベッドに突っ伏して微動だにしない彼。椎はつまらなそうに手足と口の拘束を外す。
「楽しかったけど、気持ち良かったけど」
「あはは。次はもっと上手にやろうねー?」
「次って。愛ちゃん」
「だって、可愛くてチンコのない舐め奴隷が欲しかったんでしょ?」
「そうは言ってないー。あたしは、愛ちゃんだけがいればいいの」
「はいはい。分かってるわよ。愛してるわお姫様」
口を尖らせて抗議する椎をキスで黙らせる愛。
彼はここに置いて行く。ここまでは初めてだけど、二人の間には何度もあった光景だ。
愛はバッグの中の彼のカードやスマホを指先で撫でて確認する。
ちゃんとばらばらに、壊しておかないとね。
獲物の身元がはっきりするのは、なるべくなら遅い方がいい。
もし彼が警察に駆け込んだとしても、証拠なんて残してない。捜査が椎に及ぶことは考えにくい。
「っていうか…」
「なあに、愛ちゃん?」
SRさん、多分壊れちゃってる。ちょっと残念。
そう少しは思うけれど、そんなことがどうでもよくなるくらい、椎との毎日は刺激的だった。
愛は改めて恋人に向き合うと、頬を、耳を、鼻筋を、唇をゆっくりと確かめるように撫で、想いをいっぱいに込めてキスをした。
「愛、ちゃん… も、もう、時間が…っ」
「うふふ。可愛い椎。大好きよ」
おしまい
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投稿:2013.04.17
レズセックスのオカズにされる話
著者 としあき 様 / アクセス 14885 / ♥ 0