人混みをかき分けながら、男は街中を走る。時々肩をぶつけながらも、適当に謝りながら男は目的の場所へと急いでいた。
突如、人足がまばらになり、特徴的な建物が姿を現す。男はその建物の中に探していたものの姿を見つけて、ホッと一息ついた。
「あ、パパーッ!」
少年は駆け寄ってくる男の姿を見て手を振った。隣に座っていた大柄な男性が、吊られたように父親に目を向ける。そして、制服の帽子に手をやって、軽く敬礼した。
「セージ! どこに行ってたんだ。本当にお前はッ!」
タックルするかのように中へ飛び込んできた父に抱え上げられるも、第一声が叱責であったことに少年は口をとがらせて苦情を言った。
「どっか行ったのパパの方だし。オシッコしてくるって言ってたクセにトイレの中にいないし。いつまでたっても帰ってこないし。ボクその後まっすぐおまわりさんに会いに来たもん」
頬を膨らませた少年は、助けを求めるように隣の男性に目を合わせた。彼は目を細めて頷くと、少年の頭を撫でた。
「偉かったな。『パパとはぐれたんでおうちに電話してください』っておまわりさんに番号言えたもんな」
父親は、バツの悪そうな顔をして、交番の巡査に頭を下げた。
「申し訳ありません、ご迷惑をおかけしまして」
「いえいえ、利口な子ですよ。どの子もセイジ君ぐらいしっかりしていればいいんですがね」
警官は手を伸ばして少年の頭を撫でた。
「ジュース飲むかい?」
「うん!」
彼は隅にあった小型の冷蔵庫の中から、オレンジジュースを紙コップに注いで少年に手渡した。
「おまわりさん、ありがとう!」
続いて麦茶を入れて子供の父親に渡す。男は恐縮そうに受け取ったが、交番まで駆けてきたことから、まだ息を切らしていたので、一息に飲みほした。
「ああ、そうだ。記録を取らないといけないんで、ご協力願います」
「あ、ハイ」
父親は息子を下ろすと、引かれた椅子に腰かけた。
「とりあえず、名前と連絡先、それから身分を証明できるようなものがあれば……」
「えっと……」
男はあたふたと財布を尻のポケットから取り出し、免許証を引き抜く。警官は渡された写真を見て笑った。
「ヒゲは剃ってしまったんですか?」
「ええ、妻には不評で……」
「岩野公大さん。キミヒロさん?」
「いえ、コウダイです」
「公大さん。34才で、お仕事は?」
「会社員です。松井商事の本社勤務で……」
警官は口笛を吹いた。
「ずいぶんイイ所にお務めだ。コレ、お返しします」
住所を調書に書き写した警官は、免許証を返す。受け取った男は財布の中にそれをしまいながら続く質問に答えていった。
「で、息子さんがセイジ君」
「6才!」
少年が元気よく声を上げる。警官は目を細めて頷いた。
「こだま小学校の一年生、と聞いてますが間違いありませんか?」
「ハイ、そうです」
「3組!」
大人たちは目を細めて少年を見守った。
「それで、お子さんと逸れた時のことをお聞かせ願えますか」
「えっと、日曜なので息子を連れて駅前の公園へ行って、しばらく遊ばせていたんですが、私が少しトイレに行っている間に、戻ってくると姿が見えなくなっていまして」
「それは何時頃?」
「3時頃だったと思います。トイレに行く前に時計を見たのがそれくらいでした」
「戻ってきて息子さんがいないのに気付いたのはいつぐらいですか?」
「3時半……ぐらいですかね。それから公園の中を探し回ってる間に妻から携帯に電話があって、交番から連絡がきたと……」
「なるほど、なるほど……」
さらさらとペンを走らせてメモを取った警官は、紙をめくってもう1枚のメモの内容を確かめる。
「息子さんがここへやってきたのが3時25分とありますね。お父さんがいないことに気づいてすぐ交番を探したようです。下手にお父さん自身を探して動き回るより、良かったと思いますよ。日曜だから人も多い」
「おかげで帰ったら女房に叱られそうですが」
男が肩を竦めて苦笑する。
「何か本当にまずいことがあって責められるより良いでしょう。誘拐でもされたらことだ」
「確かにそうなんですがね」
「ところで、息子さんの話では公衆トイレの中を探してもみあたらなかったそうなんですが、個室に入ってたんですか?」
「いえ、小用を足した後に公園の外の自販機でタバコを買ってまして……そこで一服していたものですからその間に入れ違いになったものと……」
「ホラ、やっぱりパパの方が悪いんじゃん」
少年が責め立てるように言った。父親は眉尻をハの字に下げる。
「そうですね、どこへ行くか一声かけてからにするべきでした。物騒な世の中ですから、気を付けてください」
「そう長く目を離したつもりはなかったんですが……」
「ダメだよー! 悪いことしたらゴメンなさいだよー!」
少年がバンバンと父の背中を叩く。男はペコリと頭を下げた。
「……ゴメンなさい」
「許しません!」
おそらく母親の真似だろう口調で少年が言う。警官は噴き出して笑った。
「えー……許して貰えないの」
「ダメッ」
警官が、苦笑しながら少年の肩を抱き寄せた。
「よし、じゃあ悪いパパをタイホしようか」
「タイホする!」
少年はケラケラと笑いながら賛同する。警官は腰につけていた手錠を取り出して少年に渡した。
「使ってみるかい?」
「スゴイ! ホンモノだ!」
少年は目を輝かせて手錠を手に取った。
「それじゃあ、パパを捕まえちゃおう。御用だ!」
「御用だ!」
冗談めかして警官が少年の手を取り、父の腕に手錠を填めさせる。カチリ、とドラマのような音がして手首が輪に通された。
「うえーん、もうしません……重ッ」
金属の重量に驚いている父親の両手を拘束すると、少年は手を叩いて笑った。
「……えーと、落ち着かないんで外してもらって構いませんかね?」
困ったような顔で父親が頼むと、警官はパンパンと制服のポケットを叩いた。
「あれ、鍵どこへやったかな……」
「えっ……」
目を丸くする男を見て、巡査は悪戯っぽく笑った。
「冗談ですよ。来てください」
相手が席を立って歩き出すのを見て、男はホッと溜息を吐いた。そして、息子に手伝われながら立ち上がり、おぼつかない足取りでついていく。
入口の正面に棚があり、巡査はそこで手招きをしていた。にこやかに手を差し出した彼に向って、男も手錠につながれた両手首を伸ばす。
警官は手錠の鎖を掴んで、頭の上まで持ち上げた。天井付近にフックが出ている。時計でもかかっていたのだろうか。鎖をそこへ引っかけられた男は、両腕を上に伸ばして吊るされる格好になった。
「いや……なんですかこれ。勘弁して下さいよ」
つま先立ちで鎖を外そうとしながら、男がフラフラしていると、警官はタオルを使って相手の口に猿轡をはめた。泡を食って目を白黒させる男の脚を抱え、拘束する。
「セージ君、パパにお仕置きするから手伝ってくれ」
「うん!」
元気よく返事した少年に、警官は父親のズボンを下げさせる。
「一人でできるかな?」
「できるよ!」
少年は、拙い手つきで父のベルトをゆるめると、ジッパーを下げてスラックスを引き下ろした。意外に顔立ちより毛深い、生白い太ももが、風にさらされ鳥肌を立てている。
息子が次にブリーフに手を伸ばすと、男はくぐもったうめき声を上げてもがいた。しかし、両脚ともに警官にしっかりと押さえ込まれて抵抗できない。
ずり下ろされた下着の中から、小汚い男性器がこぼれ出た。男の腕は交番の正面口に吊るされており、休日の街を行きかう人々が、次々に剥き出しの下半身に視線を投げかけていく。
女子高生らしき集団がキャッキャと笑いながら股間に指を差していき、男は顔を深紅に染めて、ペニスを縮み上がらせた。
突然、バシン、と豪快な音を立てて警官のごつい掌が、裸の尻に叩きつけられる。驚きに腰を前に突き出してのけぞった男の陰茎がはねあがり、ピタン、と間抜けな調子で臍の下の皮膚を打った。一瞬遅れてジワジワと痛みが広がっていき、男は羞恥と屈辱にワナワナと身体を震わせる。
少年は、父親が尻をぶたれて赤く腫れあがっていくのを見て、楽しそうにケラケラと笑った。息子だけではない、通りすがりの老人が、若いカップルが、子連れの夫婦が、小さな子供たちが、下半身を丸出しにして縛られている男の顔と股間を交互に眺めていく。そして、尻を叩く音に合わせて男の貧相な生殖器が上下にはね、臍と玉袋の間を往復する様子を見て、クスクスと笑うのだった。
衆目に恥部を晒され、尻を打たれながら、いつのまにやら男の陰茎は緩く芯を持っていた。ペニスが肌を打つ音が変わったことに気づいた警官は、前に目をやって呆れたようにため息をつく。
「セージ君のパパはやらしいなあ」
「パパ、やらしい」
少年はそのまま言葉を復唱してわかったように頷く。
「セージ君はパパのおちんちん見たことあるかい?」
「お風呂入るときいつも見てるよ!」
少年は元気よく答えた。
「それにね、時々ベッドの上でママとHなことしてるよ」
警官はそれを聞いてニヤニヤと笑った。少年は警官の笑顔を見て得意になり、更なる両親の秘め事を公開する。
「昨日の晩もね、パパ裸んぼになって、ママにHなことしようって誘ってたんだ。でもママが『今手が離せないから明日の晩にして頂戴』って言ってね。パパがっかりしてたよ」
「へえ、じゃあ、今日おうちに帰ったら、パパはやらしいことするつもりなんだな」
「うん! 『ごぶさたなんだから明日は我慢しないぞ』って言ってた」
「そりゃあ大変だ。ママが危ない! なんとかしないと!」
「大変だ! なんとかしなくちゃ!」
ニコニコと大はしゃぎの少年の脇に腕を入れて抱きかかえ、警官は彼を、父が吊るされている隣の事務机に乗せた。そして、少年に父親のペニスを持ち上げておくように言いつける。少年は素直に父の股間へ手を伸ばし、指先で包皮をつまんで、臍の上まで引っ張り上げた。引き伸ばされた先端の皮が白ずむ。
警官は逆方向に、陰嚢の底をつまんで皮膚を引っぱる。二個の睾丸が袋の中で押し潰されるように浮かび上がった。
「ママにやらしいこと出来ないようにしないとな」
「うん!」
そして、事務机の引き出しの中から園芸用のハサミを取り出す。父親はジタバタともがこうとしたが、思った以上に拘束は強く、膝下に下ろされたスラックスを警官に踏みつけられて、ろくに身動きは取れないままだった。吊り上げられた手錠の鎖がガチャガチャと音を立てる。猿轡の奥からくぐもった叫び声が聞こえる。何を言おうとしているのかはわからない。
警官は陰嚢の底を小さく切り落とした。タオルの奥から男の悲鳴が上がる。男の膝が震え、太ももまで下げられた下着の裏返った股間の生地に、ポタポタと血の染みが垂れた。
「やはり男の下着はブリーフが一番だな。血の色が映える」
少年もその言葉に何やら深い芸術を感じて、理解は追いつかないものの感銘を受けたように何度も頷いている。
そして、警官は大きな手で底に穴の開いた玉袋を握り締め、中から睾丸を絞り出した。少年の目は父の股間からぶら下がる二つの玉に釘付けになる。男は尻を振ってもがいたが、しっかりと陰嚢の付け根を握られているので、逃げることは叶わなかった。
「じゃあ、セージ君をほっといてタバコを吸ってた悪いパパにおしおきだ」
警官は男のポケットの中をまさぐってライターを取り出し、火をつけた。ヒィ、と潰れた悲鳴が男の喉の奥から漏れる。イヤイヤと我が侭を言うように首を振る男に取り合わず、膝の間でブラブラと揺れている剥き出しの睾丸の下に、警官はライターの火を据えて炙った。男はタオルごしにも響く悲痛な叫びをあげてのけぞった。真っ赤に染まった首筋に太く血管が浮かび上がり、涙と鼻水を垂らして痙攣する様に苦痛の程がうかがい知れる。肉の焦げる臭いが立ちのぼった。
「じゃあパパのタマタマをキャッチしてみよう。うまくキャッチできたらおまわりさんとはんぶんこだぞ」
「うん!」
少年にマグカップを持たせると、警官はそれを父親の股下に構えさせた。そして、陰嚢の切り口から伸びている二本の赤い紐を、パチンパチンと切り落とすと、マグカップの中にひび割れた精巣が二つ転がり込む。
「とったよ!」
「うまいうまい!」
頭を撫でられて、少年ははにかみながら笑った。そして、父の顔の前にカップを差し出す。
「パパ見て! パパのタマタマキャッチしたよ!」
血に汚れたマグカップの底に白い臓器が転がり、ふちに切れた精管がへばりついている。男は涙をこぼしながら脱力し、自分の精巣の残骸をもてあそぶ息子を眺めた。
「おまわりさん、ハイ!」
少年の差し出したカップから、警官は片方の睾丸をつまみ出すと、それを少年の口の中に押し込んだ。少年は舌の上でころころと転がる臓器に吸い付き、炙られて割れた裂け目からにじみ出る濃厚な汁を啜った。
「おいしいかい?」
「うん!」
元気よく答える少年へ、警官は見守るように微笑みかける。
そのとき、交番の入り口から、上品な身なりの女が中を覗き込んで声をかけた。
「ごめんください」
二人は同時に顔を向ける。女はなにやら急いで化粧をした様子がうかがえたが、それでも十分に美しいと言えた。
「あ、ママだ。どうしたの?」
駆け寄った少年が首をかしげる。
「どうしたの、じゃないでしょう。あなたを交番に迎えに行くって言ったっきり、どうなったのか、さっぱり何の連絡もないから様子を見に来たのよ」
女は息子が元気そうにしているのを確認すると、呆れたように言った。
「……忘れてた。ごめんなさい」
「どうせそんなことだろうとは、思っていたわよ」
警官が気まずそうに頭をかきながら、吊るされている男に視線をやる。
「いやあ、申し訳ない。こちらで少し引き留めてしまいまして」
女も、下半身を剥き出しにして股間から血を流している夫の身体を眺めた。そして、助けを求めるような涙のあふれる瞳を眺めた後、息子に目を戻して、もう一度異常がないか確かめる。彼女は、息子の唇に少し血がついていることに気づいた。
「あら? セージ、あなた何を食べているの?」
「パパのタマタマ」
少年は口を大きく開いて、舌の上で灰色の臓器が転がる様を母親に見せつけた。
「おまわりさんに切ってもらったの? そう、よかったわね」
女はハンカチを取り出して、息子の口を拭った。
「ママも食べる?」
少年は母にカップを差し出す。しかし、すぐに肩を落とした。
「あ、おまわりさんとはんぶんこの約束だった……」
警官は優しく微笑みかけた。
「よし、じゃあママとおまわりさんで、もうはんぶんこしよう」
世界一の天才を見つけたという顔で目を輝かせている少年からカップを受け取ると、警官はもう片方の睾丸を、がっしりとした白い歯にはさんだ。そして女に向かって口を差し出し、身をかがめる。彼女は頬を染めて、恥じらいを見せた。
「あら、よろしいんですの?」
ためらう女に向けて、警官は凛々しい眉をひょうきんに持ち上げて、おどけて見せた。
おそるおそる背伸びをして突き出した女の唇に、警官は歯にはさんだ睾丸を舌で押し込む。後ろでその睾丸の元の持ち主であった夫が、呻き声を上げるのが聞こえた。
粘着質な音を立てながら、二人の唇の間を灰色の臓器が行き来する。警官の舌と女の舌が絡み合い、互いに相手の口の中の睾丸を奪い、押し付け合った。
息を荒げた女の腰に手をまわし、警官はその丸い尻を掴んだ。そして、自分の身体に引き寄せる。一瞬身を震わせた女は、警官の股間にそびえる大きな膨らみを擦り付けられ、すぐに力を抜いて甘い吐息を漏らした。
「奥さんは美人だなあ……どうです、少し楽しみませんか」
おどけた調子で警官は女の耳元に囁く。夫の睾丸に口を塞がれていた女の返事を促すように、彼は相手の口中からふやけた玉を啄んで奪った。女の唇と警官の口元の肉片の間に唾液の糸が伸び、彼女はふと我に返ったように慌てて口元を拭う。
「……でも、お仕事中なんでしょう?」
頬を染めて呟く女に返事をする為、男は指先で千切れた精管をつまんでぶら下げる。
「市民の方々に気持ち良い暮らしを送って頂くのが私の仕事ですよ」
ニヤニヤと好色な笑みを浮かべながら、警官は空いた手で女の腕を取り、自分の猛る股間を握らせた。
「……そうね、子供がお世話になったお礼もしなきゃいけないし……」
ちらりと、目を丸くして二人を眺めている少年に、母親は視線をやった。それを了承の証と受け取った警官は、ゆっくりと、スカートの裾をたくし上げた。大人しい色合いのスーツの下から、艶やかな黒いレースの下着がのぞいた。尻に当たる風と、街を行く人々の視線を感じた女は慌てて抗議をしようとしたが、警官は少し口紅の剥がれかけた口元に、再び睾丸を押し込む。相手の指ごとそれを咥えこんだ女は、音を立ててそれをしゃぶった。がっしりとした手の甲まで女の唾液が伝い流れる。
女は握らされていた警官の股間から一度手を放し、制服のズボンのジッパーを引き下げた。はじけるように、窮屈な布の中から赤黒い肉棒がブルリと飛び出す。
「うわぁ……おまわりさんのおちんちん、おっきい……」
少年が思わず感嘆の声を上げた。警官はニコリと少年に微笑みかけると、彼の頭に手を伸ばして撫でた。
「見ててごらん」
警官は、少年の見ている前で母親の腰を抱え上げ、父親が吊るされているのとは逆側の事務机に座らせた。レースの下着を引き裂いて、大きく股を開かせると、息子から、夫から、そして道行く町の人々から、その恥部が何かを求めてヒクヒクと蠢いているのがよく見えるようになる。
口を塞がれている夫が、ムグムグと何かを言おうとしていた。妻はそんな夫に目をやり、剥き出しになっている二人の男の生殖器を見比べてにっこりと微笑む。去勢されて痛みに萎びた夫の包茎と、張り詰めて脈打つ警官の男根では、同じ陰茎とは思えぬほどの違いがあった。
警官の亀頭が、女の秘唇を軽く何度か撫で擦ると、花開くように割れ目が口を開けた。警官は腰をずいと前に突き出し、膣の中へ性器を滑り込ませた。その圧迫感に、女は歯を食いしばって、咥えていた夫の睾丸を噛み潰した。ドロリと唇の端から精巣の内容物が零れ落ちる。同時に、他人のペニスを受け入れる妻の姿を見せられた男の悲痛な呻きが響き渡った。警官はギャラリーの視界を意識して敢えて身体を密着させぬように、背筋を使ってのけぞりながら腰を振った。湿った音を立てるピストン運動にあわせて押さえきれぬ嬌声が、噛み裂かれた生殖組織と共に女の口からこぼれ出る。
食い入るように母親の痴態を見つめる少年と同様に、いつしか交番の前には人だかりができていた。大きく股を開いて制服警官の男根をむさぼる女と、その向かいで吊るされている睾丸を抜かれた男を見比べ、二人の顔立ちを混ぜ合わせたような少年の姿と合わせて、その関係を推し量って口々に囁き合う。
夫婦だろう、とお互いの推測に頷き合いながら白昼の見世物に群がる人混みを割って、初老の男が場に進み出た。
「こりゃ、真っ昼間から、いったい何をしとるか」
白衣を着た男は、交番の中へ入っていくと、絡み合う二人の腰の隣へ鞄を置いた。
「ああ先生、いいところに」
警官は打ち付ける腰の動きはそのままに、帽子を脱いで敬礼した。
「いいところも何も、貴様が呼びつけたんじゃろうが」
不機嫌そうに眉をしかめて、老医師は鞄の中から注射器を取り出した。そして、向かい側に吊るされている男にモルヒネを打つ。破れた玉袋の中から管が飛び出しているのを見て、舌打ちする。
「なんじゃ、ろくに止血もしておらんじゃないか」
「いやあ、面目ない。美人の奥さんの相手をしていたらそこまで手が回らなくて」
悪びれずに腰を振り続ける警官と、切れ切れの嬌声を上げ続ける女を横目で見やると、医師はやれやれと首を振った。
「まったく、年寄りを呼びつけておいて堂々と女と乳繰り合っとるなんぞ、最近の若いもんはけしからんわい。風紀が乱れとる」
手早く裂かれた陰嚢へ処置を施しながら、老人はため息をついた。
「まあ、そう言わずに。どうです、先生も後でやりませんか?」
自分が抱いている女の股を指さしながら、警官は言った。
「わしを貴様のような色ボケ猿と一緒にするでないわ」
「先生は男色でしたっけ」
出来の悪い生徒を見るように警官の顔を見つめた後、老医師は肩を竦めた。
「まあ、こっちの尻の方がわしの好みではあるがな。奥方の見ている前で旦那に手を出すわけにもいくまいよ」
男の剥き出しの尻に抗生物質を打っている老医師に、それを聞いた女が声をかけた。
「あら、私は構いませんわよ」
医師は目を丸くして女の顔とその夫の顔を見比べた。夫は首を振りながら何かを訴えるように猿轡の奥で叫ぶ。
「ええ、お好きになさってくださいな……あンッ」
胸を揉まれ、警官に乳首を摘ままれた女は、それ以上言葉を続けられなかった。
老人は次にこちらを見つめる少年と目を合わせ、ため息をついた。
「まったく、なげかわしい。貞操というものをなんと考えておるんじゃろうかの」
医師はぼやきながら、男の肛門に軽い弛緩剤を打った。そして、ゴム手袋をはめた指を突き入れて、前立腺の位置を探る。男の腰がビクリとはねた。
「そこの君、ちょっと手を貸してくれるか」
医師は少年を呼び寄せて、素直な子供に父親の性器を握らせた。
「先の皮を剥いて、手のひらでグリグリと先っぽを擦ってくれるかの」
敏感な部分への摩擦に、吊るされたままの男は全身を震わせる。
「真っ赤で痛そうだけど、大丈夫?」
「大人は我慢するもんじゃ」
老人の言葉を聞いて、医師の権威を感じ取った少年は、父親の言葉にならない哀願を黙殺して、亀頭を擦り続ける作業に戻った。やがて前後からの刺激に、萎えていた男根は芯を持った。それでも向かいで暴れている警官の凶器とは比べるべくもないが、少年の掌にぬるぬるとした粘液が溢れ出る。
老医師は手際よく股間をくつろげると、年の割には生きのいい男根を取り出して、男の尻へ突き入れた。喉の奥を震わせて、男は悲鳴を上げる。他の男に抱かれている妻の目の前で、自分の尻をも犯されるのは、彼にとってこの上ない恥辱であるようだった。そんな夫の様子を見て、妻はますます熱に浮かされたように嬌声を上げる。
医師は金属の器具を鞄から取り出し、吊られた男の尻を掘りながらそのペニスの根元を鉗子のように挟んだ。
「これはなあに?」
父の性器に取り付けられた物体を見て少年が首をかしげる。
「大きなハサミじゃよ。よく切れるから刃の部分に触っちゃいかんぞ。怪我をするからな」
「パパのおちんちん、切っちゃうんだ」
「うむ。前を切り落とすと肛門が良く締まるでな」
医師の言葉を聞いて、男は腰を揺らしてもがき始めた。金属の顎に噛みつかれている性器をなんとか解放させようとする。
「こりゃ! 大人しくせんか! まったく、いい年した大人の男がマラの一本や二本ちょん切られるくらいで暴れるでないわ。ほれ、わざわざ気持ち良くさせてやっとるんじゃ、しっかり腰を突き出さんかい」
乱暴に、男の亀頭の括れに透明の糸が巻き付けられる。
「坊や、この糸を前に引っ張ってくれるかの。指が切れるといかんから手に布を巻くと良いぞ」
細く頑丈な糸が、包茎の柔肌に食い込み、男は猿轡の奥で悲鳴を上げる。もがけばもがくほどカリ首の肉が抉れてしまうため、男は性器を前に突き出したまま動けなくなった。その珍妙な格好を見て、妻と息子が笑う。
男の動きが止まると、医師は小刻みに腰を揺らして前立腺を突きあげながら、指先でペニスを挟んでいる器具を徐々に絞り上げていった。医師の性技は巧みで、注射した薬の効果もあり、恐怖に冷や汗を流して身を震わせながらも、男の陰茎は萎えることはなかった。情けないうめき声を上げてすすり泣き始めた男に、医師は優しく呼びかける。
「よしよし、お前さんが射精する瞬間に、ザックリ切り落としてやるからな」
チッチッと、小鳥に呼びかけるように舌を鳴らしながら、医師は直腸内のしこりを擦り上げた。ヒィと潰れた悲鳴と共に、腫れた鈴口から透明の先走りがこぼれ出る。何とか耐えようと我慢を続ける男の力みが、医師の性器を心地よく締め付けていた。
泣きじゃくりながら、男は全身を痙攣させた。尿道が太く開き、前に立っていた少年めがけて精液が飛ぶ。同時に医師は手首をひねり、鉗子状の柄を握ってガチリと音を立てた。最初の奔流の後、二発三発と続きを吐き出すはずだったペニスは、後続の勢いを失って鈴口をパクパクと開閉させるだけになり、少年の手元の糸先にぶら下がってクルクルとまわる。その代わり、妙にのっぺりとした股間の皮膚の裂け目から、勢いよく血と精液の残りが床に向けて噴き出した。
男の叫び声を聞きながら、老医師は心地よさそうに目を細めた。満足した医師が腰を引くと、男の肛門からも汚い色の体液が溢れだし、滴り落ちる。
呆然と指先でクルクルと回り続けている父親のペニスを見つめている少年に気づくと、医師はその肩を叩いて言った。
「ホレ、ママさんにも見せてやるとよいぞ」
そして、自分の性器をしまい込み服を整えると、本格的に男の傷口の手当てを始める。
少年は弾かれるように母親の元へ駆け寄り、その眼前に父の性器を差し出した。
「見てママ、パパのおちんちん取れちゃった!」
女は震える指先で、息子の掲げる肉片を撫でた。子どもの手のひらに収まるサイズではあったが、それは確かに一成人の男根で、まだなお元の体温を残している。膣内の潤いが更に増したことに気づいて、警官はニヤリと笑った。
「セージ君、そいつでママのここを撫でてごらん」
警官は腰を振りながら声をかけ、女の股間に手を伸ばして割り開き、少年の目の前でクリトリスの皮を剥いた。外気に触れたピンク色の皮膚がヒクヒクと震える。
「ここ?」
警官は戸惑う少年の手を取って母親の恥部へと導く。千切れた父のペニスの亀頭部分で、母のクリトリスを擦るよう命じられた少年は、母親の顔色を伺いながらも、熱心に押しつぶすように手を動かし始めた。
「あ、ア、ァ……」
女は背をのけぞらせながら嬌声を上げた。陰核に触れる生暖かい肉片の感触に酔いしれ、膣に飲み込んだもう一本のペニスさえも貪欲にちぎりとろうかとでもいうように締め付ける。平衡感覚を失って一瞬意識を飛ばした女の膣内に、警官はたっぷりと子種を注いだ。
ズルリと音を立てて警官の男根が引き抜かれると、あまりの太さに緩んで開きっぱなしのヴァギナから蒸気が立ちのぼった。濃い白濁した粘液がドロリと糸を引いている。
警官は、引き裂いたレースのパンティを拾い上げて、自分の股間の汚れを拭い、それを使って少年の持っていたペニスを包み込んで、胸ポケットにしまわせた。
「大事にするんだよ」
「うん!」
素直に返事をする少年の髪を、警官はぐしゃぐしゃとかきまわす。机の上で脚を開いたまま荒い息を吐いている母親を、二人で並んで眺めながら、警官は少年に囁きかけた。
「もしかしたら、弟か妹ができるかもしれないな」
「妹がいい!」
少年は目をキラキラと輝かせながら言った。それを聞いて、警官は少年を抱き寄せた。
「よし、妹が産まれたら、またおいで」
そして、がっしりとした腕を伸ばして、少年の股間を握る。
「妹にいたずらしないように、お巡りさんがセージ君のおちんちんも切り取ってあげよう」
少年は恥ずかしそうにもじもじとしながら頷いた。警官の大きな手の中で、まだ幼いペニスが、確かに勃起して震えていた。そんな息子の様子を、父親はずっと眺めていたが、麻酔を打たれて憔悴していた彼が、その意味をちゃんと理解していたのかはもうわからなかった。
医師の処置が終わり、汚れたパンツを無理やり引き上げられて父親がふらつきながら解放されると、少年一家は揃って手をつなぎ、家路についた。
踊るように飛び上がったり両親に体重を預けてぶら下がったりを繰り返していた少年は、母親から危ないわよ、と注意を受けて、我に返ったように姿勢を正す。
それからは、胸ポケットに押し込まれた宝物が飛び出したりしないように、そろりそろりと慎重に歩く。その極端さがおかしくて、母親はクスクスと笑った。
母の笑い声を聞きつけて、少年もクスクスと声を合せて笑いはじめる。少年自身は大まじめで、何がおかしいのかも理解していなかったが、ただ、自分の母が笑っているというだけでおかしく思えるようだった。
「ねえママ、おまわりさんのおちんちん、すごかったねぇ」
「そうねえ、ママもビックリしちゃった」
少年は無邪気に訊ねた。
「気持ちよかった?」
「ええ、気持ちよかったわよ」
「パパとどっちがよかった?」
「そりゃあ、おまわりさんよ」
二人はまた声を合わせて笑った。その隣で、父親は呆然としたまま、フラフラと歩き続ける。
手をつないだ仲の良い三人家族の影が、夕暮れの街に長く長く伸びた。
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投稿:2014.07.22
平凡な日常
著者 自称清純派 様 / アクセス 9462 / ♥ 7