日本を含め、世界の全ての地域で去勢が合法化される決議案が国連に提出されたのが、2104年だった。理由は単純で、「増えすぎた人口を抑制するため」だった。
とはいえ、これまでも世界各国では人口抑制は行われてきた。では何故、去勢が合法化されたのだろうか?
戦争だとかで人口抑制を自然にこれまで行ってきた人類だったが、人口が100億人を突破して以降、戦争というものは起きなかった。だが、2070年にようやく戦争が起こったことにより、人口はそれなりに減少した。
だが、それだけでは駄目だった。人口が減少したとはいえ、それは1000万、2000万の話しであって、100億人という、桁違いの人類の総人口とは掛け離れていた。
そこで、国連に提出されたのが、「人口60億人計画」である。そう、これが先述した『国連に提出された、去勢合法化決議案』である。
さて、この決議案の中身であるが、一体何が有るか見てみよう。
[ 人口60億人計画 ]
《 基本案 》
[ 第一項 ]
本決議案は大多数の国が承認していることに寄って成り立つものであり、承認国家が国連加盟国の半分以下を割ってしまった場合は無効となる。
[ 第二項 ]
本決議案を承認した国は、精通していない者を除いた男性全員を決議案発効と同時に去勢することとする。また、彼らを『雄』と呼ぶこととし、決して『男性』と呼んではならない。
[ 第三項 ]
去勢された者に関しては、その者の人権を剥奪し、世界の女性の共有財産とする。また、その者は左にあるとおり、男性としての権利を失う。
[ 第四項 ]
本決議案が発効された時に精通を迎えていない男性に関しては、精通を迎えた後、精子の能力を見た上で去勢するか判断するものとする。去勢すると決まった場合は[ 第六項 ]に沿う形で行う。
[ 第五項 ]
全ての男性は、この決議案の発効されている内には、女性よりも学ぶ内容を少ないこととする。
[ 第六項 ]
去勢に関しての質問、反論・対抗といったものは受け付けない。抵抗したものは処刑することとする。
[ 第七項 ]
本決議案を承認している国全てにおいて、国会の議員全員を女性にすることとする。
[ 第八項 ]
本決議案を承認している国において、メディアなどに男性芸能人を露出させてはならない。また、会社の経営陣に男性を組み込むことは出来ない。
[ 第九項 ]
雄(権利を失った者)は、国連の承認を受けた国家組織がそれを管理するものとする。(日本では、『男性管理省』がそれを行っています)
[ 第十項 ]
雄(権利を失った者)に対する商品販売の際は、女性に販売するときよりも高い値段で買わせるものとする。
と、いう内容である。
権利を失った者とはすなわち雄のことであるが、2204年現在、日本国内には男性が五〇〇〇万人程度居る。つまり、この雄達の内の精通を迎えていない者を除いて、去勢せねばらないのだ。
ちなみに、人口に関してだが、これは戦争終結後、避難してきたりした人が居るせいで、減っていたところに増えたのである。
さて。この決議案が発布された後、日本では当然のごとく、精子を冷凍する商売が流行した。一応、男性としての権利は剥奪されるものの、権利剥奪をした後は細胞などで子孫を増やしていくことになる。
まあ、子孫を増やさないで人口を抑えるのがこの決議案の目的であるものの、やはり男性たちは本能的に残したくなるわけで……。
結果として、日本ではそういった業者が悪徳なことをしないように『男性管理省』の中に、『精子保存課』が作られた。勿論、生の精子ではすぐに死んでしまうので、冷凍保存しているわけだが。
また、去勢された後のペニスであるが、こちらは管理省管轄のレストランで提供されている。亀頭カレーや、限りペニス等がそのメニューの中の一部である。
一方の包皮に関してだが、こちらも使われている。包皮をペニスバンドにつけ、フェラチオの際に皮を向いたりする時が有るが、あの時のリアリティを演出したりしているのである。
因みに、露茎以外の物を食べたくないとか、使いたくないとか、そういうふうな偏見を持つ女性は未だいるのだが、包皮と肉棒本体の分離が出来るようになっているので、至って無問題だ。
これは、有名な科学者『写聖奈緒子』氏が開発した『皮棒離合薬』を使っているためだ。
ただ、洗っていなかったりするとチンカスが付いていたりすることが稀にある。だが、これは女性客は嫌いではなく、チンカスゼリーやチンカスジュースは、意外と人気だったりする。
——と、そういったことは後にしておいて、男性管理省の仕事に関して見ていこう。
男性管理省は、元々『男性管理協会』として作られた。だが、『協会』というのは『教会』と似ているという理由で、キリスト系の国連議員から反発を喰らい、結果的に『協会』という表記になった。だが、国管轄になるため、『省』という事になったのである。
さて、前置きはこれくらいにしておいて仕事だが、こちらも多くのものに分けられる。
まず、一つ目の仕事として『執行課』の『去勢執行官』というのがある。これは、その言葉が指す通り、去勢を実行する者達のことを指す。ただし、この執行官であるが、執行官は以下の様な手順で去勢することが法律で定まっている。
一、男性器より精子を採取
二、童貞、非童貞、ヤリチン、全ての男性と一度性交渉し、愉しませる
三、もう一度勃起させ、勃起度が最大になったと同時に、去勢する
だが、この手順は日本国内でのみ通用するものであり、他の国では一、二が無かったりする。そう考えて見れば、日本がいかに優しい国であるかが窺えよう。
当然ながら、一や二の項目を何故作ったのかは多くの女性から言われているのだが、これは政府の方針であり、国家機密となってしまっているために分からない。
一、二、の項目は初めから有ったものであるが、これが有るために、当初の去勢執行官はヤリマンが多かったと言われている。そのため、処女はこの仕事でなく、二つ目の仕事の方に就くことが多い。
二つ目の仕事は、『雄管轄課』に『雄管轄官』である。これも、その言葉が指す通りの仕事を行っている。去勢執行後、ペニスや睾丸を失った男性——否、雄を管理しているのである。
この仕事に就くと、様々な相談に対応せねばならないため、やはり執行官とは対になる人材が就きやすい。ただし、最近は去勢する対象の男性が減ってきているため、執行官がこの仕事に移ることも少なくない。
さて、ではこの『雄管轄官』。一体、どのようなことを相談されたのだろうか。ここでは、例を取り上げてみたいと思う。
「性欲が無くなったので、女性として働きたい」
「男性としての権利は剥奪してもいいけど、買うものの値段を高い値段で買わせないで欲しい」
「自分のペニスと睾丸は何処へ行ったのだろうか」
など、様々だ。
そして、以下が質問に対する雄管轄官の解答である。
「性欲が無くなったので、女性として働きたい」
→ 「女性」と「雄」は全く違うものですので、変われません。男で産んだ親を悪んでください」
「男性としての権利は剥奪してもいいけど、買うものの値段を高い値段で買わせないで欲しい」
→ 「それは恐らく出来ません。国際的な決議ですから、総理が言わない限り無理でしょう」
「自分のペニスと睾丸は何処へ行ったのだろうか」
→ 「お調べいたします……。貴方様のペニス、睾丸は食料として使われたようです」
とのことだ。
さて、この雄管轄官であるが、これになれるのは女性だけではなく、男性でもなれる。ただしこれは、去勢執行官の夫や弟など、その人との血縁関係や親交関係がなければ無理である。従って、極少数の人の男性のみがなれる狭き門であり、全国の数カ所にしか男性の雄管轄官は居ない。
三つ目の仕事は、『精液・精子管理官』である。こちらもその名の通りの仕事をしている。執行官が採取した精液を管理し、冷凍保存したりしているのがこれに該当する者たちなのである。また、精液がどれほどのものであるかを管理したり、精液を使った実験をしたり出来るのも該当する者たちの特権だ。
また。これに該当する者たちは、精液や精子のみならず、卵子や愛液なども管理している。ただし、後者の管理は女性の許可が必要である事や、精液・精子の管理部屋とは異なるところで管理されていることなどが有り、ここに雄と女性の違いが有る。
ただ、これに該当する者は殆どが女性である。施設内に居る男性は大体被験体であって、どのみち彼女らに去勢される。そして、その被験体から出た精液を掛けあっていたりしたことがニュースになったりしたこともあって、最近は政府からの指導を受けた管理官も居る。
でも、そういったことをするのは極少数である。
そして、四つ目の仕事が『非精通者管理者』である。こちらは「管理者」とある通り、非精通者に付き添う者を指す。ちなみに、付き添う対象となるのは、一五歳以上の全ての非精通者である。
ちなみに小学校や中学校に当てはめると、一五歳以上というのは、男子だと中学校一年生以上ということになる。少し複雑化しているが、去勢を受けていない小さな男の子ではないので、そういった男子が好きな女性がなって、退職したケースが後を絶たないので、そこらへんはしっかりと認識して欲しい所。
また小学校でも中学校でも入学したときから、男子は女子と同じ部屋で二日おきの朝に、精通テストが行われる。精通が確認された時は学校直属の非精通者管理者によって精通が確認された後、去勢執行官の手によって去勢される。しかし、去勢執行官の居ないところでも、非精通者管理者の手で切ることは出来る。
また、非精通者管理者は、トイレの使い方についても指導をする。……といっても、これは包茎の人のみに行われるものであり、一五歳以上の中で包茎の者というのは、非常にその者のプライドを傷つける。だが、管理者は笑みを浮かべる。……理由は察して欲しい。
——さて、以上で全ての説明は終了だ。ここからは、彼女らの日常に迫っていくことにしよう。
※ Part2へ続きます
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投稿:2014.08.04更新:2014.08.04
去勢が合法化された世界。 Prat1
著者 フェードアウトC.T 様 / アクセス 14367 / ♥ 0