能天気なメロディ。
キラキラと光を放つ装飾。
子供のはしゃぐ声とカップルの楽しそうな談笑がぐるぐると頭をループする、365日の中で群を抜いて嫌いな日。
イルミネーションに彩られた街灯は、いつもより数倍眩しく街を照らし出している。
どうかこのクリスマスなどという俺にとってなんの役にも立たない日が来る前に世界がなくなってしまえばいいと、そう思いながら幸せそうなカップルを睨みつけて街を歩く。
しかしながら家にいるのは、もっと辛いのだ。
人のいない閉鎖空間など孤独しか感じない。
このクリスマスという日を存分に楽しむには、町中の幸せそうな奴らの悲しい末路を想像しながら徘徊する、という今の行動が一番だと思っている。
元々アニメが好きだったり、フィギュアを集めていたりと所謂オタク趣味のある自分には、寄ってくる女などいなかった。
無論、自ら女を捕まえに行く勇気など微塵もなかった。
人通りの少ない落ち着いた路地にでると、いつもの癖で、つい下を向いて歩く。
睨むためのカップルや家族の姿すら見当たらないこの場所は、俺にはなんの価値もない。
早く元の大通りへ行こう、とUターンをしたところ、俺の後ろを直進していたであろう細身の少女とぶつかった。
軽くぶつかっただけにも関わらず、きゃっ、と声をあげると少女は雪の上にドサリと尻餅をつく。
見るとかなり幼く、中学校入りたてか、まだ小学生かもしれない程度の可憐な少女が、一丁前にこちらを睨みつけているではないか。
黒く、細い髪の毛が真っ赤なマフラーに埋もれてふわふわと揺れている。
これだから女は。
たかが軽くぶつかった程度ですぐに被害者面だ。
「あー、はは。ごめんごめん」
俺が笑いながらその子に手を差し出すと、少女はその睨みつけた顔のまま、俺の手をはたく。
親切を無下にされた俺は、無論いい気がしなかった。
「君ねぇその態度はないんじゃないの?転んだだけで、大げさだしさ」
本音を露わに少女に詰め寄ると、今度は大声をあげて泣き出す始末。
苛立ちと共に焦りが募り、どうしようかと頭を悩ませていると、ふと少女の泣き顔にどこか艶のある女性らしさを感じた。
ツヤツヤの髪の毛。真っ赤に腫らした大きな瞳。僅かに膨らみのある胸はコートのせいでよく見えないが、細く柔らかそうな足は、俺を誘っているかのようにいやらしく、転んだ格好のまま大きく開いている。
鼓動が早まる。
いや、俺に睨まれた罰だ。
俺は自ら見届けるのだ。この少女の悲しい末路を。
自分自身にそういった趣味があるとは思っていなかったが、この少女にはどうも男を狂わせる何かがあると感じるのだ。
「わかったよお嬢さん、俺の家においで。手当してあげる」
ニタニタと笑う俺の差し出した手を、少女は今度こそしっかりと掴んだ。
その手はとても力強く、まるで、初めからこうなる事がわかっていたかのような、そんな意思さえも感じさせる。
少女が立ち上がり俺の手を離した時、俺は背後からのバチバチ、という激しい音と同時に意識を手放していた。
ぼんやりと霞む視界は徐々に鮮明さを取り戻していき、今日が何の日だったかを思い出させる。
目の前には大きなクリスマスツリー。
テレビやソファーに装飾されているたくさんの鈴やテープ。
テーブルに彩られたローストチキンが、香りを放つ。
流れてくる地獄のメロディ。
俺にとって、最悪の日だ。
ただ一つ、予定外のことがあったはずだ。
可憐な雪のような少女を、凌辱するという俺にとっては夢のようなプラン。
あれは、夢だっただろうか。
ふと、体が思うように動かないことに気づく。
それも、全裸である。
拘束されているわけではないのに、まるでマリオネットのようにぎこちないその動きは、間抜けそのもの。床に転がったまま、カクカクと動く事しかできない。
暖炉のパチパチという音が聞こえる。
この暖かい場所は、一体どこなのだろう。
なぜ、俺は全裸で転がっているのだ。
「メリークリスマス!!!」
びくりと肩が跳ね上がる。
声の方を見やると、細身の美しい女性が、長く艶やかな黒髪を揺らし、こちらに微笑みかけていた。
スラリと長い脚に切れ長の瞳。
赤いワンピースの丈はとても短く、転がっている俺からは黒いパンツが丸見えだった。
「え、…え?」
戸惑う俺にカツカツとハイヒールの音を響かせながら歩み寄る女性からは、とても気品のある、気高いオーラが感じられた。
やがて女性は、俺の真上に立つ。
「メリークリスマス」
再び聞こえた女性のその声は、先ほどとは打って変わってとても冷たいものだった。
隠すつもりすらなさげな、女性の下半身に目がいく。
「あの、えっと、あなたは」
俺が言い切る前に、口に何かが突っ込まれる。
「がぁっ…!」
物ではない、大量に注ぎ込まれるそれは、液体であることだけがすぐにわかった。
「がぼぼっ…!!が!」
降り注ぐ液体に視界を奪われ、その激痛からそれが水ではないことを知る。
息が苦しい。腹が苦しい。助けてくれ。助けて。
必死にもがいてみせるが、降り注ぐ液体はまったく止まる様子がない。
腹にたまる異物感と呼吸困難。
意識を手放しそうになった頃、ポタポタとその液体はゆっくり勢いをなくしていった。
カクカクとぎこちない動きで、すぐにうつぶせになり、液体を吐き出す。
堪え兼ねるほどの激臭。これは、オイルだ。
「おぇぇ、おえぇ」
なんとか嘔吐をおえ顔をあげると、なんとも可愛らしい少女の顔が目の前にあった。
彼女は…。
「騙してごめんね」
あいも変わらず雪のように可憐な少女は、その手に大きなオイルのボトルを持ち、心底幸せそうに微笑んだ。
大きな赤いマフラーは、着火された火のようだ。
騙した、というそのセリフは本来なら俺が放つはずだったものではないのか。
戸惑う俺の髪の毛を後ろの女性が掴み上げる。
ぼうっとする意識と動かない体。
頭部に走る痛みにさえ、俊敏に反応できない。
ケタケタと少女の笑い声がきこえる。
美しく、可憐で愛おしい笑い声。
女性は俺を仰向けにし、だらしなく広がる俺の脚を蹴り上げる。
「あなたがいけない。幼い子に手を出そうと考えていたに違いないわ」
図星なのだから何も言えない。
「お姉ちゃん、早くみてみようよ!」
その言葉に、そうか姉妹なのかと気づく。
少女は何やら俺の脚を拡げ始める。
自由のきかないこの体では、少女の力にさえ叶わない。
姉と呼ばれたその女性は、そうね、と優しそうに微笑むと、俺に再び冷たい視線を浴びせる。
「今から私達は、夕食を作ります。クリスマスですものね」
穏やかな口調で、女性は語る。
その合間にも、少女は何やら興味津々といった様子で俺の局部を触っている。
その感触に、俺の性器は徐々に主張を始める。
「あなたのおちんちんとたまたまを、今夜の主役として提供してもらうの」
ドクン、と心臓が脈打つ。
冗談にはまるで聞こえないその言葉に思わず息をのむ。
「どうか、どうかそれだけはやめてくれないか」
震える唇からこぼれた精一杯の願いは、女性の上品な笑い声によって掻き消された。
「嫌よ、もう他の食事は準備しているの」
落ちてきた髪を左手ですっとかきあげながら、彼女は笑う。
ふと性器にヒヤリとした感触が走る。
見ると、少女が楽しそうにフォークで俺の玉をつついている。
「俺が悪かった、助けてくれ」
おそらくここが本当の地獄だ。踏み入ってはいけない領域に違いない。外が恋しくてたまらないのだ。
「いいわ、刺しちゃって」
まって、と言おうとしたが遅かった。
ズブ、とフォークがめり込む。
少女はゆっくりと、確実に俺の玉に深く突き刺していった。
「ぎゃあああ!」
焼けるように痛い喉を震わせ、精一杯に叫ぶ。
少女はそれを無視し、そのまま引き千切るように引っ張っている。
張り裂けそうな痛みに、自分の行動に後悔する。
女性は悶え苦しむ俺を一瞥すると、テーブルの上のナイフを手に取り、俺の腹に跨る。
勃起しかけていた惨めな俺の竿を左手に鷲掴むと、まるでイタリアンで高級ステーキを切り分けるような優しい手つきで、ゆっくりと切断を始めた。
ブチブチ、と肉が千切れていく感覚。
一瞬ではない、ゆっくりとした鋭く長い痛み。
なんども意識を飛ばし、痛みで目を覚ます。
尿を垂れ流し、嘔吐が再び始まる。
少女は無邪気に、俺の玉をフォークに突き刺したまま引っ張り続けている。
声も出なくなり、痙攣が始まった頃、それはようやく終わりを遂げた。
少女は玉が千切れた勢いで、尻餅をつく。
あの時のように、きゃ、と可愛らしい悲鳴をあげるのだ。
女性はようやく切り終え、すぐさまテーブルの上のお皿を手に取り、切り離したばかりの俺の性器をのせる。
「さあて、クリスマスパーティの始まりね」
まるで俺のことなど見えていないかのようにパーティが始まる。
流れてくるクリスマスソング。
キラキラと部屋を彩る装飾たち。
彼女達はテーブルにつくと、心底幸せそうに俺の性器を頬張る。
コリ、と咀嚼音がきこえた。
血にまみれた俺はただ、その光景を痙攣しながら眺めている。
今日は、クリスマスだ。
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投稿:2014.11.15更新:2014.11.15
ディナーとお二人さん
著者 とーーまりーー 様 / アクセス 8739 / ♥ 0