K大学は川のそばにあった。
K大学が「去勢大学」と呼ばれているのは、獣医系の大学にしては珍しく女性が圧倒的に多く、しかも、実習という名目で彼女たちが犬・猫の去勢を無料で手掛けるサービスをしていることから近所でも有名な大学だったからだ。もちろん大学名が「去勢」に似ているのもその理由のひとつだ。
川沿いの道はK大学のそばを通るので、ボクはいつもなんとなくお尻がむずむずするような感覚を味わいながら、その道を自転車で行き帰りしていた。
ある日のことだ。道の脇の草むらで数人の女性たちが草を掻き分け何かを探していた。ボクはいつものようにあまり関わりたくないという気持ちを全面に押し出してその脇を走り抜けようとした。もっとも、その辺りは道幅も狭くあまり速度も出せない。
「ちょっとキミ」
道端の女性が突然手を道路に伸ばしてきた。ボクは慌ててブレーキを踏んだ。
「キミ、毎日、この道、通っているよね」
白いワンピースの女性がちょっと鼻にかかって言う。ボクは毎日の行き来が知られていたのに少し驚いてこくりとうなづいた。
「どこかにスマホ落ちていなかった?」
草むらの中から花柄のTシャツに赤いガウチョパンツといういでたちの女性が立ち上がって言う。
「スワロフスキーでキラキラしてる奴なんだけど」
三人目は青いボーターのTシャツで目が悪いのか目を細めてボクの顔をにらんだ。
ボクはそんなものは見たこともなかったし当然、首を横に振った。
しかし、彼女たちはおかまいなしに近づいて来て自転車を取り囲む。総勢六人、女性の匂いがボクの周りに立ち込める。
「キミ、スワロフスキー知っているの?」
最初に声を掛けてきた白いワンピースの女性が詰問口調で言う。
「ビーズみたいな。キラキラした奴・・・」
ボクもスワロフスキーでデコったスマホは渋谷あたりで見たことはある。
「そうよ、それよ!」
「どこで見たの?」
「いえ、ここではなくて・・・」
「ほんと?」
「ねえ、カバン見せてよ!」
「そうそう、チェックチェック」
もごもごしているボクを尻目に彼女たちはボクのカバンを開けて勝手に中をごそごそ探り始めた。
「ちょっと・・・」
やめてくださいと言おうとしたとき、青いボーターのTシャツが歓声を挙げた。
「あった〜!」
ウソだ。そんなはずはないと唖然としているボクの周りに女性たちの輪が縮まる。
「ねえ、これ、どういうことなの?」
白ワンピがハンドルに手を掛ける。
ボクは強引にペダルを漕いで逃げようとしたが、六人の女性が既にそれぞれに自転車をつかんでいた。
「今、逃げようとしたね」
「やっぱり」
「ちょっと降りなさい」
手回しよく、一人がボクの手に手錠を掛け、もう一人は腰ひもを、さらにもう一人は犬の首輪をボクの首に回した。
こうしてボクは去勢大学の構内に連れていかれた。
〜ボクの運命は?
次回、パンツを脱がされちゃうよ。こうご期待!
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投稿:2015.08.18
去勢大学(1)
著者 去勢仮面 様 / アクセス 23508 / ♥ 0