「それでは、まず宦官の志望動機を簡潔に聴かせていただこう」
そりゃモチロン給料が良いからです。
なんて言えないよな。やっぱし。でも、他にチンコ切りたい理由なんてないぞ。
「では、右端の、包茎の君から」
余計な形容詞はつけなくていい! っつうか、俺からかよ。クソッ。
「え、と、王室の方々を危険から守るという職務に大きな意義を感じたので」
面接官のオッサンが唇の片端を上げてこっそり笑うのがわかった。心にもないことを言ってるのがバレバレのようだ。聞かなくてもわかるなら聞くなといいたい。
「では次の浅黒い君」
この場合の浅黒いってのは、やっぱりチンコなんだな、面接官。ちらりと左へ目をやると、たしかに使い込まれた色合いの堂々としたブツがどんとぶらさがっている。
「私の提供できるサービスがどこよりも高く評価していただけるからです」
ものは言いようだな! 要するにやっぱり金だが、上手く口が回るもんだ。スキがなさすぎて少しイヤミな気もするけどな。そうか、金は金でもオブラートに包めばいいのか。
面接官もうむ、と重厚に頷く。なんとなく、こいつは採用決定だろうという気がした。浅黒いチンコもサヨウナラだ。
「では隣の長細い君」
チンコの形容詞で呼ぶのを止めろ面接官。見えてねえのに想像しちまうだろうが。
「私も、私の能力を高く評価していただけると思って志願しました」
うーむ、ズルいぞお前。そのまんまじゃねえか。俺が面接官ならパクりはいかーんと、ゲンコツでぶん殴るところだ。まあ、俺が浅黒の次の番だったら似たようなことを言っていた気もせんでもないが。
「おお、君はデカいな。立派なもんだ。君は?」
「あ、昔からテレビで見てかっこいいなーって思ってたんです。だから子供の頃からの夢で。エヘヘ」
のほほーん、とした能天気な声が響く。思わず顔を向けて、お前はいくつだ! と、ツッコミたくなった。浅黒達の頭の向こうにピョコンと突き出た顔が、朗らかに笑いながら頭をポリポリかいている。巨根は身体もデカいのか。それとも、面接官がチンコの見た目で人を呼んでるというのが俺の被害妄想なのか。子供の頃の夢が宦官っておかしいだろう、とは言える雰囲気じゃない。
「なるほど、ちなみに、そいつは勃起すると何センチくらいになるのかね?」
面接官も話を聞いているのかいないのか。それより、セクハラ面接だ!
「28センチくらいかな。しっかり測ったことないです」
デケえ! じゃなかった、お前も答えてんじゃねえ!
「ふむ、本当に切っても構わないのかね?」
ああ、そうか。そういうことを確かめる必要もあるから一概にセクハラとも決め付けられんのか。つくづく、とんでもない仕事だな。
「あ、はい。女の子もイタいって言って相手してくれないし」
言わせて見てえよ、そんなコト。クソッ、ガキみたいな喋りしてるクセに、生意気な!
「そうかそうか。切断する前に勃起時のサイズ計測の機会もあるから、詳しい数字がわかったらまた教えてくれたまえ」
面接官はなんだか嬉しそうな顔で頷きながら何やらメモをとった。なんとなく、面接でわかった人物評価などの重要な事柄ではない気がした。
「じゃあ次は、そこの半剥けの左曲がり気味の君」
ブツの詳しい解説をやめろと思いつつ、包茎仲間に少し親近感が湧く。キミ呼ばわりだが、聞こえてきた声は落ち着いたそれなりのオッサンの声だった。
「今以上子供を作る意思がありませんので、こちらの都合と、要求された条件が上手く合致していたからです」
今以上ってことは、もう子供がいるわけか。なるほど、年齢高めの募集はこういう親父をターゲットに入れてるからなんだな。俺がふむふむと納得していると、面接官が何故か少し次へ進むのをためらうようなそぶりを見せた。
「う、む……では、最後に、左端の、うん、目を輝かせて勃起している君」
「はい! 男児たるもの、この日の元に産まれたからには、偉大なる国王陛下の御為に男根の一本や二本、切り落として捧げ奉るのが当然の義務であるからであります。私、本日ここに馳せ参じました事を非常に誇りに思っております」
高らかに言い切った声を聞いて、俺はあまりの痛々しさにいたたまれなくなった。なにより、述べた志望動機を並べると、俺が一番奴に似ているのが最大のダメージだ。
「そうか。君のような人材に会えて私も嬉しいよ。ハハハ」
「そういっていただけて非常に光栄であります!」
こいつと一緒に仕事をするのはイヤかもしれないと俺は思った。
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投稿:2017.04.09
ろいやるがーどの面接
著者 ななしさん 様 / アクセス 15020 / ♥ 54