サンジョウツカサは、公立小学校に通う10歳の少年だ。
色白で、栗色がかった髪をボブカットにしており、睫毛も長くて一見少女を思わせる美貌の持ち主だが、大変な悪ガキだった。
何も知らない女の子達は、ツカサのガールフレンドになりたいと思ったりもしたが、今では全学年の女の子達から、「触らぬツカサに祟りなし」「ツカサを見たら全速力で逃げろ」と言われるレベルだったというから大したものだ。
体格は10歳児にしては小柄で、時々1年生にも間違われるレベルだったにもかかわらず、喧嘩の方も強かった。
とにかく急所を狙うのが上手い上に、いきなり相手の虚を突いて足払いをかけたり、死角になる所から弾丸のようにすっ飛んで頭突きを食らわせたりして引き倒すと、あとは相手が泣き喚くまで滅多打ちにするのがいつものやり方だった。
そんなツカサであるが、一番女の子達から嫌われる原因になったのは…
女湯に入ることだった。
なんせ小柄で、顔立ちも女の子にしか見えないので、大人達はツカサが女湯に入っても疑いもせず、止めることもしない。
騒ぎは一切起こさず、大人にとっては、「天使のように可愛いツカサちゃん」という外面を保っているためでもあった。
女湯の中での立ち居振る舞いは完全に少女のそれだし、男性器は足の間に挟んだり、前を完全に隠したりするので、女の子だと思い込んでいる大人さえいる始末だった。
それを利用して、堂々と女湯に入ってじっくりと女体を鑑賞するのがいつものやり方だった。
時々はおんなじ学校の女の子達と出っくわすこともあるが、ツカサは、翌日にはその子の前に待ち構えて恫喝するのだ。
「文句言ったり、大人にちくったりしたら、おめえの裸を見たことを言いふらすぞ!それかぶん殴られるのか、どっちにするか!?」と。
なんせ、ツカサの強さは学校中の評判だ。
そこに持ってきて、蛇のように陰湿で根回し上手で、大人達の、特に女性教諭達の覚えもめでたいというから、全くもってたちの悪い存在だった。
その日も、ツカサはいつものように女湯にやって来た。
同じクラスの女の子、美咲と穂乃花が顔をしかめたが、翌日に釘を刺せばいいのだからと、例によって全く知らぬ顔だ。
体を洗って、浴槽で暖まって、その間、美咲と穂乃花を含めた女性達の体をじっくり拝む。
それから、さあ上がろうと浴槽の縁をまたいだら…
そこに、石けんの泡があった。
ツカサは、そこで足を滑らせた。
派手な音が響き渡った。
そして、美咲と穂乃花が、女湯の客達が見た物は…
白目を剥いて、泡を吹いているツカサの姿だった。
「大変!この子浴槽の縁で、股間を打っちゃったみたい!!」
「って言うか、ツカサちゃん、男の子だったの!?」
ツカサは、救急車で病院に搬送された。
そして、翌日から、学校に現れなくなった。
教師からは、「サンジョウ君は、急な都合で転校しました」という一言の説明しかなかった。
ツカサが病院のベッドの上で目を覚ましたのは、それから3日後のことだった。
側には、両親と医師がいた。
「意識を取り戻したので、本人にも改めて説明させていただきますね」
医師はそういいながら、ツカサの掛け布団を剥がす。
そして、術衣の上着をまくり上げられたとき…
ツカサは、派手な悲鳴を上げた。
下半身は裸だった。
そして、男のシンボルが、跡形もなく消え失せて、女性器になっていた。
「なんで!?なんでなんでなんで!?」
激しくうろたえるツカサに、医師は説明した。
「君のペニスは、浴槽の縁に叩きつけられたとき、運悪く全体重がかかって挫滅…すなわち潰れていた。睾丸も二つとも破裂していたんだ。だから、女性器に作り替える外科措置を施した」と。
ツカサは、ベッドの上で股間を押さえて、号泣するより他はなかった。
事故があったその日、美咲の母から知らせを受けたツカサの母が病院に駆けつけて目撃したのは…
全裸でストレッチャーの上に寝かされた我が息子、ツカサの姿だった。
意識を失っているツカサを見ながら、医師は説明した。
「お子さんの睾丸は、二つとも破裂してます。ペニスは全くの無傷ですから、睾丸はプラスチック製のものを入れて、男性ホルモンを投与することも出来ますが、いかがなさいますか?」
医師の説明に対して、ツカサの母は返す。
「…女の子にしていただくことは、出来ますか?」
「え…?可能ですが、ご主人の承諾の方は?それに、お子さんの意向の方は」
「主人とツカサには、事後承諾ということでお願いします。ペニスの方も損傷していたということで」
手術が終了し、全く女の子の外見になったツカサの股間を見た母は思う。
(これで、やっと私の思い通りになった…!!)
ツカサのことを愛していないわけではない。
だが、本当に欲しかったのは女の子だったのだ。
だから、ツカサと名付け、髪もボブカットにしていた。
物心つくまでは女装させたりもしていたのに、ツカサは自分の望みと正反対の少年に成長した。
女の子が欲しかった。
その思いが、まさかこんな形で実現するなんて。
体調が戻ったツカサは、隣の県の小学校に、女子として編入させられた。
自分が意識を失っている間に、少年時代の写真と男物の服は、全て処分されていた。
残っている写真はすべて、幼児期の女装時代のものばかりだった。
男としての、悪ガキ時代の過去は、すべて抹消されていたのだ。
その事に反駁しても、「昔は男の子だったことがばれたら大変」「もう男の子じゃないんだから、女の子になる事を受け入れなさい」「男の子のような振る舞いは今後一切許しません。先生にも厳しく躾けるように伝えておきました」「泣こうが我儘を言おうが、事故なんだからどうしようもないじゃないの」と返ってくるばかりだった。
男のシンボルと共に、男としての過去も自信も、全て失い果てたツカサは、今日も泣きながら登校する。
その後ろ姿を見送りながら、母は思うのだった。
可哀想かもしれないけど、これで全てが丸く収まったのだ、と。
我が子の悪行は、どこからともなく耳に入っていたし、大人しい子だったら男のこのままにしておいたし、そもそもこんなことをやらかすこともなかったのに。
まさかここまで自分の思いと正反対の…手もつけられないレベルの悪ガキになるなんて思っても見ていなかったから。
この事故は、悲劇ではなく、自分に幸運が転がり込んできたと思うより他なかった。
ツカサ自身にとっては全くの悲劇だが、ペニスが無傷だったことは、夫とツカサには永遠に内緒にしておこう。
ツカサの母は、心の内で、そう決め込んだ。
-
投稿:2017.06.01更新:2017.06.01
ツカサちゃん
著者 真ん中 様 / アクセス 10385 / ♥ 11