華やかなヘッドマークをつけた列車が入線してきた。
ピンク色に染められた車体には「祝・男子連座法」の文字が赤く踊っている。文字の合間には有名キャラクターのネコたちが「これで安心」と微笑み合っている様子が描かれていた。
「21世紀にもなって痴漢がいるのは恥ずかしい」
きっかけは日本初の女性首相のこの一言だった。
確かに痴漢は増えてきていた。これは、「痴漢」の立証が非常に難しいからだ。場合によっては、「痴漢」を告白した女性が非難されてしまう。
そこで制定されたのが「男子連座制」だ。つまり、痴漢の場にいた男性がまず十人程度拘束される。そして、その中の一人が強制去勢されるわけだ。
痴漢は「男」という一族の罪、それならば、一蓮托生で罪を償わせようという趣旨。それに、去勢されたくないから、男性同士も互いに目を光らせ結果的に痴漢が減るという寸法だ。
男子にことの重大さをわきまえさせるように、去勢は公開で行なわれる。
男子学生は毎週、学校の授業としてそれを見学させられる。去勢を公開にしても男子が見なければ意味がないからだ。
そのための特別列車がこの通称「ピンク列車」なのだ。
隆は、暗い気持ちでクラスメートと一緒にピンク列車に乗り込んだ。
怖いのは女子も一緒なことだ。男子を鍛える目的だが、男子はみな両手を上に上げて女子を避けるようにかたまっている。しかし、今日は何校もの共同授業なので車内はすし詰めにちかい。肘か胸に当たったらどうしようとか、万が一勃起でもしたらどうしようとか心配のタネは尽きない。
「こんにちわ」
気づくと目の前に同じクラスの光代がいた。「光代」とはまた古臭い名前だが、顔はそこそこ可愛いし、胸も大きい。
(つづく)
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投稿:2017.08.25更新:2017.08.25
男子連座法(痴漢がいたら誰かを去勢)1
著者 ヒメジョオン 様 / アクセス 7927 / ♥ 0