「みなさま。みなさまにご覧に入れたいものが、もう一つございます」
カオリが微笑みながら言う。そして、後ろに控えるメイドに
「あれを...」
と声をかける。前に進み出たメイドは、ベルベット張りの大きなケースを胸の前に捧げ持っている。カオリが留め金を外し蓋を開けると、メイドが客たちに向けて中身を披露する。
ざわざわざわ...箱の中身を覗く客たちは、カオリがそれを皆に見せた意図を図りかね、どよめく。
「これは...?ディルドですか?」
客の一人が疑問を口にする。
「大きなディルドね!」
「なんか、妙に生々しいわね」
「まるで標本みたい...」
女性客がディルドの周囲に群がり、口々に感想を述べる。カオリが言う。
「みなさま。『竿無しの竿』でございます」
ケースの中に入っていたのは、切除した拓弥のペニスから作ったディルドだった。最大限に勃起した形で樹脂により固められ、その長さは優に20センチを超えている。ぷっくりと膨らんだ亀頭と、反りかえった竿の形にぴったりと合わせた、赤いベルベットの窪みに収まり、竿の根元には純白のリボンがかけられている。
カオリの言葉を聞いた客たちは、もう一度ディルドをよく見ようと、我先に箱へ近づく。
「ええええええぇぇぇぇぇっっっ!」
「きゃあぁぁぁぁ!」
「凄え!」
「ホントかよ!」
「これが、竿無し君のペニス?」
「でかい!」
「こんな立派なのを切り落としちゃったの?」
「もったいない...」
「どうやって作ったのかしら?」
「なんか、見ているこっちまで、痛くなってくるな(笑)」
驚愕する客たちを前に、カオリはディルドを箱から取り出すと、その先端をペロリと舐め、にこやかに笑いながら客たちの眼前にかざして見せる。客たちは、ディルドの写真を競うようにして取り始める。
「ほうら、竿無し。あなたのペニスよ。また会えたわねぇ。嬉しいでしょう?」
拓弥は、ちらりとディルドを見るが、すぐに目をそらす。カオリは笑いながら、ディルドで拓弥の頬をペチペチと叩く。拓弥は食いしばった歯の間から息を吐き出し、眼を閉じて羞恥と屈辱と喪失感に耐える。するとカオリは、ディルドの根元に結ばれ、一端が大きな輪になったリボンを、拓弥の首にかける。
「まあ!竿無し!良い格好よ!自分のおちんちんを首からぶら下げた気分はいかが?」
カオリが容赦ない言葉を拓弥にかけると、一斉にシャッター音が響き、フラッシュが閃く。「竿無し」と大書された胸の前に、切り取られ、勃起した状態で固定された自身のペニスをメダルのように首から下げた拓弥は、大勢の招待客の視線に全裸の体を晒しながら歩く。首から下がったディルドが、拓弥の歩みに合わせて揺れる。それは、あまりに倒錯的で、扇情的な光景だった。
「本当に情けない姿ね、竿無し!」
女性客たちが、性的な興奮で潤んだ目を光らせながら拓弥に近寄り、次々にディルドに触れる。
「触った感じ、本物にそっくりね!」
「冷たいけど、弾力や色、形はペニスそのものだわ」
「これが、この子の股間にぶら下がってたのよね?」
「こんな風に?」
と言いながら、女の一人が、首から外したディルドを拓弥の股間にあてがって見せる。シャッター音が一段と高くなる。別の女は拓弥と腕組みをし、友人が構えたカメラの前で、ディルドを掲げて笑顔で記念撮影をする。
「竿無し!撮るわよ!はい笑って!チーズ!」
女たちは徐々に大胆になる。
「竿無し!みんなの前で、自分のペニスにフェラチオしなさい!ああ、ダメダメ!もっとイヤらしく舌を這わせて!」
「竿無し!ほうら、こうやって、あなたのペニスをしごいてあげる!どう?感じる?」
「キャハハ!感じるワケないわよね!」
「切り落とされちゃったら、ねぇ(笑)」
そうして拓弥は、女たちのなぶり物にされながら、カオリに引かれてさらに歩く。男たちは、その姿を嘲笑い、蔑みの目で眺める。
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この小説は、r18.novelist.jpに掲載された、三蔵法師の文章の一部を転載したものです。
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投稿:2019.03.13
拓弥とカオリ 習作10(抜粋)
著者 三蔵法師 様 / アクセス 3923 / ♥ 4