ケイが手芸用品大店舗内をうろつき、何かを探している。
様々な厚みの数ある布地が並べられた商品棚を辟易しつつ、ようやく十メートルの長さで幅が三十三センチの晒し木綿の反物を探し出した。
それをカートに入れ、他にもちょっと厚めの生地の端切れと、裁縫セットを一緒に購入して店を出た。
自転車にまたがり、颯爽と街路を駆け抜け、タツキが勤めている喫茶室に向かう。
「いらっしゃい。おや、珍しい買い物をしたのですね」
悠然と構えたマスターのヨシタケが、やって来たケイの買い物袋を見て声をかけた。
「ちょっと、やってみたいことがあって……」
ケイが答える。
しばらくしてサスケがやって来た。
二人が席に着いて、何かしらを注文し、会話を始めた。
「サスケ君。買ってみたよ」
ケイが買ってきた物が入った袋をテーブルに置いて、サスケに言う。
「どれどれ……。うん。これなら大丈夫だよ」
サスケが袋の中身を確かめてケイに返した。
「ところで、このごつい生地。何に使うの?」
サスケがふとした疑問をケイに聞くと、ケイは
「あれからいろいろ調べてみたら、面白かったから作ってみようかな、なんて。で、買ってみた」
と、答えたのだった。
その会話を聞かないふりをしつつも聞いていたヨシタケは、なんとなく買い物の正体をつかんだが、あえて何も言わないことにした。
「ケイ君って裁縫もするの?」
何も知らないタツキが二人の会話に入って、何気なく聞いた。
「ちょっとね」
ケイがタツキに言う。
せっかくだから、とばかりにサスケが何をしようとしているのかということをタツキに話すと、タツキはちょっと驚いたような、キツネにつままれたような何とも言えない表情をした。
「え。なんだって? 布一枚が下着にできるって? この幅で?」
何が何だかよくわからない顔をする。
「タツキさん。実はオイラの下着、それなんですよ」
サスケがタツキに言うと、タツキが信じられない顔をした。
「タツキ君。それは昔からあるのです。あえて私は言いませんでしたが。なるほど。若いのにサスケ君はそうなのですね」
ヨシタケが口をはさんだ。
「というけど、最近になってからなんですけどね」
サスケがそう言い、頭をかく。
「どういったことで?」
ヨシタケがサスケに聞いた。
「爆弾テロに遭ってからです。オイラはこの目と左足なくしましたが」
サスケが答えると、なんとなくヨシタケも理解した。
下着談議がそのあと少し続き、ケイとサスケが帰ったあと、悠然と構えながらヨシタケが自慢の厳めしい口髭をしごきつつ、
「なるほどねぇ。そうでありましたか」
とだけつぶやいた。
喫茶室から出たケイとサスケは、ケイの自宅に向かった。
ケイの自宅は一人暮らし用の賃貸住宅であり、一人暮らし用と言っても中が広い造りになっていた。
ケイは広すぎると思い、リビングだけを生活スペースにしていた。
さっそくサスケが、ケイに六尺褌の締め方とか作り方だとか、ケイが興味を持っていることのレクチャーを始めた。
「意外と簡単なんだ。切るだけなんて」
ケイが拍子抜けしたような顔をして、所定の長さに晒し木綿を切った。
「ティーバックみたいなやつって、どう作るの?」
切り終えたケイがサスケに聞いた。
「それ、オイラも知らないんだけど、検索すれば出るかも」
そんな会話をする。
とりあえず所定の長さに晒し木綿を切ったから、実際に締めてみようじゃないか、ということになった。
「サスケ君。ちょっといい?」
ケイが、仲間が増えたとばかりにテンションが上がりまくっているサスケにぽつんと言った。
ここまできて、何か問題でもあるのか、という顔をサスケがする。
「怖気ついたわけじゃないんだけど」
ケイが怪訝そうなサスケに言うと、
「どうしたんだ?」
と聞いた。
「驚かないでね。ボクが裸になったとき」
ケイがサスケに言う。
サスケは、どういうことか、と思った。
「それは問題ない。じゃぁ、締めてみよう」
サスケがちょっとむくれ気味に言う。
怒らせたかな、とケイは思いつつ、サスケの目の前で素早く衣服を脱いで全裸になった。
「へっ? えっ? ピアスしたんだ」
ケイの裸を見て驚きつつも、サスケが苦笑する。
それもケイの細くて華奢な体に、ニップルピアスが光っていたにほかならない。
「なんだか、エロっぽくていいぞ」
何かを妄想したらしいサスケが茶化す。
サスケにレクチャーを受けつつ、六尺褌をケイが締める。
「どう?」
「うっわ~。エッロ~い」
サスケが舞い上がり、顔を紅潮させた。
さらに耐え難い衝動がサスケの中に駆け巡り、褌姿のケイを後ろから不意に抱き着いて、胸に光るニップルピアスをいじり刺激した。
「ああん。大胆」
そのあと、彼らはいちゃつき、そしてセックスしまくった。
バカップルの誕生の瞬間であった。
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投稿:2019.07.26
宦官になっちゃった(その5)
著者 石見野権左衛門 様 / アクセス 3997 / ♥ 1