ヒロは、もともと普通の少年だった。
それが近頃ではすっかり無口になってしまい塞ぎ込んでしまった。急に発達し始めた乳房が原因である。12歳にしてDカップにまで膨らんでしまったのだ。
ホルモン異常だと診断された。
睾丸の発育不良により女性ホルモンの分泌量がどうとか、女医からの説明を受けたが、ヒロにはそれが何か分かっていない。ただ、谷間ができるほどの乳房のせいで男子からも女子からも不気味がられて遠ざけられてしまっている現状がつらくて仕方がない。
もともと可愛らしい顔をしているが、近頃では憂いを帯びるようになってしまった。それはそれで悩ましげな風貌になってしまい、男の子でありながら奇妙な色気を放つようになった。
「それじゃ、シャツを捲って」
「………」
女医の言葉にヒロは黙って応じた。この胸を見られることは思春期のヒロにとっては羞恥でしかないのだが、仕方がない。
「ふぅん、先月よりも大きくなってるねぇ。そろそろブラジャーとか着けてみる?」
「………っ」
イヤイヤ、とヒロは首を振った。まだ男の子でいたいのだ。とはいえ、こうして正面から乳房を揉まれていると自分が何者なのか、だんだんと分からなくなってくる。
「このオッパイ、学校で目立つでしょ?」
「………」
「ママから聞いたよ?プールでは今年から女子用の水着を着るようにしたんだよね?そしたら男子からも女子からもからかわれて、泣いちゃったんだよね?」
「………」
「だって、女子用のスクール水着だと、今度はオッパイじゃなくてオチンチンが邪魔になっちゃうもんね?」
「………」
モミモミと乳房を揉まれながら、聞きたくもないことを言われてしまう。ヒロは耳まで赤くなり目には涙が浮かんでいた。
「もう男の子でいることは、無理だと思うけどなぁ」
女医の言葉がいちいちヒロの心に突き刺さる。この黒髪の美人な女医のことをヒロはウットリするほど素敵だと思っていた。それは芽生え始めた男の子としての感性であったが、女医はヒロのことを男だと思っていない。それがショックなのだ。
「うん、それじゃいつもみたいに下も脱いで診察台に座って。お注射しようね」
コクン、と頷いてヒロは下半身を露出した。肉付きもすっかり少女のようになりスラリとした脚が伸びているが、股にある肌色のそれは紛れも無く男性器なのだ。
「声出そうだったらいつもみたいにシャツ噛んでてね」
アルコールの脱脂綿がポンポンと陰嚢を叩く。あの激痛がやってくる。ヒロはシャツを加えて悲鳴を堪えねばならない。つん、と形の良い乳房が露わになる。
「こっちはホント未発達よねぇ……」
女医の赤い唇がニヤッと歪んでいる。独り言に見せかけながら意地悪で呟いたのだ。ヒロの心にさらに深い傷が刻まれた。
「今回はいつもより痛いよ?副睾丸ってところに針を刺すから。精子を作ってる大切なところ。ヒロくんも精子って分かるよね?」
「………」
「だって自分の見たことあるもんね?」
「………?」
「ママが言ってたよ?ヒロくんってばオナニーしてたんでしょ?」
「………っ!」
「ママがショック受けちゃったって言ってたよ〜?ママからお仕置きもされたんだって?」
自慰行為は射精という最悪のタイミングで目撃された。女の子の裸が写ったスマホを取り上げられた上で母親からの「お仕置き」を受けたのだった。
大好きなママに踏まれる男性器。ヒロは苦痛に呻きながらも何度も何度も謝り続けた。
母子家庭で育つヒロは母親のことを女神のように愛していた。事実、母はそれだけ優しく美しかった。その母が殺意を必死に抑えながら睾丸をグリグリと踏み付けるではないか。その残酷で綺麗な表情を下から見上げていたヒロは、もう二度と男性器を使用しないことを誓ったのだった。
「だから、これはママも望んだお仕置きの一部だと思ってほしいの。すごーく痛いけどちゃんと受け止めるんだよ?」
「………………」
コクリ、とヒロは頷いた。そうするしかなかった。母親に見捨てられることが何よりも怖くて仕方なかったのだ。注射針の先端が陰嚢に刺さった。
「ん……くっ……」
「タマタマぎゅーっと掴んじゃうね。我慢してね」
「………くぅ!」
「今日はこの裏側の部分。チクッとするよ?」
仰け反ったヒロの乳房がぶるんと震えた。
「んんっ〜〜〜〜〜〜っ!!」
「まだまだ先端。奥にズブズブ差し込んで行くからね」
「んぐっ……くうぅ…!!うっ…!」
「ほーらズブズブ〜っと」
「んぐ…ぎっ…ぎひぃ……いぃぃぃ〜〜!!」
目からボロボロと溢れる涙が脂汗で濡れた乳房に弾ける。ぽたぽたぽたぽた……信じられない量の涙は意識も遠のく激痛のせいだ。まだ幼い少年の身に降りかかるべき痛みではない。
「貫通しちゃった。ゴメンね、角度変えてもう一度刺すね」
「あぎぃぃ〜〜〜〜ひぃっ〜〜っ!?」
「痛いよねぇ。でも、これって女には分からない痛みなんだよ?ヒロくんも女の子になればいいって、私もママも、そう思ってるんだよ?」
「いぎっ……ぎぎ…ひぎっ…いぃぃ」
「じゃあお薬注入するね。でもね、今日のは………」
女医は唇をヒロの耳元まで寄せて、吐息がかかるように甘く囁いた。
「すごく、沁みるよ?」
白衣の隙間から女医の乳房が覗いている。黒のブラジャーに包まれた悩ましげな膨らみを、あえて見せびらかすように。これに欲情したヒロは自慰行為という罪を犯し、そして今、罰が与えられようとしている。
「ひいぃぃぎぃいぃいぃ〜〜〜〜〜〜っ!」
ちゅっ、と針を抜かれても睾丸を鋭い痛みが襲っている。脱力してぐにゃりと仰向けに倒れたヒロは、うつろな目をしながら耐え難い苦痛の海で溺れている。あまりの痛みに気絶すらできないのだ。口から離れたシャツはよだれで濡れていた。
浅く早く呼吸するヒロに、女医は笑みを浮かべて酷薄な言葉を投げかけた。
「それじゃ、もう片方もね♪」
「…………っっ!!」
帰り道はすでに日が暮れていた。
二度の注射を経たヒロが自分で歩けるようになるまでずっと休んでいたのだった。鎮痛剤で緩和されてるとはいえ、足取りはひょこひょこと覚束ない。
「よしよし、よく頑張ったわね」
そんなヒロの手を取り、母はヒロをいたわった。それだけでもヒロは涙が溢れてきた。先程の苦悶の涙とは違って温かかった。
ブラジャーをつけていないヒロの乳房は、シャツの上からでも丸みが分かるほどに膨らんでおり、自分でもなんだかエッチだと思った。
最愛の母は、男である自分を求めていない。
美人の女医さんも、きっと同じなのだろう。クラスの男子には混じれないし、このままでは女子の中にも入れない。ヒロは自分が男であることが急に不思議に思えてしまった。
「…………」
夕闇が迫る中、部活帰りの女子中学生が目の前から歩いてきた。ひらりと舞うスカートに目を奪われた。
「……ママ」
「なぁにヒロ?」
「僕も……ううん、あたしも中学生になったらあのスカート履きたい」
「…………それは去勢したいってこと?」
ヒロは黙ってコクリと頷いた。母親は喜びのあまりヒロの身体を抱きしめて涙したのだった。
原因は別れた父親にあった。
離婚とはそもそも夫婦が崩壊して起きるものであり、特に恨み深くできている母親はかつての伴侶に対しての憎悪を引きずり続けた。そして同時に、息子のヒロを『絶対にあんな男にしてはいけない』と心に誓ったのだ。
ところが、成長するにつれてあの憎き男の面影がヒロの幼顔に重なるようになってきたではないか。最愛の子でありながら同時に働く絶対拒絶の心理。いよいよ葛藤に耐えきれなくなってきた母親は、知り合いの紹介を辿って、理解ある女医のもとへ辿り着いたのだった。
ヒロの乳房が発育を始めたのは病気のせいではない。
毎日の愛情たっぷり込められた母の手料理に、過剰なまでのホルモン剤が混ぜられていたことをヒロは知らない。羞恥と苦痛にまみれた通院もヒロを女性化するためであり、睾丸に打たれる注射は男性機能停止の薬を注入するためなのだ。こうして女医は何人もの男の子を『女の子』へと生まれ変わらせてきた。
翌年、何も知らないヒロは遠く離れた中学校へ通うことになった。電車で通学する『彼女』はもとの明るさを取り戻し、校門の桜の樹の下でスカートをなびかせていた。細身ながらEカップにまで膨らんだ乳房は柔らかなブラジャーで包んでいる。
無毛だった股間にはうっすらと陰毛が生えつつあるが、そこには男性器も女性器も無かった。
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投稿:2019.08.16更新:2019.08.16
美人の女医さんが施しちゃう!!性転換の睾丸注射!
著者 issei 様 / アクセス 15024 / ♥ 6