照りつける太陽は日に日に勢いを増し、生徒たちは開けたくもない窓を開けて、各教室の掃除に勤しんでいた。
今回の舞台、駒ヶ丘高校は、今日まで続いた期末テストが終わり、2つの班が合同で1週間ぶりに自分たちの教室を掃除していた。
「隼樹(しゅんき)今日の部活って何時までだっけ?」クラスメイトで同じ部活の雅成(まさなり)が尋ねてきた。
「今日、顧問がいないらしいから、軽く外周走ってから筋トレして上がるらしいょ」
「じゃあ、1時ぐらいには終わるな。終わったら
マック行こうぜ!先輩の自主練の誘いに乗んなよ?」
「オッケー!とりあえず掃除終わったら部室向かうわ」
それを聞いた雅成はクラスを出て、自分の掃除場所へと向かっていった。
俺、小野寺隼樹は、サッカー部に所属しているいたって普通の高1男子である。
夏の選手権に向けて、練習に励まないといけないのだが、先程の話にも出ていた通り、今日は顧問がテスト後に遠出している。なんでも秋にある俺らの合宿研修の下見に行くらしい。テストが終わって弾丸で向かわなくても、と思うが、予約をとった先生がこの日に設定してしまったのだから仕方がない。サッカーの顧問と俺のクラスの担任、そして隣のクラスの担任の3人で向かっているらしい。
マックに行って、その場のノリで公園に行って自主練でもして帰るか、先輩たちまだ自主練してたら戻ろっかな…隼樹はそう計画をしていた。
すると、そこに「隼樹ぃー。今日何時あがりなのー?」と廊下に面した窓の向こうから、一際大きな声が投げかけられた。声の主は佐々倉 杏佳(きょうか)、俺の家の隣に住むいわゆる幼なじみというやつだ。見た目はかわいいが、よく通る、少し凄みのある声で、クラスに杏佳がいるかどうかが50m先からでもわかるんじゃないかと思うくらいである。男子の中にはあまり近寄らないほうがいいのではないかと、勝手にびくびく怯えているやつもいる。
「1時には終わるけど、その後マサ(雅成)たちとマック行くー」
「私も行っていいー?」
「いや、なんで俺らとなんだょ」
「いーじゃん!誰と食べたって。もぉいい!」
と屈託のない笑顔でハキハキと物事を言う性格である。距離をおく男子がいるのも少し納得できる。
「あ、隼樹のママ、今日遅いんでしょ?こっちの家で夜ご飯用意してるから来てってママが言ってたー。19時ねー」
お互いの母親のどちらかが遅く帰ってくる日は、このようにもう片方の家にお邪魔して夕食を食べるのは、俺らが小さい頃からよくあることだった。
「泊まってくなら、用意持ってきなよーww」
全員に聞こえる声で危ない冗談を言うやつなので、俺は常に色々な視線に悩まされてきた。
その時、
「おぃ、小野寺!お前、杏佳とベラベラ喋んなって こないだも言ったろ?」
背後で急にドスの効いた声がした。振り返ると杏佳の彼氏、高松 剛汰(ごうた)が俺を睨んでいた。そういえばG.W.前に付き合ったって杏佳が言ってたか。
「いや、杏佳が話してきたから…」
「その呼び方も止めろって言ったよな」
「もぉーー!また突っかかってる!!別に幼馴染なんだから喋ったっていいじゃん!って言ったでしょ?」
杏佳がズカズカと教室に入ってきながら剛汰に文句を言う。
身長180cmはあるかという剛汰の巨体に160cmほどの杏佳が全く引かずに言い寄る様は流石としか言いようがない。
しかし、言われた剛汰もそこは男としてのプライドなのか、普段からそうなのか、怯まずに応戦する。
「お前は関係ねぇだろ。こいつが馴れ馴れしく喋ってっから注意してんじゃんか!」
「隼樹が可哀想じゃんって。」
俺はカップルの痴話喧嘩に巻き込まれた形になり、掃除も中断し、早く部活にいきたい気持ちで少しずつイライラが募ってきた。
「とにかく、隼樹!杏佳と気軽に喋んじゃねーぞ!」
「いや、俺をそのバカみたいな話し合いに巻き込むなよ…」
「うわっ、バカってひどーい!」
「お前、俺らにケチつける気かよ!?だいたいなあ…」
「なんだよ!文句あんのかよ?」
負けじと俺も強気に出る。
「もぉーいいじゃん!ねっ?剛くん、私と隼樹が幼稚園の頃から幼馴染って言ったでしょ?ただのそういう関係だから!気にしないで^_^
ご飯もお互いの家に行くのも親が仲良いから仕方なーいの!親の都合で一緒にプール行ったり、お泊まりもするし、お風呂も一緒に入ったけど、恋人でもなんでもなーいの!おけ?」
「お前ら…風呂…」
「杏佳!幼稚園の時のことなんだから、言わなくたっていいだろうが!!」
「あれ?小学校の台風の日忘れちゃったの?親いなくて、私が鍵持ってなくて、隼樹の家お邪魔させてもらったじゃん。ほらあの時、入ったでしょ?」
「言い方ってもんがあるだろ?あれは俺が入ってたら、お前が急に入ってきて____」
「あの時大変だったよねぇ?頭洗ってたら途中でズドンって雷落ちて、停電してさぁ…」
「んな事覚えてねぇよ!」
「思わずぎゅーって抱きついちゃったもんね♪どさくさに紛れて胸触ったでしょーwwしかも立ってた……ょね?」
「もぉ!わかった!!黙れ!!おぃ!(教室のその外から見ていたラグビー部4人に向かって)そこのお前ら!こいつ押さえろ!!」
そう言って、筋肉が異常についた脳筋野郎たちが、俺のそばにきて、羽交締めにしてきた!
「俺が何したってんだょ!?」
「別にお前が何か悪いことをしたわけじゃねぇ、そんなことは百も承知だ。でも、俺の今の感情も察しろよ!大勢の前で彼女と他の男との惚気話に似た内容をぺちゃくちゃ喋られて、この怒りとも言えねえ、なんとも言えねぇ感情をどこかにぶつけるには、悪いがお前に当てるしかねえんだよ!」
あまりにも暴論すぎる。
「そんなこと俺が知ったこっちゃねぇよ!杏佳が言い出した事だろうが!」
「じゃあ杏佳を殴れって言うのかよ!」
「なんで殴るとかそういう話になんだよ!」
杏佳はあまりの状況の変化に圧倒されつつも、なんとか場の雰囲気を元に戻さないといけない義務感にかられ、必死に高松の袖を引っ張り知らせるが、一瞥もくれずに高松は引っ張っているのが杏佳とも知らずに乱暴にそれを振り解いた。
杏佳は少し後ろにふらつき、そこにいた女子2人に背中を支えられて、どうしようと困惑の表情を浮かべながら、立ちすくんでいる。
その時、俺らのそばでニタニタ笑みを浮かべていたバレー部の和田が俺に近寄ってきた
「そりゃー高松の怒りもごもっともだと思うねぇー」
ヘビのようにやけに粘っこい、意味ありげな言葉を残していく。
「いくら小学生とはいえ、俺らの頭の中には、小野寺と佐々倉が風呂場で裸で抱き合ってる姿を嫌でも想像させられるねー。低学年の時かな?それとも高学年になってからかな?いやーませてるねー。しかもお前は佐々倉の胸を鷲掴みにして、ビンビンにちんこ勃起させてんだろww」
そう言って俺の股間を手でやや強引に掴んできた。振り払おうにも脳筋ラグビー部が羽交締めしているせいで、身動きがとれない。
和田の一言でその場にはどっと笑いが起き、高松の怒りのボルテージはどんどん上昇していく。もちろん、その矛先は杏佳や和田ではなく、俺に向けられている。
「いやー小野寺には悪いけど…なぁ高松!!これはなんか落とし前つける必要あんじゃねえの?たとえ幼馴染といっても手つけられてんだからなぁww」
「和田くんもやめて…ねぇ、おかしいって…」
杏佳もその場の空気に押しつぶされそうになりながらも、言葉をしぼりだすが、和田と高松の耳には届かず、反対に少し異様な目つきに怯みさえしていた。
さっきまで威勢はあれど、言葉を選ばずに言うと、所詮女子高校生。周りの見えていない男子を前にすると本能的に身体が縮こまってしまう。
現に杏佳自身もすでに、自分の言葉でこの場をおさめられるとは思っておらず、僅かに残っている義務感を頼りにセリフを紡いでいる。
「和田!お前覚えてろよ!何言ってんのか分かってんのか?頭沸いてんぞ?ぜってぇ後でこ◯すからな!!」
「小野寺、状況見てみろよ。先にこ◯されんのはどっちなんだろーな」
こいつ、狂ってやがる。確かに和田が昔から杏佳が好きって言ってたのは聞いたことがある。2.3回告白して玉砕してる話も一部の人間の中では笑い話になっている。
杏佳自身も「和田くんって目の奥笑ってないんだよねー。何思ってるか分かんなくて、なんか怖くない?別に悪い人っていう意味じゃないよ!?」と言っていた。
やっぱりこいつは狂ってた。そして告白に失敗したことを恨んでもいた。
でも、ここでその、雪辱を晴らさなくても!嫉妬に狂った和田の耳には今は何も聞こえていないだろう。
そして、高松の怒りはありえない方向へと動き出す!
「お前ら、小野寺の両手足をガッチリ抱えて身動き取れなくしろ!和田!小野寺のズボンとパンツ脱がせろ!」
この脳筋野郎たちは何を思ったのか、自分の意志は介在していないのだろうか、高松の命令に返事すらする事なく、一糸乱れぬ動作で忠実に俺の身体の自由を奪ってくる。
そして、和田が俺のベルトに手をかける!
「和田、ガチでやめろ!お前何やってんのか分かってんのか?」
「まぁ、何かしらの方法で高松の怒りを抑えないといけない状況っていうのは分かってる。まぁお前が何か恥ずかしい目にあえばあいつの怒りも冷めんだろw」
俺の顔の前で俺にしか聞こえないような声で、淡々と喋ってくる。後で確実にこ◯す!
すると和田の後ろで高松が喋りだす。
「小野寺、わりぃが社会的には少しの間しんでもらおうか!全員の前でちんこ立たせてみろよ!それで許してやるよ!」
「バカかお前は?そんなことするわけねぇだろ!?」
俺も必死に場の空気に飲まれないように反抗の意志を見せる。
「バカなのはお前だよ!周り見てみろよ!もぉ全員スマホ片手にムービーだよww後に引けねえな!」
そして、その時、和田の手が俺から一瞬離れ、カチャカチャと音を立ててズボンが床に落ちる。俺の灰色のボクサーパンツがみんなの目に入るとともに、どこからともなく、ひゅーーーっという小さな歓声があがる。
「お前もぉ半立ちなんじゃねえの?前膨らんでるぜ?」
また和田が俺にしか聞こえないような声で俺の神経を逆撫でる。馬鹿野郎全く立ってねぇーっつーの!
和田の言葉には何も返さず、無視することにした。
そして、和田はなんの躊躇もなく、俺の心の準備を待たずにパンツに手をかけて、一気に下にずらした。
俺のちんこが反動で少し跳ね、夏の蒸れるズボンの中から幾分涼しい部屋の空気に晒される。
どこからともなく、うぉーーーーっというエンターテイメントの興奮とは少し違う、なにか物珍しいものを見た時のような声が上がり始め、それが全体に広がった。
「お前、半立ちかと思ってたら、立ってなくてそれだったのかよ。大層立派なものを持ってんな。」高松の一言である。
さっきの低い声の歓声はやはり、俺のちんこに大きさに向けてであった。
確かに、俺のは大きいらしい。部活の着替えの時も「まぢか!」と驚かれたこともある(もちろん立っていない時をパンツの上から見られた時の反応である)。
ネットで色々調べたこともある。
それでもやはり、大人のサイズの中でも大きい方だそうだ。だからと言ってそこまで自信満々だったというわけではない。時たま羨ましがられる声にしばしの優越感を得ることもあるし、今回のように驚かれて、やっぱり大きいんだ、と答え合わせをすることもある。
ただし、今回のケースは状況が最悪すぎて、優越感などに浸る余裕もない。
「小野寺、立たせろよ!そしたら解放してやる!」
「んなもん、できるわけねぇだろ!?ちょっと考えたら分かるだろうが!」
「まだ、お前反抗すん____」
そこに和田が話に割って入ってきた。
「答え合わせをすればいいんじゃねえの?小野寺、佐々倉さんと風呂入ったんだろ?で、揉んだんだろ?」
「はぁ?それはあいつがくっついてきて、暗闇だったから当たっただけだろ!?」
「知らねえよ!でも結果としては胸に手が触れたんだろ!?変態野郎だな」
確かにあの時、あいつが髪の毛を洗ってる時に、おそらく相当近くに雷が落ち、杏佳が悲鳴をあげた直後に停電になって、咄嗟に浴槽から出て、「大丈夫か!?」って声をかけたら、その声に反応したのか、杏佳が手を伸ばしてきて、俺の右斜め前方向から抱きついてきた。あいつはそれを狙ってたというより、頭を洗ってたから目をつぶっていて、恐怖心からの行動だとは思うが、結果として俺の右腕には杏佳の膨らみ始めた胸が当たり、柔らかいものが当たっているという感覚をもった。
なんなら、俺の右手は丁度狙ったかのように杏佳の股のところにあたり、胸とは異なった柔らかさ、そしてその凹凸を瞬時に指が感じとっていた。
幼稚園の時に何度も見た杏佳の股間と、今指先にある感触が、すぐさま融合し、俺の頭の中では、俺が杏佳の股を触っている絵が自動で再生されていた。
俺のその事に集中していたせいで、自分が勃起しているかどうかなんて気づいてもいなかった。しかし、俺の左腕を抱きしめていた杏佳の右手が少し離れて、重力に従いおろされた時、一瞬ではあるがその手が俺のちんこに触れた。おそらく、その時、二人同時に「あっ、立ってる」と認識したのである。
俺は少し冷静さを取り戻し、目をつぶっている裸の女の子が自分にぴたっと抱きついており、小刻みに震えている。
何か意図したのか定かではないが、俺は右手はそのままに、左腕を杏佳の肩に回し、「大丈夫だよ。」と声をかけた。
そのあとはよく覚えていないが、数秒で停電が解除されたのか、少し恥ずかしさの残る二人は無言のまま、風呂を上がって身体を拭いたのであった。
朧げな記憶であったが故に、事実はどうであったか思い出そうとした結果、思っていた以上に鮮明にその時の描写を思い出せてしまったことで、俺の身体には変化が現れた。
先程まではその重みで真下を向いていたおれのちんこが、その鎌首をもたげ始めたのである。下を向いていた際には3分の2ほど隠れていた亀頭も上をむくにつれて、皮が引っ張られ水平になろうかという頃には半分以上が露出していた。
「おぃ、こいつガチで触ったんだろ!思い出して勃起してやがる!っていうか小学生の時に女子の股触って興奮して、ずっと覚えてやがるとかガチの変態野郎じゃんか!」
和田がさらに煽ってくる。
俺は必死に勃起を抑えようとするが、その意志に反して血流は絶えず股間に流れ込み、ちんこを固くしていく。俺は杏佳に興奮したのか?好きなのか?それとも単純にその光景、形状、状況に興奮しているだけなのか?そんなことはどうでもいい!早く静まってくれ!!
その願いは逆に印象を強めてしまい、勃起のスピードが増していく。
どこかに気を逸らして紛らわせないと大変なことになる、そう感じとった俺は、咄嗟に下げていた視線をパッと上にあげた。
すると、そこにはさっきまで俺の記憶の中で雷に怯えていた杏佳が、今度はこの状況に怯えている、成長し幾分女らしさを兼ね備えた杏佳として写った。
あぁ、こいつやっぱり可愛かったんだ……
思わずそう思ったが最後、俺は十数人の聴衆の前という異様な場においてなお、フルで勃起してしまった。
亀頭は完全に露出し、血管は浮き出て、誰の目から見ても十二分に硬さを備えていると分かるほどに勃起していた。
そしてそれは高校生の身体には似つかわしくないほどのサイズ感で、その場にいた男子のほとんど全員は、初めてみるサイズに開いた口が塞がらない様子でもあり、女子はそれぞれに性的なものとして捉え、驚きと興奮の入り混じった表情で見惚れていた。
「まじかよ!こいつとうとうフル勃起しやがった!!他人の彼女想像してガチ勃起させやがったww」
「お前、よくも俺の彼女見て、ちんこ大きくしやがったな?」
「お前が勃起させろって言ったからだろうが!」
「だからって他人の女で興奮するやつがどこにいんだよ!」
「仕方ねぇだろうが!お前らが風呂場で何があったか聞いてきたんだからよー」
「よくもフル勃起の状態でそんな口が叩けんだな!恥ずかしいと思えよ!変態野郎!」
「こいつあれじゃねぇの?ちんこがそこそこでかいからって強気に出てんじゃねえの?ちんこでかいやつって態度もでかいって言うしw」
和田の一言一言が俺をイラだたせ、高松のボルテージも上げまくっている。
「和田、黙ってろよ!!」俺は思わず叫んだ。
「黙んのはお前の方だよ!小野寺!
(俺を取り押さえている脳筋ラグビー部に使って)お前ら、こいつをあのドアのところに連れてけ!」
俺は、身動きの取れないまま、教室前方の開いているドアのところまで連れてこられた。これ以上の面倒はやめてくれと心の中で漏らしていた。
「小野寺の勃起ちんこがドアが閉まった時にドアと柱の間に挟まるようにもってこい!ジタバタさせんじゃねぇぞ!!?ちょっとでも力緩めたやつは、後でじっくりとこ◯してやっから覚悟しとけよ」
「馬鹿野郎!お前何考えてんだよ!正気じゃねえぞ!自分が何言ってのか分かってんのか?」
「喚くな!!お前今の状況分かってねぇだろ?内心では、しこりまくりてぇって思ってんだろ?他人の女の裸想像して、この状況下でもフル勃起で、何を偉そうにタラタラほざいてやがる。」
あいつの言葉には1ミリも共感はできねぇが、俺でも分からねぇのは、なぜ俺はまだ勃起したままなのだろかということだ。確かにこんな状況は初めてだが、高校生の性欲っていうのは、どんな状況でも優先されるのか?やべぇ、杏佳が目に入ると、それだけで刺激になる。ガチで社会的には死んだな。いや、まだ諦めるわけにはいかない。あいつの好き勝手にはさせねえ
「高松、今ならまだ間に合うぞ、こいつらに手離せって言うだけで済むんだよ!俺が何したってい____」
「口に気をつけろよ!それになんだよその目は!お前が俺に命令できる立場にあると思ってんのか?
俺と杏佳に謝れ!
変態すぎてすみません、って謝れ!
なら、許してやってもいいかもな!
まぁ、どっちにしろ、お前の結末は俺にかかってんだよ!
和田!!よく聞けよ!
もし、俺が手を上げたら、思いっきりドア閉めろ!こいつの答え次第ではどうなっても構わねえ!
絶対に躊躇うなよ!?お前も後で痛い目に遭うぞ!?」
珍しく、和田もゴクリと息を呑んでいる。
いや、そんな他人の心配をしている暇なんてねぇ!……のか?
あいつもバカの高松と言われているが、それでも生きた人間だ。それに俺を押さえている脳筋野郎どもも、このゲスの和田も普段はバカ騒ぎするクラスメイトではある。
変な考えは起こさないだろう…
いや、ほんとにそう言えるのか…
そんな考えを巡らせる余裕がなぜか俺にはあった……のか……
高松はゆっくり振り返り、杏佳の方を向く。
「杏佳、ごめんな、怖がらせて。あいつがキモくて辛かっただろ?大丈夫!あいつから謝罪の言葉聞こうぜ」
高松は怒りの感情を出来る限り抑え込み、左手を杏佳の方に差し出す。
杏佳もそれに引かれるように、ゆっくりと高松の方に歩いていく。ただ、それは自分の意志でというよりも、高松の何か不思議な力によって操られてるのが正しいのではないかと思うくらい、今の杏佳は中身が空っぽのように見えた。
杏佳は高松を一歩だけ通りすぎ俺と高松との間で立ち止まった。
俺の目には杏佳の後ろに馬鹿でかい高松が立ちはだかり、その前で空虚な目をした操り人形の糸を乱暴に握りしめる怪物に見えた。
「さぁ、聞かせてもらおうじゃねえか!お前の言葉を!」
こいつ、最後まで腐ってやがる。
「………高松、」
長い沈黙の後、俺は屈辱的な言葉をこれで最後だという気持ちで振り絞った。
「高松、悪かった……許してくれ」
これまでの人生の中で最も辛い出来事にランクインしただろう……
明日からの俺は耐えられるのか、いや、今日の午後さえ、生きていられるか分からない…
元気なのはこんな場面でもまだ硬さをある程度保持しているちんこだけであった。
「杏佳にも謝れよ!」
「………………杏佳……
ごめん……」
「言葉が足りねえんじゃないのか?」
高松が声を張り上げる以外、教室はピンと張り詰めた雰囲気に包まれていた。
「……杏佳…変態な俺で、ごめんなさい…」
終わった…
色々終わった…
ただ、これで解放される。
忘れるぐらい遊ぼう!
カラオケ行って、ゲーセン行って
それよりも、サッカーに打ち込んだ方がいいか!
どうせ、先輩たちにもこの事は広まるだろうけど、俺のプレーには関係ねぇ!
やる事やるだけだ!
さぁ、脳筋野郎ども、その手を離せ!!
そう言いかけた時、先に口を開いたのは意外にも中身の抜けた杏佳だった。
いや、今その杏佳の目に少しずつ色が戻ってきた。
杏佳はくるっと振り返り、高松の方に向き直ると
「ねぇ、剛くん……
もぉ…無理だよ…
………………………………別れよ」
と囁いた。
しかし、シンと静まりかえった教室にいた全員の耳にそのセリフは聞こえていた。
「お…おま____」
顔を真っ赤に染め出し、こめかみに血管を浮かせ、高松がそう言い出すのが早かったか
それとも、右手を思いっきり振りかぶり、平手打ちをしようとするのが早かったのか……!!
その時、教室にいた生徒はみんな一瞬にして気がついた……
手が上がった………!!
ガラガラというドアの音がし始めたその刹那!
クラス全員の目は動き出したドアへと注がれた。
___________________
この時の状況を、クラスメイトはこう証言している。
「やばい事が起きる時ってスローモーションになるって言うじゃないですか。まさにあれでしたね。」
--○--○--○--○--○--
ドアを動かした張本人である和田は
この時のことをこう証言している。
「いや、ドアレールの上に足がおいてあるのが見えたんですよ!多分、ラグビー部のやつの足なのか、まぁ分からないですけど、ドアが閉まらないようにちゃんと置いてるんじゃん!なら、小野寺をびびらす為にも、一丁大袈裟な動きで演出しようと思ったんです。結果としては足なんてなかったんですよね…瞬時に引いたのか、それとも元々俺の目にしか見えていなかったのか…あんまり記憶が……なくて」
--○--○--○--○--○--
俺を押さえていたラグビー部の一人はこう証言している。
「今となっては、なんで関わってしまったんだろうって思ってます。目の前でドアが動いてるのが見えたんです。ほんとなら、俺らが力抜いて、小野寺が動けるようにしてあげないといけなかったんですけど、俺らほんとにバカで、一回こう!って指示されたことは守らなきゃって、身体が言うこと聞いてくれなくなるんです。だから、ドアが動いていようが、小野寺の身体がより一層動いて抵抗しようとしたから、負けじとこちらも、がんじがらめ、って言葉おかしいですょね?でもなんか動かないように意地になってました。」
--○--○--○--○--○--
高松はこう証言している。
「ドアのことなんて全く忘れて、どちらにせよダメなんですけど、佐々倉さんの言葉に我を忘れて、叩こうとしてましたね…叩いてはないです。まぁそうしようと思った時点で最悪ですけどね…。叩く前に「あっ!」って身体がびくんって、反応してました。いや、でも、正直言って、言い訳にしかならないですけど、本当にドアを閉めるとは思わなかったんです…今更言っても無駄ですょね…はぃ…」
____________________
ドアはさながら超特急のようにレールの上を全速力で滑り、柱とぶつかり校舎中に聞こえたのではないかと思うくらい大きな音を立てて閉まった。
いや、正確にはその音が鳴る直前に、もしくは同時に何か別の音を含んでいた。
ドアが閉まったことにより、俺の視界には、目の前に迫る乳白色に色付けされた木のドアがあるだけであった。
よってここからは、証言と病院、警察の見解によるものとなるが、8割ほどに勃起していた俺のちんこは教室のドアによって身体から切断されてしまった。
まずはドアの構造である。主にペンキ塗りされた木のドアではあるのだが、柱とぶつかる面、直接俺のちんこに当たった面については、耐久性の観点から金属の板が取り付けられていた。またその面の左右の両端には1ミリ程度の金属の盛り上がりが、ドアの縦のラインに沿って施されていた。その金属の盛り上がりは鋭利ではなく、滑らかな山型となっていた。
そして、挟まれたちんこについてである。
通常、何かに挟まれた場合、鋭利な部分によって切断されれば、包丁で切ったような綺麗な切り口となる。
しかし、今回のようなドアの場合、単純に切ったというよりは叩き切られた、叩き千切られた、ような形での切断であった。
よって切断面は全てが潰されたような様子となり、医者の目から見ても、一瞬目を背けたくなったと言われている。
また、さらに症状を悪化させた要因として、切断時に勃起をしていたことがあげられた。
血液でパンパンに膨れた状態のちんこの根元にものすごく強い衝撃が加わった場合、また今回のドアのように鋭利でなく、かつ幅のあるドアでしたので、すぐに切れることもなく、押しつぶされる血液の量もかなり多かったので、行き場を失った血液や、それを含む海綿体がちんこの先端、皮膚の弱い部分が大きく裂け、そこから外に出たという。
ドアが閉まった瞬間に、大きく血を吐きながら、ちんこがドアの場所から教室の真ん中にあった教卓の側面にまで飛び、床にボトっと落ちたのである。
すぐにその場にいた全員が叫びまくり、被害者である俺は痛みで気を失いかけていた。いっそのことすぐに意識が飛んでくれればよかったものの、少しの間は痛みに耐えていた。ただ、切断面からの失血により、徐々に意識が遠のき、いつの間にか意識を失っていた。
その間、教室では大騒ぎが続いており、教室の中に立ち尽くす高松と和田…
すぐに職員室にかけていくクラスメイト
ドアを開けて、俺の名前を叫び続ける杏佳
駆けつけた救急車により、俺は輸血をされながら、救急車で病院まで運ばれる。
付き添いには杏佳と学年主任の先生が乗ってくれたそうだ。
担任はその頃、連絡はついたそうだがもうその時には、新幹線に乗り込んでおり、駆けつけてくれたのは時間が経ってからであった。
忘れてはいけないのが、教卓のそばに落ちていた俺のちんこである。
俺と共に救急車に乗せられ、緊急のオペにより、一旦は俺の股間に再び縫い付けられた。
しかし、切断面が鋭利でなく、汚い点、亀頭の一部が大きく裂け、そこから海綿体の一部がはみ出していることも含めて、全体的に損傷が激しいことにより、長さも短くなり、形も歪つなものとなった。そして、医者から言われたのは、「一旦はくっつけてましたが、これが以前のように機能する可能性は5%以下です。それよりも、この1週間で先端の縫合面から、もしくは根元の縫合面から壊死していく可能性は80%を超えてきます。出来ることは全てしました。後は覚悟は必要です。」というような悲惨な状況であった。
結果から言うと、手術後の経過はあまり良いものとは言えず、オペから10日後に再度手術が行われ、ちんこの根元から全てを切除することとなった。
これからのことを考えることもできず
途方に暮れる俺であるが、これには初めのオペから2回目のオペが行われるまでの10日間にあった出来事を話す必要がある。
まだ俺にちんこがあった10日間の話は
また次の機会に話させてもらいます。
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投稿:2024.09.26
嫉妬に "狩られた" 哀れな一本
著者 闇夜ギロチン 様 / アクセス 1663 / ♥ 10