僕の村には奇妙な祭があるんだ。
この祭自体、神道なのか仏教なのか良く分からないし、第一いろいろな法律にひっかかりそうな祭なんだけど、500年以上の歴史があるらしくて、伝統行事としてずーと大目に見てもらってきているみたい。
どうも、これだけ既成事実があると正当業務行為とやらで免罪になると駐在さんが言っていた。
この祭に参加するのは、元々は僕が住んでいる村の、一番山奥の集落の若者となっていたみたいなんだけど、戦後は人口が減ってしまったので今では村全体だけじゃなくて、全国から誰でも参加可能となっている。年齢も厄年を越えても45歳ぐらいまでOKらしい。もっともいまだに女人禁制だけど。
最近は、マスコミやインターネットで奇祭として紹介されて、かなりマイナーだけどちょっとした観光行事みたいだ。
参加者は毎年総勢100人ぐらいかな。最近は村人は10人そこそこ、40歳を過ぎた中年オジサンがほとんどで、若者は大多数が村の外からやってくるんだ。
当日飛び入りもできるけど、参加者は全員誓約書(起請文というらしい)を書かないといけないよ。
祭は秋も深まる11月の夜、夜の7時ぐらいに始まる。
まず、5時ぐらいにお寺の本堂横手の控室に集まった参加者は、用意されたカミソリで全員が下腹部を剃毛して、パイパンになっちゃう。
これは自分で剃っちゃいけなくて、お互いが剃りあうことになっている。
そして、禊をしてから全員が白い六尺褌を着けるんだけど、この褌は全部隅に小さい黒字の番号が染められてあって、これがあとで重要な意味をもつんだ。
言い忘れたけど黒い鉢巻もしていてそこにも同じ番号が白い字で染め抜いてある。
時間になると全員、お寺の隣りにある神社に参拝してから、麓から300メートルぐらいの小山の山頂にある奥の院の祠を目指して山道の参道を一斉に走り出す。
奥の院は神主と裸男以外は立入禁止だけど、この参道には、毎年大勢の見物人が詰め掛けているよ。
参加者は祠につくと褌を取って、それを賽銭箱みたいな大きな箱に、次々と投げ入れる。
全員が到着すると、鉢巻だけのスッポンポンになった男たちが箱を取り囲み、一番先についた男が代表で丸い穴から褌を一本だけ引きずり出す。
その、褌に書いてある番号を大声で読み上げると、素っ裸男たちからワォーというどよめきが起こる。と、同時にその番号の鉢巻をした男を捜し始める。
その年の「神男」が決まった瞬間だ。
褌の入った箱がぶち開けられる。
参加者はどれでもいいので手近な褌を手に取ると、自分が当ってたいていは呆然と立ちすくんでいる男を見つけて、そこにある褌でその男をギチギチに縛り上げるんだ。
当った男は、最初に褌で後手に手首を縛られてから、口の中にも褌を突っ込まれて猿轡をされて(ちょっと汚いなあ)、結局全部の白褌でミイラみたいにグルグル巻にされてしまう。
でも男根の周辺だけは巻かないのであそこはモロに剥き出しだ。
裸男たちは、ミイラ状態の神男を担ぎ上げると、全員で一斉に山を下る。
スッポンポンでパイパンの男たちがドヤドヤっと下りて来ると、参道の見物人は神男が誰だか見極めようとして、神男から僅かに覗いている一物から想像したり(笑)、登って行った裸男から誰がいなくなっているか考えたりするんだ。
最近は、それよりもパイパン男の股間のモノをご鑑賞目的のギャルが増えたみたいだけど。
神男は白褌でグルグル巻にされたまま、麓の神社の本殿の前に仰向けに横たえられる。
つまり剥き出しのオチンチンは真上を向いているわけ。
そうしているうちに最後に神主が山から下りてきて、群集に向かって神男が公平に選ばれたことを宣言するんだ。
すると、巫女さんが二人やってきて、神男の例のモノの根元を細い紐で縛ってから、巫女さんの1人が両手でしごき始める。
十分に勃起すると今度はもう1人の巫女さんが、神男の棒の先を口でくわえ、発射を受け止めるんだ。
こうして、神男が射精するまでの時間とか、ナニの大きさとか、勃起の角度とかによって、来年の運勢を占うんだけど、どこがどうなると良いのかは、神主さんしか分からない謎だと言われているよ。
祭のここまでを「珍宝祭」というんだけど、何かそのまんまじゃん。
これで神社での一連の神事が終わるわけだけど、祭はこれで終りじゃなくて、今度はお寺で続きが始まるんだ。
場所はお寺の境内の、奥に薬師如来様が飾ってあるので薬師堂と呼ばれる(このお堂には別名があるんだけど、それはまた後で)6畳間ぐらいの板敷の小さなお堂で、仏壇以外は取り外し式の板戸なので、戸を外すと3方向から中の様子が見える。
神男がお堂に担ぎ込まれて、さっきと同じように仰向けに寝かされると、素っ裸の男たちはお堂の周りに座って、鉢巻を外し、それを繋げて4本の長い紐を作って、住職に渡す。
見物人もゾロゾロ移動してきて、周囲を取り囲んで見守っている。
住職が、神男のグルグル巻の褌を顔の部分を除いて解いていくと同時に、手伝いの小僧が神男の手首足首をすばやく、先ほどの鉢巻で作った紐で縛って、それぞれお堂の四隅の柱に結ぶので、神男の首から下が露になるころには、手足が4方向に伸ばされて、大股開きの大の字で寝ている格好になる。
住職は、神男のサオとフクロを、白褌を裂いて作った白い布でぎっちりと包み上げる。
どちらかというと、ギリギリと縛り上げる感じかな。
さっきから縮こまっていた神男の性器は、またエレクトしてくるようなんだけど、神社での神事とは逆に、肝心な方が白褌に包まれているので、よくみえないんだな。
余った白褌は、シーツのように神男の下に敷かれる。
さ、これからがクライマックスで、住職は、キラリと光る鋭利な刃物を取り出して、神男の生殖器の根元にあてがったかと思うと、一気にスッパリと切り落とすんだ。
神男は叫び声を上げるんだけど、褌の猿轡がそのままなので、ほとんど声にならなくて、「うぐっ」といった感じ。
局部は血で真っ赤かになって、白い褌が見る見る赤く染まっていくけど、住職は慌てずに、まず神男の切断された傷口の尿道に金属のパイプを差し込んでから、切断痕を縫い針で縫って、最後に何か秘伝の油をかけて止血してしまう。
麻酔も無い乱暴な手術に見えるけど、何百年もやっていて死亡例が1件も無しだそうで、西洋医学の名医も形無しみたい。
そえに、思ったほど痛くないと神男になった人はみんな言っている。
そうそう、この後半の行事は「羅切祭」と呼ばれていて、このお堂は「羅切堂」と言うんだ。
お寺では男根のことを「魔羅」と呼んでいて、それを切るから「羅切」なんだって。
偉い大学教授の先生の話だと、昔は村の女に比べて男が圧倒的に多かったか、一夫多妻の習慣があったかで、男を間引きするためにこんな奇妙な祭が始まったそうだけど、今は村の若者は滅多に参加しなくて、出るのは40過ぎても独身の男ぐらい。
逆に、全国から去勢願望の人たちがたくさん集まってくるようになっちゃった。
二十歳以上の男性なら誰でも参加できるから、みんなも是非来てよ。
タダで去勢してもらえるかもしれないので、毎年必ず来る若者も多いよ。
でももう切っちゃった人はダメだから見物していてね。
続編(神男へのインタビュー)はこちら
-
投稿:2003.10.14更新:2022.08.27
羅切祭
著者 名誉教授 様 / アクセス 35228 / ♥ 112