同窓生パーティ◆PART1〜プロローグ◆
僕の名は三橋浩二。大学を卒業してから4年、一旦就職した民間企業を辞めて、学習塾の講師のバイトをしながら公務員試験を目指している26歳だ。
僕には高校時代から親しい5人の友達がいる。彼らとは水泳部の同期だ。高校は私立の男子校で県内では進学校として知られてたけど、なぜか水泳もなかなか強かった。
戦前からの伝統を誇る寒中水泳会では、六尺褌で古式泳法を披露し、TV取材を受けたこともある。それから当時、県内強豪校の男子水泳部員の間では、股間の毛を剃ると水の抵抗が減って速くなるという伝説があって、水泳部に入部したら全員下はパイパンチンコにされていた。それでも入部希望者は多かったんだ。
水泳部の同期はもっといるけど、この6人と特に親しくなったのは、部活の合宿がきっかけだ。例の下の毛はいつもはT字剃刀で自分で剃っているけど、合宿では床屋が使うような本格的な剃刀で、完全に剃り上げるように言われた。
こうなると1年生は自分で剃るのは苦しく、2人1組になってお互いに剃りあうことになるわけ。こうしてデルタからポール、フクロ、お尻の穴の周囲まで剃りあううちに、いわゆる男同士でもちょっと特別な感情を抱くペアも出てくるわけだ。
僕を含めて6人もこうした中でなんとなくお互いを意識するようになり、そういう感じの組はこの6人だけだったので、自然にかなり親しい仲間になっていったんだ。高校生なので もちろんその頃は、いわゆるゲイのような同性愛行為は一切なかったし、勉強や受験でそんなこともまで意識する暇もなかったな。
さて大学入試が終わって、僕はまあまあの私立の法学部に合格。上京して1人でアパート暮らしをすることになった。僕が一番親しかった犬養健史は地元の国立の工学部に進み、その後大学院に進学し今は博士課程、僕とは帰省したときに喫茶店で会うぐらいの関係に過ぎなくなった。
高木豊君と鈴木義人君は、有名な私立の経済学部と商学部に入学。別々に下宿していたが、そのうち一緒にアパート借りて一緒に住むようになり、卒業する頃には完全に同棲関係になっていた。卒業後は2人でIT関係の会社を立ち上げて、人も雇ってそこそこ順調にやっているらしい。
加藤一豊君は、第一志望の地元の国立大学の医学部に入学した。彼の父親は産婦人科医院を開業していたし、兄も医学部だったので、彼も親の跡を継ぐんだろうなとみんな噂していた。彼が親しかった松下清次君は、僕たちの中でもダントツに泳ぎがでいたので、推薦で体育学部に行って寮生活していた。しかしどうも記録は伸びなかったようで、卒業後は故里のスイミングクラブで水泳のコーチをしている。
そんなある日、松下君から電話が来た。加藤君が医学部を卒業してから2年のインターンが終わったので、お祝いに久々に昔の6人で集まらないかというお誘いだ。
場所は加藤君の自宅とのことだ。彼の家は医院を兼ねた豪邸で有名だったけど、大勢押しかけたら迷惑じゃないかと聞くと、最近父親の医院を兄さんが継いで病院ごと近所に引っ越してしまい、今は加藤君だけが住んでいるそうだ。
約束の当日、加藤君の家を訪ねると、時間が早すぎたらしく応接間で加藤君が1人で待っていた。加藤君と話していると、彼は産婦人科ではなく泌尿器科の医師になるとのこと。父の産婦人科は兄が継ぐし、今は子供が少ないからね。それに良い教授にめぐり合えたし、といったよもやま話をしているうちに、あと4人のメンバーも次々到着した。
全員揃ったところで加藤君から衝撃の発言があった。何と大学で同級だった女医と婚約し、来年挙式予定だという。その上、彼女を紹介すると言って、奥の元医院だった建物の呼びに行ってしまった。
僕たちは突然のことに唖然。松下君も聞いていなかったらしい。でも加藤君は同性愛者ではないわけだから、別におかしな話でもない。
加藤君が彼女を連れて帰ってきた。それがまたドクターには見えない美人。その上可愛いので、看護学生じゃないかと思ったぐらいだ。それに何をしていたのか白衣のままだ。
みんな口々に一緒にパーティに出るよう勧めたが、何か用事があるらしく彼女は挨拶だけで戻っていってしまった。
さあ行こうかと加藤君に促されて、僕たちはパーティ会場であるリビングルームに移動したが、さっきの彼女の毒気に当てられたかのように、全員床に足が付いていないような歩みだった。
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投稿:2010.09.12更新:2021.10.21
同窓生パーティ◆PART1〜プロローグ◆
著者 名誉教授 様 / アクセス 20627 / ♥ 53