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同窓生パーティ◆PART6〜エピローグ◆
それから半年ちょっとがたち秋も深まる頃、街の喫茶店で僕は犬養君と会っていた。
待ち合わせの店がいつの間にかメイド喫茶になっていて、お帰りなさいませご主人様と迎えられて面食らった。
でも、あのパーティで犬養君はタマタマとフクロを失い、僕はペニスを失った。2人合わせてようやく1人前の男というわけだ。
あの手術で一番悲惨だったのは松下君だが、犬養君によるとあれは元々加藤君が仕組んだ罠だったのではないかと言う。
高校の水泳部で加藤君は松下君とちょっと特殊な男同士の関係にあったわけで、加藤君の彼女ができたので一気に過去を清算しようと、または清算してるということを彼女に見せるために、くじに細工をして松下君に全除性術が当たるように持っていったのではという。
そうなると僕たちはあの2人に巻き込まれたのかもしれない。
推理小説のような話だが言われてみればあのアミダくじ、あとからどういう風にでも作りかえることができたはずだ。なにせ作ってから公表するまで、まる2日間もあったんだから。
それにアルコールはともかく、あの試薬もおかしい。何か幻覚というか幻想みたいなものを引き起こす作用があったのかもしれない。
犬養君は更に、最初に去勢を言い出した鈴木君が包茎手術で終わったのは、加藤君と話ができていたのでは、とまで言う。
鈴木君と高木君の同棲関係は今でも続いているらしいので、それは考えすぎのような気がするが、真相は藪の中だ。
僕は相変わらす塾の講師のアルバイトで食いつないでいる。ペニスが無くなったことは生徒にはバレていない。公務員試験は今年も駄目だった。犬養君は博士論文の目処がついたが、就職をどうしようか迷っているそうだ。
お互いこれからどう生きていくのかいろいろ話したが、2人とも考えがまとまらず、まあ何とかなるさといって別れた。
街路樹はすっかり裸になり、電気店のテレビのニュースでは木枯らし一号が話題になっていた。
(おわり)
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投稿:2010.09.28更新:2021.10.21
同窓生パーティ◆PART6〜エピローグ◆
著者 名誉教授 様 / アクセス 18996 / ♥ 48